資料3の2    1 障がい者支援施設における課題と論点(1)   1.課題、多様化する利用者への対応  障がい者支援施設では多床室が多く、感染症への対応やプライバシーの配慮、年齢や個々の障がい特性に応じた生活環境の整備が課題。  多様化する支援ニーズに対し、画一的な支援プログラムのみで対応することは困難。特に入所者の多くが強度行動障がいの状態を示している重度知的障がい者となっており、専門的な支援が求められる状況。  高齢化により通常の支援に加えて、介護や医療の必要性が高まる傾向にあるが、それらに対応する体制は不十分な状況。   2.論点(1)年齢、特性に応じた生活環境と支援について  感染症への対応、プライバシーへの配慮、日常生活動作の低下や強度行動障がい等の特性を勘案した生活環境の整備について。  行動障がいの状態軽減や、日常生活動作が低下した高齢入所者への必要な支援について。  課題や論点を補足するためのデータ  (1)表1について  表1は、障がい者支援施設の入所者の居室の状況。  個室利用が30.2%、パーテーションなどで区切った個室利用が23.7%、多床室利用が46%。  多床室の利用がもっとも多い。(令和3年度末時点の大阪府所管施の障がい者支援施設の実態調査結果、対象者は139人)  (2)表2について  表2は、障がい者支援施設の入所者の行動関連項目の有無の状況。  行動関連項目に点数がついた何らかの行動障がいがある方は、2,029人(全体の48.3%)。(令和3年度末時点府内市町村地域移行に関する実態調査 全数は4,197人))  (3)表3について  表3は、障がい者支援施設の入所者の高齢化となったことで課題になっていること(複数回答)。  預貯金があまりない障がい者の場合、入院等必要な経費が払えるか不安があるを選択したのが30施設、常時見守りが必要なことから、1対1対応が必要であるを選択したのが31施設、介護者の負担が増大する(特に夜間の支援、入浴時、着替え時、トイレ誘導時等)を選択したのが21施設、食事場面での個別対応が必要な利用者が増えているを選択したのが34施設、一般的な高齢期よりも早く老化が進むため、高齢者対応はより若い年代から必要となるを選択したのが32施設、身体機能の低下とともに介護率が高くなり車いす等の利用者も増え、リビング内やろうかなどが狭いを選択したのが36施設、通院が増えて対応が増えているを選択したのが30施設。(平成30年度厚生労働省障害者支援施設における実態把握調査結果から大阪府の障がい者支援施設を抜粋、86施設のうちの48施設分の回答)    2 障がい者支援施設における課題と論点(2)   1.課題、地域生活移行のための支援。  入所者の重度化、高齢化、支援ニーズの多様化により、施設職員の負担が増加する中、入所者の地域生活移行に向けたアセスメントや支援の組立などの事前準備や移行先への丁寧な引継ぎ、地域生活移行後のアフターフォローまでの「支援スキームの確立」、「地域の関係機関等との連携体制」について、組織全体として取り組むことが困難な状況。   2.論点(2)、地域生活移行を推進するための支援について  地域生活移行の推進に向けた障がい者支援施設の役割、地域との連携について。  地域生活移行前後の継続的、組織的な支援について。  課題と論点を補足するデータ  (1)表4について  表4は、障がい者支援施設が作成する入所者の個別支援計画の「地域移行」の記載状況。  地域移行の記載ありは、5.8%、どちらともいえないが30.2%、地域移行の記載なしは、64.0%。  地域移行の記載なしの理由の内訳。  本人の特性や行動障がいが74.2%、ご本人や家族からの希望なしが9.0%、家族の同意が得られないが10.1%、グループホームがみつからないが2.2%、サービス不足が1.1%、本人の意思が固まっていないが3.4%。  どちらともいえないを回答した理由の95%以上が地域移行の必要性を感じているが、「ハード、ソフトの複合的な課題」があるため記載ができないだった。  (2)事例1について  事例1は、障がい者支援施設からの地域移行につながった事例(令和3年度末時点府内市町村地域移行に関する実態調査からの回答を抜粋)  ・グループホーム事業所との連携を密にして、支援スキルについての研修会を開催し、バックアップ体制を示したうえで地域移行をすすめた。  ・旧法施設(知的障害者更生施設)から施設入所支援を経てグループホームに移行。更生施設入所の時点でいつかは地域に戻りたいとの希望を持ち入所され、平成24年に本人の希望によりグループホームに移行。地域移行については相談支援専門員が丁寧に支援を行い、施設職員とも密に連携。施設職員としても地域移行の成功体験となった。ご本人は10年経った今もグループホームで過ごしている。  ・日中活動の場は変わらず、障がい者支援施設から関連施設であるグループホームに移行できたため、移行への情報共有や連携がスムーズであった。    3 行政や地域の支援体制の課題と論点(3)   1.障がい者支援施設の地域移行等における関係機関の連携について  重度障がい者の家族は24時間365日「人と場所がある」障がい者支援施設への安心感から、親なきあとの暮らしの場としては、以前として障がい者支援施設を希望される傾向が高く、地域生活の可能性や一時的な施設利用といった意識はいまだ十分には浸透していない。  市町村や地域の相談支援機関は、家族の意向やグループホームの受入れ機能への不安から、重度障がい者の地域移行の推進に取り組みにくい状況。地域生活移行の推進に向けては、個々の状態像の把握、緊急性のアセスメント、家族への積極的な働きかけが可能となる体制強化が必要。   2.論点(3)、市町村等関係機関の役割について    重度障がい者などの地域生活を支えるための地域の相談支援機関、グループホーム、障がい者支援施設などの障がい福祉サービスの連携強化に向けた取り組みについて。  課題や論点を補足するためのデータ  (1)表5について  表5について。  福祉専門職配置加算取得割合を障害者支援施設とグループホームで比較すると、障がい者支援施設が84.1%、グループホームが58.3%。  障がい者支援施設、グループホームの常勤の割合を比較すると、障がい者支援施設が80.8%、グループホームが49.6%。  非常勤の割合は、障がい者支援施設が19.2%、グループホームが50.4%。(令和2年度全国知的障害児者施設事業実態調査報告書、令和2年度全国グループホーム実態調査報告書参照)  障がい者支援施設はグループホームと比べて「福祉専門職」、「常勤職員」の配置が多い。  (2)表6について  表6は、令和3年度末時点の障がい者支援施設や精神科病院に関する地域移行を検討する専門部会等の設置状況(令和3年度末時点)。  精神障がいを対象とした専門部会等の設置が43市町村(100%)、知的障がいを対象とした専門部会等の設置が21市町村(48.9%)、身体障がい等を対象とした専門部会等の設置が19市町村(44.2%)  専門部会等で施設入所者の地域移行に関する検討をしているのが19市町村(44.2%)。  精神障がいを対象としている部会等が、100%、知的障がい、身体障がいを対象としている部会等が50%以下。  基幹相談支援センターの設置状況。設置済が36市町村、未設置が7市町村。  基幹相談支援センターの役割は、地域の相談支援の拠点として、総合的な相談業務(身体障がい、知的障がい、精神障がい)及び成年後見制度利用支援事業を実施し、地域の実情に応じて、次の1から4の業務を行う。  1 総合的及び専門的な相談支援の実施  2 地域移行・地域定着促進の取組み  3 権利擁護・虐待防止への取組  4 地域の相談支援体制強化のための取組み       4 行政や地域の支援体制の課題と論点(4)   1.課題、地域生活への移行・地域生活を継続する支援体制の整備。  グループホームにおける重度知的障がい者の受入体制の整備を図るため、重度障害者支援加算の拡充などの報酬改定や、重度化に対応したグループホームの新たな類型として日中サービス支援型の創設が行われたが、現在も重度知的障がい者を受入れ可能なグループホームは不十分。また、重度知的障がい者の支援スキル等を有する人材も不足している。  在宅やグループホームで暮らす重度知的障がい者の緊急時の受入れ先が十分に整備できていない。また、地域生活支援拠点等の機能が不十分な状況。   2.論点(4)、重度知的障がい者を地域で支える支援について  強度行動障がいなど重度知的障がい者のグループホーム受け入れに参入しやすくするための環境整備について  強度行動障がいなど重度知的障がい者への適切な支援が可能な人材養成と、事業所(グループホーム、生活介護事業所、障がい者支援施設等)間の連携について  地域生活支援拠点等の緊急時の受入の推進に向けた機能強化の取組について(事前登録など)  課題や論点を補足するデータ  表7、大阪府の共同生活援助事業所における日中サービス支援型の割合。共同生活援助事業所が1,127事業所、そのうち、日中サービス支援型は4事業所(0.35%)(令和4年4月国保連データ)  日中サービス支援型グループホームは、平成30年度の障がい福祉サービス等の報酬改定で重度化・高齢化に対応したあらたな類型として創設されたもの。  表8、入所、居住系サービスの重度障害者支援加算U利用者の割合。グループホーム利用者10,429人のうち258人(2.5%)、障がい者支援施設利用者4,662人のうち2,295人(49.2%)。  (参考)平成28年度の大阪府調査では、グループホーム利用者で強度行動障がいを有する重度知的障がい者は1,581人。  表9、大阪府の強度行動障がい支援者養成研修(基礎研修)修了者の推移。平成27年度が532人、平成28年度が720人、平成29年度が1,117人、平成30年度が803人、令和1年度が745人、令和2年度が708人、令和3年度が763人。  強度行動障がい支援者養成研修(実践研修)修了者の推移。平成28年度が370人、平成29年度が561人、平成30年度が534人、令和1年度が466人、令和2年度が429人、令和3年度が494人。    (参考)緊急時の対応に関する課題。障がい特性などが不明な緊急利用者について、医療機関等へつなぐにも情報不足であること、短期入所については対象者像がわからないため人員等受入体制の構築も難しく、受け入れが困難。緊急に受入先を確保する必要が発生した際に、本人の情報を適切に把握し、受入先に提供する方法。緊急対応など支援が必要となる障がい児者の事前把握、登録、名簿管理、関係機関との情報共有。