第15回審議会

更新日:2023年5月11日

第15回大阪府人権施策推進審議会
 
(と    き) 平成14年1月29日火曜日午前10時から11時40分
(と こ ろ)  大阪キャッスルホテル6階 「おしどり」
(出席者) 上田会長、大國会長代理、岡本委員、加地委員、金委員、佐藤委員、内藤委員、西村委員、平沢委員、福田委員
 
(議事概要)
1 開会
・人権室長挨拶
・委員紹介
 
2 議事
・会長及び会長代理の選出について
 会長に上田正昭委員(京都大学名誉教授、元大阪女子大学学長)が選出され、会長代理に大國美智子委員(大阪社会福祉研修センター所長)が指名された。
 
・人権施策の実施状況等について
  事務局より、大阪府の人権施策の実施状況について、大阪府同和対策審議会の答申について、大阪府の「人権擁護に資する施策」について、それぞれ説明を行った。
 
・意見交換
○ 国際人権法とその実践も含めた視点から人権教育を見ると、大学によって人権教育が不十分・不在であることについて、常に不満を持っているが、例えば、府立の大学は、府の「国連10年後期行動計画」に従って、何に取り組んでいるのか。
 また、国際人権規約・自由権規約委員会など人権諸条約の実施機関から指摘されている様々な問題点を、大阪府は人権施策にどのように反映しているのか。本日の配付資料には載っていない。特に、警察など法の直接執行にあたる公務員に対する人権教育、これは国際人権規約・自由権規約委員会から不十分と指摘されているが、そういった国際社会からの声、あるいは国際人権諸条約に照らして、府は人権施策をどのように進めていくのか。
 憲法第98条第2項の“条約を誠実に遵守する必要がある”という規定は、中央政府だけではなく、特に地方自治体が推進しないと、具体的な問題は解消されない。

○ まず、大学における人権教育であるが、大阪府が直接、各大学に対し指導をするのは難しい。ただ、国の動きとしては、文部科学省から、すべての大学において人権教育の充実が指導されていると聞いている。府でも、大阪府立大学等において、人権教育に精力的に取り組んでいるが、具体的な施策として、すべての大学における人権教育の充実を、直接盛り込んでいくのは難しい。
 次に、人権教育の取り組みであるが、すべての施策の根本になるのが人権施策であり、そのために人権教育を進めていく。これは、府民の方・市町村も一緒に、大阪を挙げて行うべきであり、それにより、大阪がより良いまちになる。長い目で見れば、より大事な人づくりの基本となるのが、人権施策の推進であると認識している。

具体的に指摘があった警察に対する人権教育であるが、本日の配付資料にも若干載せているが、これは警察全体のカリキュラムに従って実施している人権教育ということである。私どもとしても、例えば被疑者に対する取り扱い等の警察の対応について、人権を尊重した取り扱いをするべきであり、そのための人権教育を大阪府警察本部としても進めるべきであると、常々申し入れており、昨年初めて、人権問題についての重要性を私ども人権室から講義する機会を得た。また、本年も講義する機会を得ている。これが広がって、警察学校だけではなく、例えば警察本部や各警察署等において、その実情・テーマに応じた人権教育が進められるよう、今後とも働きかけていく。

○ 指摘のあった人権諸条約と自治体とのかかわりであるが、私どもも人権諸条約など国際人権基準を意識しながら、人権行政を進めていかなければならないと認識している。
 具体的には、その運営を支援しているアジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)において人権諸条約の情報を受発信している。例えば、セミナーの開催、啓発冊子の発行により、府民の方・企業の方・市町村に、最新の国際的な人権情報を発信するよう努めている。

○ それらの努力は多とするが、この人権施策を推進する中で、今や人権諸条約あるいは国際人権基準は、一つの柱でなければならない。それは、施策のあらゆる面で、特に公務員教育はそうでなければならない。だから、より積極的に事務局が、人権規約委員会などから指摘されている問題も含めて、十分に学習したうえで、それを伝達していくという努力をし、ヒューライツ大阪任せにしないようにしてほしい。
 なぜなら、人権規約委員会からの指摘は、非常に具体的な問題だからである。日本政府の報告と、人権規約委員会での審査と、審査の結果指摘された問題を含めて勉強することにより、大阪府内・日本国内の人権問題を改めて認識することができるし、また、その上に立った人権施策を進めることが必要である。ぜひ、お願いしておく。


○ 私どもも、そういった認識のもと、人権施策を進めていく。具体的には、職場研修のための教材作成を行っているが、ヒューライツ大阪とも相談して、国際人権等の認識・課題等も組み入れた教材にしていく。

○ 今の指摘とは別の問題で、教育委員会でまとめている人権基礎教育。これにより長期的に取り組まなければ、人権教育だけでは、ほとんど効果はないと思う。つまり、基本的に道徳意識等の基礎ができていない者に対して、いくら人権教育をしても、それは観念だけの世界に終わる。長期的には、幼稚園児・小学生からの人権基礎教育の大きなプログラムをつくることが必要である。これは、今回の説明にも入っていたので、結構であると思う。

○ 今のお話しに非常に共感する。中学校の教科書で、「いじめ」の問題を人権の出発点として教えるべきであるという観点から書いてみたことがあるが、「いじめ」がなぜ人権の根源にある問題なのかということを現場で教えることは、大変難しいという反応があった。
 “人権とは何か”を教えることは、大学の授業でも実は難しい。人権の根拠からはじめて、人権はそもそもなぜ大事なのかということを広く、どういう形で、どういう教材で、どういう教え方をすれば、若い人たちが理解できるか、“人権とはこういう理由で大事である”ということを本当に理解できるようになるのか等を、基本的に考えてみる必要がある。そうしないと、結局それは上滑りになって、観念のレベルにとどまり、なかなか生きたものにはならない。
 また、先ほどの大阪府の「人権擁護に資する施策」の説明の中で、国の答申に調停・仲裁・訴訟援助等を提言しているとあったが、大阪府の場合、人権救済・保護システムの充実というときに、具体的内容として、どういうことを考えているのか。

○ 府の人権救済・保護システムの充実であるが、現在国において、人権委員会制度の法案化の作業中であり、その機能が明確になるのと併せて、検討していく。現在のところは、自治体における相談窓口、すなわち人権侵害を受けたと悩む方が相談に来る窓口を整備していく。今後、人権委員会の地方事務局の機能と併せて、自治体としてもさらに検討を深める要素があると認識している。

○ 人権基礎教育については、おそらく全国のこの種の審議会で、大阪府が初めて提起したもの。やはり、命の尊さをベースにする必要がある。人間の命だけではなく、動植物を含めて命の大切さというものが人権問題の根本にあるが、現在の人権教育は、その点をきわめて理念的に教育している場合が多い。ぜひ、これらの意見を踏まえ、より中身のある具体化を図ってほしい。
 また、人権基礎教育は、府同和対策審議会の答申にも盛り込まれた。今は「人権」というと、権利だけを主張することのように錯覚されている場合があるので、そういう意味でも、低学年の幼いうちから“人間とは何か”について考える必要はある。心学の伝統も考えた、大阪らしい人権基礎教育を具体化してほしい。

○ 実は、府同和対策審議会でも、人権基礎教育の重要性についての議論があった。現在の教育委員会の同和対策事業の中に、同和問題を中心とした様々な人権問題について学習する副読本があるが、今後これを、人権教育の副読本という形で、それぞれの発達段階に応じた人権教育の教材とするよう、改訂を進めている。その中で、いじめの問題等の人権問題をより身近に考え、また理解できるような内容の工夫を凝らし、順次改訂していく中で、委員の方々の意見を教育現場に反映したいと、現在、教育委員会で取り組んでいる。

○ 誤解がないように、一言付け加える。国際人権諸条約を教育するということは、人権基礎教育をせずに行うということでは、決してない。国際社会と人権の関係を考えると、人間の尊厳・命が権力の名において無視されたという歴史と背景がある。人権諸条約を教えるときには、そういう背景を切り離して教育できないから、人権諸条約を人権施策の柱にしてほしいというのは、人権基礎教育をなおざりにするということでは決してない。

 
・その他
 男女共同参画課より、「おおさか男女共同参画プラン」についての説明を行った。
 
・意見交換

○ 男女共同参画も、「女子差別撤廃条約」との関連の中で、進んできたことの1つだが、男女共同参画は“まず男性が・女性が”という形ではなく、まさに人間らしい暮らしという人権の視点が必要であると感じている。例えば、男性が暴力を振るったときの接近禁止など、法的なことは進んでいるが、一方では、現実に子どもを持っている人の生活維持という問題がある。だから、“男性が協力するべき”という観念的なことではなく、人間らしい暮らしという人権の視点で取り組まないと、大阪でも、男女共同参画が定着しにくい。この審議会の人権の視点で、男女ともがどうしたら幸せになるのかという視点から、男女共同参画を一緒に支援していきたいと思っている。

○ 多くの法律・条例を、現場でどのように生かしていくかということが、たいへん重要である。人々が残念な思いをしない生活をするためには、警察や行政で、法律・条例をどう運用するかということが、たいへん大事である。

○ 「男女共同参画社会基本法」の新しい面は、法律が用いている用語では「積極的改善措置」、いわゆる「ポジティブ・アクション」と呼ばれている面であると思うが、その部分は、プランにどう位置づけているのか、あるいは具体的にどういう施策を実施することを考えているのか。

○ 積極的改善措置・機会の平等ということは、当然重要と考えており、例えば大阪府の職員試験をより多くの女性が受けて、社会的な場に参画するよう、女子学生向けの就職セミナーに取り組んでおり、特に労働の分野では、「ポジティブ・アクション」のことを積極的に啓発していく。
○ 例えば韓国では、公務員の何%は女性にするという「クオータ制」を取り入れているが、ある一定の期間、大阪府も職員の何%は女性にするという制度を取り入れないと、なかなか是正にはならない。可能であれば、まず大阪府で、試してはどうか。
 
・その他の意見交換
○ 大阪府の文化懇話会においても、これからの府の文化振興のあり方の中で、基本的な方向の1つとして「豊かな人権文化を育てる」とあり、「人権文化」が、府全体の文化振興の中でも、たいへん重要な位置づけで議論されるようになっている。
 また、その議論の中で、大阪には草の根から「人権文化」をはじめとする文化を創り出していくパワー・独自のエネルギーがあることが浮かび上がった。例えば、大阪には定住外国人が多いことのあらわれとして、今回残念ながら中止になったが、「四天王寺ワッソ」のようなイベントがある。大阪で多文化共生ということを具体的に推進していくとすれば、大阪府全体として、これをどう支援していくのかという発想・視点が、今後、より大きな枠組みとして必要である。
 また、もう一つ、NPOをはじめとする民間の動き・エネルギーをどう見出して、それを行政がどう支援していくかという発想で全体を盛り上げるという考え方が、やはり、今後のこの審議会の中でも重要である。

○ 審議会の答申が、現実にどうなっていくかということには、非常に関心がある。例えば、財政負担を増やさないと言いながら、相談窓口をどう増やしていくのかという部分等に関心がある。
 また、現場の声が重要である。「児童虐待防止法」もできたが、現場を見ると、例えば虐待された子どもたちが分離された後、どこへ行き、その子どもたちの人権は本当に保障されているのかどうか。子どもたちの人権が保障されない中で、子どもたちに人権基礎教育を行ったとしても、なかなか身につかないと思うので、学校における子どもたちの人権がどう保障されているかなど、まず現場を見て、現場の声を聞いてほしい。

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 企画グループ

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