人権問題に関する府民意識調査報告書(分析編) 大阪人権意識 2.人権意識、差別意識を測る尺度作り (2)人権観、差別観を測る

更新日:2012年3月28日

人権問題に関する府民意識調査検討会委員
神戸学院大学文学部教授 神原文子

2.人権意識、差別意識を測る尺度作り

(2)人権観、差別観を測る

 問2では、「差別」についての12の考え方について賛否を問うています。すなわち、差別に反対し、人権を尊重する意識が高いかどうかを判断するための質問です。
 そこで、人権観、差別観の尺度を作成するために、因子分析の手法を用いて、人権に関する多元的な意識を区分するとともに、それらの意識の程度を測る尺度を作成することにします。
 これら12項目について因子分析を試みる前に、差別的な意識が強い選択肢ほど値の小さいコードを与え、差別意識が弱い選択肢ほど値の大きなコードを与えるように変換しておきます。例えば、「差別は人間として恥ずべき行為の一つだ」という項目は、元来の選択肢のコードを逆にして、「1そう思わない」、「2どちらかといえばそう思わない」、「3わからない」、「4どちらかといえばそう思う」、「5そう思う」となります。

 表2-2-1は、「主因子法」で「バリマックス回転」を行った結果を示しています。

表2-2-1 人権観・差別観に関する因子分析結果

 

差別についての考え方

第1因子

第2因子

第3因子

問2(3)あらゆる差別をなくすために、行政は努力する必要がある*0.602 0.021 0.256
問2(5)差別を受けてきた人に対しては、格差をなくすために行政の支援が必要だ*0.584 0.090 0.083
問2(11)差別問題に無関心な人にも、差別問題についてきちんと理解してもらうことが必要である*0.565 0.132 -0.012
問2(9)差別される人の話をきちんと聴く必要がある*0.498 0.132 0.053
問2(7)差別は法律で禁止する必要がある*0.458 0.027 0.230
問2(12)差別の原因には、差別される人の側に問題があることも多い0.100 0.714 0.187
問2(4)差別されている人は、まず、自分たちが世の中に受け入れられるよう努力することが必要だ-0.035 0.657 0.059
問2(10)差別だという訴えを、いちいち取り上げていたらきりがない0.324 0.461 0.250
問2(6)差別に対して抗議や反対をすることによって、より問題が解決しにくくなることが多い0.134 0.362 0.089
問2(2)差別は世の中に必要なこともある0.118 0.262 0.542
問2(1)差別は、人間として恥ずべき行為の一つだ*0.349 0.045 0.460
問2(8)どのような手段を講じても、差別を完全になくすことは無理だ0.038 0.118 0.445

寄与率

14.6 11.8 7.8

累積寄与率

14.6 26.4 34.2

クロンバックの信頼性係数α

0.650 0.653 0.512

因子解釈

人権推進支持意識

被差別責任否定意識

差別容認
否定意識

因子抽出法: 主因子法
 回転法: Kaiser の正規化を伴うバリマックス法
   
注:「*」を付している項目は、選択肢のコードを逆にし、人権意識が高くなるほど大きな値をとるように変換している。 

  すなわち、「1そう思わない」「2どちらかといえばそう思わない」「3わからない」「4どちらかといえばそう思う」「5そう思う」となる。

 第1因子は、「あらゆる差別をなくすために、行政は努力する必要がある*」、「差別を受けてきた人に対しては、格差をなくすために行政の支援が必要だ*」、「差別問題に無関心な人にも、差別問題についてきちんと理解してもらうことが必要である*」、「差別される人の話をきちんと聴く必要がある*」、「差別は法律で禁止する必要がある*」の5項目が高い因子負荷量を示しており、人権推進を積極的に支持する意識と解釈できることから、「人権推進支持意識」因子と名づけることにします。
 第2因子は、「差別の原因には、差別される人の側に問題があることも多い」、「差別されている人は、まず、自分たちが世の中に受け入れられるよう努力することが必要だ」、「差別だという訴えを、いちいち取り上げていたらきりがない」、「差別に対して抗議や反対をすることによって、より問題が解決しにくくなることが多い」の4項目が高い因子負荷量を示すことから、各項目の意味を逆にして、差別は被差別者に責任があるという意識を積極的に否定する「被差別責任否定意識」因子と名付けます。
 第3因子は、「差別は世の中に必要なこともある」、「差別は、人間として恥ずべき行為の一つだ*」、「どのような手段を講じても、差別を完全になくすことは無理だ」の3項目が高い因子負荷量を示すことから、「差別は、人間として恥ずべき行為の一つだ*」という、積極的に人権を尊重する項目に揃えて「差別容認否定意識」因子と名付けることにします。
 次に、尺度を作成する上での「一次元性」を確認するために、「クロンバックの信頼性係数」を求めたところ、第1因子0.650、第2因子0.653、第3因子0.512と、いずれも十分に高いとはいえない結果になりましたが、今回はこのままで尺度を作成することにします。より精度の高い尺度作りが課題であることを書き留めておきます。
 個々人の「人権推進支持意識度」、「被差別責任否定意識度」、「差別容認否定意識度」は、それぞれに強く反応する項目に対する回答の平均値とします。平均値は、3つの尺度とも1点から5点に分布することになります。回答者全体では、「人権推進支持意識度」平均値3.9、標準偏差0.8、「被差別責任否定意識度」平均値2.8、標準偏差1.0、「差別容認否定意識度」平均値3.4、標準偏差0.9です。

 これらの人権観、差別観について、回答者の基本的属性との関連をみておきます。

表2-2-2 性別と人権観、差別観 

性別

人権推進支持意識度

被差別責任否定意識度

差別容認否定意識度

全体平均値

3.9

2.8

3.4

度数

740

743

743

標準偏差

0.8

1.0

0.9

男性平均値

3.9

2.8

3.4

度数

366

365

363

標準偏差

0.8

1.0

0.9

女性平均値

3.8

2.8

3.3

度数

374

378

380

標準偏差

0.8

1.0

0.9

F検定結果

表2-2-3 年齢と差別意識

年代

人権推進支持意識度

被差別責任否定意識度

差別容認否定意識度

全体平均値

3.9

2.8

3.4

度数

738

741

741

標準偏差

0.8

1.0

0.9

20歳代平均値

3.9

2.9

3.2

度数

53

54

54

標準偏差

0.7

0.8

0.9

30歳代平均値

3.8

3.1

3.3

度数

102

102

101

標準偏差

0.7

0.9

0.9

40歳代平均値

3.8

2.9

3.4

度数

118

119

119

標準偏差

0.8

1.0

0.9

50歳代平均値

3.8

3.0

3.5

度数

126

127

126

標準偏差

0.8

1.0

0.8

60歳代平均値

3.8

2.8

3.4

度数

184

183

182

標準偏差

0.9

1.0

0.9

70歳以上平均値

4.0

2.5

3.4

度数

155

156

159

標準偏差

0.8

0.9

0.9

F検定結果-p=.000***-

表2-2-4 学歴と差別意識

学歴

人権推進支持意識度

被差別責任否定意識度

差別容認否定意識度

全体平均値

3.9

2.8

3.4

度数

731

734

734

標準偏差

0.8

1.0

0.9

中学校平均値

3.9

2.6

3.3

度数

120

124

126

標準偏差

0.9

1.0

0.9

高等学校平均値

3.9

2.8

3.4

度数

328

328

328

標準偏差

0.8

1.0

0.8

短大・高等専門学校平均値

3.8

3.0

3.3

度数

127

127

128

標準偏差

0.7

1.0

0.8

大学、大学院平均値

3.9

3.1

3.5

度数

156

155

152

標準偏差

0.8

1.0

0.9

F検定結果p=.000***

表2-2-5 職業と差別意識

職業

人権推進支持意識度

被差別責任否定意識度

差別容認否定意識度

全体平均値

3.9

2.8

3.4

度数

792

793

796

標準偏差

0.8

1.0

0.9

自営業平均値

3.7

2.7

3.4

度数

110

112

111

標準偏差

0.9

1.0

1.0

公務員、教員平均値

3.7

3.2

3.5

度数

25

25

25

標準偏差

0.8

1.1

0.8

民間企業・団体の経営者・役員平均値

3.6

2.7

3.4

度数

25

25

24

標準偏差

0.8

0.9

0.8

民間企業・団体(従業員25人未満)の勤め人平均値

3.7

3.0

3.6

度数

28

28

28

標準偏差

0.9

0.8

0.8

民間企業・団体(従業員100人未満)の勤め人平均値

4.0

3.0

3.4

度数

40

40

40

標準偏差

0.7

0.9

0.9

民間企業・団体(従業員300人未満)の勤め人平均値

3.9

2.9

3.5

度数

29

29

28

標準偏差

0.7

0.9

1.0

民間企業・団体(従業員300人以上)の勤め人平均値

3.8

3.0

3.4

度数

94

94

94

標準偏差

0.8

1.0

0.9

非正規雇用の勤め人平均値

3.9

2.9

3.4

度数

108

109

110

標準偏差

0.7

0.9

0.8

家事専業・無職平均値

4.0

2.7

3.4

度数

333

331

336

標準偏差

0.8

1.0

0.9

F検定結果 p=.008 **

-

 「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」のいずれも性別とは関連しません。年齢とは「被差別責任否定意識」のみが関連し、中年期において最も高い傾向がみられます。
 学歴との関連では、「被差別責任否定意識」だけ、学歴が高くなるほど高くなる傾向がみられます。「同和問題の解決に向けた実態等調査(府民意識調査)」データを分析した佐藤裕の知見(佐藤2002)や、近年、私が関わった「明石市人権意識調査2010」の分析によって得られた知見と同様の知見が得られたことになります(神原2011)。
 職業との関連では、「人権推進支持意識」と関連がみられるものの、過去にみられなかった結果で、自営と被雇用、あるいは雇用の安定度で差異がみられると判断することも難しく、ここでの解釈は差し控えます。
 これら3種の人権観、差別観の相互の関連についてもみておきます。

表2-2-6 人権観、差別観の相互の関連

  

人権推進
支持意識

 

被差別責任
否定意識

 

差別容認
否定意識

 
人権推進支持Pearsonの相関係数

1

.305

**

.318

**
意識有意確率(両側)

 

.000

.000

815

804

 

805

 
被差別責任Pearsonの相関係数

.305

**

1

.335

**
否定意識有意確率(両側)

.000

.000

804

816

805

差別容認否定Pearsonの相関係数

.318

**

.335

**

1

 
意識有意確率(両側)

.000

.000

 

805

 

805

 

820

 
**.相関係数は1%水準で有意(両側)です。

 表2-2-6から、相互に比較的高い関連にあることがわかります。

【知見】
○「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」のいずれも性別とは関連しないが、年齢との関連では、「被差別責任否定意識」が中年期において最も高い傾向がみられる。
○「被差別責任否定意識」は、学歴が高いほど高い傾向にある。
○「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」相互に比較的高い関連がある。

 

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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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