○大阪府内の地方議会における府民の政治参画の推進に関する条例

令和五年二月二十八日

大阪府条例第一号

大阪府内の地方議会における府民の政治参画の推進に関する条例を公布する。

大阪府内の地方議会における府民の政治参画の推進に関する条例

政治分野における男女共同参画の推進は、政治に多様な民意を反映させる観点から極めて重要である。諸外国では政治分野における女性の参画が進んでいるが、我が国ではいまだ政治の場に女性の数は少なく、諸外国との格差は広がるばかりである。

そのような中、性別を問わず立候補や議員活動等をしやすい環境整備等が必要であるとして、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(平成三十年法律第二十八号)が改正されるとともに、国の実態調査において、様々な形のハラスメント行為が、公平な政治参画への機会を阻害している実態が示された。

とりわけ地方議会にとっては、政治に多様な民意を反映させる観点から、公平な政治参画への機会を確保することは極めて重要であり、早期の環境整備が必要である。

このような理解の下に、府内全ての地方議会に関する議員によるハラスメント又は議員若しくは議員になろうとする者に対するハラスメントを根絶し、府内の地方議会における府民の政治参画を推進することを目指して、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、日本国憲法が保障する基本的人権の尊重、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律等の趣旨等を踏まえ、府内全ての地方議会に関する議員によるハラスメント又は議員若しくは議員になろうとする者に対するハラスメント(以下「府内の地方議会に関するハラスメント」という。)を根絶するため必要な事項を定めること等により、政治分野における男女共同参画の推進を図り、もって府内の地方議会における府民の政治参画の推進に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において「ハラスメント」とは、次の各号に掲げるものをいう。

 議会、職場又は地域における優越的な関係を背景とした言動であって、議会活動、議員活動又は選挙活動(準備活動を含む。)その他の政治活動(以下「政治活動等」という。)上必要かつ相当な範囲を超え、当該言動の相手とされた者(以下「相手方」という。)の政治活動等の環境を害するもの

 政治活動等における性的な言動であって、相手方がその対応により政治活動等において不利益を受ける等、相手方の政治活動等の環境を害するもの

 政治活動等における妊娠又は出産に関する言動であって、相手方の政治活動等の環境を害するもの

 その他前各号に類する相手方に対する誹謗ひぼう中傷、事実に反する風説の流布その他の嫌がらせとなる言動であって、日本国憲法が保障する思想の自由、表現の自由等に配慮しても、なお、一般に許される限度を超え、身体的若しくは精神的な苦痛を与え、相手方の政治活動等の環境を害するもの

2 この条例において「地方議会」とは、普通地方公共団体の議会をいう。

3 この条例において「府議会議員になろうとする者」とは、大阪府議会議員選挙において公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第八十六条の四第一項の届出をした大阪府議会議員(以下「府議会議員」という。)の候補者及び府議会議員の候補者となろうとする者をいう。

(府議会議員等の責務)

第三条 府議会議員及び府議会議員になろうとする者は、公職に参画し、又は参画しようとする者として高い倫理観が求められること及びハラスメントが個人の尊厳を不当に傷つけ、基本的人権を侵害する行為であることを自覚し、政治活動等における自らの言動を厳しく律しなければならない。

2 府議会議員及び府議会議員になろうとする者は、ハラスメントとなる言動を行っている者があるときは、その者に対し当該言動は厳に慎むべきである旨を指摘するよう努める等、率先して大阪府議会(以下「府議会」という。)からハラスメントを根絶するよう取り組むものとする。

3 府議会議員は、府民全体の奉仕者としての立場を自覚し、常に、かつ、何人に対しても前二項の規定に準じた行動に努めるものとする。

(府民の責務)

第四条 府民は、政治分野における男女共同参画の推進について理解を深めるとともに、府内の地方議会に関するハラスメントの根絶に協力するよう努めるものとする。

(啓発)

第五条 大阪府議会議長(以下「議長」という。)は、府内の地方議会における政治参画への府民の関心及び理解を深めるため、この条例の趣旨の府民への啓発に努めるものとする。

(研修等)

第六条 府議会において、府議会議員の政治活動等に関してハラスメント事案が発生することを防止し、府議会からハラスメントを根絶するため、府議会議員、大阪府議会事務局の職員その他議長が必要と認める者に対する研修を実施するものとする。

2 議長は、ハラスメントに関する情報の収集、整理及び分析に努め、その成果を前項の研修に活用するものとする。

(人材の育成等)

第七条 議長は、政治分野における男女共同参画が推進されるよう、議会における審議を体験する機会の提供、地方議会の活動に対する関心を深めこれに必要な知見を提供する講演会等の開催の推進その他の人材の育成及び活用に資する施策を講ずるものとする。

(相談体制の整備)

第八条 議長は、弁護士その他のハラスメント事案に関する専門的な知識又は経験を有する者を相談員とする窓口を、別に定めるところにより設置する。

2 府議会議員又は府議会議員になろうとする者であってハラスメントによる被害を申し立てるもの(以下「申立人」という。)は、議長が別に定めるところにより、相談員に対し、当該ハラスメントによる被害の継続又は再発を防止するための措置(以下「被害防止措置」という。)その他当該ハラスメントに関する相談を行うことができる。

(相談事案への対応)

第九条 前条第二項の規定による相談を受けた相談員は、当該ハラスメントに関する事実を確認するため、申立人、申立人がハラスメントを行ったとする者(以下「被申立人」という。)その他関係者からの聞き取り等、必要な調査を行うことができる。

2 相談員は、前項に規定する調査を行おうとするときは、あらかじめ議長の承認を得なければならない。

3 第一項の規定による調査の結果、当該ハラスメントに関し府議会による被害防止措置が必要と相談員が認める場合において申立人が求めるときは、当該相談員は議長にその旨を報告するものとする。

4 相談員は、受けた相談が前項の規定に該当しないとき、又は第一項の規定による調査の必要がないと認めるときは、申立人に対し申立人が自らとるべき措置、行動等について助言するものとする。

5 第三項の規定による報告を受けた議長は、必要に応じ、他の相談員その他の者の意見を求めることができる。

6 相談員は、相談の受付及び対応の状況について、議長に報告するものとする。

7 議長は、本条の規定に基づく相談員の業務遂行の自由を保障し、相談員は、当該相談事案に関する秘密を厳守するとともに、相談に関する業務を行うに当たっては、申立人及び被申立人の名誉、プライバシーその他の人権の尊重について慎重に配慮しなければならない。

8 相談員は、本条の規定に基づく業務を行うに当たっては、あらゆる政党及び会派並びに議員その他の関係者の干渉又は影響を排し、中立かつ公平に当該業務を行わなければならない。

(調査協力義務)

第十条 前条第一項の規定により相談員が相談事案に関する調査を行うときは、当該事案の申立人、被申立人及び調査の対象となった関係者は、これに協力するよう努めなければならない。

(相談事案関係者の義務)

第十一条 申立人、被申立人及び相談員その他の第八条第二項の規定による相談に関わる者は、申立人又は被申立人の利益を不当に侵害しないため、同項の規定による相談を行い、又は相談が行われている旨、相談員の発言その他相談内容に関する事項を公にしてはならない。

2 前項の規定に反し、同項に規定する事項が正当な理由なく公になったときは、議長は、当該事案に関し中立かつ公平な観点から確認した事実及び公にされた事項のうち事実に反するものを公表し、又は当該相談業務を中止し、若しくは停止する等、申立人の意向を確認した相談員の意見を踏まえ、申立人又は被申立人の正当な利益を守るために必要な措置を講ずるものとする。

3 申立人、被申立人及び相談員を除く第八条第二項の規定による相談に関わる者は、相談事案に関し相談員を介さず直接交渉し、又は申立人若しくは被申立人を威迫する等、相談員の業務の公正な遂行を妨げる行為をしてはならない。

(被害防止措置等)

第十二条 議長は、第九条第三項の規定による相談員の報告又は同条第五項の規定による他の相談員その他の者の意見を踏まえ、当該ハラスメントに関し府議会による対応が必要と認めるときは、被申立人に対し、注意を喚起し、ハラスメントをしないよう求め、又は勧告する等の被害防止措置を講ずるものとする。この場合において、議長は、あらかじめ、議長、副議長及び議会運営委員の所属する各会派から推薦された議員各一名により構成される協議会(以下「協議会」という。)の議を経なければならない。

2 議長は、被申立人が前項の規定による勧告に応じないときその他ハラスメント被害の継続又は再発を防止するためやむを得ないと認めるときは、協議会の議を経て、相談の内容、調査結果及び前項の措置に関する事項の全部又は一部を公表することができる。

3 議長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表に係る者に、あらかじめ、その旨を通知し、その者又はその代理人の出席を求め、釈明及び資料の提出の機会を与えるため、意見の聴取を行わなければならない。

(市町村議会との連携)

第十三条 議長は、府内の地方議会に関するハラスメントを根絶するため、府内市町村議会に関するハラスメント根絶のための活動の支援、協働その他の府内市町村議会との連携に取り組むものとする。

2 議長は、前項の規定の趣旨を踏まえ、府内市町村議会の議員及び事務局職員の誰もが参加できる研修を府内市町村議会と連携して実施するよう努めるものとする。

3 議長は、第一項の規定の趣旨を踏まえ、府内市町村議会に関するハラスメントについても、当該市町村議会議員又は当該市町村議会から相談員に対し相談があった場合には、当該相談員に当該事案に関する調査を行わせ、及び当該相談者その他当該市町村議会の関係者に対する必要な助言を行わせることができる。

4 議長は、市町村議会議員から相談があった旨の報告を相談員から受けたときは、当該市町村議会議員の承諾の下に当該市町村議会の議長にその内容を通知するものとする。

5 第十条の規定は、第三項の規定に基づく調査に準用する。

(取組状況の公表)

第十四条 議長は、実施した研修、相談の受付及び対応の状況、府議会議員及び府議会議員になろうとする者並びに府民がそれぞれその責務を果たす上で参考とすべき事例等、この条例に基づく取組の状況を随時公表するものとする。

(議長の職務代行)

第十五条 議長が申立人又は被申立人となったときは、副議長が議長の職務を行う。

(協議会の構成員の除斥)

第十六条 議長、副議長その他の協議会の構成員は、申立人又は被申立人となった場合においては、その議事に参与することができない。ただし、協議会の同意があったときは、会議に出席し、発言することができる。

(委任)

第十七条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、議長が別に定める。

(施行期日)

1 この条例は、令和五年三月一日から施行する。ただし、第八条第二項及び第九条から第十六条までの規定は、令和五年三月二十四日から施行する。

(この条例の見直し)

2 議会は、この条例の施行後三年を目途として、この条例の規定内容について検討を加え、その結果に基づいて、この条例の見直しを行うものとする。

大阪府内の地方議会における府民の政治参画の推進に関する条例

令和5年2月28日 条例第1号

(令和5年3月24日施行)