第35回 大阪府人権施策推進審議会

更新日:2023年2月2日

第35回大阪府人権施策推進審議会

【日 時】平成31年3月22日(金曜日)10時から12時
【場 所】プリムローズ大阪 鳳凰西
【出席者】有村委員、大谷委員、児島委員、善野委員、
       中井委員、福岡委員、森田委員

【配布資料】
資料1 前回の審議会における委員の主な意見 [PDFファイル/177KB]
資料2 府民及び事業者の責務(論点整理) [Wordファイル/25KB]
資料3 ヘイトスピーチの解消に向けた規定(論点整理) [Wordファイル/32KB]
資料4 性的マイノリティに関する当事者及び有識者の主な意見 [Wordファイル/26KB]
資料5 大阪府人権教育推進計画(平成27年3月改定)の点検結果 [Wordファイル/90KB]
資料6 行政文書における性別記載の点検・見直し結果 [Wordファイル/32KB]
参考資料1 住民・事業者の責務規定に関する法律・条例等について [Wordファイル/39KB]
参考資料2 ヘイトスピーチの解消に向けた取組に関する法律・条例にかかる規定の比較 [PDFファイル/96KB]

【議事概要】
○開会
  
○議題

(1)大阪府人権尊重の社会づくり条例における府民及び事業者の責務について
【質疑応答】

〇会長
 諮問事項の一番目「大阪府人権尊重の社会づくり条例における府民及び事業者の責務について」の論点整理を事務局がまとめた。責務規定を追加することについての方向性を確認した上で、次にその内容について議論したい。どのような可能性があるかを事務局から説明を。

〇事務局
 参考資料1に記載している、国の「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の「基本理念」をご覧いただきたい。「地方公共団体(大阪府)が行う人権教育及び人権啓発は、」「人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得できるよう」と規定されており、人権尊重の理念の理解を深めることは、府民、事業者にとって必要なことなのではないかと思っている。そのため、大阪府が行う施策について協力をいただきたいと考えている。
 第6条に規定されている「国民の責務」には、「精神の涵養」と「人権が尊重される社会の実現に寄与」と規定されているが、この精神の涵養というのは、基本理念の人権尊重の理念の理解ということ。下の枠囲みは大阪府人権尊重の社会づくり条例の目的を記載しているが、人権施策を実施し、もって全ての人の人権が尊重される豊かな社会の実現を図るとしている。国は「人権が尊重される社会の実現に寄与」と書いているが、我々はまずその実現には人権施策に協力をしていただくことが必要と考えている。
 具体的なイメージとしては、東京都の条例が近いが、栃木県も似たような形で規定されている。また、国の法律の方向性が示されているので、それを踏まえ、より具体的に示していければと考えている。

〇委員
 府民と事業者の(責務を)二つに分ける予定か。

〇事務局
 事業者については、特有の事業活動というのが府民とは異なる。2つに分けるとすると、先ほどの参考資料1にも記載している東京都や大分県のように、都民と事業者、県民と事業者と分けた形がいいと考えている。

〇委員
 「努めるものとする」努力義務と、「協力」という文言等の違いはどういうふうに考えればよいか。

〇事務局
 「努めなければならない」、「努めるものとする」という表現は、担当課に確認したところ、努力義務として同じような効力を持っていると聞いている。基本的にニアリーイコールと考えていただければよい。
 補足すると、「協力するよう努めるものとする」とするのと「協力するよう努めなければならない」はニアリーであるが、「協力するものとする」となると義務規定に近いと思われるので、「協力するよう努めるものとする」という表現でいかがか。

〇会長
 東京都条例第2条第4項にあるように、「協力するよう努めるものとする」というふうな表現で責務規定を考えたらどうかということか。

〇委員
 附帯決議の中に「自主性を損なわないようにすることに格段の努力をすべき」とあるが、特に今のこの文言とは関係はないのか。
 事業者及び府民と連携するにあたっては、自主性を損なわないようにすることに限られるとすると、自主性に特段の力点が置かれているということか、それとも関係がないのか。

〇事務局
 大阪府はしっかり啓発を行うが、それに協力を「しなければならない」という強い義務規定ではなく、「協力を求める」という努力規定の表現で、附帯決議に応えていきたい。
 この規定を置くことで、協力を求めたい、聞く耳を持っていただきたいということをしっかり求めていくが、最後の判断は府民に付託することで、自主性を損なわないと考えている。

〇会長
 論点は二つある、第一の論点の責務規定を追加することについては、「協力するよう努めるものとする」として、自主性を損なわないというところは継続して尊重していく、という形で答申に盛り込むということでよろしいか。
 第二の論点の、責務規定の内容についても、今議論していただいている形で答申にまとめていく、という方向性でよろしいか。

〇委員
 今の(表現)方法でいい。
 栃木県の人権尊重の社会づくり条例では、「県民は、相互に人権を尊重しなければならない。」という前置きがあって、第2項に(事務局が)考えているような文言がある。あくまでも人権を尊重し、人権施策を実施し、人権が尊重される社会を作っていくのは行政の責任であるので、こういう前段の書き方は、しない方がいいと思う。
 今議論しているような「協力するよう努めるものとする」といったような、国が設けているような強制(的な表現)とは違う、府民、事業者のあり方で考えた方がよい。

〇会長
 府民、事業者の責務はきちっと切り分けて答申の方にも盛り込んでいく。

 (2)ヘイトスピーチの解消に向けた規定について
【質疑応答】

〇会長
 資料3と参考資料2について、まずご質問は。

〇委員
 (資料3の)下の論点になるが、具体的な定義やその法に準拠した内容をイメージしているというのは、この差別的言動の定義規定だと思う。
 ヘイトスピーチはレイシズムであるが、レイシズムが人間の尊厳に対する攻撃という内容が、大阪市の方がより明確に打ち出されているように感じる。

〇事務局
 イメージ、内容としては、括弧で囲っている法に準拠した内容を示しており、大阪市の内容と、そんなに齟齬がないイメージを持っている。国の法律の方が具体的にわかりやすいかなというのが事務局の考え方である。

〇会長
 ヘイトスピーチはレイシズムだということが、大阪市は入っているけれども、国にはきっちりと入っていないのではないか、という指摘。大阪市と同じ対象ということで正しいか。

〇事務局
 参考資料2の差別的言動の定義というところの国の部分で、「本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者」と表現しているが、レイシズムを明確に打ち出すには、大阪市が採用している表現の「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は集団」がよい。そのため、国の「本邦外出身者」というところを「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は集団」にと規定したいというのが、事務局の考え。

〇会長
 委員の考えに事務局の提案はかなり近いように思うが。

〇委員
 大阪市は「社会から排除、権利又は自由の制限、憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおることを目的として行われる表現活動」というのが入っているので、異なるのではないか。

〇事務局
 委員の指摘を受け、議論させていただく。

〇委員
 スピーチという表現について。ヘイトクライムの未然防止ということであれば、より大阪市の表現の方が近い考えなのかなと思う。暴力をあおることを目的として行われる表現活動という表現も一つの例かと考えている。
 国際的な視点からヘイトクライムも見据えたヘイトスピーチの解消ということをしっかりと府は考えていくんだ、ということが言える表現が望ましい。

〇委員
 定義に関しては、大阪市の条例が、ヘイトクライム、ヘイトスピーチの解消に向けた取組を推進する方向で定義されていると思うので、大阪市の条例でいくのがいい。
 国がいう本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動の要件はいろいろあるが、この定義だと政治団体が政治活動を標榜して選挙活動、政治活動ができるようになっているという、抜け道はいくらでもある。本当の趣旨を理解されるようにしようと思ったら大阪市の定義でいく方が適切ではないか。

〇委員
 一つ目の論点、ヘイトスピーチの禁止規定を設けることについては反対。その趣旨・理由の1つが、なぜヘイトスピーチだけを取り上げるのかということ。
 なぜこれを取り上げるのか、仮に取り上げるのであれば、それなりの府としての覚悟、特別にここにはあるのだというものでないと意味がない。大阪市などでは、審査会を設けて云々というのがあったりするが、判断が難しいからこそ、審査会を設けている。
 今書いているのを見ると、判断が難しいから作れないと(いうふうに見受けられる)。そうであれば、(ヘイトスピーチの条例を定めること自体を)やめればと思う。
 ヘイトスピーチは、近年現れてきた人権のテーマの一つだが、いろんなところから声があるからとりあえず入れた、としか読めないので、定義の云々まで頭はいかない。

〇事務局
 2025年の万博の開催も決まり、より一層外国の方がたくさん来られるということも念頭におきながら、ヘイトスピーチは許さないということを府として決意を示していくべきと考えている。
 府の覚悟というところだが、今の事務局の考え方としては、審査会は設けない方向を考えているが、委員の方々の意見をお聞きしたい。

〇委員
 禁止規定を設け、いわゆる審査会の規定も設けることは、予防措置にも備える役割もある。
 禁止規定があるのであれば、罰則規定というか、審議会で審議する場を設定するというのが一番綺麗かと思っているし、差別解消法の中で実績があがってきて、こういうのが差別にあたる、こういうことはしてはいけない、ということがより一層明確になって抑止力として働く。
 いわゆる理念として、してはいけないのは差別全てである。その方向をめざしていくのが現況かなと思う。
 困難は非常に高まると思うが、今までの府の人権に関する成果、差別に取り組む姿勢をどう引き継いでいくのかというところもあわせて考え、やっぱりこういうことを大事にし、抑止力を高めるためにも、いわゆる審議会みたいな形で示すのがきれいかなと思う。

〇会長
まず、不当な差別的言動のイメージについては、何名かの委員から、大阪市のような、よりレイシズムに対応できる形の規定でいいのではないかと、いう話があったが、他の委員の皆様いかがか。そこについては、だいたい皆さん合意されているという、異論はないということでよろしいか。

〇委員
 大阪市の条例の定義の土台は、人種差別撤廃条約である。人種差別撤廃条約は、処罰法を作ることを国に義務づけ、ヘイトクライムも禁止することを国家の義務としているので、日本は留保してそこから離脱しているが、義務づけという流れの中で特定的な厳しいレイシズムに対応する規定を設けている。ここまで取り上げた前提には大阪の鶴橋で起こっていた、とんでもない緊張があったということもある。狭い定義でレイシズムだけに対応したものにして行くのか、あるいは大阪府として、もう少し宗教とか言語とか、様々な属性の人たちに対すると言ったものがここに入るのか。人種と民族にかかると入らないとなってしまうということもあるので。少し広く特定の属性の人に対して攻撃をする、そういう社会的な排除を煽っていくことに対しては、本当に(外国人を)お迎えする府としての姿勢が問われるところであるので、定義して条例に盛り込むのはいいと思うが、特定の鋭意な表現になっている大阪市の条例の定義を大阪府がこのまま使えるか、少し検討が必要と思っている。

〇委員
 なぜこのヘイトスピーチをやるのというところで、事務局から、立法事実、きっかけについての外国人が増えるからという話があった。人権というのは普遍的なものなので、条例で流行があったり、なかったりはないと思う。あえてこの条例で規定を設けるというきっかけというのは、インバウンド、万博を頑張っていくということであれば、このヘイトスピーチに特化する必要全然ない。一時的に来られる外国人に対してどのように目を向けていくのか。保険の問題だろうとか。立法事実たる外国人のインバウンドとか、今はそれだけではない。条例なので法律、憲法が上にあって、ぶら下がっているものなので、政策的な見地も多々入ってくるものだろう。ヘイトスピーチだけではなく、想像力を巡らして広め広めに外国人をしっかり受け入れていくというものなのではないか。もしその立法事実で行くということとなれば、ヘイトスピーチが出てきているからとりあえず載っているというふうにしか見えない。大阪府の覚悟として外国人をしっかりと受け入れていくというのであれば、全然、アプローチももっと違うところから始まっていくのではないか。

〇会長
 かなり本質的なことをおっしゃっていただいた。この審議会のミッション、使命は、諮問にこたえることだが、その議論が、ヘイトスピーチだけが項目出しされているところが確かにあるわけである。もっと総合的な外国人の受入れについては大阪府の方で議論されているはずなので、それは期待することにして、ここではヘイトスピーチについてお話をしていただければありがたい。
 不当な差別的言動のイメージは、国の規定の仕方と大阪市の規定の仕方と両方大事だというお話だったと思う。そこを合わせるような形で答申を、ひとまず考えていくというふうにしたらどうかと思うが、いかがか。ありがとうございます。論点の2番目の定義に戻るが、不当な差別的言動の対象として、法律に準拠し本邦外出身者に対する言動とするか、大阪市のように人種又は民族を理由とする言動とするかということについては、これまでの議論だとどちらかというよりも、両方を包み込むようなものになるかな、ということである。そのような形でよろしいか。ありがとうございます。
 次に1番目の論点で、ヘイトスピーチは許さないという大阪府の考え方を府民に明確に示す、ということ自体は皆さん同意いただいているが、禁止規定をその実現のために設けるのか、あるいは罰則規定は設けずに禁止を宣言するということで、効果を狙っていくのか。これについては府の覚悟をきちっと示すにはやはり罰則規定も必要ではないのではないか、という意見もあるが、これについてはいかがか。

〇委員
 これだけ入れるのなら反対だと言ったものの、皆さんの思いを組み込んで入れてもらっても構いませんよというのを含んでいるのだが、それに当たってはなぜヘイトスピーチを入れるのかという趣旨をとらえてほしい。本邦外なのか、人種・民族なのか、この定義のところにも絡んでくるのだが、なぜこれを入れなければならないのか、法律があるから、大阪市がやったからではない。それだけでは駄目で、府としてなぜこれを入れるのかというところは、万博があるからインバウンドだからというわけでもないと思うが、その根っこが何から始まっている話なのかというところはしっかり捉えていただいて、例えば外国人をしっかり受け入れていくのだという中でのヘイトスピーチだとしたら、それは人権の皆さんだけでなく、全庁的にでも外国人を受け入れるためにいろんなものをこんなに充実していくという中の一つとして、ヘイトスピーチ許さないというのを入れましたというそういう位置づけである。もしそれを根っこに据えるとなったら、なぜというところを本当によく議論してもらって、きっかけは何なのか。法律があったからなのか、事件があったからなのか、これからこういうことをしていきたいからなのか、しっかりそこは詰めて皆さんで共有していただいて、それが各々繋がっていくというふうに思うので、頑張っていただきたい。

〇会長
 条例の建付けは、大阪府にお任せしたが、今の意見は重要な意見なので、これを前提に建付けを考えていただきたい。ヘイトスピーチだけになることについての違和感については、大阪府の基本的スタンスと同時に、答申の中でそのような文言を取り込みつつ、進めていきたい。委員の皆さん、よろしいか。
聞かれたことについての答え方の一つに、今基本的な大阪府のスタンスを信じつつ、建付けを考えてくださいという要望はできると思っているので、そういう形で、いかがか。答申の文言は次々回で提案させていただく予定であるが、委員の意見を組み込んでいくという形で作成していくことができたらと思う。
 結局、論点の最初の点、禁止規定を前提に設けること、あるいは罰則は設けずに宣言だけにとどめるかということについてだが、このあたりのスタンスはいかがか。

〇委員
 罰則規定について、私も賛成である。罰則規定が設けてあった方がやはり実効性がアップすることができると考える。少ししつこいが、その前提は、やはり万博もいいが、そこに理由、根拠を持っていくといかにも後付けという感じになるので。やはり今どうして国際的にヘイトスピーチというのがなぜ問題なのか、さっき委員がおっしゃったみたいな、鶴橋でのいろんな事件があったという、そういうのを十分踏まえた上で、だから今これが非常に先鋭に問題化されなければいけない状況になっているのだということをきちっと出していただければいいのかなと思う。
 万博に結びつけるようなことは、かえって焦点がぼやけてしまう。そうであれば、委員がおっしゃるように、もっといろんなことを考えなければいけないということになる。やはりヘイトクライムの今日的な問題ということを全面に出してエビデンスにしていただければ良いのではないか。

〇委員
 大阪市と東京都は審査会を設置しているが、具体的な実績、内容で公表されている情報はあるのか。

〇事務局
 大阪市の条例は、平成28年7月に完全施行だが、それ以降の審査会の動きとしては、昨年の12月3日時点で申し出等のあった審査案件が40件。そのうちの1件は取り下げがあったため、実質39件審査している。現在のところ、結論が出たのが11件、そのうち6件がヘイトスピーチに該当するという認定をし、投稿者名や事案の内容を公表し、削除の要請をして全て削除されている。残りのうち、条例で定める要件を満たしておらず、ヘイトスピーチに当たるかどうかの判断をしないとしたのが5件。残り28件を継続審査中。難しい判断に時間を要するということで、2年以上、審査中という案件もある。月1回のペースで審査会開催とされているようだが、判断をまとめるのに時間かかっている。

〇委員
 個々人間に関わっているものも上がっているのか。街宣車に乗り付けてくるのもあるだろうし、その地域で出ていけという場合もあると思うのだが、そうなるとその個人間の訴えが上がってきて、民生委員とか自治会とかから上がってくると思う。

〇事務局
 個々人間かどうかの確認はないが、ネット上の表現、投稿の内容やデモとか街宣の様子が動画でアップされている。6件が該当すると結果が出ているが、全てネット上の投稿とか街宣の動画とかということで、その中で具体の個々人を上げて差別言動かどうなのかまではわかりかねる。

〇会長
 必要であれば調べてもらうということで。

〇委員
 そういう紛争を解決するシステムを。障害者差別解消法はコーディネーターがあってそれに自治体とかあるいはその事業主に対して、解消するという仕組みを持っている。大阪市の場合は、聴聞など解消の仕組みというのを、もしよければ教えていただければ。

〇会長
 大阪市もおそらく公表された資料ということになるかもしれない。
 わかる範囲で教えていただければ。

〇委員
 知っている範囲でお伝えすると、今ある案件がほとんど全てインターネット上でこれはヘイトスピーチに当たるという結論であるが、出した人はハンドルネームでやっている。そうすると電気通信事業法などの壁があり、それを誰がやったかというと今の法制上は特定できない。そうである前提で、なお審査会を作ってこれを公表することの意味があるのかというところは、実際を少し調べ、前提を知ったうえで議論する必要があると思う。

〇会長
 かなり非常に難しいプロセスがある。だからこそ根深いということなのだと思う。
 ひとまずは府民に対しては(ヘイトスピーチは)許さないという明確にメッセージを出していくことについては我々、合意しているところだと思う。それを更に踏み込んでいくのか。そのために今のようなテクニカルな問題は多分解決できるだろうという見通しが必要になってくると思うが…。

〇委員
 ヘイトスピーチ条例の実効性というのはしっかり持っておくべき。ただ罰則となると、罪刑法定主義というのもあるので、何が刑罰の対象になるかというのは、非常にはっきりしておかなければいけないということが基本にあるので、この条例からすると罰則というのは少しいかないほうがいいのかなと考えている。
 ただし、実効性を持たない、理念だけのペラペラな条例を作っても仕方がないので、やはり苦情処理の制度について、何らかの形で苦情処理、審査会の担い手については、検討しなければいけない。例えば、「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」というのが東京の世田谷区で去年の4月1日から施行され、国立市の条例でも差別の解消に向けた条例を打ち出した。条例の中で苦情処理ができるようなシステムを組み込んでいる自治体もあるので、そこの条例も参考にできればいいのではないか。
 めざすところは差別の解消であり、ヘイトスピーチというのは確かにその中の差別を解消すべきもののたくさんの課題の中で一番の喫緊の課題であるので、できるだけ早期に苦情処理ができるようなシステムを備えていかなければならない。インターネットでハンドルネームでする場合はどなたがされたのかがわからないので怖い。しかし、政治活動の一環として堂々とビラをまくようなことに関しては一定、団体に対して行政がヘイトスピーチにあたるんですよと、それをやめるべきだと要請なり指導なり行政指導ができた方がいいと思う。

〇会長
 資料3の罰則規定の論点の2番目についての意見。事前に特定することが非常に難しいということと、事後的に特定しても誰がやったのかという、なかなか認定ができないというところがあって、罰則規定を設けても、実効性のある形にならないかもしれないという恐れがあるのではないかという話。しかし、抑止をしなければならない、ヘイトスピーチは許さないということをしっかりと明確に示しつつ、一種のコンフリクトの処理をどのようにしていったらいいかを、対処しますということを合わせて考えていくといいのではないかという意見。

〇委員
 資料3の(制定目的の)論点2のところで、1、禁止規定を設けるのか、2、設けないのかという、二択ではなく、現時点では、設ける・設けないがすべてではなくて、設けないけれども実態把握をする、そして行政指導をする。そのシステムとその後の運用なども踏まえたことが、抑止効果につながる見通しがあるという一定の枠組みを作った上で、現段階では「条件付きで設けない」という考えになるのかもしれない。そのあたりが今の議論の中で、0か1かではないというところ。私も委員のお話を聞くまではいろいろな葛藤があったが、現状のところで、逆に言えば、罰則規定を設けたからこそ、明らかになったこと、件数であるとか、そのことに対応する困難な実情が見えているのかなと思うので、そのあたりも踏まえて、他の自治体の先行事例から学ぶということを、府は後追いのこの規定をつくるのであればしっかりと踏み込んだものが表現されるべきではないかと考える。

〇会長
 1の禁止規定というのと、2の罰則規定というのは違うものなのか。禁止規定とは具体的にはどういうものだと考えているのか。「禁止しますよ」という宣言を含めたもので罰則はないということか。

〇事務局
 たとえば、不当な差別的言動の禁止を考えている。

〇会長
 罰則はあるかないかは問わないということか。

〇事務局
 その方向で考えていたが、本日いろいろな意見をいただいたのでまた検討してまいりたい。

〇会長
 0か1かではなく、条件付きで行っていくということも選択肢ではないかと。皆さんの意見を伺って議論が深まってきたかと思う。もちろん現実的な対応ができなければならないし、しかし、はっきりした態度でメッセージを出していかなければならないという中での皆さんのご意見かと思う。

〇委員
 資料3の文言でいくと「事前に罰則の対象となる言動を具体的に特定することが必要」であるが「困難」ということの意味がよくわからない。ウェブ上に転がっているからなかなか特定困難ということとはまた違う話ではないか。何を言わんとしているのか。

〇会長
 先ほどの委員の罪刑法定主義の話かと思うが、事務局いかがか。

〇事務局
 「人種を理由とした不当な差別的言動をしてはならない」という禁止規定を仮に設けるとすると、このような規定は国の法律にも東京都や大阪市の条例にもない。仮にそのような「してはならない」という規定を設けた場合に、罰則をつけるかつけないか。罰則をつけるとしても不当な差別的言動とはなにかというのは事前には決められないし、それを決めれば、それ以外は何を言ってもよいというようなことになるのではないかと思う。具体的な行為であれば、わりと具体化できるかもしれないが、言動であれば難しいのではないかというようなことで、罰則規定を設けるのはちょっと難しいのかな、というのがここに書いた内容。

〇委員
 仮に特定できないから罰則はやめておくということであれば、さらに遡って、そもそも上に来る禁止規定で「ヘイトスピーチは許さない」としていても「ヘイトスピーチがなにかは特定できない」ということになっており、ちぐはぐな感じがする。どちらにしても特定はいる話ではないかと思うし、全然特定ができないということであれば、禁止規定、努力規定という話よりも、人種や民族を尊重しましょうというぐらいのやわらかいものにしておいたらいいのではないか。

〇委員
 今言われたことは「罰則規定について」というところの一つ目の「・」の文言に関してであるが、これは「罰則」を「禁止」に置き換えてもまったく同じではないか。禁止規定を設けるのであれば、事前に禁止の対象となる言動を具体的に特定しておかなければ禁止できないのではないか。そこまで踏み込んで禁止するのであれば、結局具体的な特定というのが必要ではないかという話。私も同じ意見である。

〇会長
 ヘイトスピーチはこういうものだと定義して、これは禁止というふうにはなかなか言いにくいということか。具体的に言わないとなかなか言ったことにならない?

〇委員
 禁止規定を設けるのであれば、「何を」禁止しているのかをはっきりと示さなければ、何をやってはいけないかというのが結局曖昧なまま。委員が言われた通りだと思う。

〇委員
 最近の法律のつくり方というのは、良いのか悪いのか、社会が動き出したなかでつくってきていると思う。
 (障害者)差別解消法を見ていると、これが差別なんだ、あるいは、合理的配慮なんだということは、先ほど委員がおっしゃったように、苦情をあげることによってより具体化していくという。実態を先にこうだと決める方法もあるかもしれないが、実態を把握する苦情受付のような窓口を設けて、罰則規定というのはきついかもしれないが、判例を積み重ねていき、例示していくというあり方もひとつかと思う。

〇会長
 実際の事実を積み上げていって、その中でようやくこういうことだという法則みたいなものが見えてくるということ。

〇委員
 冒頭で委員が「なぜヘイトスピーチだけなのか」とおっしゃったことについては、前回も話が出ており、包括的差別禁止規定についての意見ということで挙げさせていただいた。ただ、この審議会のミッションはそうではないと、改めて会長からも冒頭にあったため、このことに焦点化して諮問していこうという会になるかと思う。
 もう一つ、前回この条例を検討していくなかで、課題がいままであったのか、それとも未来志向で諮問しているのかという点が資料1にあって、事務局からは未来志向の諮問と説明があったので、もう少し広い視点での議論をしていこうという形で広がりそうにもなったが、ただ、それではなかなか諮問の方向にはいかないなという、常に葛藤がある。
 未来志向型で諮問をということであれば、このことを規定したからこのことに対してだけというわけではない。学校現場でいうと、先生がこれをやってはだめと言ったからといってそれをやった者だけが怒られるというわけではなく、そこに関わるこんなことも許されるべきではないということ。府民や事業者が主体的にというところにも、未来志向としての府民の意識というものをしっかりと府民に明確に大阪府が示すこと。資料3の制定の目的に書かれているということでいうと、目的を達成する意味でも、必ずしも禁止規定があるから、罰則規定の罰則はこれであるということを明示しなければ罰則規定にならないんだとか、そもそも禁止規定を設けることができないんだというところに戻るというのは、これまでの審議の流れを振り返って少し思うところ。意見の一つです。

〇会長
 多様な意見が出てきて、ここでまとめるのは難しいかなと思うので一旦私の方で預からせていただきたいと思う。いただいた議論をもとに、次回もう一度論点整理と、それから答申に向けての議論ができるような形の準備をしたいと思う。

(3)性的マイノリティに関する当事者及び有識者の主な意見について
【質疑応答】

〇会長
 この間、事務局には意見の聴取をしていただいた。(意見を伺うに、)共通しているのは、どなたもこの問題は非常に深刻だといわれていることと、我々自身もこの問題に対する理解が必要だということだと思う。
 条例での規定の仕方については、様々な幅の広い意見だったと思う。なにか基本的なことでご質問等いかがか。この件についてはまた次回突っ込んで議論したい。

〇委員
 意見C-9について、「両義的な意味」ということは、条例を設置することによって、保護が得られるので条例設置が良い面と、対象を規定するのが難しいという面があることか。

〇事務局
 「両義的な意味」のご趣旨は、性的マイノリティの当事者の方々が日々日常的に抱えておられる課題困難を解決するべく、条例で規定をし、当事者に対する保護を提供するということになるのだが、その意味ではプラスの面が作用するのではないかというご意見と共に、一方で、何が規制の対象になる行為なのかということで、その対象をめぐってマイノリティとマジョリティで摩擦をおこしたり、あるいは、表現の自由に対する懸念も出てくるのではないかという意味で「両義的な意味」を持つという意見を頂戴している。

〇委員
 「表現の自由」というのはもう少し具体的にはどういう点なのか。

〇事務局
 表現の自由に対する懸念については、対象の定義というのが曖昧ということになると、広い範囲の行動や発言の根拠が不明瞭なまま規制される可能性があるという問題。また、行動や発言を規制する際のプロセスの影響が大きくなると伺っているところ。

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 企画グループ

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