講演4 受療行動促進モデルを活用した 保健指導による 生活習慣病重症化予防について 講師 茨木市健康福祉部保健医療課 保健事業における最近の状況です。 「高齢者医療の確保に関する法律」に基づく特定健康診査・特定保健指導の状況(平成20年度より実施)について 平成29年特定健診実施率は30.3%、平成29年特定保健指導実施率は58.5%でした。 総医療費に占める生活習慣病の割合とその内訳(茨木市・平成28年度)は 生活習慣病が33%、その他61%、精神疾患6%となっています。 その生活習慣病のうち、糖尿病は8.6%となっています。 生活習慣病疾患・疾患群別医療費及び患者数(茨木市・平成28年度)について 医療費では 高血圧症が高くなっています。 レセプト1件当たり医療費では糖尿病性合併症群が高く、 患者数では高血圧症と脂質異常症が高く、糖尿病性合併症群は低くなっています。 特定健康診査とは40〜74歳を対象とし、メタボリックシンドロームに着目した健診です。 基本的な項目は、 ○質問票(服薬歴、喫煙歴等) ○身体計測(身長、体重、BMI、腹囲) ○血圧測定 ○理学的検査(身体診察) ○検尿(尿糖、尿蛋白) ○血液検査の項目は、 ・脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール) ・血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c) ・肝機能検査(GOT,GPT,γ−GTP)です。 詳細な健診の項目は、一定の基準の下、医師が必要と認めた場合に実施されます。 ○心電図 ○眼底検査 ○貧血検査(赤血球、血色素量、ヘマトクリット値) ○血清クレアチニン(eGFR含む)です。大阪府は基本項目としています。 特定保健指導は腹囲及びBMI、追加リスク項目、喫煙歴、年齢の4項目で積極的支援か動機付け支援か分類しています。 腹囲およびBMIは男性85cm以上、女性90cm以上、追加リスクとしては血圧・脂質・血糖3つ、年齢は40から64歳と65から74歳で分類しています。 茨木市データヘルス計画の重点課題について 平成29年度健診受診者は13,112人で、健診未受診者は27,458人でした。 この中にも重篤疾患発症リスクの高い人が潜在しているため、課題1は特定健診受診率の向上です。 内臓脂肪の蓄積は1,340人(10.2%)のため、課題2は特定保健指導対象者の減少です。 生活習慣病の重症化1,213人(9.3%)うち、未治療者は 約 60% 、治療中ハイリスク者は 約 40%のため、 課題3は生活習慣病重症化予防未治療者対策、治療中ハイリスク者対策です。 生活習慣病の重症化予防対策についてです。 平成26から27年度の厚生労働科学研究である『生活習慣病重症化予防のための戦略研究(J-HARP)』(研究代表者:大阪大学 磯 博康 医師)に参加し、 エビデンスに基づく保健指導・行動変容理論を用いた保健指導・面接技法などのトレーニングを受けました。 これらから、健診受診者のうち、循環器病ハイリスク未治療者の受療勧奨を開始し、 受療率は年々向上し、現在は、未治療者の約6割を治療に導くことができています。 受療行動促進モデルによる 保健指導の考え方について これまでの保健指導は、望ましい方法の提示から説得・受容・共感を行うことでしたが 受療行動促進モデルによる保健指導は、自分の体験や知識で判断できるように支援し、対象者が自ら学び自ら選択することです。 重症化予防事業の対象者は 茨木市国民健康保険加入者(75歳未満)と、 特定健診受診者として ・血圧:U度高血圧以上 ・血糖:HbA1c7.0以上 ・LDLコレステロール:180r/dl男性のみ ・尿蛋白:(++)以上 の4項目のいずれかに該当し、服薬がない人です。 現在の介入手順は、 リスク基準による対象者を抽出し、初回面談(家庭訪問または面談)、 継続指導1(訪問・面談・電話・手紙)、 継続指導2(訪問・面談・電話・手紙)、 次年度の特定健診受診勧奨といった流れです。 生活習慣病重症化予防のモデル実施としては まず最初にプロフィール調査はアセスメントで、調査票による生活習慣調査、血圧・体重・腹囲測定を行います。 次に支援準備として分析、指導方針決定、カンファレンスを行います。 それから初回支援は個別面談1で、食事・運動などについてのアドバイスや生活習慣改善に向けた目標設定などを行い、 2か月目は個別面談2、目標到達状況の中間評価や連絡ノートの主治医記入内容の確認などを行います。 4か月目は個別面談3、行動目標の実施状況や実行に対する思いの確認、必要であれば改善ポイントのアドバイスを行います。 6か月目は個別面談4、最終的な目標達成度の確認や、今後も継続する目標についての確認などを行います。 最終的に、6か月間の成果を結果票で送付します。 患者さん、ケアマネジャー、保健師、かかりつけ薬局、病院、かかりつけ眼科医、かかりつけ歯科医、かかりつけ医が連携することが大切です。