人権問題に関する府民意識調査検討会委員
神戸学院大学文学部教授 神原文子
同和地区に対するイメージについては、既に「4 同和地区に対する差別意識の形成要因」において因子分析を行ってきました。ここでは、因子分析によって除外された項目も加えて、人権意識、差別意識との関連を「単相関分析」によって検討することにします。
表5において、列には同和地区に対するイメージ項目、行には人権意識尺度を並べています。相関係数の太字部分は5%水準で有意であることを示しています。マイナスは逆相関を表します。すなわち、2変数間の関連が、一方が数値の高い方向に変化すると、他方は数値の低い方向に変化するというように、変化の方向が逆向きであることを意味します。
なお、「所得の低い人が多く住んでいる」、「親切で、人情味にあふれた人が多く住んでいる」、「地域社会の中での連帯意識を持った人が多い」、「人権問題について意識の高い人が多い」については、「そう思う」1点、「どちらかといえばそう思う」2点、「どちらともいえない」3点、「どちらかといえばそう思わない」4点、「そう思わない」5点の5件法です。そのため、これらの項目と種々の人権意識尺度との関連において、逆相関で有意差が認められる場合には、これらの項目に「そう思う」や「どちらかといえばそう思う」と回答をした人ほど人権意識が高いと解釈することができます。
表5 同和地区に対するイメージと人権意識
反集団優遇イメージ | 人権交流イメージ | 問14(1)所得の低い人が多く住んでいる | 問14(2)親切で、人情味にあふれた人が多く住んでいる | 問14(4)地域社会の中での連帯意識を持った人が多い | 問14(5)人権問題について意識の高い人が多い | ||
排除問題意識 | 相関係数 | 0.120 | 0.072 | -0.094 | -0.052 | 0.105 | 0.032 |
有意確率 (両側) | 0.001 | 0.054 | 0.015 | 0.177 | 0.007 | 0.413 | |
N | 703 | 711 | 664 | 664 | 664 | 664 | |
体罰問題意識 | 相関係数 | 0.219 | 0.002 | 0.061 | 0.005 | -0.004 | -0.034 |
有意確率 (両側) | 0.000 | 0.957 | 0.113 | 0.901 | 0.911 | 0.378 | |
N | 713 | 721 | 677 | 677 | 677 | 677 | |
人権推進支持意識 | 相関係数 | 0.125 | 0.163 | 0.030 | -0.106 | 0.051 | 0.048 |
有意確率 (両側) | 0.001 | 0.000 | 0.447 | 0.007 | 0.189 | 0.218 | |
N | 696 | 702 | 652 | 652 | 652 | 652 | |
被差別責任否定意識 | 相関係数 | 0.290 | 0.098 | 0.058 | -0.140 | 0.054 | -0.091 |
有意確率 (両側) | 0.000 | 0.010 | 0.141 | 0.000 | 0.166 | 0.021 | |
N | 694 | 700 | 649 | 649 | 649 | 649 | |
差別容認否定意識 | 相関係数 | 0.166 | 0.091 | 0.052 | -0.146 | 0.014 | -0.039 |
有意確率 (両側) | 0.000 | 0.016 | 0.188 | 0.000 | 0.726 | 0.319 | |
N | 696 | 701 | 654 | 654 | 654 | 654 | |
結婚排除否定意識 | 相関係数 | 0.160 | 0.003 | 0.026 | -0.113 | -0.088 | -0.007 |
有意確率 (両側) | 0.000 | 0.942 | 0.511 | 0.004 | 0.025 | 0.864 | |
N | 692 | 699 | 651 | 651 | 651 | 651 | |
反忌避意識 | 相関係数 | 0.251 | 0.056 | -0.042 | -0.043 | -0.014 | -0.050 |
有意確率 (両側) | 0.000 | 0.146 | 0.291 | 0.274 | 0.724 | 0.205 | |
N | 683 | 688 | 646 | 646 | 646 | 646 |
「反集団優遇イメージ」とすべての人権意識尺度との間にプラスの相関がみられます。すなわち、人権意識の高い人は同和地区が優遇されているといったイメージを持っていない傾向が高いということです。
「人権交流イメージ」と「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」とは高い関連がみられますが、「排除問題意識」、「体罰問題意識」、「結婚排除否定意識」、「反忌避意識」とは関連がみられません。すなわち、「同和問題以外の人権問題にも積極的な取組みが進められている」、「同和地区の人々が地域外の人々との交流に力を入れている」というイメージを持っている人が体罰を問題と思っているとは限らないし、結婚相手として排除することを否定する意識が高いわけではないということです。
「所得の低い人が多く住んでいる」と思っている人ほど、「排除問題意識」が高い傾向にあります。
「親切で、人情味にあふれた人が多く住んでいる」と思っている人ほど、総じて人権意識が高い傾向にあります。ただし、「排除問題意識」、「体罰問題意識」、「反忌避意識」とは関連がみられません。
「地域社会の中での連帯意識を持った人が多い」と思っている人ほど「排除問題意識」は低いですが、「結婚排除否定意識」は高い傾向にあります。このことは、ある人権意識度が高いと、他の人権意識度も自ずと高いとはいえないことを示唆しています。
「人権問題について、意識の高い人が多い」というイメージは、「被差別責任否定意識」と関連があることがわかります。
総じて、同和地区に対する肯定的なイメージは、「被差別責任否定意識」と関連が高いことがわかります。
【知見】
○人権意識の高い人ほど、同和地区に対する「反集団優遇イメージ」は高い傾向にある。
○同和地区に対する肯定的なイメージと「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」とは関連が高い。ただし、「体罰問題意識」、「反忌避意識」とは関連がみられない。
このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ
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