令和2年度職員採用試験〔行政(大学卒程度)〕・〔警察行政(大学卒程度)〕の問題 論文 【法律・経済分野】

更新日:2023年3月1日

※ユニバーサルデザインの観点から、体裁や符号の使い方などについて、実際の出題とは異なる表記に変更している部分があります。 

憲法

以下の事例を読んで、設問に答えなさい。

事例

Y市では、市民が美術その他の芸術文化を享受することに寄与し、その創造及び発展に資するため、Y市立美術館を設置し、同館内には、美術品等の展示を行う市民の利用に供する市民展示室(以下「本件展示室」という。)を設けている(Y市立美術館条例(以下「条例」という。)第1条及び第2条第2項)。

条例第7条によれば、市民展示室の使用を希望する者は、市長に対して、事前に申請し、その承認を受けなければならないとされ、また条例第8条各号では、市長は使用の承認をしないことができるとされている。

ある時、Y市在住の写真家Xを代表者とする団体が「変わりゆくYの風情」と題する写真展(以下「本件写真展」という。)の開催を企画し、本件展示室の使用を申請した。申請の際、使用を希望する日時、主催者の名称、代表者の氏名・連絡先、展示会の名称を記載した申請書のほか、展示会の趣旨、展示作品の点数、タイトル一覧、概要一覧をまとめた目録も併せて提出するよう求められたので、目録を作成のうえ提出した。今回の写真展で展示予定の作品の中には、過去にY市が行った道路拡幅工事の際の立ち退き強制の模様を写した「政治に翻弄される市井の人々」と題するXの作品が含まれていた。

その事を目録から知ったY市長は、本件写真展が、特定の政治的主張をアピールするもので、政治的中立性を保つべき市立美術館の性格にそぐわず、またXらの政治的主張に反対する者からの苦情が寄せられるおそれが否定できないという理由で、条例第8条第2号及び第6号に該当するとして使用の承認をしなかった。

設問

Y市長が使用の承認をしなかったことの憲法上の問題点を検討しなさい。

〔参考条文〕

〇Y市立美術館条例
(設置)
第1条 市民が美術その他の芸術文化を享受することに寄与し、その創造及び発展に資するため、地方自治法第244条第1項に定める公の施設として、Y市立美術館を設置する。
(美術館内に設ける施設)
第2条 美術館内に設ける施設の名称及び目的は、以下のとおりとする。
 一 (略)
 二 市民展示室 美術品等の展示を行う市民の利用に供するため。
(使用の承認)
第7条 市民展示室を使用しようとする者は、市長に申請し、その承認を受けなければならない。承認を受けた事項を変更し、又は取り消そうとするときも、同様とする。
第8条 市長は、以下の各号のいずれかに該当すると認めるときは、使用の承認をしないことができる。
 一 (略)
 二 美術館の設置の目的に反する使用等をし、又はそのおそれがあると認めるとき。
 三―五 (略)
 六 前各号に掲げるもののほか、美術館の管理上支障があるとき。

〇地方自治法
(公の施設)
第244条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第3項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

行政法

以下の事例を読んで、(1)、(2)の設問に答えなさい。

事例

Aは、B市長から行政財産の目的外使用許可を受けて、B市庁舎の一部屋で理髪店を営んでいたが、その部屋をB市の業務で使用する必要性が生じたため、B市長は、Aに対する当該目的外使用許可を取り消した。しかし、B市長の再三の要求にもかかわらず、Aは理髪店の設備を残したままにして、部屋を明け渡そうとしなかった。

設問

(1) Aに対して部屋の明渡しを強制するために、B市長が行政代執行を行うことができるかどうかについて論じなさい。

(2) Aに対して部屋の明渡しを強制するために、B市がAを被告として、部屋の明渡請求訴訟を適法に提起することができるかどうかについて、最三小判平成14年7月9日民集56巻6号1134頁(宝塚パチンコ店事件)に言及しながら論じなさい。

民法

以下の事例を読んで、(1)、(2)の問いに答えなさい。

事例

Aは、X市内に更地(甲)と分譲マンション(乙)を所有し、一人息子ですでに成人したBとともに、乙に居住している。また、Aは、数年前に配偶者を亡くし、B以外には身寄りがいない。

Bは、仮想通貨取引で大幅な損失を出してしまい、借金の返済に追われるようになっていた。そこで、Bは、甲の売買代金を借金の返済に充てることを思い立ち、委任者をA、受任者をBとし、AがBに甲の売却に関する代理権を授与するという内容を記した委任状を偽造した。

Bは、旧友のCがX市内に土地を探しているという噂を耳にしたため、Cに対して、偽造した委任状を提示したうえで、A所有の甲を購入するように持ちかけた。Cは、甲が自らの希望に合致する土地であったことから、これを購入することにした。そこで、Bは、Aの代理人として、Cとの間で、Aが甲をCに対して1,500万円で売却するという内容の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。本件売買契約では、2020年5月15日に、Cが、Aの代理人であるBに対して1,500万円を支払うのと引換えに、甲をCに対して引渡すこと、及び、同年6月10日に、甲について、AからCへの所有権移転登記手続を行うことが合意された。なお、本件売買契約が締結された時点において、Cは、Bが代理権を有していないことを知らず、かつ、知らないことについて過失もなかった。

Cは、同年5月15日、本件売買契約に基づいて、Bに対して1,500万円を支払い、Bから甲の引渡しを受けた。

(1)2020年6月1日、Aが死亡し、BがAを単独で相続した。Cは、同月10日、Bに対して、本件売買契約に基づいて所有権移転登記手続をするように請求した。BがCの請求を拒絶することができるかどうかを検討しなさい。

(2)2020年6月1日、Bが死亡し、AがBを単独で相続した。Cは、同月10日、Aに対して、本件売買契約に基づいて所有権移転登記手続をするように請求した。AがCの請求を拒絶することができるかどうかを検討しなさい。

経済原論

次の(1)から(5)の問いに答えなさい。

(1)ゲーム理論におけるナッシュ均衡について説明しなさい。

(2)ある状態がパレート効率的であるとは、どのような状態か説明しなさい。

(3)囚人のジレンマゲームとは、一般にどのような特徴を持つゲームを指すか説明しなさい。

(4)囚人のジレンマゲームの例を挙げなさい。その際、「プレイヤー」、「戦略」、「利得」、「均衡」の語を用い、利得については、具体的な数値も示すこと。

(5)フォーク定理とは、どのような主張か説明しなさい。また、フォーク定理によって、具体的にどのような社会的あるいは経済的現象が説明できるか述べなさい。

財政学

次の(1)、(2)の問いに答えなさい。

(1)一般的に財政の3機能として、(1)資源配分(公共財の供給)、(2)所得再配分、(3)経済安定化が挙げられる。国と地方はこれらの3機能について、それぞれどのように役割を担うべきか論じなさい。

(2)基礎的財政収支(プライマリーバランス)について説明し、その観点から財政の持続可能性について論じなさい。

経済政策

我が国の銀行制度と銀行規制について、以下の問いに答えなさい。

(1)現行の銀行制度は、部分準備銀行制度(部分準備制度)に基づいていると言われているが、部分準備銀行制度について、その利点にふれながら説明しなさい。また、この制度の下で、銀行経営への不信感が高まった場合、引き起こされる問題点について説明しなさい。

(2)銀行経営の健全性を確保するために課されている自己資本比率規制について、説明しなさい。また、我が国でも導入されていた初期の自己資本比率規制には、プロシクリカリティ(景気循環増幅)効果があると言われていたが、どのような効果か説明しなさい。

経営学

次の文章を読み、(1)から(3)の問いに答えなさい。

経営学では、組織が個人を動かすための刺激をインセンティブ(誘因)という。組織は個人に貢献してもらうために、貢献に見合った誘因を提供しなければならない。別の見方をすると、質がより高く量もより多い誘因の枠組み(インセンティブ・システム)を組織が提供できれば、個人からより多くの貢献を引き出すことができる。

インセンティブ・システムの構築については、いくつかの留意点がある。まずは、様々な個人が組織に求めるインセンティブは多様であるということである。(a)当初、経営学では金銭的インセンティブのみが個人を動かすと考えられていたが、やがてそれだけでは、期待どおりにいかないことが明らかになった。組織に属する一個人をとってみても、新人のころ、中年期のころ、定年を迎えるころとでは組織に求めるものが変わってくる。組織は個人が求める多様さに応じた、様々なインセンティブを準備する必要がある。また、インセンティブには無限のものと有限のものとがあるということである。金銭は有限なインセンティブの代表例である。さらに、ある個人に特定のインセンティブを与えると、その人の貢献はより多く得られるが、同種のインセンティブを求めながら得られなかった他の人からの貢献が得られなくなってしまうケースもあるということである。この種のインセンティブの特性を(b)排他性という。

インセンティブ・システムは全体として、組織に属する全ての個人から等しく質量十分な貢献を引き出すために、(c)(首尾一貫性・柔軟性・公平性)に最も留意され構築されるべきである。

(1)太字部(a)に関して、その他の具体的なインセンティブをいくつか挙げなさい。また、関連する代表的な研究があれば、それらにもふれなさい。

(2)太字部(b)の特性を持つインセンティブに関して、具体例を挙げて論じなさい。

(3)太字部(c)に関して、カッコ内の語から一つ選び、その理由を論じなさい。


このページの作成所属
人事委員会事務局 人事委員会事務局任用審査課 任用グループ

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