22ページ 第4章「ともに学び、ともに育つ」教育の充実のために 1.障害のある子どもへの支援について  (1)「個別の教育支援計画」・「個別の指導計画」について 障害のある子どもが、安心して生活し、すこやかに成長していくためには、障がいの特性や教育的なニーズをふまえた支援がとぎれなく行われることが大切です。 この就学前から卒業後にいたるまでの一貫した支援を実現するために、保護者参画のもと、関係機関との連携を図りながら、教育の分野における支援の計画(「個別の教育支援計画」)が必要とされています。   さらにこの「個別の教育支援計画」をふまえ、学校えんでの具体的な指導目標や指導内容を盛り込んだ「個別の指導計画」を作成することも大切です。 これらの計画の作成・活用に教職員全体で取り組むことで、保護者・関係機関等との具体的な連携が進み、教職員の協力体制の構築等にもつながります。 1「個別の教育支援計画」  個別の教育支援計画は、障害のある子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じて、就学前から卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うため、教育、福祉、医療、労働等の連携のもとに、関係機関やさまざまなサービスを提供する人が関わって、総合的かつ効果的に支援を行うためのものです。 2「個別の指導計画」  個別の指導計画は、個別の教育支援計画をふまえて、子ども一人ひとりの障がいの状況等に応じたきめ細かな指導を行うため、学校えんにおける教育課程や指導計画等、より具体的に子ども一人ひとりのニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法などを盛り込んだものです。 (2)「個別の教育支援計画」・「個別の指導計画」の作成・活用にあたって ○計画、実施、評価、改善の関連図 プラン〔計画〕 <計画の作成> ■子どもの状況を把握することからはじめます。 ・支援学級担任、通常の学級担任、養護教諭などが中心となって、子どもの障がいの状況等の把握を行います。 ■校内委員会などで、情報を共有し、支援の内容や目標を検討します。 ・支援学級担任等が中心となって作成を進めます。 ・保護者の参画や関係機関等との連携が大切です。 ■支援内容・方法を検討するときの留意点 ・子どもの興味・関心、特性(良さ)を活かすことを重視します。 ・本人や保護者の教育的ニーズをふまえて支援内容等を検討します。 ドゥ〔実施〕<指導・支援の実施> ■プランに基づいた指導・支援を行います。 チェック〔評価〕 <検証・評価の実施> ■ケース会議等で、学期末や学年末などの時期に、支援の内容や目標が妥当であったかの検証と評価をおこない、次年度の課題を明確にします。(検討した内容を校内委員会等に報告します) ■保護者と連携し、学校・家庭での情報を共有し、検証や評価をおこなうことが大切です。 アクション〔改善〕 <改善・見直し> ■検証・評価の後、計画の内容や方向性について必要な改善や見直し等をおこないます。 23ページ (3)「個別の教育支援計画」の作成 ◇「個別の教育支援計画」の作成にあたっては、保護者の参画や関係機関との連携が必要です。 ◇学校と保護者が「個別の教育支援計画」を共有することが大切です。 ◇作成された内容を必要に応じて更新することで、支援に役立てます。 ○個別の教育支援計画(例)モデル 吹き出しで解説 本人及び保護者の希望(ニーズ) 教育相談等で本人や保護者の思いや願いを十分把握するよう努めます。本人や保護者の教育的ニーズを受けとめることが大切です。 関係機関との連携協力・支援ネットワーク 支援を受けている関係機関名、主な担当者、連絡先などを明記します。 支援の目標 ○本人や保護者の願いをもとに「支援の目標」やその目標を達成していくために考えられる主な支援内容・活動内容をわかりやすく記入します。 ○学級担任だけではなく、子どもの支援に関わる複数の教職員が協力して作成します。 校内委員会などで検討することも必要です。 ・評価は、担任・本人・保護者を中心に学期末や学年末等におこないます。必要に応じて、関係者や関係機関と連絡をとり、評価結果について情報を共有しましょう。本人の変化や本人を取り巻く環境の変化、支援の効果の検討、支援方法の妥当性などについても記入します。 ・定期的に支援を見直していく中で、内容を必要に応じて付け加えたり、修正したりしていきます。また、様式にない内容も付加していくという考え方が必要です。 保護者にそのつど内容の確認を得ることも大切です。 24ページ (4)個別の教育支援計画の活用事例 事例 【エイ市での活用事例 『相談シート』『支援シート』の活用】 ○エイ市子どもネットワーク協議会の中に、「教育支援計画検討会議」を設置 ○『相談シート』…保護者の願いを把握し環境や指導の工夫を行うもの。 【活用方法】 (1)保健センターや保育所・幼稚園等から保護者に説明をおこない、活用を勧める。 (2)保護者は、子どもの状況や願いなどを記入する。 (3)担当者等は、子どもの成長が見られることや配慮の必要なことなどを記入し、保護者に渡す。保護者は「保護者から」の欄に思いなどを記入する。 (4)シートは保護者が保管し、別の機関や小学校等と相談するときに、活用できるようにする。 ○『支援シート』(「個別の教育支援計画」に相当) シートエイ:生育歴など変更の少ない項目(保護者記入) シートB:本人の様子など変更や追加の多い項目(保護者記入) シートC:長期目標を本人・保護者の聞き取りをもとに作成(学校えん記入) →シートCをもとに、「教育支援計画検討会議」で検討を行う。 【活用方法】 (1)保健センターや保育所・幼稚園・小学校から保護者に説明し作成を勧める。 (2)保護者は、シートエイ・Bに生育歴や子どもの様子について記入。 (3)学校等では、保護者からの聞き取り、シートエイ・BをもとにシートCに長期目標の原案を記入。 (4)検討会議では、長期目標を確認し目標達成するための情報や意見を記入。 〔保護者〕 シートを補完し、必要に応じて関係機関に提示。支援の継続が図れるようにしている。 〔学校等〕 支援シートをもとに個別の指導計画を作成し、長期目標をもとにした計画的な指導を積み上げる。 事例 【B市での活用事例 『あゆみファイル』の活用】 ○『あゆみファイル』の意図 (1)乳幼児から成人までの一貫した支援をおこなう。 (2)本人・保護者を中心とした支援 (保護者の承諾、情報・願いの確認、保護者による次機関への引継ぎ) (3)支援機関の役割の明確化 (引継ぎ機能と支援内容の蓄積、支援者の情報の共有・連携) ○『あゆみファイル』の活用方法 ・家庭訪問で・・・保護者と課題を共有し、支援の方法を確認する。 ・個人懇談で・・・現状を共通理解し、支援の方法を検証する。 ・ケース会議・・・支援の経過や情報を共通理解し、方針を立てる。 ・教育相談・・・・教育相談や就学相談の際、保護者の了承を得て参考にする。 ・就学や進学、転出じの引継ぎ ・・・原則として、保護者に返却して就学・進学先、転学先への支援へ引き継ぐ。 25ページ (5)個人情報の保護 障害のある子どもやその保護者の教育的ニーズに応えるため、保護者や前段階の学校えん、関係機関から多くの情報を得ることがあります。しかし、個人情報を最大限保護する観点から、以下のことについて留意する必要があります。 1個人情報の収集 ・目標を達成するために必要な範囲内に留める。 ・取扱い目的を明確にし、本人及び保護者が応じるか否かの判断ができるようにする。 ・個人情報を本人以外から収集する場合は、本人(保護者)の同意を得る。 2個人情報の利用 ・原則として収集の目的の範囲内とする。 ・目的の範囲を超える場合は、必ず、本人(保護者)の同意を得る。 3個人情報の管理 ・取り扱う目的を達成するため、必要な範囲内で正確かつ最新の状態を保つ。 ・個人情報が漏えいしたり紛失したりすることのないよう適正な管理を行う。 ・保有する必要がなくなった情報は速やかに破棄する。 【具体例】 ・本人の障害の状況や生育歴や家族構成等の個人情報を校種かんで引き継ぐ場合、必ず本人及び保護者の同意が必要となります。 ・また、関係機関との情報交換においても、同様です。 ・学校えん内で子どもの状況を話し合う会議の場合、本人や保護者の承諾を得る必要はありません。また、話し合いにおいて実名を用いることは問題ありません。ただし、プリントるいには、「エイさん」「Bさん」というような記述にする配慮は必要です。 (6)支援学級の在り方 障がいのある子どもがしょうちゅう学校で多数学んでいるにもかかわらず、支援学級での取組みや子どもの様子が学校全体で共通理解されていないことがあります。 「ともに学び、ともに育つ」教育は、支援学級担任のみに任されるものではなく、支援教育コーディネーターを中心に、全教職員の共通理解のうえ、学年を中心として、学校全体で取り組んでいくことが不可欠です。 そのうえで、障がいのある子どもの状況を一番理解し、把握している支援学級担任が、本人の様子や保護者の教育に対するニーズを的確にふまえて、学校全体としての指導・支援を充実させていく必要があります。 子どもの障がいの種別・状況等に応じた教育課程の充実に努めるとともに、「個別の教育支援計画」、「個別の指導計画」を作成・活用し、すべての教育活動と密接な関係を保ち、組織的、計画的な支援を行うことが大切であり、保護者との連携を十分に図ることも必要です。 また、学校全体の協力体制による「交流及び共同学習」の充実や相互理解のより一層の推進という観点をふまえ、校内における支援学級の位置づけ及び教室配置等についても点検、改善をおこなっていかなければなりません。 26ページ 参考 小学校学習指導要領総則解説 第3章 第5節 7「障害のある児童の指導」 中学校学習指導要領総則解説 第3章 第5節 8「障害のある生徒の指導」 「特別支援学級は,障害があるために通常の学級における指導では十分に指導の効果を上げることが困難な児童(生徒)のために編制された少人数の学級であり,児童(生徒)の障害の状態等に応じて,適切な配慮のもとに指導が行われている。特別支援学級は,しょう(ちゅう)学校の学級の一つであり,特別支援学級も通常の学級と同様,これを適切に運営していくためには,すべての教師の理解と協力が必要である。学校運営上の位置付けがあいまいになり,学校組織の中で孤立することのないよう留意する必要がある。このため,学校全体の協力体制づくりを進めたり,すべての教師が障害について正しい理解と認識を深めたりして,教師かんの連携に努める必要がある。」 (7)通級指導教室(通常の学級に在籍する子どもへの支援) 通級指導教室では、しょうちゅう学校の通常の学級に在籍する言語障害、聴覚障がい、発達障がいなどのある子どもたちに対して、障がいの特性に応じた必要な指導・支援をおこないます。子どもたちが通級指導教室で学んだことを、通常の学級での学習や生活の場面で発揮できるよう支援していくことが大切です。 大阪府では、すべての市町村に通級指導教室を設置し、設置校の子どもの指導・支援(自校通級)に加え、他校の子どもの指導・支援(他校通級や巡回指導)をおこなっています。 通級指導教室で大切にしていること ・通級指導担当者と学級担任が連携し、対象の子どもがどんな困り感を持っているのか、通級指導教室ではどのような支援をどのくらい行うのかを検討する。 ・通級指導教室での学習の効果が通常の学級で発揮できるような場面づくりを工夫・配慮する。 ・個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を作成・活用し、系統的継続的な指導・支援を行う。 通級指導教室でのおもな指導内容(月1時間 から 週8時間) ・人関係の育成や社会的スキルの向上(ソーシャルスキルトレーニング等) > 相互性のあるコミュニケーション能力の向上(指導者とロールプレイ等) > 言語活動、認知能力の改善、概念の習得(音読の補助、文字の構成指導) > 運動機能の協応性や巧緻性の困難の改善(折り紙、ひも結び、手と目の協応等) > 情緒の安定を図るための心理的不適応の改善(調理、植物栽培等) > 生活のリズムや基本的な生活習慣の形成(日記、予定表の作成等) > 障害特性に応じた学習支援、教科指導の補充(文字、計算の指導等) 27ページ 通級指導教室での指導内容と教育的効果について ※大阪府内の通級指導教室の調査結果(H24)より  ○グラフ表示 こんな指導・支援の内容で  通級指導教室での指導・支援内容(主なもの) ソーシャルスキル・トレーニング 167教室 コミュニケーション能力トレーニング 163教室 運動や音楽等の活動 108教室 言語活動 137教室 ICT機器を活用した指導 102教室 障害特性に応じた学習指導の補充 195教室 こんな教育的な効果が 通級指導教室に通う子どもに見られる効果について  集中して学習に取り組める時間が長くなってきた 1296人  苦手な学習にも取り組めるようになった1089人  書き間違い、読み間違いが減ってきた 837人  集団での学習にルールを守って参加できるようになってきた764人  意見や考えをわかりやすく話せるようになってきた 753人  聞き返し、聞き間違いが減ってきた 658人  友達の気持ちや状況を理解できるようになってきた 615人  宿題や提出物の期限を守れるようになってきた 560人  自分の順番を待てるようになってきた 556人  時間を守ったり時間配分ができるようになってきた 521人  忘れ物が減ってきた    486人  暴言や失言が減ってきた 481人  授業中の立ち歩きや教室からの飛び出しが減ってきた 430人  整理整頓ができるようになってきた 364人  28ページ (8)入院して治療を受ける子どもたちの支援について 病気等で入院する子どもたちやその保護者は、病気や治療のことで不安な状態に置かれています。また、学校の勉強のことや友だちのことなど、たくさんの気がかりなことを抱えています。これらの病弱の子どもたちに、必要な支援をおこなっていく必要があります。 1 入院中の子どもたちの学習を保障する手だて 院内学級(支援学級) 入院した病院にしょうちゅう学校の院内学級がある場合、入級して授業を受けることができます。院内学級を設置しているしょうちゅう学校に転籍して教育を受けます。 院内学級(支援学校) 入院した病院に支援学校またはその分教室がある場合、そこで授業を受けることができます。 教室を設置している支援学校に転学して教育を受けます。 訪問指導(支援学校) 入院した病院に院内学級がない場合、支援学校から訪問指導を受けることができます。 訪問指導を行う支援学校に転学して教育を受けます。 (1)担当医師の許可のもと、入院しながら学習指導を受けることができます。 (2)不安な気持ちや思いに寄り添った指導を大切にしています。教科学習以外にも、しんたい面やメンタル面の健康維持や改善を図る学習を行うこともあります。 (3)ぜん籍校(もとのしょうちゅう学校)と連携を図りながら各教科等の学習を進めます。 (4)具体的な手続きは、市町村教育委員会と相談して進めます。 2 ぜん籍校であるしょうちゅう学校で大切にすること 入院している子どもたちやその保護者は、病気のことに加えて、退院後に、もとのしょうちゅう学校に戻ることについての不安な気持ちも抱えています。この子どもたちの不安を少しでも和らげ、退院後にスムーズにもとの子どもたちの集団に戻れるように、子どもの気持ちに寄り添い、学級の子どもたちの必要な情報提供や学級とのつながりを維持していくことが大切です。 ○いろいろな不安の例 子ども 学校のみんなはどうしているかな? 運動会はどうだったんだろう? みんな私のこと覚えているだろうか。 新しい担任の先生はだれかな? 保護者 わが子は退院後に学習についていけるだろうか 子どもとの関わり * 院内学級と連携し、学級の仲間とのコミュニケーションの場(学級通信、作品の交流、メールなど)を設定し、自分の居場所が実感できるような配慮が必要です。 * 学習状況・教材などを引き継ぎ、院内学級での指導につなげます。また退院の際には、同様に引き継ぎます。 * 本人が気になっている学校の情報や様子なども、直接または保護者を通じて、必要に応じて定期的に伝えます。 保護者との関わり * 病状についての情報や病院での様子、学習の進度について、保護者と十分に情報交換し、信頼関係を築くことが大切です。 * 個人情報などは、十分注意して取り扱うようにし、病状等を学級の子どもたちに知らせるかどうかなど慎重に協議が必要です。 29ページ (9)医療的ケアを必要とする子どもたちの教育 ○ 安全・安心の環境づくりのために 大阪府内では、多くの医療的ケアを必要とする子どもたちが、地域のしょうちゅう学校へかよっています。医療的ケアを必要とする子どもが安心・安全な環境で学校生活を送れるように、市町村では看護師の配置が進められています。大阪府では「市町村医療的ケア体制整備推進事業」を実施し、市町村に対し、看護師の費用の一部補助をしています。看護師配置は、医療的ケアを必要とする子どもが安心して学校生活を送るために必要な、「障害者基本法」で示されている「合理的配慮」のひとつであると言えます。 教職員が、日常的な関わりを通じて、まず対象の子どもの思いやニーズをしっかりと受けとめることが必要です。また、医療的ケアにおける基礎的な研修を実施する等、医療的ケアについての理解を深めることも大切です。 ○ 地域の学校で「ともに学び、ともに育つ」 子どもの育ちにとって、子どもどうしのやりとり、ことばや表情、行動やしぐさなど、直接投げかけられるものはもちろんですが、直接的ではなくても、子どもどうしのやりとりの中にいること、そばに仲間がいることも、子どもにとっては大きな関わりの一歩になります。そして、仲間の声掛けに反応して気持ちを表現したり、友だちとの関わりが深まるなどのよさがあります。さらに、子どもたちの育ちにとって、子どもどうしが日々互いに接することで、柔らかい関わりや一緒に学ぶ喜び、ともに学校生活を送るための行動力が育っています。 子どもたちは、教室で仲間とともに授業をはじめ、休み時間や給食・弁当等の時間を一緒に過ごすなど、ともに学校生活を送ることから、お互いの気づきがあり、理解、関わり、つながり、すなわち、お互いに仲間であると感じ合える関係性が育まれます。 事例 医療的ケアを必要とする子どもが通うしょうちゅう学校でのとりくみ <エイ小学校でのとりくみ> エイ小学校では、子どもどうしの関わりや授業・活動へ一緒に参加することを大切に考え、教職員と看護師がチームを組み、保護者 ・医療機関・福祉機関等と連携しながら、とりくみをおこなっています。 ○ 教育目標・ねらい・願いをもとに  対象の子どもの状況や本人・保護者のニーズをふまえて、通常の学級の担任と支援学級の担任が、教育目標を決め、学習活動を 進めています。 ○ 子どもたちの互いのつながりと安心を大切に 授業や活動に支障なく、みんなと一緒に参加できることを第一に考え、看護師が実際に、どこで、どのタイミングで医療的ケアを実施するか、判断・調整のうえ、ケアを実施しています。 ケアや介助にあたっては、周りの子どもたちとの関係性の構築の支障とならないよう配慮しています。 <B中学校でのとりくみ> B中学校では、時間割作成や学校行事にあたって、医療的ケアの必要な子どもの実態をふまえた立 案・計画をおこなっています。 ○ 時間割編成 対象の子どもが医療的ケアにより授業から抜けなくていいよう配慮しています。(例:水分補給との関係で、3・6時間目に体育が入らないようにしている等。) ○ 体育大会 対象の子どもが他の子どもとともに出場する種目に参加できるよう、医療的ケアの実施時間帯をあらかじめ考慮して体育会のプログラム(種目順)を計画しています。 ○ 宿泊学習・校外学習 下見の段階であらかじめ車いすの動線、休憩場所、給湯設備、医療関係設備、救急搬送先等を確保し、当日のスケジュール表に対象の子どもや看護師・支援学級担任等の動きを詳細に記入し、安心して仲間と一緒に活動できるように配慮しています。  30ページ 2.「ともに学び、ともに育つ」授業づくり・集団づくりについて  大阪府では、これまでから、障がいのある子どもを含めたすべての子どもが「ともに学び、ともに育つ」教育を大切にしてきました。 障がいの状況の重度・重複化や多様化などに応じ、支援や配慮が必要な子どもたちに対して、支援学級や通級指導教室などの場を活用し、個々のニーズに応じた指導をおこない、一人ひとりの子どもが、達成感や自己肯定感を感じられるようなとりくみを進めてきました。   文部科学しょうが実施した「通常の学級に在籍する発達障がいの可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(平成24年12月)の結果によると、「学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた子どもが通常の学級に約6.5%在籍すると言われています。 先の調査の協力者会議による調査結果の考察の中では、「学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒を取り出して支援するだけでなく、それらの児童生徒も含めた学級全体に対する指導をどのように行うかを考えていく必要がある。」とし、子どもが理解しやすいよう配慮した授業改善を行うなどの対応が必要であると述べられています。 通級指導教室での個別支援を受けながら、学校生活を送る子どももいますが、大半の子どもは、1日の多くを通常の学級で生活しています。学校生活でも最も長い時間を過ごすのが「授業」という場面であり、「学級」という場です。その授業の中で、学級担任や教科担任が、個々の子どもの特性や「学び」の特徴を知り、それぞれが指導する教科や学習の中で活かせるよう工夫や配慮をすることが必要です。 あわせて、「ともに学び、ともに育つ」教育の基本となる、集団の中での学びは大切であり、子どもどうしで相手の「よさ」や「困り感」を共感・共有し、すべての子どもにとって安心して学べる集団、居心地のよい集団づくりがいっそう求められています。 校内での共通理解のもと、全教職員が一貫した指導をすることで、子どもの混乱を減らし、進級や進学する際の移行がスムーズとなります。また、これらの工夫や配慮は、発達障がいのある子どもだけではなく、すべての子どもにとって有効な支援であり、このような考え方に基づいた実践を進めていく必要があります。  参考 発達障害について 発達障害には、広汎性発達障害【PDD】(自閉症スペクトラム障害【ASD】)、注意欠如多動性障害【ADHD】、学習障害【LD】などがあります。 発達障がいのある子どもの学習面、行動面、対人関係面などにおける困難の状態はさまざまです。学習面においては、興味のかたよりによる教科の得意、不得意の差が大きくなっていることに加え、感覚の特性による不便さ(例えば、定規やコンパスがうまく使えないなど)、空間認知の困難さなどがあります。 また、行動面においては、突然の予定変更や環境の変化への対応の困難さ、対人関係面では、相手の気持ちや感情の理解が困難であるなど、様々な困り感があります。  発達障がいのある子どもの特性をよく理解するとともに、教職員が、子どもたちの困り感への気づきと、その困り感のある子どもに寄り添う気持ちを持つことが必要です。 31ページ (1)ユニバーサルデザインの観点を取り入れた授業づくり * 授業におけるユニバーサルデザインとは 「学力の優劣や発達障害の有無にかかわらず、すべての子どもが、楽しく『分かる・できる』ことをめざし、教科における工夫や、さまざまな子どもへの配慮、個に特化した配慮を駆使して行う、通常学級における授業のデザイン」であるとしています。  (国立特別支援教育総合研究所発達障害研究情報センター長・廣瀬由美子)  週刊教育資料(平成24年3月5日号掲載)より抜粋  * ユニバーサルデザインの観点を取り入れた授業では、次のような工夫がなされます。 1教室・学習環境の整備 ・黒板の周りから不必要な掲示物を取り除き、黒板に集中しやすいようにする。 ・マークや色チョークなどを効果的に使用し、文字の大きさ、行間に配慮する。 ○写真  不必要な掲示物を取り除いた黒板周り 2授業構成の工夫 ・1時間の授業の流れを予告し、見通しがもちやすい導入を行う。 ・「何を」、「どんな順番で」、「どう取り組んでいくのか」を具体的に伝える。 ・授業の型・学習形態を一定にする。  ○吹き出し説明 毎授業、同じことから始めるおび学習や、15分単位で活動内容を展開するなど工夫する。 3指示・説明・発問の工夫 ・指示は、抽象語を少なくし、具体的に分かりやすく伝える。      ○吹き出し説明 「適当に」「ちょっと」「5分くらい」は抽象的でわかりにくい。 ・「1つめは・・・」、「2つめは・・・」等、単文で行動する順番をつけて話をする。 ・否定ではなく、肯定的な表現を使う。    ○吹き出し説明「〜してはいけない」ではなく、「〜しましょう」という表現を用いる。 ○写真  ノートのマス目と同じしょう黒板が使われている 4複数教材の用意 ・簡単な言葉で、気が付きやすい場所に掲示する。 ・イラストや写真、視覚教材、プロジェクター等、視覚的アイテムを活用する。 5認め合う学習集団づくり ・できたことをタイムリーかつ適切に評価する。 ・助言するときは、具体的に肯定的な表現を用いる。 ・注意するときは、その場で短く、具体的に行う。  ○吹き出し説明 いけなかったことだけを端的に指導する。  「いつもこうだ」「前にもこんなことがあった」などは、効果的な指導とならない。 32ページ * ユニバーサルデザインの観点を取り入れた授業づくりは、 すべての子どもにとって、「わかる・できる」授業をめざします。 学習におけるユニバーサルデザインの視点を取り入れることは、大阪府が進めている「ともに学び、ともに育つ」教育を進めていくうえで、非常に重要な意味を持ちます。 授業内容を少なくしたり、課題の難易度を下げたりすることで、すべての子どもがわかりやすい授業をつくるということではなく、指導法を工夫し、環境要因を調整することにより、すべての子どもにとって、学びやすくする授業づくりです。 これによりすべての子どもたちが自信を持ち、自己肯定感を高めることができるといえます。 特別な配慮をするということだけではなく、これまで、教科教育で様々に工夫してきた構造的な板書やねらいに導く発問、教室環境の整備などを活かすことが重要です。  ○写真 「誰が」「何をする」わかりやすい当番表   写真 「あと、何が残っているの?」わかりやすい日直の仕事  ○ユニバーサルデザインの授業づくりのイメージ図   支援を必要とする子どもへの配慮は、すべての子どもにとってより良い効果をもたらす  「大阪の授業スタンダード」平成24年5月大阪府教育センターより抜粋 33ページ (2)なかまづくり 「ともに学び、ともに育つ」教育を進めるためには、一人ひとりの子どもたちが、なかまの願いや思いを共感的に受けとめることのできる豊かな感性や、なかまとともに問題を主体的に解決していこうとする実践的な態度の育成等、人権尊重の教育の充実を図り、いじめをなくす実践力を培う必要があります。 障害理解教育など人権課題に対応した教材による学習や体験活動を行うとともに、子どもたち自らの生活との関わりや、身近ななかまとのつながりを意識させることが大切です。 特に、障害のある子どもが入学・入園した際には、周りの子どもとよい出会いを築き、子どもどうしをつないでいくことが、その後のなかまづくりの土台となります。  事例  ゆたかなかかわりあいを求めて ― 障害のあるエイさんを中心にした学級づくりから学年、学校へ ― 人権教育のための資料6(大阪府教育委員会H17.3)より抜粋 1 題材設定の理由 小学校に入学してから卒業までの6年間で、教職員全体が子どもの成長をどのように支援し、関わっていくかは大変重要なことである。 特に、障害のある子どもが入学してきた時には、その子どもに対する支援はもちろんのこと、周りの子どもたちの障害に対する理解となかまとして温かく受け入れるための学校としてのとりくみが、大変重要になる。学級や学年のとりくみに終わらず、学校全体としての障害理解へのとりくみが、子どもの心の醸成につながると考えている。 本校には、6ヶ月のそうざんで生まれしんたい的に障害があるエイさんが入学してきた。エイさんには、学習や当番の仕事、移動などやいろいろな面での支援が必要であるが、自分でできることはみんなと一緒にやろうと常に努力している。 1年生の子どもたちは入学して以来、1学期は自分のことに精一杯で、エイさんに関わる子どもは幼稚園で一緒だった子どもや、ごく一部の周りの子どもだけであった。 低学年の間は、担任が声をかければ積極的にエイさんに関わろうとするだろう。中学年・高学年と進んだ時、周りの子どもたちが担任からの声かけではなく、自分の意思で自然にエイさんに関わっていけるようになることが大切である。 このような理由から、6年間を見通したうえで、1年生の間に何をすればよいのかを考え、エイさんを中心に据えたとりくみをおこない、学校全体の障害理解をさらに深めるきっかけにしていきたい。 2 とりくみの目標 @ 聞き取りなどの体験学習を通して、エイさんの生活に共感するとともに、エイさんに対する理解を深める。 A お互いのよいところを認め合い、助け合う集団づくりを、学級全体、学年全体へと広げていく。 34ページ 3 活動の流れ 1 始業式での全校児童への呼びかけ、施設・用具面での支援 2 エイさんの誕生「四つ葉のクローバー物語」(パネルシアター形式で紹介) 3 「装具をつけると」、「盲導犬との出会い」 4 運動会参加のとりくみ、「エイさんの姉の作文から」 5 「いいとこみーつけた」カードの取組み 6 つながり集会「しろいぞうのはなし」 7 学年合同公開授業 4 展開例 1 みんなと違ういす、机、斜面台 ○斜面台を使用する児童の写真 学校では、エイさんのお母さんの了承を得て、始業式に全校児童に対して障がいのあるなかま が入学してきたことを紹介し、廊下や階段の歩き方など自分の安全も含めて注意するように話 をした。 施設・用具面での支援については、エイさんは、みんなと同じいすに長時間座っていることがで きないので、いすには体に合わせたクッションがつけてある。 また、眼鏡をかけて0.07の視力であり、字を書いたり読んだりする時、目を机に近づけ姿勢が悪くなることから、通院している病院と連携して斜面台を作成し、良い姿勢を保って学習できるようになった。机も、斜面台を置くためみんなより大きい。 国語は、拡大教科書をボランティアのかたに作っていただいて使用している。 入学後すぐに、学級では、エイさんのお母さんから、生まれた時からの写真を見せてもらいながら、なぜ、みんなと違うのかの話を聞いた。 2 エイさんの誕生「四つばのクローバー物語」(パネルシアター形式で紹介) エイさんのお母さんに協力を得て、エイさんの誕生する時の様子をパネルシアター形式に作成し、支援学級との交流会で学級の友だちに紹介した。 (前略) ある三つばの家族は、エイちゃんが生まれ四人が力を合わせて、四つばのクローバーの家族になりました。 (中略) 本当は、赤ちゃんはお母さんのお腹の中に10ヶ月位いるのに、わずか6ヶ月で生まれてきました。体重は、たった728グラム。4分の1ぐらいの体重しかありませんでした。 《お医者さん》「できるかぎりのことはしますが、こんなに小さくては、無事に大きくならないかもしれません。」 《父》「小さく生まれても、大切な命。わたしたちのかけがえのない子どもだ。」 《母》「ええ。」 お医者さんや看護師さんの懸命の努力で、エイちゃんは155日間も入院しましたが、ようやくおうちに帰ることができたのでした。 (中略) エイちゃんは、早く生まれ過ぎたために、お母さんから充分な栄養をもらうことができませんでした。そのため、足がマヒして、うまく歩けない、身体の右半分がうまく動かない、見る力が弱いなどの障がいが残りました。でも、がんばろうと努力する気持ちは誰にも負けません。  35ページ 3 装具をつけると・・・ 子どもたちが、エイさんがつけている装具を持ってみたり、自分たちも装着してみたりするこ とによって、一日中装具をつけているエイさんのことを少しでも理解できたらよいと思って、や ってみた。子どもたちは、Aさんと自分たちの違いに気づき、エイさんにとって装具の大切さが分かった。  ○エイさんの思いについて理解を図る掲示物等の写真 4 運動会参加の取組み 「運動会50メートル走、どうする?」 装具をつけて歩いているエイさんが、運動会で50メートル走はどうしたらよいか子どもたちに相談してみた。 「エイさんは遅いから、ぼくの弟といっしょに走ったらいい。」「だれかがおんぶして走ったらいい。」などいろいろな意見がでた。 「エイさんに聞いてみよう。」ということになって聞いてみた。 エイさんはみんなの前で「みんなと走りたい。」とはじめてはっきりと言った。 その後、練習の過程で50メートルは走れないということがわかり、距離を短くするのがいいということになった。 結局エイさんは15メートル前から出発することになった。 このことにより、思っていた以上に子どもたちがエイさんのことを分かろうとしていることに気づいた。 また、学級の子どもたちは、エイさんのことに限らず、何でもみんなでいっしょに考えていくことの大切さに気づいた。 ○運動会で走る写真 ●エイさんの姉の作文からの広がり <運動会の練習をしているエイさんを気づかっていた3年生のエイさんの姉の作文> 「妹のこと」 妹は早く生まれたから、とても小さい赤ちゃんでした。ずっとほいくきにはいって入院していました。足が弱いから、そうぐをはいています。それと、右手も弱いです。目も見えにくいから、めがねをかけています。めがねをはずしたら、近くは見えるけど遠くはあまり見えません。 でも妹は、小さい時から、やる気マンマンで、何でもチャレンジしていました。(中略) 妹は、どんなことでもみんなといっしょのことがしたいので、いつでもはりきっています。妹を見ていると、おうえんしたくなります。そして、すごいなと思います。  36ページ <壁新聞ひまわりだよりへの作文の掲載> 全校児童に紹介するため、全学級分手作りで支援学級の壁新聞ひまわりだより「運動会特集」に掲載したところ、作文を読んだ6年せいが、エイさんとエイさんを支えてくれている学級のみんなに対して「運動会をがんばってね!」という気持ちを込めて寄せ書きを贈ってくれた。   ○壁新聞の写真 5「いいとこみーつけた」カードの取組み 学級のみんなが、お互いにやさしく、認め合う関係をより深めるために、「い いとこみーつけた」カードに取り組んだ。 初めは、カードをなかなか書くことが できなかった子どもやカードをもらえない子どもがいたが、友だちのことを意識 することにより、すべての子どもが書けるようになり、どの子どももかたよること なくカードをもらえている。 カードを書くことによって、友だちの良いところをみようとし始めた。また、お 互いがとてもやさしくなれたと思う。       ○階段を仲間と歩く写真 6 つながり集会(全校人権集会・・・1年せいから6年せいまで人権の課題について発表) 1年生は障害理解を中心に取組み、かこさとし作「しろいぞうのはなし」を 選んだ。違いを認め合いながら、暮らしているゾウの群れのお話を通して、この お話の豊かさを感じ取ってもらいたいと願った。 読み聞かせをし、お話のイメージが広がったところで、それぞれが描きたい場 面を選び、絵を描いた。 大きく映し出した絵をバックに、大きな声で一人ずつ気持ちを込めてセリフを 言った。全校生の前で発表し、大きな拍手をもらった。  ○しろいぞうのはなしの絵の写真 7 学年授業 「みんなでエイさんのことを理解しよう!」 学年の子どもたちは、これからもエイさんと共に育ち合うことから、2組にもエイさんのことをわかってもらう必要があるので、「エイさんの誕生『四つばのクローバー物語』」の授業を学年で行なった。 また、全校の教職員にも知ってもらうために、この学年授業を校内の研究授業として設定した。2組からの質問に1組の子どもたちは自分のことばで、動作も交えながら答えていた。この授業の後、2組にもエイさんに少しずつ関わる子どもたちが見られ始めた。 37ページ 5 成果と課題 学級は、相変わらずにぎやかではあるが、もめている中身が変わってきた。 時には、エイさんの周辺でおこる様々な問題をどう解決するかを話し合う時に、意見が食い違うこともある。エイさんを含め、みんながより良く過ごすために、その都度どうしたらよいかをみんなで考え始めた。 そんな中で、エイさんといっしょに過ごすことで、人とつながるここち良さも感じはじめたように思う。よく見ると、たくさんの子どもがいろいろな形でエイさんに関わったり、工夫をして一緒に行動したりしようとしている。 1学期は休み時間などには自分の席からほとんど動くことがなかったエイさんも、2学期には友だちのほうに自分から近づいていき、みんなの前で発表することもできるようになった。すべての子どもが、自然たいでエイさんに関われるようになった。 どの子も困ったときには、お互いが自然に助け合える関係を、どの学年でも築き上げていくことがとても大切である。 今後の課題としては、障がいのある子どもを学級・学年の壁を越えて学校全体で理解し、ともに成長する仲間として認める取組みをさらに進めていくことと、エイさんが高学年や中学生になった時に、周りの子どもたちが自分の意志でエイさんに関わることができるように、子どもの成長に合わせた丁寧な取組みを続けていくことである。 (3)交流及び共同学習について 支援学級担任と通常の学級担任や教科担任とが連携し、支援学級に在籍する子どもが、通常の学級で学ぶ機会を充実することが大切です。 交流及び共同学習を充実することにより、障がいのある子ども自身の成長を促すとともに、障害のな い子どもにとっては、障がいのある子どもに対する理解と認識を深め、「ともに学び、ともに育つ」学級集団づくりが可能となります。 その際、次の点について、配慮することが必要です。 ? ただ単に同じ時間、同じ教室で学習するというだけでは、学習活動の交流及び共同学習の目的は達成されるものではない。 ・「個別の指導計画」に基づき、交流及び共同学習において、障がいのある子どもにどのような力をつけるのかを明確にした上で、学習活動の工夫を図ること。 ・ 学習活動においては、障がいのある子どもを含めたすべての子どもの目標を明確にしたうえで、子どもたちをどのようにつなぐかという具体的な工夫を図ること。 参考 障害者基本法 第16条の3 (平成16年・平成23年 一部改正) 「障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を 積極的に進めることによって、その相互理解を促進しなければならない。」 学習指導要領 総則(小学校・中学校)(平成20年告示) 「小学校かん、幼稚園や保育所、中学校及び特別支援学校などとの間の連携や交流を図るとともに、障害のある  幼児児童生徒との交流及び共同学習や高齢者などとの交流の機会を設けること」 38ページ ○交流及び共同学習 実践例 事例 1 それぞれの教育課程上の工夫によりともに学ぶ(エイ小学校での実践例) 支援学級での「自立活動」をアレンジし、ともに通常の学級の「体育科」で学ぶ エイ小学校には、肢体不自由の支援学級があり、障がいのあるBが在籍している。Bは、脳性麻痺の障がいがあり、緊張すると手足に力が入ってしまうため、支援学級において自立活動の時間を活用し、「体のばし」をおこなっている。 また、通常の学級では、体育科の授業で、毎時かん「体つくり運動」を取り入れている。この「体つくり運動」は「体ほぐしの運動」と「多様な動きをつくる運動」の2種類の運動で構成されている。このうち、「体ほぐしの運動」では、「体を動かす楽しさや心地よさを味わうとともに、体の基本的な動きができるようにする。」ことを目的にしている。(小学校学習指導要領) そこで、Bと通常の学級の子どもたちが、体育科の授業の場でいっしょに学習活動に取り組むため、それぞれの教育課程を工夫し、体育科の「体ほぐしの運動」に支援学級でおこなっている「体のばし」の内容を取り入れ、授業の冒頭で行うこととした。 当日は、日頃、支援学級で「体のばし」の指導を担当している支援学級担任が全体の指導にあたり、通常の学級担任がBのサポートを担当した。双方の担任で打ち合わせをおこない、通常の学級の子どもたちが取り組んで効果があるように、支援学級での「体のばし」の内容をアレンジしておこなった。 自立活動と体育科の教科学習の双方の教育課程上の工夫を行うことで、従来は、Bと学級の子どもたちが別の場所でおこなっていた学習活動を、Bを含む学級全員で一緒に体育科の授業の中で実施することができた。さらに、Bにとっては通常の学級の仲間とともに体育科の授業に参加する機会となり、周りの子どもたちにとってはBが普段おこなっている学習の内容を知ることができた。 これらは、通常の学級担任と支援学級担任が、ともに学ぶことの大切さを共通理解しながら、お互いの指導内容について情報共有をおこなっていたことによる。 事例 2 集団のよさを生かして理解を進める(B小学校での実践例) 個別指導でもできるが集団で学ぶことでより理解が深まる(算数科の授業) B小学校には、知的障がいの支援学級があり、1年生Cが在籍して いる。Cは、落ち着いて学習に取り組むことはできるが、学習内容に ついての理解には時間がかかる。そのため、現在は国語と算数の時間 は支援学級での個別指導・支援を受けている。 1年生の算数では、「大きな数」の単元に取り組むにあたり、しょうにんずうによるグループ学習に取り組むことにした。これまでの「10のま とまり」の学習をもとに、互いが協力し合うことで、より大きな100までの数の理解へつなげたいと考えた。そして、支援学級で一人で算数に取り組んでいるCも班学習に参加し、周りの子どもたちと一緒に学習することで、学ぶ楽しさを感じられるだろうと考えた。 班学習では、Cが支援学級で利用しているおはじきを学級全体分準備し、Cが戸惑うことなく学習に参加できるようにし、グループの中で役割を分担し、Cには「10のかたまりをつくる」活動が割り当てられた。学習の中では、Cが支援学級での学習を活かし、おはじきで「10のかたまり」をつくった。周りの子どもたちは、Cがつくった「10のかたまり」を活用し、大きな数についての理解を深めた。Cも班学習の中で活躍することができ、周りの子どもと一緒に、楽しく学びながら数量感覚を豊かにするというねらいを達成できた。 また、ともに学ぶことを通して、互いのよさやがんばりについて気づくことにもつながった。「交流及び共同学習」として算数科の学習を行うことで、個別指導で行う場合よりも多くの学びがすべての子どもたちにあることが見て取れた。  39ページ  事例 3 日常的な自然なかかわりのなかで自尊感情や対等な関係を育む(C小学校での実践例) 日々の清掃活動に協力して取り組むことで対等な関係性を築く C小学校では、清掃活動を「交流及び共同学習」と位置づけ、毎年5年生の子どもたち        が、支援学級在籍の子どもとともに、支援学級教室の清掃活動に取り組んでいる。 清掃活動は、支援学級の子どもたちにとっては、道具の使い方やゴミの処理の仕方など、生活していくうえでのスキルを身につけるための「自立活動」の一環に位置づけている。  実際の清掃活動では、5年生の子どもと支援学級の子どもが役割を分担して、協力して清掃を行うことで、互いの清掃のやり方を評価しあったり、協力して清掃を担うことで、互いに自己有用感を高め、一方的な「してもらう」「してあげる」関係ではなく、協力して取り組む「対等な関係性」を築いている。  また、支援学級での清掃活動を経験し、支援学級の設備や備品・教材等にふれることで、支援学級での学習への関心を高めるとともに、5年せいが次年度に6年せいとなり、児童会活動などの学校行事を中心として進めていくうえで、常に支援学級との交流を活かしたとりくみにつながっている。 事例 4 教科の学習内容と連携し、ともに学ぶ場をつくる(D中学校での実践例) 教科学習の中で支援学級の子どもが活躍する場面をつくる D中学校では、毎年、音楽の時間にクラス全員による合奏に取り組んでいる。クラスに、支援学級に在籍する子どもがいる場合は、教科担任と支援学級担任・通常の学級担任が連携し、合奏の中で支援学級在籍の子どもが活躍できる場面を設定している。 支援学級に在籍するEは、自閉的傾向が強く、なかなか周りの人とコミュニケーションを取りづらい状況にあった。しかし一方で、支援学級での自立活動での表現活動には積極的に取り組み、特に打楽器の演奏には、リズムに合わせて手や木の棒をたたくなど、興味・関心を持って取り組めていた。そこで、支援学級担任と音楽の教科担任がEの状況や支援学級での授業の様子、授業で計画している合奏の内容などを情報共有したうえで、Eが興味を持って取り組める「クラベス」という打楽器を選んだ。この打楽器は、2本の棒状の木片を打ち合わせることで明るいカチカチとした音を出すもので、両手で演奏がしやすい。そのうえ、これまでの音楽の授業では紹介しておらず、周りの子どもたちにとっても初めて見る楽器であることが、選んだ理由である。また、周りからもう一人打楽器の希望者を募り、ふたりでパート練習などに取り組める体制をつくった。 練習には、Eにたたくタイミングがわかりやすいクラベス用の楽譜をつくり、打楽器担当のふたりが協力して練習に取り組んだ。また、支援学級での自立活動の中での表現活動の中でもクラベスを用いたリズム演奏を取り入れることで、Eがより自信を持って演奏できるようにした。 音楽の時間の各パート練習を終えての合奏の時には、ふたりで協力して演奏に取り組んでいるEの姿があり、周りの子どもたちも一人ひとりが、それぞれの楽器の役割を果たしながら一つの曲を演奏していることにとても満足な様子だった。この合奏は、校内の文化発表会で演奏され、大きな拍手をもらった。 教科学習の中で、障がいのある子どもの特性や意欲をふまえた全体の中での役割を設定し、クラス全員で目標に向けて協力していくことが大切であり、その過程で互いのがんばりを認め合える場面をつくることが求められている。 40ページ 居住地校交流(支援学校での取組み) 1 地域でともに生きるために〜居住地校交流の意義〜 支援学校では、在籍する子どもが、自分の居住地にある学校と交流する「居住地校交流」をおこなっています。   同じ地域で生活する子どもたちとともに活動することで、その子どもの可能性を伸ばし、仲間をつくり、将来にわたって地域の中でともに生きていく関係を作っていくことができます。また、居住地校の子どもたちにとっても、障がいのある仲間とのつながりや関わりを考えることに発展し、お互いに理解を深めていくことにつながります。 2 支援学校における交流及び共同学習の推進 「学校の教育活動全体を通じて、しょうちゅう学校の児童生徒などと交流及び共同学習を計画的、組織的に行う」ことが「特別支援学校学習指導要領」で示され、さらに、「障害のある子どもが、地域社会の中で積極的に活動し、その一員として豊かに生きることができるよう、地域の同世代の子どもや人々の交流等を通して、地域での生活基盤を形成することが求められている。」と文部科学しょう中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告で述べられています。このように、支援学校では居住地校交流を一層推進しています。 「居住地域の仲間とともに」 〜支援学校での居住地校交流の取組み〜 > 居住地校交流の実施体制について   4月当初、地域支援交流部から、居住地校交流について案内を行い、新規に希望があれば、担任を通して集約する。教頭が相手校と連絡を取り、交流承諾書を依頼する。承諾書が送られてくると、担任と相手校学年主任(または、交流担当)が連絡を取り合い、年間の計画を立て実施する。実施の際には、学部内で応援体制を作り、可能な限り担任が同行するようにしている。また、担任が居住地校交流の様子を記録し、地域支援交流部が集約を行い、次回(次年度)に向けて活用している。 > 居住地校交流での子どもたちの様子から   支援学校小学部5年生のエイは心臓機能障がいがあり、酸素療法が必要な児童であるが、保護者からの希望を受け、1年生の6月から交流を開始した。これまで年間5〜6回のペースで、国語、算数、理科、図工、総合学習、保健などの授業参加や、授業終了後の「あそび」を計画し、子どもどうしで楽しく遊ぶ場面を設けている。   1学期は、2度訪問し、授業後の休憩時間に「ウノ」で友だちと遊んだり、給食を一緒に食べたりして、時間を共有した。小学1年からの居住地校交流の積み重ねにより、自宅に遊びに来る友だちもできた。同世代の多くの友だちとの関わりを経験したことで、本校の友だちとの関わりの幅も増えてきている。   エイの居住地校交流を始めるにあたっては、酸素療法が必要ということもあり、居住地校(小学校)側の不安が非常に大きかった。そこで、まずは支援学校の担任が同行し、交流しやすい行事から始め、徐々に回数を重ねてきた。回数を積み重ねることで、不安なく対応できるようになるとともに、互いの人格と個性を尊重し支え合うことで、エイにとっても、居住地校にとっても、得るものが大きかったと実感できる。   こうした数年にわたるとりくみの積み重ねにより、居住地校も不安感から交流による教育的な期待感へとかわり、結果的に実施回数の増加につながっている。   子どもたちの能力や可能性を最大限に伸ばすとともに、支援学校と居住地校の教職員が連携し、高め合うことができることも居住地校交流の大きな魅力である。 41ページ 3.障害理解教育の充実  (1)障害に対する正しい理解と学びの在り方 各しょうちゅう学校において実施されている障害理解教育がさらに充実し、子どもたちの心に響くものとなるためには、理念や実践されている内容、学びかたなどを全教職員で再認識する必要があります。理念が共通理解されないまま、例年通りのとりくみに終わるなど、学級や学校の実態に即したものになっていなかったり、そのとりくみが、一過性のものに終わったりすることのないようにすることが大切です。 学びかたとしては、「主体的」「協力的」「参加的」「体験的」な学習になることが大切であり、障害理解教育を進めるにあたって大事にすべき点は次の通りです。  障害理解教育を進めるためのポイント ● 障害や障害者に対して、表面的な理解に終わらず、体験的に学ばせること 知識を単に一方的に教え込んだり、個々に学習させたりするだけでなく、子どもが、主体的・実践的に、他の子どもたちとも協力し合いながら、体験することを通して学習させること。自分で「感じ、考え、行動する」ことで初めて、目の前で起きたことに気づき、ただしく判断し、実践的に行動することができる能力が身につく。 ● 学校、学級の実態や子どもの発達段階に応じた指導内容であること 子ども理解に努め、学校、学級実態をふまえたうえで、それぞれに何を学ばせたいのかなど具体的なイメージを持つこと。 ● 年間指導計画にもとづいた計画的、系統だった指導であること これらの体験的な学習が、子どもそれぞれの中で深まり、広まり、自分の生き方と重ね合わせて考えることができるよう、発達段階に応じたねらいに基づいた系統的な指導を展開すること。さらには、しょうちゅう高等学校が、それぞれがどのような学びをおこなっているかなどを知った上で交流し、連携して取り組むこと。 ● 他教科や道徳、総合的な時間とも関連づけ、学校教育活動すべてを通して指導を行うこと ● 実施後は、教材やねらいが適切であったか、子どもの変容についての評価をおこない、次の指導に活かすこと この学習を通して、どのような力がついたのか、生活の場面にどう活かせたのかを振り返る機会があること。 (2) カリキュラムの作成 1 年間指導計画の作成のポイント ○ 子どもの発達段階に応じて、ねらいを明確にする。 (障害や障害児者に関して、聞き取り学習や体験活動等を通して、生き方や障害者を取り巻く課題を学び、「実践的行動力」を育成する指導の観点が必要である。) ○ 学校えんに在籍する障がいのある子どもと「ともに学び、ともに育つ」ことを通して、より深く理解するという観点を盛り込む。 ○ 障がいの種別や障害児者を広く理解するという観点から、学年の系統性を考慮して年間計画を作成する。 ○ 視覚支援学校・聴覚支援学校・支援学校との交流などについては、計画的に実施する。 42ページ 年間計画の例(小学校の例) ○学年・テーマと学期ごとの年間計画表 学年・テーマ 支援学級 友だちたくさんつくろう 1学期 ■支援学校との交流 ■なかよし遠足 ■サマースクール 2学期 ■なかよし運動会 ■支援学校との交流 ■しょうちゅう支援交流 ■造形遊び ■幼稚園との交流 3学期 ■支援学校とのもちつき ■なかよし作品展 学年・テーマ 1年生 じぶんがすき、ともだちもすき 1学期 ●支援学級との交流 ■支援学校のお友だちを送ろう 2学期 ■支援学校の友だちを迎えよう *「てやゆびではなそう」 (人権教育教材集、資料CD) 3学期 ●工作交流 学年・テーマ 2年生 ふれあおう、わかりあおう 1学期 ●いっしょに育てよう ■支援学校の友だちと写真交換 2学期 ■支援学校との交流見学*「ゆっくりゆっくり」 (人権教育教材集、資料CD) 3学期 ●おじいちゃんおばあちゃんとなかよしになろう 学年・テーマ 3年生 学び合い、力を合わせて取り組む子ども 1学期 *障害理解ビデオ鑑賞 ■支援学校との交流 2学期 ■支援学校との交流 *手話の学習 3学期 *「なぁなぁ、お母さん」 (人権教育読本にんげん「ひと、ぬくもり」) *「耳の聞こえないお母さん」 学年・テーマ 4年生 ふれ合おう、認め合おう そして 高め合おう 1学期 ■支援学校との交流 (壁新聞・迎え) *車いす体験 2学期 ■支援学校交流(送り) *もうひとつのオリンピックから 3学期 ●いっしょに遊ぼう 学年・テーマ 5年生  仲間を思いやり、自ら考え、活動しよう! 1学期 ■支援学校との交流 (壁新聞・迎え) *障害者からの聞き取り 2学期 ■支援学校との交流 (迎え) ●支援学級の仲間とともに 3学期 *「ぼくのお姉ちゃん」 ■支援学校との交流  (ビデオを送る) 学年・テーマ 6年生 思いやりの心を持って、自ら学び、主体的に考え活動しよう 1学期 ■支援学校との交流 ●ジャガイモ祭 *やさしささがし (自主活動) *アイマスク体験 2学期 *自主活動交流会 ■修学旅行の手紙交換 ■支援学校との交流 *「みえないって どんなこと?」 (人権教育教材集、資料CD) 3学期 ●いっしょに遊ぼう ■支援学校の仲間へ (卒業エール) 43ページ (3) 学習活動例  事例 1 幼稚園の事例 周りの子どもたちの理解をはかり、互いの気持ちを出し合う支援 同じグループのエイは、Bのことがいつも気になっている様子。 グループごとに並ぶ時に、担任がいつも一番前にBの座るシートを置くので、エイは二番目に座って  いた。 エイ:「なんでBちゃんは、一番なん?」「僕も一番になりたい!」 担任:「そうだね。Bちゃんは後ろに座ると、いろいろなものが見えてしまって、先生が読んでいる 絵本が見えなかったりするの。一番前に座ると絵本がよく見えるからなの。」 「エイちゃんは、後ろでも絵本が見えるもんね!」 エイ:「うん」 その後、絵本を読まない日があると、一番前に座っているエイじであった。 ≪考察≫  座る場所がわかり、安心できるようにBの座るシートを作った時にも、「どうしてBちゃんだけあるの?」と素直に疑問をぶつけてくるエイ。「ほしい人は、いつでも言ってね!」とエイを含め、要求してきた子どもたちの気持ちを受けとめ、一人ひとりにシートを作るようにしてきた。  この日、エイの「Bと同じようにしてほしい」と思う気持ちを感じながらも、十分受けとめることができず、担任の思いを先に伝えてしまっていた。  きっと、エイの心の中では、納得できなかったのではないだろうか・・・ 次の日、エイが納得できる方法を探っていきたいと思い、エイの思いをみんなに伝え、学級で話し合うことにした。 担任:「何かいい方法は、あるかな?」「グループで座らなくても、どこに座ってもいいんだよ。」 エイ:「グループで座りたい!」 C:「私は、一番でなくてもいいよ!」 D:「でも、僕も一番にすわりたいなあ!」 すると、 E:「前に座る人が順番に変わっていって、今日一番の人は、明日後ろに座るようにしたらいいのと ちがう?」 F:「それがいいな!」 周りの子どもたちもEの意見に賛成する。 エイ:「絵本を見るときは、Bちゃんが前に行ったらええで!」 次の日から、子どもたちは自分たちで順番を決め、グループごとに座るようになる。 エイは進んで決めた順番にBの座るシートを置き、絵本を見る時になると前に置いている。 ≪考察≫ 担任が学級のみんなに相談を持ちかけたことで、一人ひとりの子どもたちが素直に思いをひょうし、一緒に考え合うことができたこと、また、エイの言葉にBに寄せる思いが感じられうれしく思った。Bに対して関心をもち、かかわっていこうとするエイの気持ちを大切にしながら、お互いの関係を支えていきたいと思う。 また、教職員は、一人ひとりの子どもたちが大事にされていることを感じ取っていけるようなかかわりを、常に心がけていきたい。教職員が戸惑ったり、悩んだりした時には、子どもたちが大きな支えとなり、力を発揮してくれることを改めて感じさせられ、子どもたちと一緒に考えていくことの大切さを痛感した。 44ページ (4) 小学校(高学年)の事例 事例 目標 ○ 支援学級と通常の学級の子どもとの日常的な交流及び共同学習の節目に、人が発達していくことの意味や障害について学習し、共に生きる学校生活や社会をめざす。 ○ 5年せいでは、自分自身の心身の発達を知ることを通して、人は発達し続ける存在であることを知るとともに、障がいのある友だちを理解する。 ○ 6年せいでは、障害について知り、自分自身に関わることとして考え、障がいのある友だちについての理解を深める。 学習計画 【5年生 発達学習】 1 誕生以来の自分の成長を振り返り、人は同じ発達の道筋をたどることを知る。 2 成長には個人差や人によって違いがあることを知る。 3 発達とは、心身が成長する中で、階段を上るように、縦や横への広がりを繰り返し、できることが増えることだと知る。 4 「人にはそれぞれ違いがあり、発達の違いから生じるものもある」ということを知り、障がいのある友だちの困難や、周りからわかりにくい障害について理解する。 【6年生 障害理解学習】 1 5年じの「発達学習」を復習する。 2 様々な障がいがあることやその原因などを知る。 3 障がいのある人とない人がともに生活するために自分たちにできることを考える。 総授業時数 全6時間 (5年じ3時間・6年じ3時間) 教育課程上の位置づけ 総合的な学習の時間 ポイント 5、6年において、2年間を見通した学習計画 「障害」を理解するにあたり、自身の「発達」を振り返らせることからスタートさせる。 「発達」とは何かを学び、人は発達し続ける存在であることを知ったうえで、「人にはそれぞれ違いがあり、発達の違いから生じるものもある」ということを理解させる。 「障害」とは何かを知り、お互いを認め合い、支え合うことの大切さに気づかせる。 45ページ 3 中学校の事例 事例 目標 ○ 障害について学ぶことにより、偏見をなくすことをめざす。 ○ 障害とともに生きる人たちと出会い、交流することにより、理解を深め、身近な問題として感じ取ることができるようにする。 ○ 体験に基づき学んだことを、グループ・クラスの意見としてまとめ、学年全体としての共通意識を持たせる。 ○ 体験活動をきっかけに自分たちの身近な問題にも改めて関心を向けさせ、日常の学校生活の中で起こる差別やいじめを見逃さず、それを許さない態度と他人を理解しようとする姿勢を育てる。 学習計画 【事前学習】 1 「障がいとわたしたちの社会」(プリント)を読み、障がいとバリアフリー、ノーマライゼーション、ユニバーサルデザインについて学習する。 2 「スーパービート板」(おとたけひろただ著)を読んで、作者が自分を取り巻く人間関係の中で成長する姿や「障害者に対する心のバリアを取り除くために必要なのは、慣れと同時に他人を認める心だ。」という作者の言葉などから、「障害」、「心のバリアフリー」をキーワードに互いに認め合うこと、互いに支え合うことの大切さを学ぶ。 3 映画「ウィニング・パス」を鑑賞する。 4 体験学習のグループごとに、アイマスク体験や視覚支援学校・聴覚支援学校・支援学校の見学、「人権教育教材集・資料」CDなどの資料を学習する。 5 各体験活動先の日程に沿って、体験活動を実施する。 6 体験活動先 (視覚支援学校、聴覚支援学校、社会福祉協会ボランティアセンター、ケアハウス、ボランティアセンター、作業所など) 【事後学習】 体験活動のまとめ(冊子) 総授業じ数 全13時間 教育課程上の位置づけ 国語科、総合的な学習の時間、特別活動 ポイント 体験活動を行うまでの事前指導について十分時間を取るとともに、障がいや障がい者について多面的にアプローチする。 生徒の学習意識を高め、課題意識を明確にするため、訪問先について、事前学習を十分行う。 少人数でグループ活動が行えるよう、受け入れ先を数多く確保する。 46ページ (5) 高等学校の事例 事例 目標 ○ 体験学習を通じて、障害について理解する。 ○ 障害者や支援者等の体験談を聞き、そのリアルな生き方に触れることで、障害者をとりまく社会の課題や人権等について学び、自分自身の生き方を見直す機会とする。 ○ すべての人に優しい地域やあるべき社会の姿を考え、自分自身の進路選択も重ね合わせながら、その実現に寄与するための態度を育む。 学習計画 目標達成のためのプロセス 「感じる」⇒「学び、考える」⇒「行動する」 1「感じる」 ・点字・手話の学習、車いす介じょの方法やアイマスク体験を行う。 2「理解し、考える」 ・障害者や周囲の方の講演や校外での聞き取りなどを通じて、障がいや障害者を取り巻く課題や 人権問題について学ぶ。 ・バリアフリーやユニバーサルデザインの考え方について学び、健康で安全な社会とは何かを考える。 社会保障制度、社会福祉、地域社会の役割を学び、ノーマライゼーションの考え方に基づく福祉のあり方について考える。 ・障害者自立支援法について学び、障害者の自立と地域や社会の役割を考える。 3「行動する」 ・これまでのとりくみから学んだことをふまえて、だれもが住みやすいあるべき社会の姿を考え、その中で果たすべき役割について、グループでの学習や話合いを通じて、考えをまとめ発表する。 ・これまでの学習をふまえ、卒業後の進路選択も重ね合わせながら、理想とする社会の実現に参画する意識を育む。 総授業じ数 全9時間 教育課程上の位置づけ 特別活動、総合的な学習の時間等 ポイント 学年の目標を「個々の思いを伝え、お互いの違いを認め、支え合う集団を作る」とし、まず、様々な生徒の人間性や生き方にふれ、互いの違いを認め合い、支え合える人間関係が大切であることを認識させる。 この取組みを土台とし、障がいや障害者を取り巻く課題の理解を深め、社会のあり方を考え、自分自身の生き方を見つめ直す機会とする。 どのような地域、社会を創っていくのか、そこにどのように関わってゆくのかを考えさせる。 47ページ 4.いじめの根絶のために  (1) いじめ問題解消に向けた基本的な考え方(大阪府教育委員会発行「いじめ防止指針」より) 1「いじめは絶対に許されない」との強い姿勢で指導を行うとともに、いじめは、教職員の児童生徒かんや指導の在りかた及び学校の教育活動全体が問われる問題であるとの認識をもつこと いじめは、その子どもの将来にわたって内面を深く傷つけるものであり、子どもの健全な成長に影響を及ぼす、まさに人権に関わる重大な問題である。全教職員が、いじめはもちろん、いじめをはやし立てたり、傍観したりする行為も絶対に許さない姿勢で、どんな些細なことでも必ず親身になって相談に応じることが大切である。そのことが、いじめ事象の発生・深刻化を防ぎ、いじめを許さない児童生徒の意識を育成することになる。 そのためには、学校として教育活動の全てにおいて生命や人権を大切にする精神を貫くことや、教職員自身が、児童生徒を一人ひとり多様な個性を持つかけがえのない存在として尊重し、児童生徒の人格のすこやかな発達を支援するという児童生徒かん、指導かんに立ち指導を徹底することが重要となる。 2 すべての児童生徒の心の訴えに学ぶこと いじめの特性として、いじめにあっている児童生徒がいじめを認めることを恥ずかしいと考え   たり、いじめの拡大を恐れるあまり訴えたりすることができないことが多い。また、自分の思いをうまく伝えたり、訴えたりすることが難しいなどの立場にある児童生徒が、いじめにあっている場合は、隠匿性が高くなり、いじめが長期化、深刻化することがある。 それゆえ、何気ない言動の中に心の訴えを感じ取る鋭い感性、隠れているいじめの構図に気づく深い洞察力、よりよい集団にしていこうとする熱い行動力が求められる。そのうえにたった日常的な教育実践(理解教育)の推進が、いじめ問題の根本的な解決には不可欠である。 3 いじめ問題を教育の課題と捉え、いじめに関わった児童生徒同士の信頼関係の構築と人権を尊重する集団の高まりへとつなげること いじめにあった児童生徒のケアが最も重要であるのは当然であるが、いじめ行為に及んだ児童生徒の原因・背景を把握し指導にあたることが、再発防止に大切なことである。近年の事象を見るとき、いじめた生徒自身が深刻な課題を有している場合が多く、相手の痛みを感じたり、行為の悪質さを自覚することが困難な状況にある場合がある。よって、当事者が自分の行為の重大さ認識し、心から悔い、相手に謝罪する気持ちに至るような継続的な指導が必要である。いじめを受けた当事者は、仲間からの励ましや教職員や保護者等の支援、そして何より相手の自己変革する姿に、人間的信頼回復のきっかけをつかむことができる。 そのような、事象に関係した児童生徒同士が、豊かな人間関係の再構築をする営みを通じて、事象の教訓化を行い教育課題へと高めることが大切である。 4 いじめの未然防止及びいじめ問題の解決のためには、人権尊重の教育の充実を図るとともに、いじめをなくす実践力を培うこと いじめの未然防止にあたっては、教育・学習の場である学校・学級自体が、人権尊重が徹底し、人権尊重の精神がみなぎっている環境であることが求められる。そのことを基盤として、人権に関する知的理解及び人権感覚を育む学習活動を各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間のそれぞれの特質に応じ、総合的に推進する必要がある。 特に、児童生徒が、他者の痛みや感情を共感的に受容するための想像力や感受性を身につけ、対等で豊かな人間関係を築くための具体的なプログラムを作成する必要がある。そして、そのとりくみの中で、当事者同士の信頼ある人間関係づくりや人権を尊重した集団としての質を高めていくことが必要である。 48ページ 5 家庭、学校、地域社会など全ての関係者がそれぞれの役割を果たし、一体となって真剣に取り組むことが必要であること(連携及び環境の醸成) 「いじめは人間として絶対に許されない」という基本的な考え方は、児童生徒の自尊感情の高まりと関係が深い。学校教育の課題、家庭や地域の教育力の課題が指摘される中、今大切なことは、いじめの解決に向けて関係者の全てがそれぞれの立場からその責務を果たすことであり、児童生徒に、自分も他者もかけがえのない存在として大切にできる感性を育むことである。 そのために、「すこやかネット」等地域協働の活動を充実させる中で、地域社会の中に、いじめを許さない環境(雰囲気)を生み出すことが急務である。 (2)障害のある子どもに対するいじめ事象の最近の特徴 いじめは、「学校の内外を問わず、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じている」ものであり、重大な人権侵害事象ととらえ、根絶すべき課題として未然防止に努めなければならない。 しかしながら、府内公立しょうちゅう高等学校で障がいのある子どもに対する極めて悪質ないじめ事象が生起しており、以下のような特徴が挙げられる。 1 いじめる側にいじめの意識は薄く、比較的安易な気持ちでおこなっている事例が多い いじめは一般的に、集団とは異質なものに対して攻撃や排除をしようとして生起する。特に、障がいのある子どもに対しては、差別意識に起因して、いじめる側にいじめの意識が薄く、比較的安易な気持ちでおこなっている事例が多い。 2 隠匿性が高く、発見が遅れることがある 障がいのある子どもに対するいじめ事象は、いじめられる子どもが抵抗したり、周囲に助けを求めにくい状況があるため、学校側の発見が遅れ、子どもの異変に気付いた保護者からの指摘により、学校が初めて知るケースが見られる。 3 いじめが長期化し、より深刻な人権侵害事象となる場合が多い 隠匿性が高いため、いじめる側の子どももそのことを承知したうえで行為を続ける場合が多い。そのため、いじめが長期化し、いじめに関わる子どもが多数であったり、よりエスカレートしたりする傾向にある。また、障がいのある子と周りの子どもたちが対等な関係を築くことができていない時期(年度初めの早い時期)に多く見られる。 4 性的なことに関するいじめが生起している 中学校において、障がいのある子どもに対して、面白半分に自慰行為を強要する等、性的なことに関するいじめが生起している。 5 からかいや面白半分で撮影した動画や画像をネット上にアップする 情報技術の発達に伴い、最近のネット上のいじめやトラブルは、文字だけでなく、画像を伴うという特徴がある。一度流出した個人情報がネット社会に広がってしまい、重大な人権侵害に発展している。 49ページ (3)いじめ事象の解決に向けたとりくみ  「いじめ対応マニュアル」(平成24年12月)より 障がいのある子どもへのいじめ事象の特徴をふまえ、いじめ事象が生起した際にとりくみを進めるためのポイントと、解決に向けた対応の進め方について、以下に示します。実際のとりくみにあたっては、子どもの実態や事象の内容に応じて柔軟に対応していく必要があります。 1 学校長のリーダーシップによる迅速な初期対応 いじめじあんへの対応は、学校全体の課題として組織的に取り組む必要があります。学校長のリーダーシップのもと、校内で緊急体制を組み、子どもの状況を考慮しながら、迅速で的確な対応をおこないます。     ○対応表 1.学校長による対応の指示 ・訴えの内容、発覚経路の確認 被害状況の把握及び事実確認のための役割分担 指示系統の明確化と情報集約 整理の一元化 2.被害の子どもへの聞き取り 目的…正確な事実把握とケア 体制…子どもが話しやすい教職員が対応する 聞き取った内容の時系列での整理 3.加害の子どもへの聞き取り 目的…正確な事実確認と関係者の把握 体制…複数の教職員で対応する 聞き取った内容の時系列での整理 学校長の責任のもと、適切な時期に把握した事実等を所管教育委員会に報告し、状況により必要な支援を要請します。その後も、定期的に連絡を取り、学校と教育委員会が連携し、適切な対応をおこないます。 2 いじめ対策会議での情報共有と解決に向けた協議 今後さまざまな状況に対応できるよう、1で確認された情報を、いじめ対策会議のメンバーで共有します。対応方針を明確にし、関係教職員が連携して迅速に対応します。 ○対応表のつづき 4.いじめ対策会議 【メンバー】 ・学校長・教頭 ・生徒指導担当教員 ・養護教諭 ・スクールカウンセラー ・学級担任 ・その他関係教職員 など 【情報の共有】 確定された事実とさらに確認すべき内容の整理 いじめのひろがりの把握 【対応方針の決定】 被害の子どもや保護者への対応 加害の子どもや保護者への対応 学級等全体への指導(観衆・傍観者含む) その他必要な支援・指導等の検討 【専門家や関係機関との連携】 専門家の活用 関係機関との連携 【情報の取り扱い】 教育委員会への報告 その他状況に応じた対応(保護者・地域への説明、報道提供等) 5.関係教職員の役割分担 被害の子ども等への対応 加害の子ども等への対応 学級等全体への指導   50ページ 3 教職員と専門家等が連携したチーム対応 ケース会議で被害・加害の子どもへの具体的支援・指導の内容を共通理解し、状況に応じて、専門家等も含めたチームで対応します。 ○対応表のつづき 6.ケース会議・チーム対応 【被害の子ども等への対応】 心身の状態の見立て →子どもがどのような事態や場面に恐怖や不安を感じるかを理解する。 解決に向けた目標設定と方策の決定 →見守り体制や相談体制など子どもの心身の安心安全を最優先にする。 保護者への対応 →保護者の訴えや思いを受けとめながら、「いつまでに、何を、どのようにするか」等、具体的に心のケアや見守り体制を説明する。 【加害の子ども等への対応】 行為の背景や原因への見立て →いじめ行為の背景に環境等の課題がないか分析する。 解決に向けた目標設定と方策の決定 →把握された事実に基づき関係機関と連携し対応する。 →行為の責任を問うだけでなく、子どもの思いを十分聞き取る。 保護者への対応 →いじめの解決に向けて、学校と家庭が連携して対応することを確認。「いつまで、どこと連携し、何をどう行うか」等を説明し、保護者の理解と協力を得るよう努める。 7.学級等全体への指導・学級集団づくり ・観衆には、はやし立てる行為がいじめを拡大させること、傍観者には、見て見ぬふりがいじめを認める行為であることを理解させる。 一定の解決が図られるまで、4→6を繰り返します。「いじめ対策会議」で一定の解決が図られたと判断された場合は8に進みます。状況を見ながら7も並行しておこないます。 4 じあんの教訓化と継続的な取組み いじめの再発防止に向け、じあんを教訓化することを通して、被害・加害の子どもへの継続的な支援・指導と、再発防止に向けた教育活動全般の見直しをおこないます。     ○対応表のつづき 8. 校内研修等 【テーマ「じあんの教訓化」】 事実とこれまでのとりくみの確認(いじめ対策会議からの報告) 教職員の意識の点検 →「いじめは絶対に許さない」という共通認識を持てていたか。 →子どもの不安や悩みを受けとめ、心の理解に努めていたか。 →対応(初期・子どもへの聞き取り・関係修復)に問題はなかったか。 学校全体のとりくみの点検 →教育相談の目的について周知していたか、また、機能していたか。 →学校体制や対応に問題はなかったか。 →違いを認め合い、他者を尊重する心をはぐくむ教育を推進していたか。 →すべての子どもの所属感を満たし自尊感情を高めるとりくみをおこなったか。 →保護者、地域との連携や適切な情報提供をおこなってきたか。 再発防止に向けた専門家、関係機関、教育委員会等からの助言 まとめ 51ページ 9.生徒指導部会等 【再発防止に向けたとりくみの推進】 計画的な校内研修による教職員の資質向上 子どもの実態把握に向けた定期調査の実施 教育相談体制の整備・充実 子どもの主体的な活動の推進による絆づくり 家庭・地域との連携したとりくみの推進 その他 (4)いじめ事象の解決に取り組んだ事例に学ぶ ここでは、最近、生起したいじめ事象をもとに、いじめ事象の解決に取り組んだ事例を紹介します。  事例 1事象の内容 4月○日給食準備中、支援学級在籍の児童6年エイが、くしゃみをした拍子につばが食缶の中に入った際、同じ学級の児童Bがエイの背中を叩いた。 翌日、給食時間中等に同じ学級の児童B・C・Dが、エイの背中を肘でゴンと叩く、つねるなどし始め、殴るなどの行為をおこなった。 数日後の休憩時間、エイを殴るふりをして、驚かせる。 同日の下校じにも、叩く、つねるなどの行為が行われた。 2初期対応 (ア)学校で発見し、わかった場合 終礼後、一緒に下校していたB・C・Dがエイを殴るふりをして驚かせ、通りすがりにつねる様子を、校門近くで下校指導していた学級担任が発見し、B・C・Dに注意した。その際、エイのあざを見つけ、B・C・Dに事情を聞くと、エイを叩く等の行為のじょうしゅうかがわかる。 学級担任は、管理職・支援学級担任・人権教育担当及び関係教職員に事象を伝え、エイ宅に支援学級担任と家庭訪問の意向を電話連絡。 エイへのしんたい的・精神的ケアを第一に考え、エイと保護者に面会し、保護者から思いあたる事実と保護者の想いを聴く。 きこうご、管理職・支援学級担任・人権教育担当及び関係教職員に家庭訪問の様子を伝え、当面の学校としての対応方針を確認した後、B・C・D宅に家庭訪問の意向を電話連絡。 B・C・D宅への家庭訪問では、当面の対応を、一旦、学校に任せてもらうよう伝える。 きこうご、管理職・支援学級担任・人権教育担当及び関係教職員により緊急対策会議を開き、具体的な対応方針を確認し、学校ちょうから市教育委員会にいじめじあんとして報告する。 (イ)保護者からの連絡でわかった場合 同日(4月まるにち)夕方、エイの母親より学校に「子どもが学校から帰宅したら、体中にあざができていた。」との電話があり、事象が発覚する。 学級担任は、管理職・支援学級担任・人権教育担当及び関係教職員に事象を伝え、エイ宅に支援学級担任と家庭訪問の意向を電話連絡する。   52ページ エイへの身体的・精神的ケアを第一に考え、エイと保護者に面会し、保護者からこれまでの思いあたる事実と保護者の想いを聴く。 その後、数か所のあざを確認し、保護者に謝罪するとともに至急事実確認をすることを約束。併せて、医療機関への受診を促す。 きこうご、管理職・支援学級担任・人権教育担当及び関係教職員に家庭訪問の様子を伝え、当面の学校としての対応方針を確認する。 翌日、エイの学級で学級担任から事実を話す中で、B・C・Dの事象への関わりがわかる。 放課後、B・C・D宅に家庭訪問し、当面の対応は、一旦学校に任せてもらうよう伝える。 きこうご、管理職・支援学級担任・人権教育担当及び関係教職員に家庭訪問の様子を伝え、具体的な対応方針を確認する。 学校ちょうからしきょういくいいんかいにいじめじあんとして報告する。 3 事実確認 Bは、支援学級担任より「なぜ、下校の時にエイと一緒に来てくれなかったの?」と言われ、支援学級への送り迎えなどを自分は毎日行っているのに、なぜ責められるのかという思いを持ち、ショックを受けるが、その場では我慢する。 Bは、配膳じ、エイのつばが入った際に自分がエイを叩いたことにはふれず、学級担任にはエイのつばが入ったことのみを報告した。 その日から、B・C・Dが徐々にエイを叩いたりつねったりすることが始まり、その行為が別の場面でもくり返されるようになる。 4 いじめを受けた子ども・保護者へのケア エイについては、細かい健康観察、保護者との連絡を密にする一方、教育委員会の支援を得て、スクールカウンセラーがいつでも関われる体制を作る。また、エイの心のケアを考え、学級の友だち関係の配慮を行う。 家庭訪問、電話連絡、れんらくちょうなど、学級担任を中心に保護者との連絡を密にし、児童・保護者の不安を一つひとつ取り除いていく。 5 いじめに関わった子どもへの指導 今まで最もエイに関わりを持っていた、Bのエイに対する今までの思いを丁寧に聞き取りし、Bの我慢していた気持ちを受けとめる。(並行して、C・Dも同様に行う。) 学級担任は、B・C・Dが、いじめられていたエイに対して謝罪し、新たなエイとのつながりについて考えていけるように、段階をふまえ聞き取るとともに、周りの児童にも同様に働きかけながら学級、学年での集団づくりに取り組む。 全教職員で指導の方針を確認して取り組み、エイとB・C・Dの保護者に指導の経過を丁寧に伝える。 6 背景・要因の分析 学級指導の中で、障がいのある児童が支えられる側で周りの児童が支える側という図式の仲間づくりになっており、ともに学び合う・育ち合うという意識づくりが十分できていなかった。 53ページ いじめは、休憩時間、げこうじなど担任等が不在である場面で多く生起していたが、いじめに気付く者や注意する者がいなかった。これは、これまで、集団で起こるもめごとに対して、もめた当事者が謝罪するだけの表面的に解決する指導になっており、いじめに至る人間関係にまで踏み込んだ指導ができていなかったことに起因すると考えられる。 配膳指導の際、傍らに学級担任も支援学級担任もおらず、周りの児童任せになっていたことも、事象生起の一因になっている。 7 指導の改善 いじめを受けた児童への心のケアを第一に考えながら、いじめをおこなった児童の指導とともに、周囲の児童への指導をおこない、いじめを許さない、一人ひとりを大切にする学級、学年づくりを大切にすることを確認する。  いじめは人権に関わる重大な問題であり、学校教育活動全体を通じて、「いじめ」を根絶するためにとりくみを進めるとともに、教職員が人権感覚を磨き、子どもたちの普段の何気ない言動に対してもアンテナを高くし、未然に防止することが重要であるということを確認する。 教職員一人ひとりが、互いの考えや思いを忌憚なく出し合える、補完し合って課題を解決できる、互いを高め合える教職員集団としてチームりょくを発揮することを確認する。 8 事後指導 エイとB・C・Dの関係の修復については、保護者を交えた謝罪以降、学級集団づくりを土台に、学年や学校行事の中、お互いの良さや頑張りに気づかせる場面をつくりながら、児童に、「仲間とともに最後まで一緒にがんばった。」という達成感をもたせることに努めた。