「大阪の教育力」向上プラン 公立学校教育への信頼の確立に向けて 平成21年1月 大阪府教育委員会 目次 プランの策定趣旨 プランの期間、プランの推進にあたって 第1章 これからの大阪の教育がめざす方向 (1)10年後に予想される社会変化 (2)大阪の子どもたちにはぐくみたい「力」 (3)大阪の教育が大切にする「3つの理念」 (4)「3つの目標」「10の基本方針」「35の重点項目」  3つの目標  3つの目標・10の基本方針・35の重点項目  基本方針1から10 (5)「はぐくみたい力」と「目標」「基本方針」「重点項目」の相関 (6)用語解説 第2章 今後5年間の具体的取組み 基本方針1  基本方針2  基本方針3  基本方針4  基本方針5  基本方針6  基本方針7  基本方針8  基本方針9  基本方針10  目標(表紙)  目標  事業目標 【プランの策定趣旨】 府教育委員会では、平成11年4月に「教育改革プログラム」(教育改革プログラムとは、学校教育の再構築と総合的な教育力の再構築を柱に平成11年4月から10年間に渡って策定された大阪府の教育施策実施計画。)を策定し、10年間の計画期間のもと、学校改革や教育内容の改善などの「学校教育の再構築」と、学校・家庭・地域社会の連携による「総合的な教育力の再構築」に向け、全国に先駆けた教育改革に取り組んできました。 一方で、学力面や生徒指導面のみならず、子どもたちの社会性や規範意識の低下など、依然として残された課題や新たに生起した課題もあります。 また、国においては、教育基本法の改正や学習指導要領改訂などの様々な動きがあります。 このため、これらを踏まえた新たな教育プランの策定が求められており、府教育委員会では、大阪府学校教育審議会 (大阪府学校教育審議会とは、府教育委員会の諮問に応じて、大阪府附属機関条例第一条第二号に掲げる「学校教育についての重要事項の調査審議に関する事務」について調査審議し、及びこれらの事項について委員会に意見を述べるための附属機関。学識経験のある者のうちから委員会が任命する二十人以内の委員で組織する。)からの答申等をもとに、「『大阪の教育力』向上プラン」を取りまとめました。「教育力」とは、学校・家庭・地域それぞれが持つ、子どもたちの「学び」と「はぐくみ」を支える力の総体です。 本プランは、大阪の子どもたちの学力をはじめとした様々な教育課題を踏まえ、子どもたちが将来にわたって社会において生きる力を養い、社会を支えていくために必要な力をはぐくんでいけるよう、今後10年間で予想される社会経済情勢の変化を見通した中で、大阪の教育がめざすべき方向について、「大阪の教育力」を高める「3つの目標」と「10の基本方針」「35の重点項目」を取りまとめ、あわせて、今後5年間の具体的取組みを示しています。 【プランの期間】 第1章 これからの大阪の教育がめざす方向(平成21年度から平成30年度までを計画期間) 第2章 今後5年間の具体的取組み(平成21年度から平成25年度までを計画期間) なお、本プランについては、10年間の大阪の教育がめざす方向と5年間の具体的取組みを示しています。5年後には、その間の取組みの進捗状況等を踏まえつつ、後期5年間の具体的取組みを策定することとしています。 【プランの推進にあたって】 ○社会全体での取組み 大阪の教育力を高めていくためには、学校や行政だけでなく、社会全体での取組みを進めていく必要があり、家庭や地域、関係機関などの協力が不可欠です。今後、本プランに基づき、大阪の子どもたちに将来にわたって必要な力をはぐくんでいけるよう、家庭・地域の協力も得ながら市町村教育委員会等とも十分連携し、大阪の教育力向上をめざした取組みを進めていきますので、本プランの実現に向けご協力をお願いします。 ○進捗管理 今後、本プランを基本としながら、毎年度の予算審議を踏まえ、具体的な教育力向上に向けた事業推進を図ります。その際には、平成20年12月に設置しました「大阪教育ゆめ基金」や府立高校の授業料等を財源として有効に活用していきます。 また、計画の進捗状況につきましては、毎年、目標に対する到達状況等を把握し、その状況を大阪府学校教育審議会に報告するとともに、府民の皆様にもわかりやすく示していきます。 また、急速に変化する社会情勢に的確に対応するため、必要に応じて、適宜、取組みの見直しを行っていきます。 ○政令指定都市や私立学校との連携 ・政令指定都市との連携 本プランにおいては、政令指定都市(以下「政令市」)は、教職員の任命権をはじめ、府と同様の多くの権限を有していることから、小・中学校などにおける取組みの多くは対象外としていますが、大阪全体の教育力の向上を図るためには、政令市との連携は不可欠です。本プランの推進にあたりましては、政令市とも十分に連携を図っていきます。 ・私立学校との連携 本プランは、「公立学校教育への信頼の確立に向けて」という副題が示すとおり、公立学校教育に関する方向性を示したものですが、大阪の教育においては、公立学校のみでなく、私立学校も大きな役割を果たしています。本プランの推進にあたりましては、私立学校とも十分連携・協力を図り、お互いが切磋琢磨しながら府民の期待に応えるべく、大阪の教育力の向上を図っていきます。 ≪注釈≫ ○本プランで使用する「小学校」「中学校」等の学校を示す記載については、特段の記載がない場合、公立学校を示すものとする。 ○本プランでいう学校数は、以下のとおり。 平成20年度(5月1日現在) 小学校(公立)1023校(うち分校6校)、政令市を除く626校(うち分校2校)、政令市、中核市を除く531校(うち分校2校) 中学校(公立)465校(うち分校1校)、政令市を除く291校、政令市、中核市を除く247校 府立高校148校 府立支援学校(支援学校とは、学校教育法の改正により、盲学校、聾学校、養護学校が特別支援学校に改められた。大阪府では、平成20年4月から、「盲学校」を「視覚支援学校」に、「聾学校」を「聴覚支援学校」に、「養護学校」を「支援学校」に改め、これらを総称して「支援学校」という用語を使用している。)26校(うち分校1校) ※小学校は休校(1校)を含む。 ※特段の記載がない場合、本プランで「全小学校」「全中学校」「全小・中学校」という場合は、政令市を除く数を示すものとする。 ※また、「全小・中・高校」「全小・中・高・支援学校」という場合の「高校」「高・支援学校」は「府立高校」「府立高校・府立支援学校」を示すものとする。 ○ 本プランの「H○○」「H○○年度」は、特段の記載がない場合、「平成○○年度」を示すものとする。 第1章 これからの大阪の教育がめざす方向 (1)10年後に予想される社会変化 1人口動向とその構造 大阪府の人口は、平成17年度から22年度にかけてピークを迎えた後、平成17年度からの10年間で、約880万人から約860万人へと約20万人減少する見込みです。 公立中学校卒業者は、平成17年度以降10年間は多少増減しながらも約7万人程度でほぼ横ばいの見込みですが、15歳未満の人口は、平成17年度以降10年間で約120万人から約100万人へと約20万人減少し、一層少子化が進行する見込みです。 2教員の年齢構成 小学校の教員については、今後10年間でおよそ半数が入れ替わり、年齢構成は、40歳以上と39歳以下の比率が現在の6:4から3:7に大きく変化することが予想されます。中学校、府立高校、府立支援学校の教員についても同様の傾向が見込まれます。 3社会情勢 国際化、経済のグローバル化の進展とともに、知識が基盤となる社会が本格的に到来すると予想されます。また、外国人と交流する中で、改めて日本や大阪の持つ歴史・伝統についての知識や多文化と共生する姿勢が必要となることが予想されます。 大阪や日本の直面する環境問題は、身近な交通環境問題やリサイクル・廃棄物問題から地球温暖化の問題まで多様化・複雑化しており、今後も持続可能な循環型社会への要請が高まることが予想されます。 また、高度情報化のさらなる進展により、インターネットや携帯電話等の通信手段を安全で有効に活用することが求められます。同時に、安易に携帯メール等を介して相手に意思を伝達することが多く見受けられることから、こうした情報手段にたよらず、改めて、人と人とが直接的な会話を通して意思を伝えることの重要性への認識が高まると思われます。 4雇用環境 正規雇用の促進が求められるものの、今後、サービス産業の増大など産業構造の変革がさらに進むことにより、若年無業者や、いわゆる「フリーター」などの非正規雇用が増大することも予想される一方で、最近の世界的な景気悪化を受け、非正規雇用者を削減する動きが広がるなど、その先行きは不透明です。 また、少子高齢社会の到来に加え、成果主義、能力給賃金の導入など、従来の日本型雇用システムの変動に伴い、雇用環境はさらに変化するとともに、個人主導でのキャリア形成が求められる時代が到来することが予想されます。 5教育をめぐる制度 国においては、約60年ぶりに教育基本法が改正されるとともに、平成20年1月の中央教育審議会「答申」を踏まえ、平成20年3月に小学校・中学校の新学習指導要領が告示され、小学校では平成23年度から、中学校では平成24年度から完全実施されることとなっています。高校や支援学校においても、今後、学習指導要領の改訂が予定されています。 (2)大阪の子どもたちにはぐくみたい「力」 大阪の子どもたちが、これまで培ってきた大阪の歴史や伝統を受け継ぐとともに、これからの変化の激しい社会を力強く生き抜き、次代を担い得る大人になるよう、以下の「力」をしっかりとはぐくむ必要があります。 ・基礎・基本と活用する力、学ぶ意欲 基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着を図るとともに、これを活用して、思考力、判断力、表現力や学ぶ姿勢、学習習慣を身に付けさせ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動する力をはぐくむ。   ・社会を創っていく態度 社会の形成者としての自覚や忍耐力・責任感を養い、公共のルールやマナーを守るなど、規範意識を身に付けさせるとともに、コミュニケーション能力を高め、互いに助け合い、よりよい社会を創っていく態度をはぐくむ。   ・心身の健康、体力 生涯にわたって心身の健康を保ち、たくましく生きるため、基本的な生活習慣を身に付けさせ、体力を養う。   ・進路選択、決定力 豊かな勤労観や職業観を身に付けさせるとともに、将来の夢や目標を持ち、進路を自ら選択・決定する力や、チャレンジ精神をはぐくむ。   ・生命と人権の尊重 生命と人権を尊重し、自分の大切さと共に他の人の大切さを認める、豊かな人間性をはぐくむ。 ・自然尊重の精神、環境を大切にする態度 自然や美への感性を磨き、芸術に親しむとともに、自然を尊重する精神や環境を大切にする態度をはぐくむ。 ・伝統と文化の尊重、国際社会への寄与 我が国と郷土への誇りを持ち、大阪がはぐくんできた伝統と文化を尊重するとともに、国際社会の平和と発展に寄与する態度をはぐくむ。 (3)大阪の教育が大切にする「3つの理念」 公立学校教育に求められているのは、家庭状況など子どもたちが置かれている状況にかかわらず、全ての子どもたちにそれぞれの個性を活かした「学び」と「はぐくみ」を保障し、それぞれの力を伸ばすことです。 今後、大阪の教育の特性である「地域性」と「多様性」に加え、全ての子どもたちに前向きに生きる姿勢をはぐくむことを重視し、次の3つの理念に基づき「大阪の教育力」を高めていきます。 ・地域に根ざす 子どもは学校だけでなく、家庭や地域の中でも日々成長します。家族や同級生だけでなく、それ以外の大人や子どもと幅広く交流し、関わりを持つことを通じて様々な能力を身に付ける必要があります。また、学校が地域とのつながりを深めることによって相互の信頼が強化され、学校教育は充実します。 学校・家庭・地域が一体となり、家庭との役割分担や地域との協力のもとで、子どもをはぐくむ取組みをさらに進めていきます。 ・違いを認め合うとともに、子ども一人ひとりの力を伸ばす 障がいのある子どもをはじめ、一人ひとりの個性に応じてその力を最大限に伸ばすとともに、他の人を大切にする気持ちや社会性を培うことが重要です。あわせて、互いの存在や考えを認め合い、関わり合いながら、ともに生きていく態度をはぐくんでいかなければなりません。 基礎的・基本的な知識・技能を大切にしつつ多様な学びを可能にする教育内容や指導体制を確立するとともに、子どもたちが互いの個性を認め合う学びの場づくりを進めていきます。 ・前向きに生きる姿勢をはぐくむ 社会経済情勢が変化し、将来に対する不透明感が増す中にあっても、子どもが前向きに自らの進路を切り拓き、社会の形成者として社会に貢献する力を備えた大人へと成長することが大切です。 知・徳・体のバランスある力にあわせて、子どもたちに忍耐力や社会の中の一員として生きていくための規律・規範を身に付けさせ、未来に向けた子どもたちの志や夢を確かにはぐくむ教育を推進していきます。 (4)「3つの目標」「10の基本方針」「35の重点項目」 「大阪の教育力」を高め、学力をはじめとした大阪の子どもたちの力をしっかりとはぐくんでいくため、次の「3つの目標」を掲げます。 この目標の実現に向け、「10の基本方針」のもと、今後10年間に重点的に取り組むべき「35の重点項目」に、大阪府教育委員会、市町村教育委員会さらには全ての公立学校が、家庭や地域、関係機関との役割分担と連携のもと、総力をあげて取り組みます。 3つの目標 目標1 「学校力」を高める 「教育の拠点は学校である」という基本に立ち返り、小・中学校や高校、支援学校など、それぞれの校種の学校において教育内容の充実を図るとともに、教員の力を最大限に引き出しながら、組織力を向上させ、学校の持つ総合的な力である「学校力」を高めます。 目標2 学校・家庭・地域をつなぐ 子どもたちの生きる力をはぐくむとともに、学ぶ力の向上をめざし、「家庭と地域」が一体となって、「教育の拠点」である学校と協働し、学校・家庭・地域をつなぐ「教育コミュニティ」(教育コミュニティづくりとは、教育や子育てに関する課題を学校、家庭、地域の団体・グループ等が共有し、課題解決に向けた協働の取組みを通じて、新たな人のつながりをつくり出すもの。府教育委員会では、学校を核として、地域社会が一体となって子どもを育てる「教育コミュニティ」づくりを推進。)を発展させます。 目標3 子どもたちの志や夢をはぐくむ 一人ひとりが社会の形成者として規範意識や公共の精神、高い倫理観をもって、主体的に行動する社会を築くため、次代を担う子どもたちがよりよい社会を創っていくという志や、人として充実した人生を送るために必要な夢をはぐくみます。 3つの目標と10の基本方針と35の重点項目 目標1 「学校力」を高める 基本方針1 小・中学校で、子どもたちの学力を最大限に伸ばします 重点項目1 学力向上方策の展開 重点項目2 家庭、地域と連携した学習機会、教育内容の充実 重点項目3 小・中学校の適正規模の確保支援 重点項目4 校種間の連携強化、就学前教育の充実 基本方針2 すべての府立高校が魅力を高めあい「入ってよかった」と言われる学校をめざします 重点項目5 特色づくり・再編整備の成果と課題を踏まえた府立高校の充実 重点項目6 幅広い教育ニーズに応える教育内容の充実 重点項目7 生徒の「自立・自己実現」の支援 基本方針3 障がいのある子ども一人ひとりの自立をしっかりと支援します 重点項目8 府立支援学校の教育環境の充実 重点項目9 府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実 重点項目10 小・中学校における「ともに学び、ともに育つ」教育の推進 重点項目11 府立支援学校のセンター的機能の発揮 重点項目12 一人ひとりのニーズに応じた支援教育の充実 基本方針4 子どもたちの健康と体力づくりを進めます 重点項目13 学校体育の充実 重点項目14 学校・家庭・地域における健康・体力づくり 重点項目15 学校における食育の推進 基本方針5 教員の力を高めるとともに、指導が不適切な教員を現場からはずします 重点項目16 授業力の向上と教職経験の少ない教員への指導・育成 重点項目17 将来、管理職となる教員の養成 重点項目18 熱意ある優秀な教員の確保 重点項目19 「がんばっている」教員への応援 重点項目20 指導が不適切な教員への対応 基本方針6 学校の組織力と学校へのチーム支援を強化します 重点項目21 府立学校の組織的な運営と自立的取組みの支援 重点項目22 小・中学校に対するチーム支援 重点項目23 校務の効率化 基本方針7 子どもたちの安全で安心な学びの場をつくります 重点項目24 学校の安全対策の推進 重点項目25 計画的な学校施設・設備の改修・改善 目標2 学校・家庭・地域をつなぐ 基本方針8 家庭との役割分担、地域との協力で子どもたちの学びと育ちを支えます 重点項目26 教育コミュニティづくりの主体的な推進 重点項目27 保護者のエンパワメントと家庭教育を支える地域ネットワークの構築 重点項目28 生きる力をはぐくむ体験活動や読書活動の推進 目標3 子どもたちの志や夢をはぐくむ 基本方針9 子どもたちの豊かな心をはぐくみます 重点項目29 子どもの成長過程に応じた教育の充実 重点項目30 人権教育、障がい者理解教育、国際理解教育、福祉教育の推進 重点項目31 読書活動の推進 重点項目32 社会全体での「こころ」をはぐくむ取組みの推進 重点項目33 歴史・文化等に関する教育の充実 基本方針10 責任を持って行動できる大人に育てます 重点項目34 生徒指導の充実 重点項目35 今日的な課題に対応した教育の推進 【基本方針1】 【小・中学校をめぐる現状と課題】 ○学力実態 平成20年度に実施された「全国学力・学習状況調査」(全国学力・学習状況調査とは、小学校第6学年・特別支援学校小学部第6学年、中学校第3学年・中等教育学校第3学年・特別支援学校中学部第3学年を対象にした、学力と生活・意識等に関する全国調査。平成19年度から文部科学省が実施。)では、平成19年度に続いて全国に比べて学力高位層の割合が低く、中・低位層の割合が高いこと、無解答率が高いことなどが明らかになりました。また、特に知識を活用する力において全国との差が大きく、学力実態は極めて深刻な状況にあります。 一方、児童生徒の授業態度等では「学習への熱意のなさ」や「授業中の私語の多さ」に課題が見られ、学校の取組みでは「活動を重視した授業の少なさ」や「授業研究のための研修の少なさ」といった課題が明らかになりました。 ○生活実態 「全国学力・学習状況調査」においては、起床や就寝時刻の遅さ、朝食をとらない子どもの多さとともに、家庭で全く学習に取り組まない子どもや読書の習慣のない子どもの割合が高いという課題が明らかになりました。 子どもたちの健全な成長を考えた時、学校での取組みのみならず、学校と家庭・地域との役割分担とともに、より一層の連携・協働が求められます。 ○学校規模の適正化 12学級未満の学校数は、平成20年度において、小学校204校(20.1%)、中学校162校(34.9%)となっています(政令市を含む)。将来、大阪府では、15歳未満人口の減少が予測されることから、さらに学校の小規模化が進むと見込まれます。 学校の小規模化は、互いに切磋琢磨する機会が少なくなり、子どもに社会性が育ちにくいなどの課題も指摘されており、学校教育活動の活性化や学習環境の整備等といった観点から、地域の実情に応じた学校統廃合の促進や小規模校の活性化など学校規模の適正化が求められます。 ○校種間の一層の連携と就学前教育の充実 校種間においてはそれぞれ学習指導や生徒指導上の課題があり、これらの情報交換や交流連携が十分に取れていない現状にあります。今後、子どもの現状把握や課題の共有化を図るために、幼稚園や保育所における就学前教育の充実も含め、一層の校種間の交流や連携が求められます。 ≪参考資料、平成20年度「全国学力・学習状況調査」結果より≫ 中学校国語B区分問題(活用)の正答数 大阪府の結果は、正答数が5問以下の生徒の割合が全国より高く、6問から10問の割合は全国より低い 勉強する時間を自分で決めて実行していますか。という問いの回答。 大阪(小学校)している18.9%、どちらかといえばしている25.0%、あまりしていない34.6%、全くしていない21.5%、その他・無回答0.2% 全国(小学校)している21.7%、どちらかといえばしている30.3%、あまりしていない33.1%、全くしていない14.8% 大阪(中学校)している10.1%、どちらかといえばしている21.5%、あまりしていない37.5%、全くしていない30.6%、その他・無回答0.2% 全国(中学校)している10.2%、どちらかといえばしている24.0%、あまりしていない40.0%、全くしていない25.6%、その他・無回答0.1% 【基本方針1】小・中学校で、子どもたちの学力を最大限に伸ばします 小・中学校での教育を通じ、子どもたち一人ひとりが自立しつつ多くの人々とともに社会で生きていく力の基礎、とりわけ学力をはぐくみます。そのため、子どもたちの「確かな学力」をはぐくむ学校づくりや学校・家庭・地域との連携などに取り組みます。あわせて、落ち着いた学習環境を醸成する生徒指導や読書活動の推進、生活習慣の確立等について総合的に取り組みます。 (重点項目1)学力向上方策の展開 ◇学校生活の基礎を築く重要な時期である小学校1・2年生は、35人を基準とした少人数学級編制を実施するとともに、小学校3年生以上は、少人数・習熟度別指導(少人数・習熟度別指導とは、基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るため、教科等の特性に応じ、児童生徒の学習の習熟の程度に応じて少人数による学習集団を編成し、組織的・計画的に指導をおこなうもの。)など個に応じた指導方法の工夫改善を図ります(政令市を含む)。また、モデル授業の開発や授業評価 (授業評価とは、確かな学力の向上をめざして、「わかる授業」「魅力ある授業」を実現するために、児童生徒、教職員、保護者等が授業についての評価を実施し、組織的な授業改善に活かすための取組み。)の全小・中学校への導入により、学校全体で授業改善の取組みを進めます。 ◇単元別テスト(単元別テストとは、児童生徒の、つまずきの早期発見と改善のために、教科の単元毎に実施する確認問題。府教育委員会のHPから各小中学校に配信されている。)の実施を通じて学習の習得状況を把握し、つまずきの早期発見をするとともに、児童生徒向けのワークブックを開発し、自学自習力等の向上と家庭での学習習慣の定着を図ります。 ◇基礎・基本の充実を図るために、反復学習の取組みを推進します。また、PISA型学力(PISA型学力とは、現在持っている知識や経験をもとに、自らの将来の生活に関する課題を積極的に考え、知識や技能を活用する力。)の向上を図るため、各教科の学習や総合的な学習の時間等の充実に取り組みます。 ◇大阪府学力テスト(大阪府学力テストとは、各学年において身に付けるべき学力の到達度を測るために、府内の小学校4年生から中学校3年生を対象に実施するテスト。小学校は国語・算数の2教科、中学校は国語・数学・英語の3教科で実施。)の実施により、学力向上のためのPDCAサイクル(PDCAサイクルとは、計画(プラン)、実行(ドゥ)、評価(チェック)、改善(アクト)のプロセスを順に実施する。最後のアクトではチェックの結果を踏まえ、次回のプランに結び付ける。このらせん状のプロセスを繰り返すことによって、学力向上に結び付けていく。)を確立するとともに、教育センターのカリキュラムセンター機能の活用や府内へのブランチ(ブランチとは、大阪府教育センターカリキュラムナビプラザ(平成19年度設置)の分所である「カリナビ・ブランチ」を指す。市町村教育委員会と連携して、学校づくり、授業づくり等に関する相談・支援体制の充実を図るため、豊能、北河内、中河内、泉南の各府民センター内に設置したもの。あわせて、指導に課題のある教員の把握、校内研修等の相談を行う。)設置、校内研修の活性化、学力担当教員の位置づけの明確化等、学力向上に向けた教員の授業力の向上と学校の組織体制の充実に取り組みます。そして、子どもたちが興味と関心を持ち学習に取り組むよう授業・教材の工夫を行います。 ◇言葉の力をはぐくみ、知的活動の土台を作るために、全小・中学校での読書活動を積極的に推進します。 (重点項目2)家庭、地域と連携した学習機会、教育内容の充実 ◇全小・中学校で放課後等の学習指導を展開し、教員と外部人材との連携のもと、子どもたちの学習習慣の定着と学習意欲の向上をめざすとともに、より学習したい子どもの期待に応えます。 ◇子どもたちの豊かな人間性や社会性などをはぐくめるよう、保護者や学生、地域ボランティアなどを学校教育活動に積極的に活用して、社会体験や自然体験、ものづくりなど様々な体験活動を充実させます。 ◇家庭との役割分担や地域との連携を通じて子どもたちの学ぶ環境を整え、学習態度の基本の確立を図ります。  (重点項目3)小・中学校の適正規模の確保支援 ◇小規模の小・中学校については、統廃合も含め、地域の実情に応じた学校の適正規模が確保できるよう市町村を支援します。  (重点項目4)校種間の連携強化、就学前教育の充実 ◇進学に際し、子どもたちが異なる校種間を円滑に移行できるよう、教育内容や生徒指導等、様々な観点から保育所・幼稚園・小学校・中学校・高校・支援学校の交流や連携を図ります。 ◇幼稚園と保育所が、子どもの現状把握や課題を共有するなど、就学前教育の充実を図ります。 【基本方針2】 【府立高校をめぐる現状と課題】 ○「特色づくり・再編整備計画」による特色づくり 生徒減少が続く中、学習ニーズの多様化を踏まえ、生徒が「入れる学校」ではなく「入りたい学校」を選択できるよう、特色づくりと再編整備を進めてきた結果、中学生の進路選択幅が拡大し、目的意識をもって入学する 生徒が増えるなど、府立高校の活性化や教育力の向上がもたらされました。 一方で、改革の効果がまだ十分に発揮されていない学校も見られるとともに、生徒の一部には、結果として自分の個性や学びのスタイルと学校の選択がミスマッチを起こしていたり、学ぶことに主体的に取り組めていない状況があります。 ○普通科における特色づくり 専門コースや多様な選択科目を設けることにより、生徒の興味・関心や進路希望等に対応してきました。 また、普通科高校を中心に、特色づくりを一層進めるため、「次代をリードする人材育成研究開発重点校(エル・ハイスクール)」(次代をリードする人材育成研究開発重点校(エル・ハイスクール)とは、21世紀をリードする創造力溢れた人材や先端的な科学技術を支える人材などの育成を目的に、特色ある取組を行い、その実践結果を他の高校の教育活動に提供する高校を重点校(エル・ハイスクール)として17校指定し、平成15年度から研究開発を進めている。)「経営革新プロジェクト事業」(経営革新プロジェクト事業とは、生徒の学力の向上と希望進路の実現をめざし、学校の持つ総合的な教育力の向上を図るため、明確な目標を設定し、授業改善、自学自習力の育成などの教育実践に取組む事業。推進校として21校を指定し、平成17年度から研究開発を進めている。)「総合活性化事業(アクティブ・ハイスクール)」(総合活性化事業(アクティブ・ハイスクール)とは、中途退学や不登校、卒業後の進路未決定などの、府立高校の課題を解決するために、学校の持つ総合的な教育力を活性化し、生徒の基礎的な学力の向上と、職業観や勤労観の育成による生徒の進路希望の実現をめざす。推進校として16校を指定し、平成19年度から実践的な研究を進めている。)等の事業を展開し、組織的で計画的な教育実践に取り組んできました。その成果を一部の高校にとどめることなく、すべての高校に広げ、特色づくりの支援方策をさらに充実させることが課題となっています。 ○生徒の状況 中途退学については、平成9年度以降減少傾向にありましたが、近年増加傾向に転じ、平成19年度の府立高校の中退率は、全日制の課程が2.9%、定時制の課程が15.8%で、全国で最も高くなっています。 中途退学者の約6割は1年生が占め、普通科については、中途退学が一部の学校に集中しているという厳しい現実があり、中途退学防止は喫緊の課題となっています。 進路状況については、普通科では進学者の割合が高く、工業、農業などの実業系の専門学科では就職者の割合が高くなっていますが、全体として大学等への進学率が高まる傾向にあります。 ≪参考資料、学校の種類≫ ・普通科  普通教科を幅広く学び、広い知識と教養、柔軟な思考力を養うことをめざす学校。専門コース(美術・体育・理数・保育・海洋など)を設けている学校もある。 ・専門学科併設  普通科と専門学科をともに設置している高校。(例:夕陽丘高校/普通科・音楽科) ・普通科総合選択制  基礎学力を重視しながら、エリアと自由選択科目の選択による興味・関心にあった学習を通して、進路実現の力をはぐくむ普通科の学校。 ・普通科単位制  全日制の時間帯で、自分で学習計画を立て、自分にあった方法で、自らの学習ペースに応じて学力を伸ばすことをめざす学校。 ・総合学科 普通科目と専門科目の両方にわたって、多くの選択科目を設定し、生徒自ら科目選択をしていく中で、自分の適性や進路を見つめていく力をはぐくむことをめざす学校。 ・専門高校 専門学科を置き、自分の得意な専門分野の授業を通じて、個性を伸ばす学習、資格取得をめざす学習ができる学校。大学などへの進学をめざすための授業もある。 ・多部制単位制  学ぶ時間帯が1部(午前)、2部(午後)、3部(夜間)から選べる学校。普通科または総合学科を設置している。単位制の利点を生かして自分のペースで学ぶことができる。 ・定時制 昼間に働きながら高校に入学希望する生徒や、様々な目的や事情により、夜間という条件の中で目的意識を持って学習する生徒に就学の場を提供することを目的として設置した学校。単位制の利点を生かして、自分のペースで学ぶことができ、通信制の授業も学習することで、3年で卒業できる。 ・通信制  全日制・定時制の高校に通学することができない青少年に対して、通信の方法により高校教育を受ける機会を与えることを趣旨として創設された。近年においては、全日制の課程や定時制の課程からの転・編入学や過去に高校教育を受けることができなかったなど多様な入学動機や学習歴を持つ生徒が増えてきている。 ・工業高等専門学校  中学卒業後、5年間の一貫教育を実施する、高等専門学校の一種。工業系の専門教育を行い、実践的・創造的技術者を養成することを目的としている。 ≪参考資料、府立高校等の再編整備の進捗状況≫ 学校の種類と数 普通科 平成10年度117校 平成20年度(決定済の計画含む)73校 専門学科併置 平成10年度19校 平成20年度(決定済の計画含む)11校 普通科総合選択制 平成10年度なし 平成20年度(決定済の計画含む)19校 普通科単位制 平成10年度なし 平成20年度(決定済の計画含む)4校 総合学科 平成10年度3校 平成20年度(決定済の計画含む)9校 専門高校 平成10年度16校 平成20年度(決定済の計画含む)15校 多部制単位制 平成10年度なし 平成20年度(決定済の計画含む)6校 中高一貫校 平成10年度なし 平成20年度(決定済の計画含む)1校 計(昼間の高校)  平成10年度155校 平成20年度(決定済の計画含む)138校 定時制 平成10年度29校 平成20年度(決定済の計画含む)15校 通信制 平成10年度1校 平成20年度(決定済の計画含む)1校 工業高等専門学校 平成10年度1校 平成20年度(決定済の計画含む)1校 ≪参考資料、府立高校(全日制)の中退率と中退者数の推移≫ 昭和60年度 中退率2% 中退者数4546人 昭和60年度 中退率2% 中退者数4730人 昭和60年度 中退率2% 中退者数4755人 昭和60年度 中退率2% 中退者数4949人 平成がん年度 中退率2.3% 中退者数5575人 平成2年度 中退率2.4% 中退者数5729人 平成3年度 中退率2.4% 中退者数5387人 平成4年度 中退率2.4% 中退者数4944人 平成5年度 中退率2.3% 中退者数4352人 平成6年度 中退率2.3% 中退者数4026人 平成7年度 中退率2.4% 中退者数3884人 平成8年度 中退率2.9% 中退者数4431人 平成9年度 中退率3% 中退者数4358人 平成10年度 中退率2.7% 中退者数3739人 平成11年度 中退率2.5% 中退者数3482人 平成12年度 中退率2.7% 中退者数3617人 平成13年度 中退率2.6% 中退者数3427人 平成14年度 中退率2.4% 中退者数2996人 平成15年度 中退率2.3% 中退者数2780人 平成16年度 中退率2.3% 中退者数2794人 平成17年度 中退率2.6% 中退者数3003人 平成18年度 中退率2.8% 中退者数3194人 平成19年度 中退率2.9% 中退者数3184人 【基本方針2】すべての府立高校が魅力を高めあい「入ってよかった」と言われる学校をめざします 就職や進学など多様な進路選択を実現するための機関としての期待に応えるため、「卓越性」と「公平性」を高い水準で両立させます。そのため、すべての学校の個性化を図り、それぞれの学校が「入れる学校」から「入りたい学校」「入ってよかった学校」となるよう、府立高校全体の教育の質の向上を図っていきます。 (重点項目5)特色づくり・再編整備の成果と課題を踏まえた府立高校の充実 ◇新たに進学指導に特色のある高校や、専門学科、専門コースを設置するとともに、教育センターの専門性を生かした附属研究学校など、活力ある多様な学校づくりを進めます。 ◇特色づくり・再編整備については、各府立高校の状況や社会情勢等の変化をも踏まえ、改革の理念の実現をめざした取組みをさらに進めます。 ◇中学3年生の教育活動や進路指導への影響、一層幅広い学校選択を可能とする等の観点から、入学者選抜制度のあり方を検討し改善を図ります。また、学校規模を弾力化し、各学校の状況に応じた教育活動を促進します。 (重点項目6)幅広い教育ニーズに応える教育内容の充実 ◇各府立高校が自校の状況を踏まえて企画・提案した取組みを府教育委員会が評価・支援するなど、普通科を含めたすべての学校の特色づくりの定着と充実を図ります。 ◇中途退学、不登校(不登校とは、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの。文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」による。)等の課題が集中して現れている学校に対しては、学力の確実な定着や進路実現に向け、関係諸機関との連携を図るとともに、教育条件の整備や支援を進めます。 ◇産業界や高等教育機関、中学校、私立高校、専修学校 (専修学校とは、学校教育法で定める教育施設。職業や実生活に必要な能力の育成または教養の向上を図ることを目的とする。簿記・英会話・服飾・デザイン・電子技術など各種ある。)等との連携・接続を強化する取組みを推進します。また、府立高校における先進的取組みや成功事例を広く発信し共有化することにより、府立高校全体の教育の質の向上を図ります。 ◇大阪のものづくり人材を支える工科高校、工業高等専門学校の教育内容の充実を図ります。 ◇定時制・通信制の課程の教育環境・教育内容を充実し、活性化を図ります。 (重点項目7)生徒の「自立・自己実現」の支援 ◇全府立高校で生命を尊重し一人ひとりを大切にする教育を進めます。また、高校生としての基礎的な学力、社会人となるために必要な規範意識等を確実に身に付けさせるとともに、自己の進路を主体的に選択し決定する力をはぐくむため、キャリア教育(キャリア教育とは、望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度をはぐくむ教育。)等を推進します。 ◇各校においては、それぞれの生徒の状況に応じて、臨床心理士 (臨床心理士とは、心理学の専門家のうち、臨床心理学を学問的基盤に持つ者で、原則として指定された大学院を修了し(第1種指定大学院の場合)、あるいは修了後1年以上の臨床経験(第2種指定大学院の場合)を経て、臨床心理士資格試験に合格し認定資格を有する者。)等の専門家をはじめとする外部人材の活用や、奨学金制度及びその活用についての周知・啓発を図るなど、生徒を指導・支援するための取組みを充実させます。障がいのある生徒を支援するための校内体制を整備します。 【基本方針3】 【支援教育をめぐる現状と課題】 ○府立支援学校の現状 府立知的障がい支援学校の教育環境に関しては、効果的な学習指導や円滑な学校運営に配慮し、児童生徒数150〜200人程度の規模で学校を整備していくことが妥当であると示した平成4年の大阪府学校教育審議会の答申を踏まえ、これまで、新たな府立支援学校の開校や准校長 (准校長とは、教育課題に迅速に対応することで、児童生徒に対する、よりきめ細かな教育活動の充実を図るため、定時制・通信制の課程の高校、及び、高等部を設置する支援学校のうち、児童生徒数・教職員数が多い学校に、校長級の准校長を配置している。)、首席(首席とは、校長の学校運営を助け、その命を受け、一定の校務について教職員のリーダーとして組織を円滑に機能させるとともに、その校務を着実に遂行していく上で、他の教職員に対して、必要な指導・総括にあたる職。府立学校は平成18年度から、小・中学校は平成19年度から配置。)の配置、教頭の複数化など学校運営面での充実に努めてきました。 しかし、府立支援学校における知的障がいのある児童生徒数は、平成10年度から20年度の間に概ね1.5倍(平成20年度:約3,350人)に増加し、150〜200人程度の規模を大きく上回っている学校があります。また、将来推計を踏まえると、今後も児童生徒数の増加が見込まれます。 あわせて、高等部を卒業した知的障がいのある生徒の就職状況は、全国と比して約10ポイント低いという状況にあります。(H19就職率:全国25.8%、府17.8%) ○府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実 知的障がいのある生徒が高校で学ぶ施策として、全国に先駆けて、平成18年度から自立支援推進校(自立支援推進校とは、平成17年8月の大阪府学校教育審議会答申「高等学校における知的障がい生徒の受入れ方策について」をふまえ、平成13年度から5年間の調査研究を継承し、知的障がいのある生徒が高校でともに学ぶ取組みとして平成18年度から制度化したもの。「知的障がい生徒自立支援コース」を設置している高校(平成20年7月現在、府立高校9校)をさす。)、共生推進モデル校 (*26)を制度化し、府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実を図ってきました。 志願倍率の状況等から、生徒や保護者のニーズが高く、後期中等教育(後期中等教育とは、中等教育の後半、高等学校段階の教育。ここでは、高校、支援学校高等部、工業高等専門学校(3年生まで)での教育が後期中等教育にあたる。)における進路選択肢の充実が求められています。 ○小・中学校における支援教育 小・中学校(政令市を含む)においては、全国平均(H19:64.2%)と比べ支援学級(支援学級とは、学校教育法の改正により、特殊学級(養護学級)の名称が特別支援学級に改められた。大阪府においては、弱視学級、難聴学級、知的障がい学級、肢体不自由学級、病弱・身体虚弱学級、情緒障がい学級を小・中学校に設置している。大阪府では、これらを総称して「支援学級」という用語を使用している。)設置率が高くなっています(H20:98.3%)。これまでから地域の小・中学校において推進してきた「ともに学び、ともに育つ」大阪の支援教育の特徴であり、成果です。 小・中学校の児童生徒数が、近年はほぼ横ばいで推移している一方で、支援学級に在籍する児童生徒数は、平成10年度から20年度の間に概ね1.9倍(平成20年度:約12,700人)に大きく増加しており、また、障がいの重度・重複化、多様化が進んでいます。 ○将来の自立を見据えた教育 一人ひとりの状況に応じ、子どもの将来の自立、就労をはじめとした社会参加への切実な思いを受けとめた教育の推進が求められており、就学前から卒業後までを見通した「個別の教育支援計画」(個別の教育支援計画とは、障がいのある子ども一人ひとりのニーズを正確に把握し、中・長期的な観点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて、関係機関と連携を図りつつ、一貫して的確な支援を行うことを目的として作成する計画。)を作成・活用する必要があります。作成状況は、府立支援学校では100%、小・中学校の支援学級では80%台となっています。また、その内容は、府立支援学校、小・中学校ともに必ずしも一人ひとりの障がいの状況に応じたものとはなっていません。 ≪参考資料、平成18から20年度の平均志願倍率≫ 自立支援推進校、共生推進モデル校、3.52倍(参考、公立高校前期入学者選抜、1.44倍) ≪参考資料、府立支援学校知的障がい児童生徒在籍数の推移≫ 平成10年度2265人  平成11年度2313人 平成12年度2321人 平成13年度2471人 平成14年度2566人 平成15年度2658人 平成16年度2802人 平成17年度2887人 平成18年度3075人 平成19年度3195人 【基本方針3】障がいのある子ども一人ひとりの自立をしっかりと支援します 大阪が培い大切にしてきた「ともに学び、ともに育つ」教育を引き続き進めるとともに、知的障がいのある児童生徒数の増加等を踏まえた教育環境の充実や、児童生徒の将来の自立、就労をはじめとした社会参加への切実な思いを受けとめた教育を推進します。 (重点項目8)府立支援学校の教育環境の充実 ◇児童生徒数の増加を踏まえ、現在の学校の施設規模をはじめ、学習指導や学校運営などの諸条件を勘案し、新たな学校の設置を行うなど教育環境の充実に取り組みます。 ◇生徒・保護者の高いニーズを踏まえ、たまがわ高等支援学校のような就労を通じた社会的自立をめざすための学校の地域バランスを考慮した計画的な配置や、関係部局、関係機関・団体、企業、経済団体等との連携をはじめ、生徒の就労支援のための環境整備を進めます。 (重点項目9)府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実 ◇自立支援推進校や共生推進モデル校の取組みについては、これまでの成果と課題を検証するとともに、府立高校と府立支援学校との連携を図りながら、地域バランスを考慮し、府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の一層の充実を図ります。 (重点項目10)小・中学校における「ともに学び、ともに育つ」教育の推進 ◇全ての小・中学校における支援教育の充実を図るため、小・中学校の現状やニーズを踏まえ、看護師等の配置など教育環境や支援体制の整備に取り組みます。 ◇障がいのある子どもと障がいのない子どもがともに学ぶことができるよう、支援学級の教室配置にも十分配慮し、子どもたちの交流を促進します。 (重点項目11)府立支援学校のセンター的機能の発揮 ◇小・中学校、府立高校等からの要請に的確に応えられるよう、府立支援学校教員の専門性の向上や地域支援のための校内体制の整備・充実を図ります。 (重点項目12)一人ひとりのニーズに応じた支援教育の充実 ◇福祉や医療、労働等の関係機関や専門家との連携・協力のもと、府立支援学校はもとより、幼稚園、小・中学校、府立高校等で学ぶ障がいのある全ての子どもたちに卒業後も見据えた「個別の教育支援計画」の作成・活用を促進します。 【基本方針4】 【子どもたちの体力をめぐる現状と課題】 ○子どもたちの体力 平成19年度の「体力・運動能力調査」(体力・運動能力調査とは、文部科学省が、昭和39年から、国民の体力・運動能力の現状を明らかにし、体育・スポーツ活動の指導と、行政上の基礎資料を得るために実施している調査。抽出調査で、調査内容は、小・中・高等学校では、握力・反復横跳び・50m走など8項目の「体力テスト」と身長などの体格測定で、年齢別・学校段階別に毎年10月の体育の日頃に結果を公表している。)では、全国と比べ全年齢において、大阪の子どもたちは敏捷性の指標である反復横跳びの平均値が極めて低く、また、小学校では筋力の指標である握力、中学校及び府立高校では全身持久力の指標である持久走などは低い状況です。一方、小学校ソフトボール投げなど全国平均よりも高い項目もありますが、年齢や項目により差があります。 なお、平成20年度に実施された「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力・運動能力、運動習慣等調査とは、文部科学省が、平成20年から対象を小学校第5学年・特別支援学校小学部第5学年、中学校第2学年・中等教育学校第2学年・特別支援学校中学部第2学年に限定し、「体力テスト」のほか、児童生徒には生活習慣等、学校には体育的行事等に関する質問もあわせて実施している調査。各学校が児童生徒の体力や生活習慣、食習慣、運動習慣等を把握し、学校における体育・健康に関する指導などの改善に役立てることを目的としている。)においては、小・中学校ともに、全種目全国平均を下回っています。 ○学校体育の状況 小学校の体育授業では、運動に親しむことにより運動が好きになることを重視しているものの、運動時間・量、強度が不足している場合があります。 また、大阪府においては、中学校及び府立高校の運動部入部率が全国平均と比べて低い状況にあります。 ○体力に関する意識 都市化や核家族化、夜型の生活などとともに、テレビゲーム・パソコンなどが子どもの生活・遊びの中に定着し、室内での活動時間が増え、身体を動かす時間が非常に減少してきています。 また、運動がもたらす身体への効果について理解が乏しいため、自らが積極的に体を動かそうとする意識も低くなっています。 ○家庭・地域の状況 平成20年度の「全国学力・学習状況調査」結果によると、大阪は「朝食を全くとらない・あまりとらない」と答えた児童が全体の7.3%で全国平均に比べて高く、学力面のみならず子どもの体力面、成長面においても課題があります。一方、地域においては、公園などの遊び場が少なく、限られたスペースで安全な遊びしかできないため、遊びが体力向上へ繋がりにくくなっています。 ≪参考資料、平成19年度「体力・運動能力調査」における大阪府と全国との比較≫ 全国の平均値を50とした場合の大阪府の平均値 9歳男子 握力46.52 上体起こし50.39 長座体前屈49.60 反復横跳び45.36 20メートルシャトルラン48.36 50メートル走49.40 立ち幅跳び48.06 ソフトボール投げ49.80 9歳女子 握力47.10 上体起こし49.96 長座体前屈49.18 反復横跳び43.50 20メートルシャトルラン47.50 50メートル走49.44 立ち幅跳び47.86 ソフトボール投げ50.09 【基本方針4】子どもたちの健康と体力づくりを進めます 体力は、人間の活動の源であり、健康の維持のほか、学力をはじめとした子どもの意欲や気力の充実に大きくかかわる基本的な要素です。子どもの運動機会の減少と、体力の低下という状況を改善していけるよう、学校、家庭、地域が一体となり取り組んでいく必要があります。特に食生活などの生活習慣の改善については、家庭の協力を得て、子どもたちの健康と体力づくりを進め、生涯にわたる心身の健康の保持増進のための基礎を培います。 (重点項目13)学校体育の充実 ◇子どもが自ら体を動かし運動量を確保できるよう、教科「体育」、「保健体育」の授業の工夫・充実及び教員の指導力の向上を図ります。 ◇生徒が積極的に参加したいと思える魅力ある運動部活動を展開するため、外部指導者を活用します。また、体力づくりを推進するため、小学生を対象としたスポーツ大会を充実します。 ◇学校体育に関する研究組織と連携し、学校現場に即した「体力向上実践事例集」を作成・配付し、それに基づく研修会を開催するなど、各学校における取組みを充実させます。 ◇子どもたちが夢や憧れを抱き、運動に親しむ態度や習慣を身に付けるよう、関係部局と連携し、小学校にトップアスリートを派遣します。  (重点項目14)学校・家庭・地域における健康・体力づくり ◇保護者に対して、的確な情報を伝達して体力の重要性を認知していただくとともに、保護者の協力を得て子どもと一緒に運動する機会の促進を図ります。 ◇「体力・運動能力調査」等を通じて、子どもが自らの体力・運動能力を知り、興味・関心を高めることにより、運動に対する意識の変革を図ります。 ◇保護者に対して、「調和のとれた食事、適切な運動、十分な休養・睡眠」の重要性を周知するとともに、学校・家庭・地域との連携により子どもたちの生活習慣の確立を図ります。 ◇養護教諭が中核となり、学校内外の関係者と連携・協力し、保健室経営の充実を図るとともに、学校保健委員会(学校保健委員会とは、学校における健康に関する課題を研究協議し、健康づくりを推進するための組織であり、昭和33年の学校保健法等の施行に伴う文部省(当時)の通知において、学校保健計画に規定すべき事項として位置づけられている。学校保健委員会の開催により、学校内の保健活動の中心として機能するだけでなく、学校、家庭、地域の関係機関などの連携による効果的な学校保健活動を展開することが可能となることから、その活性化が望まれている。)の設置の推進や活性化を図り、児童生徒の多様な健康課題について研究協議や各種の研修会等を実施するなど、学校での健康教育や健康相談を充実します。 (重点項目15)学校における食育の推進 ◇全小・中・支援学校で「食に関する指導の全体計画」(食に関する指導の全体計画とは、学校における食育を推進するには、組織的・計画的に教育活動を展開することが重要であることから、各学校において食に関する指導の目標を設定し、その具現化に向けて職に関する指導の全体計画を策定する。)を策定するとともに、栄養教諭(栄養教諭とは、食に関する子どもの健康問題の深刻化に伴い、児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる職員として、平成16年度に栄養教諭制度が創設された。栄養教諭は、学校における食育の推進の要として重要な役割を担っている。)をはじめとする教職員の共同での取組みのもと、環境教育や国際理解教育など様々な視点を取り入れ、各教科をはじめ学校教育活動全体を通して、学校給食を生きた教材として活用した食育を推進します。 ◇中学校に学校給食又は学校給食に極めて近いスクールランチ(スクールランチとは、中学校における学校給食等の実施率を向上し、食育を推進するため、平成21年度から導入支援を行う、栄養バランス、衛生管理面等の面で学校給食に極めて近い昼食のこと。)の導入を進めます。 【基本方針5】 【教員をめぐる現状と課題】 ○教員の年齢構成の不均衡 小学校の教員は、今後10年間で教員のおよそ半数が退職する見込みです。そのため、経験の少ない教員の増加、校長、教頭といった管理職候補者の減少などの課題が生じます。また、同様の傾向は、中学校、府立高校、府立支援学校でも見られます。 ○教員の資質の向上 経験の少ない教員の増加に備え、教育センターにおいて、これまでの教職員研修に加え、「カリキュラムナビプラザ」(カリキュラムナビプラザとは、教員の自主的・主体的研修の奨励・支援などを目的とし、授業力アップ等のための相談、授業実践等の教材化・普及などの支援体制を整備するとともに、教職をめざす学生に対する相談・支援等を行う。平成19年4月に府教育センターに開設。)を開設するなど、授業力の向上等に向けた支援を行っています。 また、教員のキャリアアップや資質向上を図るため、人事異動等を通じた積極的な取組みを推進してきました。 最新の知識技能を修得させるため、現職教員に大学等での講習の受講・修了を義務付ける教員免許更新制 (教員免許更新制とは、教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知能技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得るため、10年毎に免許状更新講習を受講・修了し、免許の更新を行う制度。教職員免許法の一部が改正され、平成21年4月から施行。)が導入されます。 今後の大量退職、大量採用を踏まえ、さらなる教員の資質向上に取り組む必要があります。 ○教員の大量採用 教員の大量退職に伴い、平成14年度以降、採用数が大幅に増加しており、その結果、特に小学校においては、平成18年度以降、採用倍率が3倍を下回っています。また、多様な経験や即戦力となる人材を確保するため、平成15年度採用試験以降、社会人や現職教諭を対象とした選考を導入し、平成20年度採用試験においても、常勤講師経験者等の特別選考を新設したところです。 また、平成20年度からは、小・中学校の教員を志す学生を対象とした「大阪きょうしセミナー」(大阪きょうしセミナーとは、大阪で教師になりたいという高い志と情熱をもつ学生を対象に、教師として求められる資質や基礎的な指導力をはぐくむために開催するセミナー。)を実施しています。 ○「がんばっている」教員への応援 平成14年度から評価・育成システム(評価・育成システムとは、教職員が学校の目標を共有し、その達成に向けた個人目標を主体的に設定し、校長等の支援を得ながら目標の達成に取り組み、自己点検と校長等による評価、取組みの改善を行うことにより、教職員の意欲・資質能力の向上、教育活動の充実及び学校の活性化に資することを目的として、全ての教職員を対象に平成16年度から実施。平成19年度から評価結果を給与に反映。)を試験的に実施し、その後、制度の改善を図りながら、平成16年度から本格実施しています。 さらに平成19年度からは、全国に先駆けて、本システムによる前年度の評価結果を昇給及び勤勉手当に反映しています。 今後とも、「がんばっている教員」に対し評価を的確に反映し、信頼性・納得性の高い制度とするため常に改善・充実を図る必要があります。 ○ 指導が不適切な教員への対応 平成13年7月に「教員の資質に関する諮問委員会」を設置するなど、指導が不適切な教員に対する様々な取組みを進めてきました。 あわせて、教育公務員特例法の改正(平成20年4月施行)により、指導が不適切な教員に対して分限免職が適用されるなど、制度としての人事管理が厳格化されました。 ≪参考資料、平成19年度の小学校の教員の年齢構成≫ 50歳代が多い 30歳代から40歳代の中堅層が少なく、管理職候補者が減少 20歳代の教職経験の少ない教員が増加 【基本方針5】教員の力を高めるとともに、指導が不適切な教員を現場からはずします 大量退職、大量採用により教員の多くが入れ替わる中、熱意ある人材を確保するとともに、評価・育成システムを有効に活用しながら、すべての教員の力を最大限に引き出す仕組みづくりを進めます。 一方で、指導・研修を行ってもなお指導が不適切な教員に対しては、分限免職(分限免職とは、校務能率を維持することを目的として、職に必要な適格性を欠くなど、一定の事由がある場合に、職員の意に反してその職を失わせる処分。)などを実施します。 (重点項目16) 授業力の向上と教職経験の少ない教員への指導・育成 ◇学力をはじめとした大阪の教育課題に対応するため、教員の授業力を向上します。 ◇日常の教育活動におけるOJT(OJTとは、オンザジョブトレーニングの略。職業指導手法の一つで、職場での具体的な仕事を通じて、仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを、意図的・計画的・継続的に指導し、修得させることによって、全体的な業務処理能力や力量を育成する指導手法のこと。)や校内研修の体制づくりを充実します。 ◇府内にブランチを設置するなど、教育センターのカリキュラムセンター機能を強化し、教員の自主的な研修や教職経験の少ない教員に対する支援を行います。 ◇教員の適性に配慮した適材適所の配置や積極的な校種間・公私間等の人事交流により、教員の資質向上を図ります。 (重点項目17)将来、管理職となる教員の養成 ◇若い年齢層に対して早い時期から将来の管理職候補者として、管理職に必要な資質とスキルを育成するとともに、キャリアステージに応じた研修制度の再構築を行います。 ◇民間人、退職校長や行政経験者からの管理職への登用を計画的に実施します。 ◇若手教員から校長に抜擢する道を開きます。 (重点項目18)熱意ある優秀な教員の確保 ◇教員採用選考について、意欲的な学生を教員採用試験に結びつける工夫を重ねることなどにより、熱意ある優秀な教員を確保します。 (重点項目19)「がんばっている」教員への応援 ◇教育活動に意欲的に取り組み、他の教員の模範となるような、いわゆる「がんばっている」教員がさらに意欲的に教育活動に取り組めるよう、評価・育成システムにおける評価結果の給与や人事への適切な反映及び研修制度の創設、優秀教職員表彰制度の充実などにより応援します。 (重点項目20)指導が不適切な教員への対応 ◇指導が不適切な教員に対しては、まず、学校内での指導・研修を実施し、そこでの効果が見られない場合には、校長や市町村教育委員会とも連携して、現場からはずし、校外での指導改善研修を実施します。 ◇指導改善研修終了後においても、なお指導が不適切な教員に対しては、分限免職 などを実施します。 【基本方針6】 【学校の組織をめぐる現状と課題】 ○学校評価 学校運営改善に活用するために「学校教育自己診断」(学校教育自己診断とは、学校教育活動が児童生徒の実態や保護者・地域住民の学校教育に対するニーズ等に対応しているかどうかについて、教職員、児童生徒、保護者らが記入する診断票に基づいて、学校自らが学校教育計画の達成度を点検し、学校教育改善のための方策を明らかにするもの。)と「学校協議会」(学校協議会とは、保護者や地域住民等の意向を把握し、学校運営に反映させることにより、学校運営改善を図る目的で設置される学校支援組織で、文部科学省が示す「学校評議員」が一堂に会して協議する会議と同趣旨である。)を関連させた学校評価 (学校評価とは、学校運営の改善をめざすことを目的として、各学校が教育活動その他の学校運営について点検・評価する取組み。学校教育法施行規則において、「学校運営自己評価と結果公表義務」等が規定されている。)を進めています。「学校教育自己診断」は、全府立学校及び小・中学校で実施しており、「学校協議会」等は、府立学校では全校が、小・中学校では平成20年3月時点で89.3%が設置しています。今後は、学校評価の学校改善への十分な活用や評価結果の府民へのわかりやすい公表が課題となっています。 ○学校の組織的運営 校長のリーダーシップ確立のための方策をまとめた『府立学校経営の支援について』や学校組織の機動力を高めることを目的とした『学校組織運営に関する指針』等を活用して、学校組織の円滑な運営に向けた取組みを進めてきました。また、府立学校へは、「スクールカラーサポートプラン(集中支援事業)」(スクールカラーサポートプラン(集中支援事業) とは、校長のリーダーシップのもとで、保護者や地域の期待、生徒の状況等に即した明確な目標を設定して、特色ある学校づくりを推進し、学校改革に積極的・計画的に取り組む府立高等学校に対して、府教育委員会として集中的に支援を行う事業。平成19年度より実施。) や、学校管理費における校長裁量枠の設置などの支援策も講じてきました。 人事面では、府立学校において、准校長、首席、指導教諭の設置、公募制人事である「トライシステム」(トライシステムとは、校長が自校の課題に応じて求人情報を公開し、それに応募した教員の中から校長が構想する学校運営を担い得る人材を確保するためのもの。これによって、学校の活性化を図るとともに、教員の自己啓発の動機付けを促し、その意欲の向上を図る。府立学校において平成15年度から実施。)や「特得システム」(とくとくシステムとは、教員が持っている特技や得意分野の内容を、自主的に特技・得意分野情報検索システムに登録し、校長はそのシステムを活用して学校に必要とする人材の確保に努めるもの。教員の意欲向上を図るとともに、学校の活性化と特色づくりを推進することを目的とする。府立学校において平成19年度から実施。)等の取組みを進めてきました(首席、指導教諭(指導教諭とは、学校に配置され、教育長及び校長の命を受け、専門的な知識や経験を活用し、教員の育成、研究・研修支援、地域連携の職責を担う。府立学校は平成18年から、小中学校は平成19年度から配置。)については、小・中学校にも設置)。今後も、学校の組織としての力を高めていくため、これらの取組みの充実が不可欠であります。 ○専門家等やチームによる学校支援 学校の複雑化・深刻化する課題に対応するため、府立学校長の相談窓口である「学校経営支援チーム」や臨床心理士などの専門家や校長OBなどの外部人材を活用して学校を支援する「子ども支援チーム」「学校支援チーム」を設置し、チームによる支援を進めています。 近年は、家庭の教育力の低下が指摘されるとともに、学校に対する保護者からの要望の中に、学校だけでは解決が困難な事例も増えており、その対応に対する支援が課題となっています。 ○校務の効率化 教員の子どもと向き合う時間の確保が課題となっており、そのための校務の効率化等に取り組む必要があります。ICT (ICTとは、インフォメーションアンドコミュニケーションテクノロジーの略。情報や通信に関する技術の総称。日本では同様の言葉としてIT(インフォメーションテクノロジー、情報技術)の方が普及しているが、国際的にはICTの方が一般的。)機器の整備と情報の共有化を進めるとともに、学校事務の共同実施などの成果も踏まえた校務のあり方を検討していくことが求められています。 ≪参考資料、准校長・首席・指導教諭の配置状況≫ 小学校 学校数1022校、首席配置人数152人、配置校数152校、指導教諭配置人数161校、配置校数157校 中学校 学校数465校、首席配置人数204人、配置校数202校、指導教諭配置人数98校、配置校数95校 府立高校(全日制・定時制・通信制) 学校数148校、准校長配置人数16人、配置校数15校、首席配置人数275人、配置校数144校、指導教諭配置人数29校、配置校数25校 府立支援学校 学校数26校、准校長配置人数9校、配置校数9校、首席配置人数76人、配置校数26校、指導教諭配置人数12校、配置校数12校 ≪参考資料、都道府県別のICT環境の整備状況(平成19年度)≫ 教員の校務用コンピュータ整備率 平成20年3月全国平均57.8%大阪府35.1%(全国46位) 【基本方針6】学校の組織力と学校へのチーム支援を強化します 学校が保護者や地域、府民に信頼され、子どもたちにとって魅力あふれる場となるよう、学校の総合的な組織力を向上させるとともに、専門家等を含めたチーム支援を充実します。 (重点項目21)府立学校の組織的な運営と自立的取組みの支援 ◇平成18年12月に策定した『学校組織運営に関する指針』の趣旨を徹底し、各学校が、掲げる教育目標の実現に向けて、校長の適切なリーダーシップのもと、教職員が一丸となった組織的な学校運営を進めます。 ◇首席や指導教諭を十分活用しながら学校運営を進めるとともに、ミドルリーダーを育成します。 ◇「学校教育自己診断」と「学校協議会」を関連させた「学校評価」を充実させ、学校運営の改善につなげます。 ◇校長が教育目標の実現に向け適切にリーダーシップを発揮できるよう、予算や人事面での支援策を講じます。 ◇専門性を有する外部人材や関係諸機関等と連携したチームによる支援を充実します。 ◇学校の教育活動等の情報や意欲的な取組みを効果的に発信していきます。 (重点項目22)小・中学校に対するチーム支援 ◇小・中学校に対し、学校外の専門家や関係諸機関等と教育委員会が連携したチームによる支援を充実するとともに、教育相談体制の充実など、市町村教育委員会においても同様の支援体制が構築されるよう働きかけます。 (重点項目23)校務の効率化 ◇ICT機器の活用による情報の共有化や学校事務の共同実施などの取組みを行う中、校務の処理方法の見直しによる教員の事務負担の軽減を進めるなど、教員が子どもと向き合う時間の確保を図ります。 ◇教員がICT機器を有効に活用できるよう、大学等とも連携して、ICTに関する知識・スキルの習得の機会を設けます。 【基本方針7】 【学校をめぐる現状と課題】 ○学校の安全確保 平成13年の附属池田小学校の事件、平成15年の熊取町立北小学校の事件、平成17年の寝屋川市立中央小学校の事件など、府内で学校安全に関わる重大事件が発生しました。 そのため、平成17年度から、小学校に警備員等の配置を行う市町村に対する補助制度を創設するとともに、地域学校安全指導員(スクールガード・リーダー)(地域学校安全指導員(スクールガード・リーダー)とは、警察官OB等を地域学校安全指導員として委嘱。学校の巡回指導や地域住民による通学路等における子どもの安全を見守る活動を行う「子どもの安全見まもり隊」等のボランティアに対する指導・助言を行う。)による小学校区の巡回指導等を行うなど、学校・地域・関係機関が連携して地域社会全体で学校安全に取り組む体制の整備を行いました。 しかしながら、その後も、全国的に子どもの安全を脅かす事象が後を絶ちません。 ○AED(AEDとはオートメイティッドエクスターナルデフィブリレイターの略で自動体外式除細動器のこと。突然、心停止状態に陥ったときに装着して用いる救命装置。心電図を自動計測して、必要な場合は電気ショックを与える。平成16年7月、厚生労働省は非医療従事者による使用を解禁。公共施設などへの設置が進んでおり、府立学校には平成17年度から段階的に配備し、平成19年度に全校に配備。)の配備 平成19年度に、全府立学校にAEDを配備しました。しかしながら、全児童生徒がその使用方法を習得しているとは言えない状況にあります。 ○府立学校の状況 府立学校の校舎等については、行財政改革プログラム(案)で既存ストックを最大限活用するとされています。そのため、外壁補修・窓枠改修・屋上防水を中心とした大規模改修を行ってきました。今後は、改修対象を拡大させるなど、より効果的な改修を行う必要があります。 ○校舎等の耐震化 府立学校の耐震化については「府有建築物耐震化実施方針」に基づき、Is値(Is値とは、耐震診断で、建物の強度や粘りに加え、その形状や経年状況を考慮した耐震指標をいう。耐震指標(Is値)0.6以上の建物は、「地震の震動及び衝撃に対し倒壊し、又は崩壊する危険性が低い」と評価される。)0.3未満の建物については、平成23年度末までに着手、特に避難所については平成21年度末までに着手します。そして、平成27年度末までに耐震化率100%を目標として、計画的に耐震改修工事を実施しています。 小・中学校の耐震化率は、市町村ごとの差が大きく、一層の取組みが必要です。 《参考資料、府立学校建物の耐震化の現状》 平成20年8月1日現在 府立高校 校数148校、全棟数1160棟、現行の建築基準法と同等の耐震性能を満たすもの470棟、現行の建築基準法と同等の耐震性能に満たないものIs値0.3以上0.6未満439棟、Is値0.3未満251棟、計690棟、耐震化率40.5% 府立支援学校(分校1校を除く) 校数25校、全棟数159棟、現行の建築基準法と同等の耐震性能を満たすもの98棟、現行の建築基準法と同等の耐震性能に満たないものIs値0.3以上0.6未満37棟、Is値0.3未満24棟、計61棟、耐震化率61.6%  府立工業高等専門学校 校数1校、全棟数13棟、現行の建築基準法と同等の耐震性能を満たすもの13棟、耐震化率100% 府立学校計 校数174校、全棟数1332棟、現行の建築基準法と同等の耐震性能を満たすもの581棟、現行の建築基準法と同等の耐震性能に満たないものIs値0.3以上0.6未満476棟、Is値0.3未満275棟、計751棟、耐震化率43.6% 【基本方針7】子どもたちの安全で安心な学びの場をつくります 子どもたちの学びの場である学校は、安全で安心できる場でなくてはなりません。市町村、学校、地域、関係機関と連携し、様々な観点から子どもたちの安全対策の取組みを進めます。 (重点項目24)学校の安全対策の推進 ◇事件・事故から子どもたちを守るため、府警本部や関係部局との連携のもと、通学路の安全確保や「こども110番」(こども110番とは、地域の協力家庭が旗などを掲げ、子どもたちがトラブルに巻き込まれそうになった時に、駆け込み、助けを求めることのできる「こども110番の家」や、府内のタクシーや営業車、官公庁の公用車等に「動くこども110番」のステッカーを貼り、子どもたちの安全の確保に配慮するなど、地域の子どもは地域で守り、子どもたちが安心して暮らせる環境を確保するために「こども110番」運動を推進している。)運動への取組み、小学校への警備員等の配置など、市町村や学校の実情に応じ、地域や関係機関と連携を図りながら、柔軟かつ効果的な学校安全体制を確保します。また、子ども自らが暴力等の被害から身を守るスキルを身に付けることができるような取組みを進めます。 ◇AED(自動体外式除細動器)を使用した心肺蘇生法をはじめとする応急手当を全生徒が卒業するまでに習得するよう実習を行います。あわせて、実習を通じて命の大切さを理解する「命の教育」を実践します。 (重点項目25)計画的な学校施設・設備の改修・改善 ◇府立学校施設・設備の改修・改善や耐震化を計画的に推進するとともに、快適な学習環境づくりを進めます。また、小・中学校の耐震化については、設置者である市町村に対して、国の補助制度を活用して施設整備を進めるよう働きかけるとともに、関係部局と連携しながら技術的相談などを行います。 【基本方針8】 【地域社会をめぐる現状と課題】 ○ 「すこやかネット」(すこやかネットとは、「教育コミュニティ」づくりの推進組織。全中学校区に設置。地域社会が一体となって、0歳から15歳の子どもの連続した成長を見据えた取組みを進める。)を中心とした地域教育活動の推進 平成12年度から、学校を核として地域社会が一体となって子どもを育てる「教育コミュニティづくり」に全国に先駆けて取り組んできました。 そのための推進組織として、全中学校区に「すこやかネット(地域教育協議会)」を設置し、学校・家庭・地域の協働により、地域の教育課題の解決に向けた取組みを進めてきました。あわせて、活動の推進役として地域コーディネーターを養成(H13〜17:約1,000人)し、その約7割の方々が、「すこやかネット」の運営に関わっています。 また、平成16年度からは、子どもの安全で安心な活動場所を確保する「子どもの居場所づくり」事業も実施されるなど、地域における活動は活性化されてきています。 「すこやかネット」の活動においては、学校を核としながら、地域住民が主体となった活動が徐々に定着してきており、子どもを取り巻く環境によい変化が現れつつあります。 しかし、活動が限られた人に頼っている場合が多く見られることや、イベント的な一過性の取組みが中心になっている場合もあります。 ○家庭教育支援の取組みの推進 子どものすこやかな成長の基盤となる家庭の教育力の向上を図るため、保護者が子育てに前向きに取り組めるよう、保護者のエンパワメント(エンパワメントとは、個人が自分自身の力で問題や課題を解決していくことができる社会的技術や能力を引き出し、高めること。)を図るとともに、家庭教育を支援する地域ネットワークの構築に取り組んできました。 学習機会の提供・ネットワーク構築に向けた取組みをおこなう市町村への補助、教材の作成、身近な地域での学習を推進する親学習(親学習とは、子育て中の保護者を対象とした「保護者が自らの役割に気づき、それを果たすための学習」や、将来親となる小・中学生や高校生を対象とした「親となるための準備としての学習」等をいう。)リーダー(H16〜18:約400人)の養成等により、家庭教育支援の輪は広がりつつあります。 しかし、家庭・地域の教育力の低下が言われる中、「家庭教育(子育て)に不安や負担感を持ちながら学習や他者との交流機会に参加しない・参加しにくい保護者」や「将来、保護者となる世代」への働きかけが十分ではない場合もあります。 ≪参考資料、子どもを取り巻く環境の変化≫ 平成14・18年度「すこやかネット」関係者アンケート調査より 教師と保護者・地域住民との信頼関係ができた 学校関係者  平成14年度 44.4% 平成18年度 51.7% 地域関係者 平成14年度 37.6% 平成18年度 47.0% 安全が確保された 学校関係者  平成14年度 21.1% 平成18年度 34.9% 地域関係者 平成14年度 15.0% 平成18年度 28.7% 様々な体験活動を行う機会が増えた 学校関係者  平成14年度 48.7% 平成18年度 65.5% 地域関係者 平成14年度 47.6% 平成18年度 64.1% ≪参考資料、就学前の保護者の子育てに関する不安感や負担感≫ 大阪府次世代育成支援に関する市町村ニーズ調査(平成16年度)より 非常に不安や負担を感じる 8.4% なんとなく不安や負担を感じる 39.1% あまり不安や負担などは感じない 29.3% 全く感じない 4.2% なんともいえない(わからない) 8.2% 未回答・不明 10・7% 【基本方針8】家庭との役割分担、地域との協力で子どもたちの学びと育ちを支えます 子どもたちの生きる力をはぐくむとともに、学ぶ力の向上をめざして、学校・家庭・地域が一体となった「教育コミュニティ」づくりの一層の推進を図ります。 とりわけ、「子どもの学び・育ちの原点」である家庭において、保護者が責任と自信を持って家庭教育にあたることが重要であることから、改めて保護者が自らの役割を確認し、自覚に基づいた行動につながるよう、学校・地域はもとより、関係部局・機関との連携をさらに深め、多様な学習・交流機会を提供するとともに、地域における家庭教育支援体制の構築を図ります。 (重点項目26)教育コミュニティづくりの主体的な推進 ◇地域全体で子どもをはぐくむため、地域の力を結集して学校支援地域本部(学校支援地域本部とは、地域全体で学校教育を支援するため、学校と地域の連携体制を構築する。地域の教育力向上などを図る取組みとして、平成20年度から実施。)を設置するとともに、学校内に学校支援ボランティア等地域人材の居場所づくりを促進するなど、地域が学校を支援する取組みを推進します。 ◇学校、家庭、地域及び関係機関が連携して、就寝時間、起床時間、家庭学習や食生活など、子どもたちの生活リズムの確立・向上に向けた取組みを推進します。 ◇市町村や学校、その他の行政機関、地域の住民など、教育コミュニティづくりに関わる全ての人が主体的に取り組んでいくことができる組織・体制づくりを進めます。 ◇身近な地域の教育課題の解決に向けて、核となる推進役の発掘や育成を行うとともに、個人や地域の既存の団体に加えてNPOや企業等との連携を推進します。 (重点項目27)保護者のエンパワメントと家庭教育を支える地域ネットワークの構築 ◇親学習をはじめ、多様な交流機会等を提供することで、全ての保護者のエンパワメントを図り、改めて保護者が自らの役割を確認し、自覚に基づいた行動につながるよう促すとともに、地域における家庭教育支援のネットワークを拡大・充実します。また、学校での授業等において、これから親となる子どもたちへの親学習の展開を図ります。 (重点項目28)生きる力をはぐくむ体験活動や読書活動の推進 ◇学校で学ぶ様々な知識とともに、地域や家庭での生活体験を通して、それらの知識を実感できる機会を拡大します。 ◇学校・家庭・地域の連携により、子どもが乳幼児期・学齢期などそれぞれの発達段階に応じて、様々な場所で読書を楽しめる環境づくりを進めます。 【基本方針9】 【子どもたちの「こころ」をめぐる現状と課題】 ○社会の状況 都市化、少子化が進展する中で、家庭の教育力が低下し、地域のつながりも希薄化していることが指摘されています。また、公共のルールやマナーを守らない大人の増加やモラルの低下を指摘する声があり、社会を構成する一人ひとりに、自ら果たすべき責任の自覚や正義感、志などが欠けてきています。 ○子どもたちの成長・発達上の課題 子どもたちの成長、発達をめぐっては、身体的には早熟傾向にあるにもかかわらず、精神的・社会的自立が遅れる傾向にあること等が各方面から指摘されています。また、最近では、遊びや消費活動、情報活用能力等における早熟化が進む反面、生産活動や社会性等に未熟さが見られるなど、発達上の課題が顕著になっています。 ○自尊感情 大阪の子どもたちの自尊感情や進取の精神は、全国の状況と比べると低い傾向にありますが、このことは子どもたちが社会の担い手として自立し前向きに生きる上で大きな課題となっています。また、物事に対して積極的に取り組むことや、人との関わりの意識も低い傾向にあります。 ○人権教育 人権侵害事象が引き続き生起しており、その原因として、人権に関する知識・理解の不十分さ、知識・理解が実践的態度につながっていない等の課題が指摘されています。 また、ネット上の人権侵害事象への対応や命の尊さを教える教育の必要性等、新たな人権課題に即応した教育のあり方が問われるなど、社会の変化に伴った人権文化の創造が求められています。 ○読書活動・文化施設の利用 日頃、読書をほとんどしない児童生徒の割合が全国と比較して高く、全校一斉読書の実施率も低くなっています。また、博物館、美術館等の文化施設を利用することも少なくなっています。 ≪参考資料≫ 平成20年度全国学力・学習状況調査(児童・生徒質問紙調査)より 自分には、よいところがあると思いますか 小学校大阪府 当てはまる 27.7% どちらかといえば、当てはまる 41.3% どちらかといえば、当てはまらない 21.4% 当てはまらない 9.4% その他・無回答 0.2% 小学校全国 当てはまる 30.3% どちらかといえば、当てはまる 43.1% どちらかといえば、当てはまらない 19.1% 当てはまらない 7.4% その他・無回答 0.1% 中学校大阪府 当てはまる 16.7% どちらかといえば、当てはまる 37.2% どちらかといえば、当てはまらない 31.2% 当てはまらない 14.5% その他・無回答 0.5% 中学校全国 当てはまる 18.5% どちらかといえば、当てはまる 42.3% どちらかといえば、当てはまらない 28.0% 当てはまらない 11.0% その他・無回答 0.2% 家や図書館での普段の読書時間(10分以下、全く読まない) 小学校大阪府 45.4% 小学校全国 37.1% 中学校大阪府 63.9% 中学校全国 50.3% 【基本方針9】子どもたちの豊かな心をはぐくみます 次代を担う子どもたちが、社会人として必要な規律、規範を身に付け、よりよい社会を創っていくという高い「志」を持ち、人として充実した人生を送るために必要な「夢」をはぐくむ教育を推進していきます。 (重点項目29)子どもの成長過程に応じた教育の充実 ◇小・中・高校を通じて志や夢をはぐくむためのカリキュラムや副教材を作成します。道徳教育を推進するとともに、高校生に対し、社会人として自立し、社会の発展に寄与する態度をはぐぐむための「志」学を推進します。また、人と人との信頼関係や豊かな人間関係を育て、互いに認め合い尊重し合う体験活動を推進します。 ◇運動系、文化系ともに部活動の活性化を図ります。 ◇各校種においてキャリア教育を推進するとともに、専修学校との連携を図ります。 (重点項目30)人権教育、障がい者理解教育、国際理解教育、福祉教育の推進 ◇自他の人権を守ろうとする意識・態度を醸成し、実践力を育成するため、自他の尊厳や価値、文化や習慣等の違いを尊重できる効果的な取組みを推進します。 ◇障がいのある子どもと障がいのない子どもがともに学び、ともに育つことができるよう、障がい者理解教育を推進します。 ◇小学校における外国語活動や外国の人々との交流を通して、国際共存・協調時代を生きるための国際感覚を醸成します。また、在日外国人児童生徒が自らの誇りや自覚を高めることができるよう、指導を一層工夫・改善します。また、帰国・渡日児童生徒の受入れ体制の整備、日本語指導、教科学習指導、進路指導など学校生活の支援を図ります。 ◇人とのふれあい(実体験)を通して、他人を思いやる心や社会に貢献する意義を認識し、実践する態度を養います。 (重点項目31)読書活動の推進 ◇学校・家庭・地域の連携強化により、子どもが乳幼児期・学齢期などそれぞれの発達段階に応じて、様々なところで読書を楽しめる環境づくりを進めます。 ◇府立図書館における子どもの読書活動推進機能を強化するとともに、公立図書館と学校図書館の連携を促進します。 ◇全校一斉読書の取組みなどを通して、子どもたちに読書習慣を身に付けさせます。 (重点項目32)社会全体での「こころ」をはぐくむ取組みの推進 ◇生命の大切さ、思いやりや感謝、努力する心など一人ひとりが社会の一員として大事にしたい「こころ」を子どもだけなく大人に対しても呼びかけます。 ◇トップアスリートとのふれあいをはじめ、本物のスポーツ・芸術・文化にふれることにより、子どもたちが夢や憧れを抱き、スポーツ・芸術・文化のすばらしさや楽しさを知る取組みを推進します。 (重点項目33)歴史・文化等に関する教育の充実 ◇国宝などの多様な文化財、府立博物館、その他文化施設や芸術・文化などを教育資源として積極的に活用することで、地域社会に根ざした学び、本物にふれる学びを実現し、我が国と郷土への誇りや大阪の伝統・文化を愛する心をはぐくみます。 ◇百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産への登録を推進します。 ◇文化・芸術にふれる機会を広げることで、子どもたちの感性を高め、豊かな情操を養います。 【基本方針10】 【子どもたちの規範意識、生徒指導をめぐる現状と課題】 ○規範意識 子どもたちの規範意識や他者とのコミュニケーション能力の低下、社会への関心の低さが指摘されています。規範意識は、小学校から年齢が上がるにつれて低下する傾向にあり、全国の状況と比較すると、大阪の子どもたちの規範意識は、小・中学校とも若干下回っています。 ○生徒指導上の現状と課題 平成19年度問題行動調査によると、暴力行為 (暴力行為とは、「対教師暴力」、「生徒間暴力」(何らかの人間関係がある児童生徒同士の暴力行為に限る)、「対人暴力」(対教師暴力、生徒間暴力を除く)、学校の施設・設備等の「器物損壊」の4形態をいう。文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」による。)の発生件数は、中学校で大幅に増加しています。いじめ(いじめとは、児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」による。平成19年1月に定義を見直す。)の認知件数は、平成18年度は、いじめの定義が変更されたこともあり、全校種で大きく増加しましたが、平成19年度は小・中学校で減少しました。不登校児童生徒は全校種で減少しているものの、中・高校は、全国的には高水準で推移しています。(政令市を含む。) いずれの項目においても、小学校6年生から中学校1年生にかけての増加が著しくなっており、校種間連携を含め、生徒指導上の課題を総合的に捉え、未然防止と早期対応に取り組む生徒指導・支援体制の充実が必要です。 これまで、専門家等を活用した取組みとして、すべての中学校にスクールカウンセラー(スクールカウンセラーとは、いじめや不登校、暴力行為などへのきめ細かな対応を図るため、児童生徒の心のケア、保護者・教員へのアドバイス等を行う、中学校に配置されている臨床心理士。)を配置するとともに、府立高校の拠点校に、スクールカウンセリング・スーパーバイザー(スクールカウンセリング・スーパーバイザーとは、臨床心理士の資格を有する者が、教育相談に関して高校の教員に助言を行うために、平成11年度から配置している。平成20年度は、各通学区域に6〜10校、計30校を配置校として指定している。)を配置し、児童生徒、保護者、教職員からの相談に応じています。 さらに、インターネットや携帯電話の普及による新たな課題に対しても、子どもたちが被害者にも加害者にもならないよう、子どもたち自身の問題解決力の育成などに取り組むことも重要です。 ○今日的な課題 裁判員制度(裁判員制度とは、裁判員制度とは、国民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決める制度。平成16年5月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、平成21年5月から裁判員制度が実施される。)の実施を間近に控え、法を取り巻く環境にも大きな変化が生まれている状況の中、法や司法制度及びこれらの基礎にある価値について理解し、法的な考え方を身に付けるための法教育の推進、高度情報化社会の進展に伴う情報の影の部分への対応も含めた情報教育の推進や、環境保護や地球温暖化への対応等、環境教育の充実など、今日的な課題に対して、子どもたちが正しい知識を得て自ら考えることが求められています。 《子どもたちの規範意識》 平成17年度大阪府豊かな体験活動に関する調査(大阪府教育委員会)より 学校のきまりは守らないといけないと思うか 小学校低学年 そう思う89%、やや思う7%、あまり思わない2%、思わない1%、無解答1% 小学校中学年 そう思う66%、やや思う28%、あまり思わない5%、思わない1%  小学校高学年 そう思う47%、やや思う40%、あまり思わない10%、思わない3% 中学校 そう思う32%、やや思う47%、あまり思わない14%、思わない6%、無解答1% 高校 そう思う31%、やや思う46%、あまり思わない16%、思わない7% 《暴力行為・いじめ・不登校の推移》(政令市を含む) 平成19年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)より 暴力行為 小学校 平成18年度442件、平成19年度411件、中学校 平成18年度4144件、平成19年度5295件、高校 平成18年度695件、平成19年度652件 いじめ 小学校 平成18年度1622件、平成19年度1163件、中学校 平成18年度1937件、平成19年度1872件、高校 平成18年度206件、平成19年度216件 不登校 小学校 平成18年度1610件、平成19年度1579件、中学校 平成18年度7469件、平成19年度7236件、高校 平成18年度5037件、平成19年度4593件 【基本方針10】責任を持って行動できる大人に育てます 安心して学べる、落ち着いた学習環境を醸成するとともに、子どもたちが自ら規律やルールを守り、学ぶ態度を支えるための生徒指導を充実させます。 また、現在、社会で生起している諸問題に対して、的確に対応できる教育を推進します。 (重点項目34)生徒指導の充実 ◇子どもたちの規範意識の向上、自己指導能力の育成をめざし、子どもたち自らの自主的、主体的な活動の創造や充実に努めます。 ◇学校のきまりや指導基準を明確化し、周知することにより、毅然とした指導と機動的・組織的な指導体制の充実を図ります。 ◇教職員と外部人材の協働による日常支援と緊急支援の機能を活用した生徒指導・支援を充実します。 ◇校種間の円滑な接続のため、ケース会議(ケース会議とは、学校で子どもが見せる様々な悩みの兆候は、学校だけでなく家庭環境等が影響を及ぼしていることもある。ケース会議とは、これらに対応し早期解決をめざすために、学級担任だけでなく、生徒指導担当、学年主任、スクールカウンセラー等がチームを組み、その背景・原因や解決に向けた具体的な手立て等を検討・実行するための会議。各学校だけでなく、校種間の円滑な接続のための小・中連携ケース会議等もある。)等を活用し、小・中学校、関係機関等との連携ネットワークによる生徒指導を推進します。 ◇インターネットや携帯電話の普及による新たな生徒指導上の課題に対し、子どもたちが被害者にも加害者にもならないよう、子どもたち自身の問題解決力を育成するとともに家庭・地域・関係機関と連携した具体的な取組みを推進します。 ◇携帯電話の校内への持ち込み禁止(小・中学校)及び校内での原則使用禁止(府立学校)をはじめ、学校の指導方針を明確にするとともに、子どもたちの携帯電話の所持に伴う危険性への対応や過度の依存を防止するための総合的な取組みを図ります。 ◇あいさつや感謝する気持ちなど、学校生活や社会生活におけるルールやマナー等を身に付けさせる取組みを進めます。 ◇家庭との連携を図り、保護者の責任のもと、家庭内における子どものしつけ、ルールを守る心などの醸成を図ります。 (重点項目35)今日的な課題に対応した教育の推進 ◇環境問題に関心を持ち、環境に対する人間の責任と役割を理解し、環境問題を解決する能力を養います。 ◇子どもたちが、情報に接する場合のルールや規律を守る情報モラルを身に付け、コンピュータ等の情報手段を適切かつ主体的・積極的に活用できる学習活動を充実します。 ◇子どもたちが、法やルールの背景にある価値観、法的なものの考え方を主体的、体験的に学ぶ機会を増やします。 ◇子どもたちの「自立する力」と「社会とかかわる力」をはぐくむために、学習指導要領の改訂等も踏まえ、関係団体・部局と連携して、消費者教育、金融経済教育等を推進します。 (5)「はぐくみたい力」と「目標」「基本方針」「重点項目」の相関 はぐくみたい7つの力をはぐくむために重点的に取り組む「重点項目」を整理 その他の施策も含め総合的に取り組んでいく 「基礎・基本と活用する力、学ぶ意欲」をはぐくむための「重点項目」 重点項目1 学力向上方策の展開 重点項目2 家庭、地域と連携した学習機会、教育内容の充実 重点項目4 校種間の連携強化、就学前教育の充実 重点項目6 幅広い教育ニーズに応える教育内容の充実 重点項目7 生徒の「自立・自己実現」の支援 重点項目12 一人ひとりのニーズに応じた支援教育の充実 重点項目14 学校・家庭・地域における健康・体力づくり 重点項目31 読書活動の推進 「社会を創っていく態度」をはぐくむための「重点項目」 重点項目6 幅広い教育ニーズに応える教育内容の充実 重点項目7 生徒の「自立・自己実現」の支援 重点項目8 府立支援学校の教育環境の充実 重点項目9 府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実 重点項目10 小・中学校における「ともに学び、ともに育つ」教育の推進 重点項目13 学校体育の充実 重点項目29 子どもの成長過程に応じた教育の充実 重点項目32 社会全体での「こころ」をはぐくむ取組みの推進 重点項目34 生徒指導の充実 重点項目35 今日的な課題に対応した教育の推進 「心身の健康、体力」をはぐくむための「重点項目」 重点項目13 学校体育の充実 重点項目14 学校・家庭・地域における健康・体力づくり 重点項目15 学校における食育の推進 「進路選択、決定力」をはぐくむための「重点項目」 重点項目1 学力向上方策の展開 重点項目5 特色づくり・再編整備の成果と課題を踏まえた府立高校の充実 重点項目6 幅広い教育ニーズに応える教育内容の充実 重点項目7 生徒の「自立・自己実現」の支援 重点項目8 府立支援学校の教育環境の充実 重点項目9 府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実 重点項目12 一人ひとりのニーズに応じた支援教育の充実 重点項目13 学校体育の充実 重点項目29 子どもの成長過程に応じた教育の充実 重点項目30 人権教育、障がい者理解教育、国際理解教育、福祉教育の推進 「生命と人権の尊重」をはぐくむための「重点項目」 重点項目6 幅広い教育ニーズに応える教育内容の充実 重点項目7 生徒の「自立・自己実現」の支援 重点項目9 府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実 重点項目10 小・中学校における「ともに学び、ともに育つ」教育の推進 重点項目30 人権教育、障がい者理解教育、国際理解教育、福祉教育の推進 重点項目32 社会全体での「こころ」をはぐくむ取組みの推進 重点項目34 生徒指導の充実 「自然尊重の精神、環境を大切にする態度」をはぐくむための「重点項目」 重点項目2 家庭、地域と連携した学習機会、教育内容の充実 重点項目6 幅広い教育ニーズに応える教育内容の充実 重点項目15 学校における食育の推進 重点項目35 今日的な課題に対応した教育の推進 「伝統と文化の尊重、国際社会への寄与」をはぐくむための「重点項目」 重点項目2 家庭、地域と連携した学習機会、教育内容の充実 重点項目6 幅広い教育ニーズに応える教育内容の充実 重点項目15 学校における食育の推進 重点項目30 人権教育、障がい者理解教育、国際理解教育、福祉教育の推進 重点項目33 歴史、文化等に関する教育の充実 目標2はすべての力をはぐくむために各施策と連携して取り組むもの また、「学校力」を高めるための基盤づくりとして 基本方針5 教員の力を高めるとともに、指導が不適切な教員を現場からはずします 基本方針6 学校の組織力と学校へのチーム支援を強化します 基本方針7 子どもたちの安全で安心な学びの場をつくります  の他、 重点項目3 小・中学校の適正規模の確保支援 重点項目5 特色づくり・再編整備の成果と課題を踏まえた府立高校の充実 重点項目8 府立支援学校の教育環境の充実 重点項目9 府立高校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実 重点項目10 小・中学校における「ともに学び、ともに育つ」教育の推進 重点項目11 府立支援学校のセンター的機能の発揮 重点項目12 一人ひとりのニーズに応じた支援教育の充実 を位置づけている