不動産取引における土地調査問題研究会報告書

更新日:平成22年4月20日

(2)調査結果の概要

土地調査システムについて
□調査、報告の流れ

大半の不動産会社は、将来のマンション開発計画の検討段階の時に、候補地等の地域特性や周辺環境などの情報を入手するため広告会社に調査依頼する。そして、広告会社は、リサーチ会社に委託する流れが基本である。広告会社の多くは、広告受注の入札参加のため無償実施している。不動産会社自らも調査し、広告会社等からの報告とあわせて総合的に事業化検討している場合もあった。

【アンケート結果】
○土地調査実施の有無
−不動産開発・取引に関わるマーケティング調査を行っているか。−
・リサーチ会社(調査対象91社)→行っている 25社(27%)
・広告会社(調査対象102社)→行っている 43社(42%)
・不動産会社(調査対象開発業者52社)→ 行っている  44社(85%)
○調査主体
−調査は自社で行っているか、他者に依頼しているか。−
・リサーチ会社(対象25社)※重複回答有
自社:12社(48%) 
他社と共同:13社(52%)
・広告会社(対象43社)※重複回答有
自社:8社(19%)   
他社に委託:39社(91%)
・不動産会社(対象44社)※重複回答有
広告代理店に依頼(無償):26社(59%)
自社で調査する:23社(52%)
広告代理店から情報提供:13社(30%)
広告代理店に依頼(有償):9社(20%)
リサーチ会社に委託:8社(18%)
○クライアント
−調査の依頼主はどこか。−
◆リサーチ会社(対象25社)※重複回答有  
広告会社:20社(80%)  」
不動産会社:15社(60%)
◆広告会社(対象43社)※重複回答有
不動産会社:36社(84%)
その他:9社(21%)
○調査段階
−土地調査を行う時期はいつか。−
◆不動産会社(対象44社)※重複回答有
土地購入前:32社(73%) 
土地購入後:20社(45%)

【ヒアリング結果】
◆リサーチ会社
・マンション計画が決定されてからの調査もあれば、決定前の調査もある。決定後の調査であれば、裏付け資料となる。決定前の調査のほうが多い。
・マンション開発は大きな投資となるため、デベロッパーは確認する意味で広告代理店に調査させている。
・広告代理店は良いことしか報告しないので、デベロッパーは自分で調べている。
◆広告会社
・調査は、土地の仕入れ段階と事業化できるかの調査の2段階ある。仕入れ時は1社、事業化の際はいろんな声を聞きたいのでコンペ方式となる。
・不動産取引のマーケットプランニングできる人は重宝される。
・リサーチ会社はマンションの売行き情報に詳しいので、委託していた。
◆不動産会社
・マンション事業化検討のための周辺住環境を含めた立地調査は自社で行い、周辺販売事例状況 を含めた市場調査を広告代理店に依頼していた。
・業務効率化のため立地調査を含む総合的な市場調査を広告代理店に依頼するようになった。
 また、専門的な市場調査を行う会社が現れ、そこにも依頼するようになった。
・当社の営業マンが土地情報を広告代理店に流しているため無償でレポートが上がってくる。
・販売部門のない不動産会社なので、土地情報の仲介業者である地元の不動産販売会社に販売を 委託しており、その業者が地域情報に詳しいため、地域情報も入手している。
・広告代理店の情報は信用していない、参考資料。自社で独自に事業化を分析・検討する。
【解説】
○アンケート調査において、顧客情報を調査するリサーチ会社ではあるが、不動産取引に関する土地調査を実施している会社はそれほど多くないことがわかる。
○ヒアリング調査で聞き込むと、リサーチ会社のうち不動産会社等と取引実績が多いのは、府内5社であり、これらを中心に問題表現のある土地調査報告書を作成していたことがわかった。また、広告会社がリサーチ会社に調査委託する場合、特に「地域特性」に関する調査は高い専門性を有するため、リサーチ会社5社のうちの2社に発注している場合が多いことがわかった。
○広告会社はほとんどがリサーチ会社等に委託しており、広告会社への依頼主は、不動産会社が大半を占めている。なお、不動産会社から依頼された広告会社の多くは、広告受注の入札参加のため無償実施していることがヒアリング結果から明らかとなった。
○不動産会社については、広告代理店に依頼する一方、自ら実施している不動産会社が多いことが明らかとなった。このことは、ヒアリング調査からも、自らの調査に加え、複数の広告会社の調査結果も踏まえて総合的に事業化を検討している企業が多い。


□調査の重要項目

 アンケート結果からは、リサーチ会社、広告会社ともに、いわゆる立地特性を示す生活環境・利便性、交通環境などは9割前後の高い重要度を示している。地域性(評判、イメージ)については、リサーチ会社44%、広告会社37%、不動産会社23%の順であり、実際に現地調査を行うリサーチ会社の割合が高い。不動産会社は周辺地の既設マンションの価格帯や販売動向など、完売するための価格の相場観に高い関心がある。
 なお、アンケートからは、いわゆる同和地区の有無、外国人の集住状況は、いずれの業界でも重要と考えているのは、皆無またはごくわずかであった。

【アンケート結果】※重複回答有
−調査項目のうち何を重視するか。−
◆リサーチ会社(対象25社)
生活環境(施設等の有無):23社(92%)
交通環境:22社(88%)
自然環境:17社(68%)   
立地環境(工場等の有無):15社(60%)
近隣物件の販売状況:14社(56%)
学習環境:11社(44%)
地域性(イメージ):11社(44%)
集客動向(所得水準等):7社(28%)
いわゆる同和地区の有無:0社
外国人の集住状況:0社
◆広告会社(対象43社)
生活環境(施設等の有無):41社(95%)
交通環境:40社(93%)
近隣物件の販売状況:40社(93%)
自然環境:36社(84%)
立地環境(工場等の有無):33社(77%)
学習環境:26社(60%)
集客動向(所得水準等):25社(58%)
地域性(イメージ):16社(37%)
いわゆる同和地区の有無:2社(5%)
外国人の集住状況:2社(5%)
◆不動産会社(対象44社)
周辺マンションの単価等:44社(100%)
自然環境:27社(61%)
周辺マンションの販売動向:43社(98%)
地域の評判・イメージ:10社(23%)
周辺マンションの開発動向:42社(95%)
小中学校の評判:10社(23%)
交通環境:35社(80%)
外国人の集住状況:1社(2%)
小中学校の配置状況:32社(73%)
公営住宅の所在等:1社(2%)
商店・医療施設の配置状況 :31社(70%)
いわゆる同和地区の有無:0社
公共施設の配置状況:27社(61%)
【ヒアリング結果】
◆リサーチ会社
・重要なのは、利便性、地域イメージ、近隣の物件状況。
・調査結果で一番求められるのは価格の提案。重要なのは価格の検証。
・目に見える施設は報告している。わかったことは報告する。あうんの呼吸で行うシステムになっていた。
・調査項目は会社でバラバラ。この業界は勝手に調査し、勝手に評価している。業界で用語集のようなものはない。見よう見まねでやっている。
◆広告会社
・報告で重要なのは、交通、ショッピング、学校、役所、競合物件との価格・面積の差など。
・どういうターゲットにどのように売るかが重要。
・過去の物件の売行き情報、いくらで売れるのかという相場が重要。
・どのぐらいの販売層が見込まれるか、どんな間取りを希望しているかを調べる。
・学校への導線、安全面が重要。坂があれば高齢者には評価は低い。
・周辺住民に購入者が多いか少ないか、購入能力が高いか低いかが重要。
・リサーチ会社には客層を重点的に調べるよう指示することはある。
・マンションは普通の商品のようには動かせないので、立地が重要になる。プラスマイナスをひっくるめて調査・報告している。
・広告で人を集めることが重要であるため、不人気ですよとは報告しない。
・同じ条件なのに価格が安い場合、どうして安いのかは調べない。それが相場だと認識する。相場がなぜそうなのかは問わない。マンションが建っていない地域でも、その理由には関心が ない。逆に潜在的に売れる可能性もある。
◆不動産会社
・近隣マンションの売行き情報、相場、いくらで売れるかが最大の関心事。
・ターゲット、価格、広告戦略が重要
・物件価格はほぼ決めており、広告代理店からのレポートにより価格を微調整している。
【解説】
○リサーチ会社のヒアリング調査からは、「地域性の評価を指示されたわけではないが、同和地区があれば報告しなければならないと思っていた」といった意見に見られるように、報告の必要性から地域特性を重視している傾向が伺える。

□調査の情報源

 建設候補地の検討に当たっては、リサーチ会社等は自ら現地に行き、商業施設や公共施設、駅、自然環境等の立地特性を調査するのが一般的である。公共施設の有無や駅からの距離などは、物理的・定量的に把握でき、客観性の高い情報として報告書に記載される。しかし、地域特性(町の評価、イメージ等)や校区については、主に地元住民や業者等の話に基づき報告される。
このような評価は、一部の者からの聞き取りが中心となり、そこに偏見や先入観が介在すると客観性の乏しい評価となるおそれがある。そして、これらの情報の真偽が検証されることなく業界間を流通していた。また、不動産会社も概ね現地確認を行っている。

【アンケート結果】
−情報はどこから入手するか。−
◆リサーチ会社(対象25社)※重複回答有
一般市民:15社(60%)
観察調査:11社(44%)
不動産業者:9社(36%)
同業者:5社(20%)
【ヒアリング結果】
◆リサーチ会社
・地元の不動産業者に聞くことが多いが、同和地区をストレートに聞くことはない。
・販売センターで聞くなどし、マンション購入者の属性データ(前住地、年齢、家族、年収、持家・賃貸など)を専門に取材活動している人がいる。
・タクシー運転手に聞くというのもあるそうだ。
・不動産業者に地域性を聞くと、丁寧に教えてくれる場合と、あいまいに答える場合と、そんなことは聞いてはいけないとの3つのパターンがある。
◆不動産会社
・広告代理店のレポートではよくわからないこともあるので、現地は必ず見に行く。日当たり、交通量のチェック、雨の日や夜間の状況も確認する。
・現地確認は当たり前。実際に歩いて、町の治安や雰囲気をよく見る。現地の主婦にモニターになってもらい情報を収集したり、不動産屋にも賃料の相場を聴くことがある。
【解説】
○リサーチ会社のアンケートから、一般市民や不動産業者など、町の地域事情に精通している者から情報収集していることがわかった。また、ヒアリングからも、「土地情報は、ヒアリング調査結果を報告しているだけであり、検証は誰もしていない」、「情報は事業主、不動産屋、販売現場などで聞取りしている」という意見があり、検証なく地域情報を流通させていたことがわかる。
○地域特性、つまり町の評価・イメージといった評価・分析については、たまたま聞き取った住民の意識や感覚、実地調査の場合は行く場所などによって、そのイメージが左右されるなど個人の主観的な判断に委ねられ、必ずしも適正な評価とは言えない。

□社内における組織的チェック体制

ヒアリング調査から、各業界を通じて問題表現をチェックする組織的な体制が不備であることがわかった。報告書を作成する際に上司に上げることなくクライアントに報告している場合や、報告書を受け取っても全体を通じて十分に内容を確認していない場合や、報告書が担当者レベルで止まっており、上司が気付いていないような場合が多いことがわかった。

【ヒアリング結果】
◆リサーチ会社
・不動産会社や広告代理店はレポートの前のほう(地域特性)はほとんど見ていない。
・ヒアリング調査結果を報告しているだけであり、検証は誰もしていない。
・広告代理店はリサーチ会社が作成したレポートをチェックせず、スルーしていたと発言しているが、それは真実を言っていない。代理店にも責任がある。
◆広告会社
・不動産関係は手馴れていないので、そのまま報告書を上げていた。
・リサーチ会社に丸投げで、全くのスルー状態であり、全然気付かなかった。
・レポートの最初のページ(地域特性)はほとんど見ない。
・同和問題は勉強不足で、関心をもって報告書を見たことがない。
・レポートは表に出ないものと思い込んでいたので、こんな表現があったのではないか。
◆不動産会社
・広告代理店には不適切な表現を指摘してきたつもりだが、今回は気付かなかった。
・ほとんどのレポートは担当者で止まっていた。
・広告代理店からの報告書はあまり重要でないため、きちんと見ていなかった、セカンドオピニオンとして取り扱っていた。

□報告書の保管状況等

 リサーチ会社については、データの保存について一部の者以外は閲覧禁止とし、厳重に保存している割合が約7割を占めた。これはクライアントとの守秘義務の関係で、情報管理は厳しくしているものと考えられる。広告会社は「厳重に保存」と「データの社内共有」がともに5割前後と拮抗している。
   
【アンケート結果】※重複回答有
−入手した情報はどのように保管しているか。−
◆リサーチ会社(対象25社)
情報は厳重に保管し、一部の者以外閲覧禁止にしている:15社(60%)
情報は社内で共有している:7社(28%)
容易に外部への持ち出しもできる:1社(4%)
わからない:0社
その他:5社(20%)
→個人のため他社の閲覧は不可能、頒布のための報告書は外部持ち出しは可能など
◆広告会社(対象43社)
情報は厳重に保管し、一部の者以外閲覧禁止にしている:23社(53%)
情報は社内で共有している:20社(47%)
容易に外部への持ち出しもできる:1社(2%)
わからない:0社
その他:11社(26%)
→業務終了後、保存の必要がないと判断した場合は、機密情報扱いにて厳重に破棄、1年程度保管後、シュレッダーまたは溶解により廃棄している、Pマークと守秘義務契約に基づき、限定サーバで保管など

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ

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