大阪府における男女共同参画施策の検証・評価システムのあり方について

更新日:2017年6月30日

大阪府における男女共同参画施策の検証・評価システムのあり方について

 大阪府においては、府民や事業者とともに男女共同参画社会の実現をめざす指針となる「大阪府男女共同参画推進条例」を平成14年4月に施行し、男女共同参画社会の実現に向けて、その理念の浸透と具体化のための施策が展開されているところです。平成13年7月には、男女共同参画施策の基本的方向とその推進方策を総合的に明らかにするものとして、「男女共同参画社会基本法」に基づく法定計画である「おおさか男女共同参画プラン」(以下、「プラン」)が策定されました。計画期間の折り返しにあたる平成18年4月には、本審議会が平成17年10月に答申した「プランの改訂に関する基本的な考え方」を踏まえ、プラン策定後の男女共同参画をめぐる状況の変化に対応すべく、その内容の一部が改訂されています。

こうした基本的な枠組みのもと、これまで大阪府では、府民や事業者の理解と協力を得ながら、幅広い分野にわたる諸施策が総合的、計画的に推進されてきました。けれども、職場で、家庭で、地域で、男女共同参画社会の実現に向けて解決すべき問題はまだまだ多く、時代とともに新たな課題も浮かび上がってきています。このような状況のもと、行政はもちろん府民や事業者は、それぞれの立場から取組の実効性を高めるよう工夫しなければなりませんが、そのためには男女共同参画の推進状況について共通認識をもつことが不可欠です。プランの計画期間満了を前に、プランに基づいて実施されてきた施策の到達点と、解決が待たれる課題をわかりやすく提示するために、男女共同参画施策を検証・評価する仕組みを確立する必要があります。

一方大阪府は、全庁的な取組として、総合的な行政評価システムを既に運用しています。その中で、男女共同参画施策を検証・評価する仕組みを確立するには、先行する評価システムの趣旨・目的や評価の視点等を考慮した上で、幅広い分野にわたる男女共同参画施策それぞれに適用できるよう、男女共同参画の視点を踏まえた独自の検証・評価手法を検討する必要があると考えました。そこで本部会では、男女共同参画施策を検証・評価する手法について、プランを構成する10の「施策の基本的方向」(以下、「施策の柱」という)ごとに具体的に検討を重ねてきました。その中で浮かび上がってきた共通する部分について、「男女共同参画施策の検証・評価システム」として集約し、以下のとおり提言します。

男女共同参画社会を実現するためには、大阪府のあらゆる施策に男女共同参画の視点が組み入れられる必要があります。それゆえ、この提言の中で検証・評価の対象としている男女共同参画施策には、直接的に男女共同参画を目的とした施策だけではなく、広く男女共同参画の推進につながる施策も含めています。また、すべての課に男女共同参画の視点がどの程度浸透しているか、ということも、プランの進捗状況に密接に関わるものであると言えます。検証・評価作業を通じて現状を振り返ることにより、大阪府庁内部において、男女共同参画への理解が深まり、主体的な取組が促進されることを期待します。

1 検証・評価システムについての基本的な考え方 

(検証・評価の実施主体)

 大阪府は、プランに基づく男女共同参画施策を総合的かつ効果的に推進するため、知事を本部長とする「大阪府男女共同参画推進本部」を設置しています。男女共同参画施策の検証・評価は、その庁内推進体制の枠組みのもとで実施することにより、実効性を担保すべきであると考えます。

(検証・評価の流れ)

検証・評価システムは、一次評価(事業所管課、部局)、二次評価(男女共同参画課)、三次評価(男女共同参画審議会)の三段階に分けて実施します。

検証・評価結果の客観性を高めるために、大阪府庁内部で完結するのではなく、外部の視点も取り入れる必要があることから、本審議会が府民を代表する外部評価者としての立場で、この検証・評価システムに参画します。

(実施時期)

大阪府は、本審議会が平成15年12月に答申した「男女共同参画指標」を活用しながら、毎年施策の実施状況等を取りまとめ、その結果も公表しています。男女共同参画施策の検証・評価作業は、これらを集約しつつ、事業の実施状況と施策の進捗状況について、プランの策定・改訂時期にあわせ、概ね5年ごとに実施することが望ましいと考えます。

検証・評価作業そのものが目的化してしまうことを防ぐため、実際にシステムを運用する際には、検証・評価はあくまでもプランの策定・改訂に向けた過程のひとつであるということを周知徹底する必要があります。

(他の行政計画との関係)

男女共同参画施策は広範多岐にわたるため、「大阪の再生・元気倍増プラン 大阪21世紀の総合計画」をはじめとする他の行政計画と重なっている施策もあります。このような場合には、それぞれの計画がめざしているものとの整合性を勘案しつつ、男女共同参画の視点でそれらの施策が実施されているかどうか、という観点で検証・評価することによって、あらゆる施策に男女共同参画の視点を反映していくべきだと考えます。

2 検証・評価システムのあり方について 

(1)検証・評価の対象となる項目の設定について

 検証・評価はプランの策定・改訂を目的として実施するものであることから、「施策の柱」ごとにすべての「施策の方向」が網羅されるように、「検証・評価の対象となる項目」を設定します。ただし、検証・評価の質を担保するためには、本来業務が検証・評価の作業量に逼迫されないよう、「検証・評価の対象となる項目」の数はできるだけ抑えることが望ましいと考えます。


(2)一次評価における検証・評価方法及び留意点について

 事業所管課は、「検証・評価の対象となる項目」ごとに事業の実施状況をとりまとめ、「一次評価における検証・評価の基準(視点)」に照らし、施策の進捗状況について自己評価を行うこととします。

その後、部局単位で、「検証・評価の対象となる項目」ごとに事業所管課による自己評価を集約することとします。

1 評価内容

 事業所管課による自己評価では、すべての施策を一定水準で把握することができるよう、以下のとおり共通項目を設定します。

    〔基礎項目〕

     ア 施策実現のために行っている取組概要

     イ アの取組に該当する具体的事業名

     ウ 取組の企画・立案や実施の際に男女共同参画の視点で配慮した事項の有無

     エ プランに掲げる「数値目標設定指標」の達成度

    〔評価項目〕

     ア 施策実現のための対応度についての自己評価

     イ アの自己評価を行った理由

     ウ 事業所管課からのアピールポイント(工夫した点や難しかった点など)

     エ 今後の方向性

 これらのうち、「評価項目」のイとウは、検証・評価作業を今後の取組に役立ててもらうために特に設けている項目です。自己評価の根拠を示すとともに、事業を実施する立場で府民と接するからこそ感じた課題や改善点などをここで明らかにする過程が、今後の施策展開につながることを期待しています。

 また、二次・三次評価の段階では、「検証・評価の対象となる項目」によっては、上記共通項目のほかに別途必要となる情報もあると考えられます。そのような場合には、「特記事項」としてできるだけ具体的な情報を提供するよう求めます。

2 検証・評価の基準(視点)

 府の施策がもつ次の4つの要素に着目し、「検証・評価の基準(視点)」を設定します。

    〔基本的な検証・評価の基準(視点)〕

     ア 法律や指針、府の施策等が十分に周知できているか

     イ 施策がめざす方向の必要性が十分に訴えられているか

     ウ 施策実現に向けた環境整備が行われているか

     エ 主体的な取組・行動を後押しする支援策が対象別に講じられているか

 実際に検証・評価を行うときには、「検証・評価の対象となる項目」ごとに、施策の特徴を踏まえ、具体的な「検証・評価の基準(視点)」を設定します。その際、抽象的な表現にならないよう、「誰が」「誰に対して」「何を伝えるのか」「どのようなことを働きかけるのか」といった点を明確に表す必要があります。

 また、施策の枠組みによっては、住民への働きかけには必ず市町村を介するなど、市町村が果たす役割が大きい分野や、法制度の制約などにより府県独自に取り組むことができる範囲が限られている分野があります。自己評価の際には、このような国・市町村との関係性をはじめ、大阪府が果たすべき役割を意識しながら検証・評価を行うべきだと考えます。

(3)二次・三次評価における検証・評価方法及び留意点について

「男女共同参画指標」などの関連するデータを参照しながら、二次評価者(男女共同参画課)は一次評価の適正性を、三次評価者(男女共同参画審議会)は二次評価の適正性を、それぞれ検証することとします。

府民意識調査などの統計には府民の共通する思いや願いが表れています。このような調査を活用し、府民の思いに対して府はどの程度こたえているか、という観点からも検証・評価を行う必要があります。また、このような統計的なものに限らず、様々な分野の相談や情報提供、苦情持込ができる窓口に寄せられる府民の声なども、男女共同参画の視点でとらえ、施策に活かす方策がないか検討してみることも大切です。

 さらに、プラン改訂時に追加された新たな施策については、特に丁寧な検証・評価を行う必要があります。

1 参照する指標

 「検証・評価の対象となる項目」ごとに男女共同参画施策に関連するデータを収集し、「府民の意識の変化を表すもの」「府民の行動の変化を表すもの」「社会の状況を表すもの」の3つに大別した上で、これらの推移を参照しながら検証・評価を行うこととします。

例えば、非正規労働者の増加など、男女共同参画の視点で見た場合、この間の社会の動きは必ずしも望ましい方向に進んでいるものばかりではありません。指標が示す数字の増減だけを評価するのではなく、その背景にあるものを掘り起こし、丁寧に分析することによって、府民の意識や行動の実態を明らかにしていく必要があります。

2 横断的な施策の取扱い

改訂プランでは、施策を重点化するふたつの方向性として、「男女共同参画についての理解を深め、府民一人ひとりの主体的な行動を引き出すための施策の推進」「事業者の主体的な取組を後押しするための施策の推進」が打ち出されていますが、これらについては、二次・三次評価の段階で関連する事業の実施状況を横断的に把握しながら、検証・評価する必要があります。

 同和地区の女性、障がいのある女性、外国人女性、ひとり親家庭の母、高齢女性などで社会的に援護を必要としている女性が置かれている状況についても、いくつもの「施策の柱」に関わるものであることから、住宅や経済基盤など、府民生活の基本的な状況を明らかにしつつ、10の「施策の柱」を横断的に、関連する事業の実施状況を検証・評価する必要があります。

3 その他の留意点

 検証・評価システムの実効性を高めるために、二次評価者は一次評価者へ、三次評価者は二次評価者へ、それぞれの段階の評価結果とその理由を明らかにし、検証・評価システム全体で論点を共有化すべきであると考えます。また、男女共同参画の推進には、行政だけでなく、府民や事業者の共通認識が不可欠であることから、検証・評価結果を府民・事業者と共有する方法についても検討する必要があります。

 なお、男女共同参画課が事業所管課として位置づけられる施策は、一次評価と二次評価が同じ評価主体になるため、客観的な評価になるよう留意すべきです。

(4)男女共同参画モデル職場づくりの取組

 プランの中で大阪府は、自ら率先して、男女共同参画社会にふさわしいモデル職場づくりに取り組むことを明らかにしています。府内有数の事業体でもある大阪府の職場単位での男女共同参画への取組は、府内市町村や企業など他の事業所への波及が期待される重要なものです。

モデル職場づくりの取組状況を検証・評価するためには、10の施策の柱に基づく検証・評価とは別に、すべての課において日々の業務を行う上で必要とされる男女共同参画の取組状況も明らかにする必要があります。例えば、審議会委員の選任にあたって女性を登用するために工夫したことや、メディアの発信者として公的広報を作成する際に留意したポイント、男女ともに働きやすい職場づくりに向けたセクシュアル・ハラスメント防止策など、具体的な取組実績を提示するよう求めます。

3 新プラン策定に向けてさらなる検討が求められる事項について 

 本部会では、「検証・評価システムのあり方」に関する議論に付随して、新プラン策定に向けて検討すべきことや、策定までに留意すべきことなどについての意見も出されましたので、併せてここに提言します。

(新プランの構成)

現行プランの10の「施策の柱」は、『意識形成』のように、プランに掲げる「基本的な視点」につながるために他の「施策の柱」との関わりが深いものもあれば、特定の分野として完結するものもあるなど、プランにおける位置づけがそれぞれ異なります。新プランの構成について検討する際には、10の「施策の柱」すべてを同列で論じるのではなく、それぞれの特性を踏まえて議論すべきです。

また、様々な観点から課題解決を図るために、例えば『思春期』『妊娠・出産期』『成人期』『高齢期』のように、人生の各段階に着目した施策体系のあり方についても検討する必要があります。

(府民への周知)

 男女共同参画を推進するためには、府民一人ひとりが自分自身の問題として考え、主体的に行動することが大切です。そのためにも、社会的に援護を必要としている女性はもちろんのこと、府民のもとへ確実に情報を届けることは、すべての施策に共通する基本的かつ重要な部分です。どのような周知方法が効果的か検討したり、どれくらい周知されているのか把握するよう努めたりするなど、府民への周知については特に意識的に取り組むことが必要です。

(指標の充実)

 今回審議する中で、「施策の柱」によっては、検証・評価に必要なデータが十分そろっていない分野も見受けられました。実際に検証・評価を行う段階では、「男女共同参画指標」に留まらず、関連する指標をさらに充実させる必要があります。

 また、今後実施する府民意識調査では、過去のデータとの経年比較も必要ではありますが、府民の共通する思いや願いが表れるものとして検証・評価に活用することも考慮に入れつつ、設問等を見直すべきだと考えます。

(市町村との連携)

 男女共同参画を推進するために、住民に最も身近な行政を担う市町村の役割は大きく、大阪府が実施する施策の中にも市町村との関わりが深いものがあります。一次評価の部分でも市町村との関係性を念頭に置きながら自己評価を行うよう提言していますが、新プラン策定の際にも、市町村における男女共同参画の取組状況も勘案しながら検討を進める必要があります。

 検証・評価システムは一度に完成するものではありません。運用していく中で見えてくる改善点をその都度反映・改良し、回数を重ねるごとに充実したものにしていく必要があります。

この検証・評価システムを効果的に運用していくことにより、すべての課に男女共同参画の視点が十分浸透し、男女共同参画社会の実現に向けた大阪府の取組がさらに前進することを期待しています。

このページの作成所属
府民文化部 男女参画・府民協働課 男女共同参画グループ

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