令和4年度 障がい者差別解消に向けた大阪府の活動報告書(令和5年3月 大阪府)    はじめに   大阪府では、障害者差別解消法(以下、「法」という。)の施行にあわせ、大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例(以下、「条例」という。)を平成28年4月に施行し、啓発活動と相談及び紛争の防止又は解決のための体制整備(以下、「体制整備」という。)を車の両輪として、差別解消に取り組んでいます。  条例に基づく相談等の体制整備の一環として、広域支援相談員を配置するとともに、知事の附属機関として「大阪府障害者差別解消協議会(以下、「解消協議会」という。)」を設置し、その中に組織した合議体において、広域支援相談員が受けた相談事例等に関し総合的に分析と検証を実施してきました。また、条例の見直し検討に資することを目的として「検証報告書」として取りまとめてきました。そして、令和3年4月の条例改正を機に、府の取組みについて網羅的に記録することで、解消協議会での議論に活用するとともに府民へわかりやすく情報を開示するため、令和3年度より「活動報告書」とタイトルを変えて、取りまとめています。  改正障害者差別解消法では、地方公共団体に、障がいを理由とする差別及びその解消のための取組みに関する情報の収集、整理及び提供に努めるよう求めています。本活動報告書は、その趣旨にも適うものになると考えています。  今後とも、差別解消の取組みを着実に推進していくため、大阪府に寄せられる様々な相談事案を蓄積し、取組みの分析や評価等を行うとともに、法の主旨の普及や障がい理解を促進する啓発活動の充実に取り組んでまいります。    1 広域支援相談員の体制等と相談対応   1.広域支援相談員の体制と役割  大阪府では、障がいを理由とする差別に係る相談事案に的確に対応し、解決を図るため、高度な相談・調整技術と専門性を有する人材として障がい福祉企画課(権利擁護グループ)に4名(令和5年3月31日時点)の広域支援相談員を配置し、交代で対応しています。  広域支援相談員は、@市町村に設置された相談窓口等(相談機関)における相談事案の解決を支援するための助言、調査、調整等、A障がい者等及び事業者からの相談に応じ、相談機関と連携した助言、調査、調整等、B相談機関相互の連携の促進と相談事案に係る情報の収集、分析を職務としています。  大阪府では、丁寧で質の高い相談対応と、市町村への的確な助言等を行うため、日々のケースの進捗や市町村支援の取組みに関して日報を作成し、相談員間で常に情報共有を図るとともに、定期的なミーティングによるケース検討を行う等、広域支援相談員間の連携を強化しています。  障がいを理由とする差別は、障がい者の自立と社会参加に関わるあらゆる場面で発生する可能性があることから、上記の取組みに加え、様々な専門性を有する解消協議会の委員及び専門委員から選任される合議体が、必要に応じ、広域支援相談員に対し助言を行うことが出来るよう条例で規定しており、広域支援相談員が幅広い相談事案に的確に対応できるよう支援する仕組みが確保されています。  これまでの相談事例の蓄積と合議体による助言により、広域支援相談員の対応力は向上していると考えられますが、法や条例の周知が進むことにより複雑な相談内容が増加したり、新型コロナウイルス感染予防の観点も含めて検討しなければならないような相談も寄せられていることから、広域支援相談員にはさらなる専門性や調整力が求められています。また、身近な相談窓口である市町村職員の対応力向上を図るため、広域支援相談員が研修や情報交換を実施する等、市町村に対する幅広い支援が必要とされており、そのための人材も確保も重要となっています。   2.広域支援相談員の対応実績  広域支援相談員が対応する相談事案は、事業者における障がいを理由とする差別に関する相談等を対象としています。広域支援相談員は、市町村の相談機関への支援を通じて相談事案の解決にあたるだけでなく、直接相談にも対応し、市町村等関係機関と適宜連携しながら、必要な助言、調査及び関係者間の調整を行っています。  令和4年度において広域支援相談員が対応した実相談件数は、新規事案が166件、前年度から継続している相談事案3件と合わせ169件となっており、前年度(159件)と比較し、件数は少し増加しました。これは、新型コロナウイルス感染者数が一定落ち着いていき、社会が戻りつつある中、外出の機会が増えたためと考えられます。  相談者の内訳において、市町村からの相談の比率は15%と、この2年間は2割を切る状況が続いています。大阪府の広域支援相談員による相談の仕組みは、まずは住民に身近な相談窓口である市町村において対応し、それでも解決の困難な事案については、広域支援相談員が市町村に対して情報提供や技術的助言等の支援を行うという、広域・基礎自治体の役割に応じた機能を発揮することを目指したものとなっております。しかし、相談窓口をたらい回しにされてようやく広域支援相談員につながった、という事案もあり、市町村による積極的な窓口の周知や市町村窓口の対応力強化については、引き続き取り組むべき課題と言えます。  障がい種別ごとの相談件数は、「身体障がい」が最も多く、次いで「精神障がい」、「知的障がい」、「発達障がい」の順となっています。  相談内容の類型については、「不当な差別的取扱い」が5件と前年度の7件より2件減少、「合理的配慮の不提供」は20件と前年度の23件より3件減少と、法上の差別にあたる2類型は、どちらも前年度と比較して減少しました。  また、「その他」のうち「不適切な行為」は、8件と前年度4件より増加しており、法上の差別の類型には該当しないものの、事業者による不適切な発言や態度のあった事案についてもキャッチし、対応しています。ここ数年の傾向ですが、「相談・意見・要望」が非常に多く、2年続けて相談件数の約6割を占める結果となりました。  令和4年度に広域支援相談員が対応した相談の状況は、以下のとおりです。   令和4年度 大阪府広域支援相談員 相談の対応状況について  以下、令和4年度の大阪府広域支援相談員の対応状況について、項目ごとに記載します。(令和4年4月から令和5年3月まで)  1.令和4年度(令和4年4月から令和5年3月)月別・相談件数及び対応回数  新規事案件数 計155件(別途、令和3年度からの継続件数3件あり)(令和3年度 新規事案年間件数157件)  相談対応回数 計1,750回(令和3年度年間回数 1,123回)    月別対応状況  (以下、対応件数は、前月以前より引き続き相談対応した件数を含む)  4月 新規19件、対応件数22件、対応回数166回  5月 新規14件、対応件数22件、対応回数146回  6月 新規14件、対応件数23件、対応回数165回  7月 新規13件、対応件数24件、対応回数164回  8月 新規14件、対応件数23件、対応回数137回  9月 新規16件、対応件数24件、対応回数113回  10月 新規10件、対応件数19件、対応回数173回  11月 新規10件、対応件数16件、対応回数112回  12月 新規15件、対応件数20件、対応回数133回  1月 新規12件、対応件数17件、対応回数111回  2月 新規17件、対応件数24件、対応回数165回  3月 新規12件、対応件数23件、対応回数165回  新規事案年間件数 166件(令和3年度からの継続件数3件を含む実相談件数 169件)  年間対応件数 257件  年間対応回数 1,750回  (参考)令和3年度  4月 新規12件、対応件数14件、対応回数72回  5月 新規14件、対応件数21件、対応回数85回  6月 新規16件、対応件数23件、対応回数108回  7月 新規15件、対応件数19件、対応回数57回  8月 新規10件、対応件数14件、対応回数54回  9月 新規12件、対応件数19件、対応回数78回  10月 新規15件、対応件数22件、対応回数123回  11月 新規15件、対応件数22件、対応回数135回  12月 新規9件、対応件数19件、対応回数92回  1月 新規7件、対応件数18件、対応回数76回  2月 新規14件、対応件数23件、対応回数81回  3月 新規18件、対応件数26件、対応回数162回  新規事案年間件数 157件(令和2年度からの継続件数2件を含む実相談件数 159件)  年間対応件数 240件  年間対応回数 1,123回  相談1件あたりの平均対応回数10.2回  相談1件あたりの対応回数の内訳  1〜5回 112件、6〜10回 40件、11〜15回 6件、16〜20回 1件、21〜25回 2件、26〜30回 2件、31回以上 6件  (参考)  令和3年度 1件あたりの平均対応回数7.1回  (2)相談者の内訳(令和4年4月から令和5年3月)  市町村 26件(15%)  直接相談 143件(85%)  (直接相談の内訳)  障がい者 97件、家族 16件、支援者12件、事業者11件、行政機関(大阪府以外)2件、府庁内1件、他機関0件、その他3件、不明1件  支援地域協議会の有無による直接相談の内訳  協議会設置済み自治体の府民から 66件  協議会未設置の自治体の府民から 12件  その他 65件  (参考)令和3年度  市町村 27件(17%)  直接相談132件(83%)  (直接相談の内訳)  障がい者 91件、家族 14件、支援者4件、事業者9件、行政機関(大阪府以外)1件、府庁内3件、他機関4件、その他1件、不明5件  (3)相談内容の類型  重複があった場合、1類型に絞って集計  相談内容の類型については、広域支援相談委員が対応した結果を踏まえて分類しています。  ア.不当な差別的取扱い 5件  うち、合理的配慮の不提供も含まれると考えられるもの 0件  不当な差別的取扱いの内訳  拒否 4件、制限 1件、  イ.合理的配慮の不提供 20件  合理的配慮の不提供の内訳  物理的環境への配慮 4件、意思疎通への配慮 10件、ルール 5件、その他 1件  ウ.その他 144件  その他の内訳  不適切な行為 8件、不快・不満 11件、環境の整備 4件、相談・意見・要望 96件、問合せ 22件、虐待 1件、その他2件  (参考)令和3年度  ア.不当な差別的取扱い 7件  うち、合理的配慮の不提供も含まれると考えられるもの 0件  イ.合理的配慮の不提供 23件  ウ.その他 129件  ウ.の内訳  不適切な行為 4件、不快・不満 6件、環境の整備 1件、相談・意見・要望 97件、問合せ 20件、その他 1件  (参考1)相談者ごとの相談内容の類型  以下、相談内容の類型ごとに、相談者の件数を記載します。  不当な差別的取扱い  障がい者 4件、家族 1件  合理的配慮の不提供  市町村 3件、障がい者 10件、家族1件、事業者 4件、行政機関(府以外) 1件、府庁内 1件  不適切な行為  市町村 3件、障がい者 4件、支援者 1件  不快・不満   市町村 1件、障がい者 7件、家族 1件、支援者 2件  環境の整備  市町村 1件、障がい者 3件  相談・意見・要望  障がい者 66件、家族 12件、支援者 9件、事業者 5件、その他 3件、不明 1件  問合せ  市町村 18件、障がい者 1件、事業者 2件、行政機関(府以外) 1件  虐待  家族 1件  その他  障がい者 2件  (4)対象分野別件数  商品・サービス 57件、福祉 12件、公共交通 15件、住宅 8件、教育 8件、医療 12件、雇用 10件、行政機関 33件、その他 14件  (参考)令和3年度  商品・サービス 53件、福祉 16件、公共交通 7件、住宅 7件、教育 13件、医療 11件、雇用 11件、行政機関 25件、その他 16件  (参考2)分野ごとの相談内容の類型  以下、相談内容の類型ごとに、分野別の件数を記載します。  不当な差別的取扱い  商品・サービス 5件  合理的配慮の不提供  商品・サービス 10件、公共交通 2件、教育 2件、医療 2件、行政機関 4件  不適切な行為  商品・サービス 2件、福祉 2件、公共交通 1件、医療 2件、行政機関 1件  不快・不満  商品・サービス 3件、公共交通 2件、教育 2件、医療 1件、行政機関 3件  環境の整備  商品・サービス 2件、公共交通 1件  相談・意見・要望  商品・サービス 25件、福祉 9件、公共交通 6件、住宅 6件、教育 1件、医療 6件、雇用 10件、行政機関 20件、その他 13件  問合せ  商品・サービス 8件、公共交通 3件、住宅 2件、教育 3件、医療 1件、行政機関 5件  虐待  福祉 1件  その他  商品・サービス 1件、その他 1件  (5)障害種別ごとの取扱い件数(重複あり)  身体障がいのうち、視覚障がい 22件、聴覚・言語障がい 16件、肢体不自由 39件、内部障がい 2件、その他の身体障がい 2件  知的障がい 20件、精神障がい 41件、発達障がい 15件、重症心身障がい 1件、難病 1件、その他(身体障がい以外) 11件、不明・不特定 22件  (参考)令和3年度  身体障がいのうち、視覚障がい 21件、聴覚・言語障がい 14件、肢体不自由 43件、内部障がい 2件、その他の身体障がい 1件  知的障がい 24件、精神障がい 37件、発達障がい 19件、重症心身障がい 1件、難病 4件、その他(身体障がい以外) 5件、不明・不特定 16件  (参考3)相談内容の類型ごとの障がい種別件数(重複あり)  以下、障がい種別ごとに、相談内容の類型の件数を記載します。  視覚障がい  不当差別 1件、合理的配慮 4件、不適切な行為 2件、環境の整備 1件、相談・意見・要望 9件、問合せ 5件   聴覚・言語障がい  不当差別 2件、合理的配慮 7件、不快・不満 1件、相談・意見・要望 3件、問合せ 3件  肢体不自由  合理的配慮 6件、不適切な行為 3件、不快・不満 6件、環境の整備 4件、相談・意見・要望 18件、問合せ 1件、その他 1件  内部障がい  不快・不満 1件、相談・意見・要望 1件  身体障がいその他  相談・意見・要望 2件  知的障がい  不当差別 1件、不適切な行為 2件、不快・不満 1件、相談・意見・要望 13件、問合せ 2件、虐待 1件  精神障がい  不当差別 1件、不適切な行為 1件、不快・不満 1件、相談・意見・要望 34件、問合せ 3件、その他 1件  発達障がい  合理的配慮 2件、不快・不満 1件、相談・意見・要望 11件、問合せ 1件  重症心身障がい  問い合わせ 1件  難病  相談・意見・要望 1件  その他(身体障がい以外)  合理的配慮 2件、不快・不満 1件、相談・意見・要望 8件  不明  不快・不満 1件、相談・意見・要望 8件、問合せ 4件  不特定  相談・意見・要望 6件、問合せ 3件  (参考4)分野ごとの障がい種別件数(重複あり)  以下、障がい種別ごとに、分野別の件数を記載します。  視覚障がい  商品・サービス 8件、公共交通 1件、教育 1件、医療 3件、行政機関 9件  聴覚・言語障がい  商品・サービス 10件、公共交通 2件、教育 1件、医療 1件、行政機関 2件  肢体不自由  商品・サービス 17件、福祉 2件、公共交通 8件、住宅 2件、教育 1件、医療 5件、雇用 1件、行政機関 3件  内部障がい  公共交通 1件、医療 1件  身体障がいその他  福祉 1件、公共交通 1件  知的障がい  商品・サービス 4件、福祉 4件、公共交通 2件、住宅 2件、医療 1件、行政機関 4件、その他 3件  精神障がい  商品・サービス 7件、福祉 4件、公共交通 1件、住宅 4件、医療 2件、雇用 5件、行政機関 8件、その他 10件  発達障がい  商品・サービス 5件、福祉 2件、教育 2件、医療 1件、行政機関 4件、その他 1件  重症心身障がい  教育 1件  難病  雇用 1件  その他(身体障がい以外)  商品・サービス 4件、公共交通 1件、住宅 1件、雇用 1件、行政機関 4件  不明  商品・サービス 3件、公共交通 2件、教育 2件、雇用 2件、行政機関 1件、その他 3件  不特定  商品・サービス 5件、公共交通 1件、行政機関 2件、その他 1件  (参考5)年度ごとの新規事案及び法上の差別2類型の件数  以下、新規事案、不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供の順に件数を記載します。  平成28年度  125件、26件、4件  平成29年度  163件、31件、14件  平成30年度  161件、14件、14件  令和元年度  188件、6件、18件  令和2年度  148件、9件、5件  令和3年度  157件、7件、23件  令和4年度  166件、5件、20件  (参考6)令和4年度府内市町村における障がい者差別に関する相談件数  大阪市 28件  堺市 19件  岸和田市 3件  豊中市 2件  池田市 0件  吹田市 8件  泉大津市 2件  高槻市 6件  貝塚市 2件  守口市 0件  枚方市 1件  茨木市 11件  八尾市 4件  泉佐野市 0件  富田林市 0件  寝屋川市 1件  河内長野市 1件  松原市 1件  大東市 2件  和泉市 0件  箕面市 3件  柏原市 0件  羽曳野市 カウント無  門真市 4件  摂津市 0件  高石市 0件  藤井寺市 1件  東大阪市 10件  泉南市 2件  四條畷市 2件  交野市 0件  大阪狭山市 2件  阪南市 0件  島本町 カウント無  豊能町 0件  能勢町 カウント無  忠岡町 0件  熊取町 0件  田尻町 1件  岬町 カウント無  太子町 カウント無  河南町 カウント無  千早赤阪村 カウント無  大阪府 166件  府内市町村合計 282件    (3)広域支援相談員が対応した相談事例等  令和4年度に広域支援相談員が対応した相談のうち、「不当な差別的取扱い」「合理的配慮の不提供」「不適切な行為」「不快・不満」「環境の整備」に該当すると思われるものを次頁以降で紹介をします。これらの事例のうち、コロナ禍の影響により発生したと考えられる事例については、右端の列に◎印をつけています。  なお、個人情報保護の観点から、実際の事例をふまえつつ、内容を一部変更するなどの加工を行っています。  以下、障がい種別、分野、相談経路、相談要旨、対応要旨の順で列記します。  (1)不当な差別的取扱い(※おそれも含む)に該当する事案の概要  ア.身体障がい(聴覚障がい)、商品・サービス、当事者  A県の自動車教習所の合宿免許プランに申し込んだところ、聴覚障がい者の受け入れについて「通学では前例があるが、合宿制では難しい」と入学を拒否された。  A県の相談員と協議した結果、県の相談員が対応することになり、情報共有していくこととした。県が教習所に確認したところ「前例がなく延長・追加プランもないため、短期での免許取得を目指す合宿制での受け入れは難しいと判断した」との説明だったとのこと。後日、当事者から通学の自動車学校に通うことにしたとの連絡があった。  イ.身体障がい(聴覚障がい)、商品・サービス、当事者  B県の自動車教習所の合宿免許プランに申し込み、聴覚障がいがあっても筆談や音声認識アプリで対応できるため、特別な対応は必要ないことを説明したが、それでも受け付けてもらえなかった。  B県と協議の結果、県が対応することになり、情報共有していくこととした。県が教習所に確認したところ「本人との意思疎通がうまくできないため、短期での免許取得を目指す合宿免許プランのカリキュラムでは、受け入れ困難である」との説明だったとのこと。後日、当事者から通学の自動車学校に通うことにしたとの連絡があった。  ウ.知的障がい、商品・サービス、家族  スイミングスクールに子どもの受講申込をしたが、返信メールの文言に「 定期検診などで発育や発達について指摘を受けた方は、受講できない」との表現があった。子どもには知的障がいがあるため、電話で確認したところ、障がい児は受講できないと言われた。  事業者を訪問し、障害者差別解消法等を説明の上、対応や表現等の改善を求めた。事業者は本部と協議し、まずは申込者全員を受け入れ、体験を通して入会できるよう調整することとし、メールの文言は削除された。  エ.精神障がい、商品・サービス、当事者    オンライン講座の個人指導コースの利用にあたってのホームページ上の説明に「精神に不調を抱えている方はお申し込みいただけません」との記載があった。精神障がい者のサービス利用を拒否しており差別ではないか。  事業者に記載文の削除を依頼しようとしたところ、既に文面が修正されていた。事業者に確認すると内部研修およびSNSの声をもとに修正したとのこと。府から障がい者差別解消に関する資料等を事業者に送付し、啓発を行った。  オ.身体障がい(視覚障がい)、商品・サービス、当事者  同行援護従業者養成研修の受講にあたって、事業者から、視覚障がい者は座学は修了できるが実技演習は障がいのため修了が認められない可能性があると言われた。他の受講者と同様に修了を認めてほしい。  同行援護従業者養成研修の受講要件について、研修制度の担当課より国に確認。受講者に視覚障がいがあっても円滑に受講をすすめるようにとの国の見解により、事業者指定担当課から事業者に受講に当たっての合理的配慮について助言し、研修を修了することができた。  (2)合理的配慮の不提供(※おそれも含む)に該当する事案の概要  (◎はコロナ禍の影響により発生したと思われる事例)  ア.身体障がい(聴覚障がい)、教育、事業者  障がいのある学生から、授業の受講に際し、これまでは筆談や本人が用意する音声認識文字化アプリで対応してきたが、大人数の授業や実技において手話通訳の要望があった。学校としては体制面、財政面で負担があり、配慮を用意しないことは入学時に本人には了解してもらっている。手話通訳の費用は過重な負担と考えていいのか。    当事者、事業者、広域支援相談員で話合いをするが、事業者は手話通訳の配置は過重な負担だと主張。代替手段として学校のパソコンを貸し出して字幕アプリの使用を提案した。当事者はあくまで手話通訳を要望したが、音声認識の性能も改良され、やむを得ないと了解。  イ.身体障がい(視覚障がい)、商品・サービス、当事者  スポーツジムでマンツーマンの水泳指導を申し込んだが、ヘルパーの同伴を認められず、コーチが着替えや移動等の介助をするとの説明であった。しかし介助時間も水泳指導の時間に含まれるとされ納得がいかない。  本人と事業者と広域支援相談員で話合いを実施。事業者は本部とも協議し、ヘルパーの介助を認め、着替えや移動時間は水泳指導時間に含めないこと、異性ヘルパーの場合は指導時間内にコーチが対応することを伝え、本人の了解を得た。  ウ.身体障がい(聴覚障がい)、商品・サービス、市町村  市の文化会館で行われる講演会に聴覚障がい者の申し込みがあったが、主催者は手話通訳の対応ができないとの回答であった。市はどのように対応すればいいか。  講演会の運営に市も協力をしていることがわかり、市の内部調整により、手話通訳の対応が可能になった。  エ.身体障がい(肢体不自由)、医療、当事者  乳がんの定期検診でマンモグラフィー検査を女性技師が担当し、男性技師が車いす介助を担当した。男性技師が対応することの事前説明がなかったのは、障がい者差別ではないのか。  市にも相談が入っていたため、市が当該病院を訪問し状況確認。病院は基本的には同性介助対応をしているが、今回は人員が足りず、男性スタッフが対応せざるを得なかった。検診前に当事者にそのことを伝えることができていなかった。今後、事前説明を徹底していくとの説明であった。  オ.身体障がい(視覚障がい)、行政機関、当事者  年金事務所から年金通知を受け取ったが点字による記載がない。市から届く書類は点字が記載されているのに、国からの書類に記載がないのは問題である。  年金事務所に問い合わせると、本部の判断に基づくものとのことで、本部に問い合わせた。視覚障がい者には音声コードで対応しており、点字の要望はなく設備等もないため、現状では対応できないとの説明であった。  カ.その他、商品・サービス、当事者  ◎マスク着用を必須としている大型ホールでのコンサートについて、感覚過敏のためマスクができないのでハンカチ利用での鑑賞を希望したが、認められない。  イベント会社にマスクの代替や席の移動等による調整を依頼。事業者も関係各所に働きかけた結果、バリアフリースペースで、マスクを着用せずに鑑賞することが可能となった。  キ.身体障がい(肢体不自由)、公共交通機関、当事者  鉄道駅の体制が変わり駅員不在の時間帯がある。その間は、呼び出しボタンを押す必要があり予定の電車に乗れないことがある。予定の電車に乗るには事前の電話予約が必要とされ、予約の際に個人情報を聞かれ、電話料金は利用者負担になる。健常者との扱いが異なり差別であると思う。  事業者を訪問し、相談内容について共有。すでに事業者は相談者との話合いもしており、今後も検討していきたいとの回答を相談者には伝えているとのことであった。  ク.身体障がい(聴覚障がい)、行政機関、市町村  年金事務所での手続きの際の手話通訳者派遣依頼が市にあった。年金事務所が準備するものではないかと、年金事務所に連絡を取ったが、筆談対応だけで手話通訳者の手配はしないとの回答であった。国の機関として対応すべきではないか。  府からも年金事務所と日本年金機構に連絡をするが、「声としてあげておく」との窓口対応のみで担当課等と話すこともできなかった。そのため、再度府から厚生労働省年金局に報告をした。  ケ.身体障がい(聴覚障がい)、商品・サービス、当事者  スポーツ指導者養成講習会の受講案内に「手話通訳等の手配は自身でするように」との記載があった。おかしいと思い、開講2か月前に主催者側での手配を依頼したが、直前になって、準備できないとの回答があった。  主催者に確認したところ、ボランティアでの運営のため、手話通訳の手配は過重な負担であるとのこと。代替措置も含め、相談者と話合いをして欲しいことを伝え、UDトークでの受講が可能となった。  コ.身体障がい(肢体不自由)、商品・サービス、当事者  市営プールでは、介助者が歩いて水泳補助をする場合、歩行専用コースの利用しか認められていない。大会前の練習だけでも、通常のコースを使用させてほしい。  市に確認したところ、市も当事者からの相談を受けており、対応しているとのこと。その後、市から、大会前の1日だけ通常コースの使用が認められることになったとの連絡があった。  サ.発達障がい、医療、当事者  病院を受診した際、検査内容や待ち時間の説明等の配慮を求めたが応じてもらえず、適切な医療が受けられなかった。受診における精神的負担の軽減と病院における障がい者への配慮についての改善を図ってほしい。  病院を訪問し状況を確認。相談者からの配慮の申し出が、受付窓口から各部署に適切に伝わっていなかったため、今後改善していくとのこと。障害者差別解消法等の啓発と障がい者理解等の研修の実施を依頼した。  シ.身体障がい(視覚障がい)、行政機関、当事者  市役所でのパスポートの更新申請の際、視覚障がいがあるため代筆が必要であるが、市の窓口担当者に代筆を拒否された。府のパスポートセンターに確認した結果、市担当者による代筆が可能になった。  相談者からの情報提供として受理。広域支援相談員からもパスポートセンターに、代筆による対応が可能であることの確認をした。  ス.身体障がい(視覚障がい)、商品・サービス、行政機関  視覚障がい者が大型スーパーでアテンドを求めたが断られた事案について、以前にも同様のことがあり、当事者が本店に連絡し、できる限りの対応はするとの回答であったのに改善されていないとの相談が他府県にあった。他府県相談員が啓発のため大阪府内の本店に訪問するので、広域支援相談員も同行してほしい。  広域支援相談員は個別の事案対応へは同行せず、事業者への啓発を目的に別途事業者を訪問。事業者側の対応困難事例等の助言を行った。  セ.高次機能障がい、行政機関、行政機関  講座受講において、高次機能障がい者から要約筆記によるスクリーン表示を情報保証として求められている。会場が狭く、主催者が提供できるのはパソコン画面での表示であるが、キーボードの音が気になり受け入れられないとの意見。どのようにすればいいか。  スクリーンの設置等がどうしても困難であれば、キーボードの消音等、代替方法を再度検討する必要があることを助言。講座の応募者多数のため抽選の結果、当事者は不参加となった。  ソ.身体障がい(肢体不自由)、商品・サービス、事業者  車いす利用のお客様よりホテル内レストランでの食事後、スタッフにホテル内ショップへの誘導やトイレ介助を求められる。スタッフも常に対応できる訳ではなく、合理的配慮としてどこまで対応しないといけないのか。  合理的配慮は本来の業務に付随するものであることから、トイレ介助は対象にならないこと、ショップ官の移動についても、各ショップがリレー方式で対応するなど可能な範囲での対応を事業者と相談の上、進めることを助言した。  タ.身体障がい(聴覚障がい)、商品・サービス、当事者  有名アーティストのライブ参加にあたり主催者に手話通訳を求めているが、手話通訳者の入場は認めるが手話通訳者は自身で準備し、手話通訳者の入場料金も必要と言われている。健常者と同じ条件でライブを楽しめないのは差別である。  チケット販売事業者と調整を図るが、ライブはいくつもの事業者が関わっており、各事業者に相談者の要望や意向を共有したが、当初予算も組まれていないなどの事情から手話通訳派遣は困難との回答であった。引き続き、手話通訳などの合理的配慮を検討していただきたいことを依頼した。  チ.身体障がい(肢体不自由)、商品・サービス、事業者  大型スーパーで松葉杖を使用しているお客様が、来点時に玄関まで車いすを用意して迎えることや店内のアテンドを求める。アテンドに2時間位要することもある。従業員の業務により対応が困難な場合もあるが、どう考えればいいか。  アテンドは、過重な負担のない範囲で合理的配慮として対応しなければならないため、アテンドが可能な時間帯やアテンドの時間等を当事者と相談しながら進めることが望ましいことを助言した。  ツ.身体障がい(聴覚障がい)、商品・サービス、事業者  障がいの有無に関わらない居場所づくりの地域活動をボランティアで運営している。運営会議を開催するにあたり、聴覚障がいのスタッフがいるため、市から手話通訳を派遣してもらっていたが、来年度から派遣できないと言われている。ボランティア活動も事業者になるのか。  ボランティア活動であっても反復継続活動であるため事業者に該当すると伝えた。市に確認すると、本来は合理的配慮として事業者が手話通訳等を準備する必要があるが、今年度は準備期間として市が派遣をしたとのこと。事業者に対し、今後は代替方法を含め検討していく必要があることを助言した。  テ.発達障がい、教育、家族  子どもが通う認定こども園に対して、障がい特性への対応として、「一日のスケジュールがあらかじめわかるよう、文字や絵で伝えてほしい」等の合理的配慮を求めているが、対応してくれない。  広域支援相談員が認定こども園を訪問し、園のスタッフに保護者からの相談内容を説明した。縁からは、支援方針としてその必要はないと考えていたが、今後保護者の求めにはできるだけ応じていくつもりであるとの回答。保護者と話し合ってほしいことを伝えた。  ト.身体障がい(肢体不自由)、公共交通機関、行政機関  市民から歩行のバランスが悪く、駅のホーム移動にあたり、転落の危険があるので、駅員による介助を求められた。事業者は、インターフォンで伝えてもらえれば対応するとしているが、インターフォンに誰も出ない等、配慮が足りないとの相談があった。どのように対応したらいいか。  市と広域支援相談員で事業者を訪問し状況を確認。事業者は求めがあれば介助をするが、駅員が1名しか待機していないため、別件対応中であれば、インターフォンに出られなかったり、待っていただく場合があるとの説明であった。    (3)不適切な行為があったと思われる事案の概要  (◎はコロナ禍の影響により発生したと思われる事例)  ア.身体障がい(視覚障がい)、商品・サービス、当事者  携帯ショップの解約手続きで、視覚障がい者であるにもかかわらず署名を求められた。家族の代筆でも可能であることの説明もなかった。仕方なく大きな字で署名をしたが、強制的な対応に傷ついた。一店舗のことだけではないので、本社にも啓発してほしい。  携帯ショップの関西支社を訪問。障害者差別解消法の啓発を行い、研修等での障がい者理解に係る周知を依頼した。  イ.身体障がい(視覚障がい)、医療、市町村  ◎子どもの受診に付き添って、障がいのある母親が盲導犬同伴で歯科医院に行ったが、犬嫌いの患者やアレルギーの患者もいるかもしれないという理由で、母親と盲導犬が待合室に入ることを拒否された。  市が状況確認。医院はコロナ感染対策のため付き添い者は外での待機をお願いしており、当時は別室の空きもなかった。「犬嫌いの患者さんもいるかもしれない。」と言ってしまったことについては反省しているとのことであった。  ウ.知的障がい 福祉 サービス 市町村 就労継続支援B型事業所での芸術創作活動において、職員からハサミやカッターを持参してはいけないと言われ、その理由として「障がい者は他人を傷つけるから」と言われた、との相談が利用者からあった。 市と広域支援相談員で事業所を訪問し状況を確認。事業所は安全面からハサミやカッターの持ち込みを禁止しており、使用が必要な場合には事業所が貸し出すこととしているとの説明であった。利用者への適切な説明や説明方法を工夫するよう依頼した。  エ.身体障がい (肢体不自由) 医療 当事者 医療機関に電話をしたが、受付対応で「あなた(当事者)の言葉が聞き取れない」等と傷つく言い方をされた。障がい者専門の医療機関であるため、機関全体への周知をお願いしたい。 医療機関に状況確認し、受付スタッフの発言に対する当事者の受け止めや要望を伝えた。医療機関は各部門に当事者の要望等を伝え、当事者に謝罪した。  オ.知的障がい、公共交通、市町村  障がいのある子どもが、誤って期限の切れた特別割引定期券を提示したところ、運転手は故意と決めつけ定期券を回収。後日何の連絡もなく、定期券が切れていた期間分の料金の請求があった。一方的な対応であると母親から相談機関経由で相談があった。差別に該当するのか。  料金の請求については事業者の約款等に基づいたもので障がいを理由としたものではないが、故意であると一方的に決めつけた発言等については、啓発の必要がある旨を伝えた。市から事業者に啓発を行った。  カ.精神障がい、福祉サービス、支援者  兄が通所していた事業所のイベントに、兄と妹と支援者で参加したところ、精神障がいのある妹に対し、突然元職員が生理用品について指導してきた。他の人もいる中で、障がい者への配慮がなさすぎる。  行為者は事業所の現職員ではないが、事業所の関係者であり、現在も事業所との関わりがあるため、事業所に相談内容を伝え障がい者への配慮についての改善を求めた。  キ.身体障がい(肢体不自由)、福祉サービス、当事者  女性ヘルパーから「入浴介助は男性ヘルパーにしないか。施設では当たり前にしている。」と言われた。異性介助を当たり前にするのはおかしい。  事業者に状況を確認。事業者の責任者が当事者宅を訪問し、ヘルパーの発言は、男性スタッフが新しく採用されたことからの軽はずみな発言であったことを謝罪。異性介助にならざるを得ない場合は、基本的に同意の上で実施していることを当事者には説明したとのことであった。  ク.身体障がい(肢体不自由)、行政機関、当事者  研修講師の打ち合わせで、市の障がい関係機関の責任者から「言語障がいがあるから、他の講師と同じ時間では無理なのではないか。」との話があり、勝手にできないと決めつけられ、差別的な発言に感じた。  市に相談内容を伝えた。当日、当事者から広域支援相談員へ連絡があり、機関の責任者から謝罪があったとのことであった。  (4)不快・不満があったと思われる事案の概要  ア.身体障がい(肢体不自由)、教育、支援者  車いすを使用している生徒の高校入学後の介助について、介助員の準備等がなされていない。高校は保護者に介助員を探すよう求めているようである。高校との打ち合わせに同席してほしい。  高校との打ち合わせに参加。高校は生徒が教室移動をする際には介助員を配置するつもりで介助員を探しているが、適当な介助員が見つからないため保護者の協力を求めたにすぎないとの説明であった。  イ.その他、行政機関、当事者  行政機関に質問があり電話をしたが、職員の対応が、自分を排除しようとしているように感じられた。国民の知る権利を理解してほしい。また肝炎患者は、障害者差別解消法とは関係ないと言われた。関係あることを自覚してほしい。  行政機関と相談内容を共有。障害者差別解消法や対応要領の詳細についてまでは、承知していなかったとのことであり、情報提供をした。  ウ.身体障がい(言語機能障がい)、知的障がい、医療 、家族  障がいのある子どもが歯科治療を受けていたが、治療中に歯科医の手を噛んで怪我をさせたため、今後治療しないと言われた。治療途中なので治療を継続してほしいが、話合いに応じてもらえない。  事業者に状況を確認。事業者は歯科医師会と相談し、今の状態では患者に適した治療ができないおそれがあるため、治療継続できなくても診察拒否には当たらないとの判断があったとのこと。今後の治療に関しては、代わりの医療機関を相談できる窓口を紹介した。  エ.身体障がい(肢体不自由)、行政機関、当事者  年金事務所に電話で問合せをしたが、子どもに言うような話し方をされたので抗議をした。障がいの有無に関係なくきちんと対応してほしい。  年金事務所に相談内容を伝えたところ、丁寧な説明をしようと、かみ砕いた言い方が失礼になってしまったとの説明があった。年金事務所から当事者には謝罪を行い、今後、職員全体の研修を行っていくとのことであった。  オ.発達障がい、行政機関、市町村  市に対し、通所施設から「発達障がいのある利用者が、警察に職務質問され公衆の面前で身体チェックや持ち物検査をされ傷ついた」との相談があった。今後の対応について府と相談したい。  職務質問の対象者には障がい者も含まれることもあるため、障がい理解の啓発として市から警察に相談内容を伝えることを助言。市が警察署に連絡したところ、警察署内部で情報共有をして、今後の参考にしていきたいとのことであった。  カ.不明、教育、当事者  先天性脳神経疾患のため、頭痛、吐気、視野狭窄があるが、通学している専門学校の職員が疾患について理解がなく、事務手続きがスムーズに行われない。  相談者が受講しているコースは府の他課の委託事業のため、他課が事業者に状況を確認。専門学校は当事者の障がいについては聞いていなかったとのことで、今後、当事者と話合いを行い必要な配慮をしていくとのことであった。  キ.身体障がい(肢体不自由)、公共交通、当事者  朝の時間帯、駅の西改札口エスカレーターは、全て同じ向きになっており、ホームに降りるにはエレベーターか東改札口のエスカレーターを使わなければならない。エレベーターも遠方であり、足に障がいがあるため利用が難しい。  当該駅の現場を確認。駅員に話を聞いたところ、通勤客の多い駅であり、当該時間帯は乗客の安全とスムーズな誘導のためエスカレーターの向きの変更は困難だが、エレベーターへの誘導の申し出があれば対応するとのことであった。  ク.身体障がい(肢体不自由)、商品・サービス、当事者  障がい者の絵の公募展に関して、主催者に問い合わせた際、電話応対をした職員が「聞き取れない」と繰り返し、差別され怒られているように感じた。  主催者に、職員の電話対応についての相談があったことを伝えた。主催者は不適切な対応であったとして、直接本人に謝罪した。  ケ.身体障がい(肢体不自由)、商品・サービス、支援者  車いすの友人が参加したコンサート会場において、入り口に段差があり、スタッフ4人に抱え上げてもらって入ったが、興行事業者のスタッフから「車椅子席を前に配置したら売り上げが下がる」と大変非常識で失礼な差別的な発言をされたことを事業者に伝えてほしい。  事業者に相談内容を伝えたところ、会場は雑居ビル内にあり、バリアフリー化もされていないが、事業者として避難経路の確保など安全面を考慮しながら車いす席について出来るだけの配慮をしているとのことであった。また、相談内容にあるような発言はしていないとのことであった。  コ.精神障がい、商品・サービス、当時者  強迫性障がいのため、会員証を他人に触れられることが苦手であるため会員証の作成を拒否し、家族の会員証でレンタルビデオ店でビデオを借りようとしたが拒否された。障がい者差別ではないか。借りることができるようにしてほしい。  事業者は、会員証がないため免許証等で対応することを提案したが、当事者は受け入れなかったとのこと。本人以外の会員証等での対応は規約上できないとの説明であった。  サ.身体障がい(肢体不自由、内部障がい)、公共交通機関、当事者  オンデマンドバスのアプリに表示された停車場所で待っていたが、オンデマンドバスが通り過ぎ、手を振ったが運転士は無視して通過した。夜間のため次のバスの予約も取れず帰宅に時間を要した。後日、アプリの不具合による停車場所の位置表示の誤りが判明したが、責任の所在を明らかにすべきだと思う。  事業者はアプリの不具合を認識しており修正を予定していたが、修正直前の出来事であった、事業者の過失はあるが、障がいを理由とした差別的な取扱いではないことを説明。事業者と本人の話合いの場を設定、事業者から説明と謝罪があった。  (5)環境の整備(※おそれも含む)に該当する事案の概要  ア.身体障がい(肢体不自由)、商品・サービス、当事者  ビデオ店の入り口に段差があり、介助者に車いすを上げてもらっているが、単独では入店できないためスロープをつけてほしい。店員には障害者差別解消法を知ってもらいたい。  事業者には、合理的配慮としてスロープ設置の検討を依頼。障がい者差別解消法の資料等を送付し、啓発等を行った。  イ.身体障がい(肢体不自由)、商品・サービス、当事者  スポーツ観戦の車いす席のチケットをネットで購入しようとしたが、通常のチケットに比べて分かりにくい案内になっており、このような仕様は差別的である。また、クレジットカード払いのみでの販売とされており、これもクレジットカードを作りにくい障がい者への間接差別の可能性がある。  競技団体に連絡し調整を行った。その後、当事者が所属する事業所を訪問し当事者および支援者に、車いす席チケットの販売が通常のチケット販売と差異がなくなるよう競技団体等に依頼したことを説明した。  ウ.身体障がい(視覚障がい)、商品・サービス、市町村  ビル前の広場にバイクが入れないように固定したガードが設置されており、車いす等でビルの1階の郵便局を利用する場合、迂回する必要がある。また点字ブロックも妨げている。管理会社が他府県なので情報共有したい。  市がビル管理会社と相談を継続しており、一部撤去の方向で進んでいることを確認した。  エ.身体障がい(肢体不自由)、公共交通、当事者  交通機関の特別割引用ICカードのホームページには加盟している事業者が利用できるとしか記載されていない。取扱事業者の一覧表を記載するか、取扱者のホームページへリンクさせるなどの配慮をすべきである。  事業者のサービスセンターに問合せたところ、情報量が膨大であり変更等により誤った情報を伝えてしまう恐れもあり一覧表は難しいとの説明であった。当事者からも連絡があり、説明しているとのことであった。    2 合議体における助言の実施    1.合議体において助言を行った相談事例等  大阪府では、障がい者、事業者、学識経験者等で構成する解消協議会を設置し、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する事項を審議しています。また、解消協議会の中に合議体を組織し、事業者における不当な差別的取扱い・合理的配慮の不提供に係る紛争事案に関するあっせんや、広域支援相談員が幅広い相談事案に的確に対応できるよう、様々な事例に関する助言を行うこととしています。  法の趣旨は建設的対話によって差別を解消することであり、障がい者と事業者の円満解決を図ることが広域支援相談員の第一義的な目的であることをふまえて対応し、様々な事例を蓄積していくことが差別の解消につながります。  このため、「助言型の合議体」では、不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供であるかが明確にはわからない事例であっても、差別の温床になると思われる「不適切な行為」等の事例も含めて、分析等の対象としています。  今年度の合議体においては、広域支援相談員が対応や判断に苦慮した(あるいは苦慮している)困難事例を中心に助言等を行いました。  なお、事例の取扱いにあたっては、個人情報保護の観点から、実際の事案を踏まえつつ、内容を一部変更するなどの加工を行っています。  (1)合議体での助言事例  (事例1)専門学校での聴覚障がい学生への合理的配慮(教育分野)  「相談の内容」  専門学校に通う聴覚障がいのある学生に関して、学校、学生双方より相談。  これまでは学生のスマートフォンでUDトーク(音声認識文字化アプリ)等を利用して授業を受けていたが、実技等いくつかの授業への手話通訳を希望している。しかし学校は手話通訳の費用負担は過重な負担であると考えている。また学生は、卒業時のサポート制度(※)の適用外となることを入学時に承諾したが、今考えるとそれは障がい者差別なので、その承諾書を破棄してほしいとも求めている。  ※サポート制度…40歳未満の学生が、卒業時に就職が決まっていない場合、その後就職できるまで2年以内で、学校で学ぶ機会を無償で提供する制度     「対応概要」  広域支援相談員が学校・学生それぞれと面談したほか、双方の話合いの場に同席もした。学校としては、手話通訳をつけることは過重な負担になるため、学校の用意するパソコンにマイクをつなぎUDトークを活用して授業を行うことで対応したいと代替措置を提案。学生も一定受け入れたものの、グループワークなどの授業ではUDトークでは不十分なところがあるため筆談補助を求めており、学校側はその対応も難しいとしている。サポート制度に関する承諾書については、顧問弁護士と相談の上、破棄せず学生管理の資料として残す、との学校の回答だった。  「論点」  ア.専門学校への手話通訳派遣に関しては、費用を補助するような制度はない。その状況で、聴覚障がいのある学生が授業を受ける際の合理的配慮としてどのような対応が考えられるか。また費用がかかることが過重な負担であると学校は説明しているが、「過重な負担」をどのように考えればいいか。  イ.サポート制度の適用外としたことは障がいを理由とした差別と考えられるか。差別であったとしても、本人が承諾して署名したのであれば有効と考えられるのか。  「分類」  合理的配慮の不提供(手話通訳)  不当な差別的取扱い(サポート制度)  ア.手話通訳派遣に関して  (ア)手話通訳の考え方について  a.手話通訳は、「情報を得るためのアクセシビリティ」と「情報を伝えること」という2つの意味がある。声が出せないろう者の場合、UDトークだけでは、自分の意見を言うことができない。障がい者の特性は様々でありUDトークでの対応では解決しない場合もあることを、啓発していく必要がある。  (イ)事案の分類及び整理に関する意見  a.企業は長期的な利益率とサービスのターゲット層で考える。ひとつ前例ができた場合、今後同様の対応を望む人が増えたときに利益はどうなのか、長期的に考えることになる。またどういうターゲット層を考えて経営しているのか(高い学費の代わりに手厚い学習環境を提供することを目指すのか、学費を下げて多くの学生を集めることで収益をあげるのか等)によって、過重な負担の考え方は変わってくる。  b.過重な負担であるというためには、事業者の規模、経営状況、利益率等を考慮したときに、「障がいのある顧客とない顧客のバランスを考えると、経営的に受け入れられない費用である」という説明が必要であり、「費用がかかる=過重な負担」とは言えない。  c.本人が求めているのは特定の授業における数回の手話通訳であり、本人が手話通訳を手配するので学校で費用を負担してほしいと言っている状況から考えると、コストがかかるから対応できないというのは、合理的配慮の不提供事例と言えるのではないか。  (ウ)事業者側の対応について  a,学生一人当たりの利益ではなく学校の経営規模から考えれば、対応できるものもあると思われる。経営規模から考え、負担可能な上限があるはずなので、それを踏まえて話し合いができれば良かったのではないか。  b.どこまで配慮すべきかではなくて、どうすれば授業を受けやすいのかという視点で、一緒に話し合っていこうという姿勢、関係性ができていないことが、一番大きな問題ではないか。    c.UDトークでの双方向のやり取りは難しいということだが、何らかの形で意思表明のための工夫ができないか。授業の前後でコミュニケーションをして質問に答える、など、授業を理解できるような工夫も考えられるのではないか。  (エ)広域支援相談員の対応等について  a.今回の事例では解決が難しかったとしても、これをきっかけに学校側が対応例を調べ、考え方を変えることができれば、広域支援相談員が関わった意義があるのではないか。  b.差別解消法は、差別かどうかを判断して一方に責任を取らせるものではなく、行政関与の下に双方向で話し合い、解決策を見つけようというものなので、過重な負担かどうか、データを示し社会的に納得できる説得力のある説明をするよう求めていく必要があるのではないか。  c.確信犯的に差別解消法を尊重しないという方針を取っている事業者に対しては、行政関与の下で差別を解消していくという差別解消法の手法では限界があると考えられる。  イ.サポート制度適用外とする承諾書について  (ア)事案の分類及び整理に関する意見  a.障がいがあるため就職が難しいと考えて、サポート制度の適用外としているのであれば、不当な差別的取扱いに当たり、承諾書があったとしても認められないのではないか。  (イ)事業者側の対応について  a.社会経験の少ない聴覚障がい者の場合、説明を十分に理解できていなくても、それを伝えることでサービスを受けられなくなるのでは、と言われるままに対応してしまうことがある。入学前の説明の際、分からないことが質問できる状態だったのか。    b.契約の時に十分な説明がされ理解した上での承諾書だったのか。学校側の説明不足の部分と、正しく理解していなかった本人の部分の両方に原因があるのではないか。    (ウ)広域支援相談員の対応等について  a.本人の理解が深まったり、状況の変化等により、本人の考えが変わることは当然ありうる。行政関与の下で紛争を解決する仕組みなので、障がいのある当事者が、障がいを理由とする差別だと考えたときに行政が関与し必要な解決策を求めていく手法が有効。    b.合意の有効性を議論することには意味がないのではないか。たとえ合意があったとしても改善の努力を求める必要がある。承諾書の破棄にこだわるのではなく、卒業後にサポート制度と同等の機会を学生が求めた場合に、不利益が生じない形を考えればいいのではないか。  (事例2)スポーツジムにおける介助者の位置づけ(商品・サービス分野)  「相談の内容」  視覚障がいのある人からの相談。ヘルパーを同伴して、スポーツジムで水泳指導を受けようとしたところ、ヘルパーのジムへの入館を断られ、代わりに水泳コーチによる更衣等の支援を提案されたが、その時間も水泳指導の時間に含むと言われた。ヘルパーの入館を認めないことで、水泳指導の時間が短くなることが納得できない。 「対応概要」  広域支援相談員が事業者に事情を聞いたところ、会社の方針として、ヘルパーが必要な人の利用を認めておらず、仮にヘルパーが入館する場合はヘルパー分の利用料も必要とのことだった。広域支援相談員から事業者に対し、時間短縮することなく水泳指導を受けられる方法の検討を要請し、事業者からは本部とも相談するとの話があった。   後日、広域支援相談員同席の上での相談者と事業者との話し合いの結果、同性ヘルパーとジムに来た場合は、ヘルパーの支援により更衣や移動を行い、時間短縮することなく水泳指導を受けられることになった。水泳指導の時間帯によっては同性ヘルパーの確保が難しいため、異性のヘルパーと来館した場合は、水泳コーチによる更衣等の支援となることについて、本人が了解した。     「論点」  障がいのある人が、スポーツジムにヘルパーを同伴して行く場合のヘルパーの利用料や会員登録について、どう考えればいいか。  「分類」不当な差別的取扱い  (ア)ヘルパーの考え方について  a.ヘルパーは障がい者の体の一部であり、ヘルパーの入館を認めず本人がサービスを受ける場合、障がいのない人と比べて、受けられるサービスの価値に違いが出てくる。そのため、正当な理由がなければ不当な差別的取扱いと考えられる。  b.食べ放題、映画・観劇等、事業や業態によっては、ヘルパーの同伴を制限したり、ヘルパー分の費用を求めたりすることに、正当な理由がある場合も考えられる。  (イ)事案の分類及び整理に関する意見  a.スポーツジムにヘルパーが同伴しても、ヘルパーがジムのマシンを使ったり、泳いだりすることは考えにくい。その場合にヘルパーに会員登録や利用料を求めることは、事実上ヘルパー同伴の障がい者を断ることに等しいため、不当な差別的取扱いと考えられるのではないか。  b.プライバシーを重視する高級なスポーツジムなのか、庶民的なスポーツジムなのか、利益率やサービスのターゲットをどこに置いているかでも、正当な理由の考え方が変わるのではないか。  (ウ)事業者側の対応に関する意見  a.スポーツジムに障がい者が来るということを想定していない、という背景があって、こういうことが起きたのではないか。  b.水泳指導の前後の準備としてヘルパーの介助が必要ということであれば、スイミングスクール等に保護者が子どもを連れてくるのと同様に考えればよかったのではないか。  c.最初に受け入れるときに、更衣の時間を含めた水泳指導を受けるための流れについて、共通理解をしておくことがまず必要である。  d.異性ヘルパーの場合は、スタッフかコーチが更衣を手伝う、という提案は、他の利用客のことも考えると、合理性があると考えられるのではないか。  e.スポーツジムはコロナ禍で利用客が減っており、経営が厳しい状況にある。比較的安価なジムではスタッフの配置を少なくして、施設や機器の管理だけを業務とし、利用客のサポートはしない方針のところもある。個人のトレーニングについては、ジムに登録しているトレーナーが時間単位で契約して対応するという仕組みになっている場合、トレーナーからすると、自分が対応するのであればその時間枠の中になる、というのはやむを得ないのではないか。  (エ)広域支援相談員の対応等に関する意見  a.スポーツジムの職員の多くはアルバイトであり、この事案のような申し出があった場合、判断できないのでルール通り「できない」と答えることになる。広域支援相談員が関わることにより、本部での検討につながった。本人の希望全てがかなったわけではないが、企業の考え方が変わったという点では、一つの前進、好事例である。  (事例3)市の指定管理のプールにおけるレーンの利用(商品・サービス分野)  「相談の内容」  市の指定管理のプール利用について、肢体不自由のある方からの相談。相談者が泳ぐ際には、介助者が前方を歩いて付き添っている状況。  (A市市営プールでの事案)  A市のプールは泳力に応じたレーンで泳ぐことになっており、相談者は自由遊泳レーンで泳いでいるが、そのレーンは端に設定されているため、障がいの特性上、腕を大きく動かす相談者の場合、腕がプールの壁に当たり泳ぎに支障が出る。そのため、真ん中のレーンで泳げるようにしてほしいとレーン設定の変更を求めたが断られたとの相談があった。  (B市市営プールでの事案)  B市が主催する水泳大会のためB市のプールで練習したいが、介助者が歩いているため歩行専用レーンの使用しか認めてもらえない。歩行専用レーンの使用しか認めてもらえない。歩行専用レーンではしっかり泳ぐことができないので、自由に遊泳レーンを利用できるようにしてほしいとの相談があった。  「対応概要」  (A市市営プールでの事案)  広域支援相談員がA市の差別解消担当課、プールの指定管理担当課と一緒にプールを訪問し、差別解消法について説明した上で合理的配慮の検討を要請。プール担当者が相談者と話し合った結果、相談者の利用する時間帯に自由遊泳レーンが真ん中に設定されることになった。  (B市市営プールでの事案)  広域支援相談員がB市の差別解消担当課に連絡したが、「この事案についてはプールの指定管理担当課が中心になって対応しており、レーンが限られている状況では、他の利用者に制限がかかるため相談者の自由遊泳レーンの利用は認められないと聞いている」とのことだった。広域支援相談員よりA市の事例について情報提供し、指定管理担当課とも共有してできることを検討してほしいと依頼。相談者を交えた話し合いが行われ、大会前に時間を決めて自由遊泳レーンを利用することが認められた。  「論点」  ア.泳いでいる当事者をサポートするための介助者の位置づけについて。レーンの利用に当たっては、「泳いでいる」当事者をメインと考えるのか、「歩いている」当事者をメインと考えるのか。  イ.市の指定管理のプールにおいて、各市の考え方の違いがある中でどこまで合理的配慮を求めることができるか。また、一般のスポーツジムのプールの場合はどうか。  「分類」不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供  (ア)介助者の位置づけについて  a.障がいのある人が泳ぐ場合に介助者がつくことも多いが、それは本人の安全や安心のために必要なことである。車いすや白杖と同様に、介助者は、障がい者の目的を達成するために必要な人なので、当事者を中心に考えるべきである。  b.一方でネックになるのが、介助者のピール利用に係る費用をどう考えるか、という点。公営プールの場合、その性質上、障がい者や介助者が無料で利用できることがあるが、民間のスポーツジムの場合は、介助者が一緒にプールにい入るのであればロッカー等を使用するので、その分の使用料を求められる可能性がある。  (イ)市の考え方の違いについて  a.指定管理者が差別的取扱いをした場合は、その紛争解決の最終的責任は市にあり、障がいのある市民でも公平にプールを利用できるよう、市が調整するべきではないか。行政機関として差別的取扱いをしないということに、市によって基本的な考え方の違いがあっては困る。  (ウ)市営プールと民間のスポーツジムのプールでの合理的配慮の違いについて  a.民間の場合、どういう客層にどういう付加価値のあるサービスを提供するかが、料金設定にも影響してくるため、スポーツジムの特性やグレード、客層、料金等により、提供できる合理的配慮が変わってくる可能性はある。ただ、民間であっても合理的配慮提供義務があるので、一方的に断る場合は差別的取扱いにあたる可能性もある。合理的配慮の考え方を事業者にいかに知ってもらうかが大切ではないか。  b.経営上の必要性、合理性という観点から一定のルールを作ることはありうるが、その場合でも障がいのある利用者のアクセシビリティやユーザビリティを他の利用者と近づけるような努力は必要であり、経営上の必要性と矛盾しない形でその努力を求めていくことはとても重要ではないか。  (エ)事案の分類及び整理に関する意見  a.泳ぐ本人を中心に考えると、介助者が歩いているからという理由のみで歩行専用レーンを設定するのは、障がいを理由とする条件付けとして差別に当たるのではないか。  b.泳ぐスピードが遅いため他の利用者に迷惑がかかり、プールの運営に支障がある場合は、正当な理由があると言ってもいいのか、公営プールに求められていることを考えると、すべての人が使えるようにルールを考えていくべきではないか。  (オ)事業者側の対応に関する意見  a.どこのプールでも障がいがあるから利用できないというのはあってはならないことである。障がいの有無や泳ぐ速さに関係なく利用できるように、いかに整理していくかが大切ではないか。  b.プールの指定管理者がレーンの使い方を固定化していることは、配慮が狭くなっていると感じる。その時々で工夫や配慮をすれば、問題なく相談者が練習できたのではないか。  c.A市、B市共にルールを変えることよりも、その方には介助者が必要だということを周りの人に知ってもらう方法に重きを置くほうがいいのではないか。  (カ)広域支援相談員の対応等に関する意見  a.市営プールにおける紛争において、解決の最終責任は市にあると考えると、行政機関における事案(法第7条に関する事案)とも考えられるのではないか。その場合、各自治体では職員対応要領を作っており、担当窓口も設置されているので、その自治体での解決の仕組みを動かすことがむしろ大事なのではないか。自治体関係者の意識を変えるためにも、広域支援相談員が先頭に立って問題解決に当たる、というより、自治体と連携しつつ情報提供するなどのサポートをしていくほうがいいのではないか。  b.「法第7条に該当する事案であれば広域支援相談員による調整ができない」となった場合、市が障がい当事者の立場を踏まえてしっかり対応していなかったり、差別解消にあまり取り組んでいなかったりすると、合理的配慮の検討もされずに終わってしまうこともあり得る。「法第7条か法第8条か」を決めるよりは、合理的配慮について検討できているのか、というところから考えていけるよう広域支援相談員に対応してほしい。  (事例4)児童発達支援事業所における坐薬の対応(福祉サービス分野)  「相談の内容」  知的障がいのある子どもの母親からの相談。児童発達支援事業所で子どもに療育を受けさせたいと思っているが、てんかん発作が起きたときの坐薬挿入の対応を事業所にお願いしたところ「医療行為であるため対応できない」と言われた。平成17年7月の厚生労働省の通知(介護の現場等で判断に疑義が生じることが多い行為であって原則として医行為ではないと考えられるものを示したもの。一定の条件を満たしている場合の坐薬挿入についても、例として記載されている。)を示したり、主治医の意見書を出すことを提案したりしているが、事業所には認めてもらえず契約が保留となっているとの内容。  「対応概要」  広域支援相談員と事業所とのやり取りの結果、事業所から「産業医とも相談の上で坐薬挿入はしないことにしているが、初の試みとして母子通所での受け入れを母親に提案したい」との話があった。相談員から、主治医との話し合いや単独通所に向けた取組みを今後検討するつもりがあるかを事業所に確認したが、考えていないとのこと。ただ、母親も母子通所での療育という提案で納得されたため、相談終了となった。  「論点」  ア.障害者差別解消法は、障がいのない人との比較で考えることが多いが、障がい児者しか対象としない事業者についても、法の対象と考えてよいか。法の対象であるのならば、この事案は、坐薬挿入が必要な障がい児に対する不当な差別的取扱いと考えるのか、坐薬挿入の対応に関する合理的配慮の不提供と考えるのか。  イ.産業医の意見を踏まえた事業所の判断が、正当な理由(もしくは過重な負担の理由)となりうるか。仮に主治医の意見書をもとにした事業所の判断であれば、正当な理由(もしくは過重な負担の理由)になりうるか。また、産業医と主治医との判断が異なり対立する場合は、どちらかが優先すると考えればいいか。  ウ.一定の条件の下、学校では坐薬挿入は教職員が対応しているが、看護師が配置されていない福祉施設に対しても同様の対応を求めることができるか。  「分類」不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供  ※児童発達支援事業所については、事業者によってその運営規模や人員体制は様々であり、合理的配慮が提供可能な範囲はその事業者の規模や人員体制なども踏まえて判断されることとなります。  (ア)差別解消法における障がい者間での差別の考え方について  a.障がい者間の差別的取扱いを法が想定しているのかは学会でも争いがあるところ。厳密に法律解釈をする立場では、障がい者間差別は想定していないと考える。一方で、当該障がい(この事案で言うと坐薬挿入が必要)を理由として、社会参加の権利が制約されているので法の対象となるという意見もある。  b.障がいが一定程度重く様々な支援が必要な場合に、障がい福祉サービスの利用を断られることがある。障がい者間の差別は法の対象外という考え方は、その状態を是認することになるため受け入れがたい。  (イ)坐薬挿入の考え方について  a.平成17年7月の厚生労働省の通知は、必要に応じて対応できる範囲が示されたもので、何でもかんでも「医療行為なのでできない」と断ってはいけないということが書かれており、判断の一つの指標となると考えている。ただ、通知があるからと言って、いきなり対応するというのは事業所も利用者も不安だと思うので、研修をしたり主治医や家族と話し合ったりする準備が必要ではないか。  b.法律論よりも、現場を良くするという視点で、物事を解決していくのが一つの方法ではないか。今は差別に当たるのかどうかグレーであっても、将来的には坐薬挿入は当然対応すべきことと考える世の中を作っていくプロセスと言えるのではないか。  (ウ)主治医や産業医の意見が食い違った場合の考え方について  a.産業医の場合、職員の健康管理やメンタルヘルスだけを担当していることの方が多いと思われる。この産業医がてんかんや坐薬について正しく理解しているのか。小児にてんかん発作が起きた場合に、坐薬挿入をすることが一般的なことだと産業医が理解すれば解決するかもしれないので、主治医と産業医が話し合う場があるといいのではないか。  b.主治医の意見を踏まえて、事業所とどれだけ対話していくかが重要。事業所と家族が対立関係になると、子どもにとって良くない影響が出ることもある。双方が方向性を共有し、話し合いを続けていくために、国の通知等を利用するという視点も必要ではないか。  (エ)事案の分類及び整理に関する意見  a.医療ニーズのある子どものサービス利用を、対応できないことを理由に拒むというのは、その子どもにとってはとても大きな社会活動の制約になるが、裁判のリスク、投薬管理のわずらわしさ、職員の専門的なスキルなどを正当化する理由としていいのかどうか。  b.母親が母子通所に納得したため解決したことになっているが、母子通所を受け入れの条件としたとも考えられ、不当な差別的取扱いに当たるのではないか。  (オ)事業者側の対応に関する意見  a.乳幼児期は医療にかかるウェイトが高い状況がある中、投薬管理も含めてリスクがあるので民間事業所では対応できないと言われてしまうと、医療ニーズの高い障がい児が療育を受ける機会が限定されてしまい、早期発見・早期療育がただの謳い文句になってしまうのではないか。  b.脳の発達途中である子どもの場合は特に、てんかんがあることも多い。そのような一般的な知識や情報を持たずに、児童発達支援事業をするという事業所のスタンスに疑問を感じる。  c.厚生労働省の通知はあるが、事故が起きた際に100%免責される保証はなく、責任回避のためにこのような対応になっているのではないか。  d.「完全に免責が保証されないと事業所が対応することは難しい」となると、解決が難しいので、利用者と事業所が前向きな話し合いをしていくことがまず必要ではないか。  e.投薬管理も含めて対応を要する子どもが増えた場合、その対応やトラブル時の対応も含めてオペレーションの中に組み込まなければならない。それを民間事業所がどこまでできるのか。  f.最初は母子通所で発作時には母親が坐薬を挿入したとしても、それで発作が落ち着く場面をスタッフが何回か見れば座薬挿入について理解できるようになることも考えられる。その上で、主治医と産業医が話し合えたら前に進むのでは。母とスタッフが共に戦う仲間としてコミュニケーションを取れるのが一番いいのではないか。  g.複数の事業所がある法人なので、少しでも配慮したり考えたりする土台を作るために、研修などにも取り組んでほしい。この子どもだけの話ではないと位置づけるほうがいい。  (カ)広域支援相談員の対応等に関する意見  a.障がい者間差別についての法解釈については議論が分かれるところだが、広域支援相談員は白黒をつける組織ではないので、障がいを理由として差別的な取扱いが形の上で発生している場合はとりあえず関わっていくというスタンスでいいのではないか。  b.事業者側の言い分も分からないわけではないので、違法性や理由の正当性を考えるよりも、どうすれば通園できるか、母親の同伴の負担軽減につながるかということを、建設的に話し合ってもらうような形で広域支援相談員が関わることが必要なケースではないか。  (2)合議体でのその他の意見  ア.広域支援相談員の相談対応に関する助言  (ア)合理的配慮の提供にあたり、事業者が費用負担することがどうしても難しい場合には、公的制度の活用について、市町村に問い合わせたり、交渉するなどの対応ができないか検討してほしい。  (イ)「障がいのある人がない人と比べて異なる手順を求められるような環境が差別である」というような相談に対しては、その環境の解消を求めることが難しい場合でも、障がい当事者の思いを受け止めて、事業者に受け渡すところまでは最低限してほしい。  (ウ)障がいがあっても、ない人と同じように利用したいというのは正当な思いであり、その思いに沿った形で事業者と話をしてほしい。実際に異なる手続きで利用せざるを得ない状況があったとしても、その背景には障がい者への差別意識が残っていることもあるので、そのような視点も持って対応をしてほしい。  (エ)誰かが上げた声が合理的配慮の不提供を減らしていくことにつながるので、法を知ってもらって、できることを考えてもらうことも必要ではないか。  イ.相談内容の分類と整理に関する助言  (ア)公的な施設と民間の施設では、目的が異なる場合もあり、「合理的配慮」の内容について違いがある場合もあるが、民間事業者でも配慮すべきこと、配慮できることはあるので、経営者に合理的配慮の考え方をいかに知ってもらうかが大事ではないか。  (イ)過重な負担の考え方が、一つずつの事例を通して明らかになるといいと考える。  ウ.府の役割等に関する意見  (ア)具体的な事例から、さまざまな社会の制度や運営の課題が出てくるので、それを生かしていってほしい。  (3)府における整理と課題  ア.広域支援相談員の相談対応  (ア)広域支援相談員は障がいを理由とする差別かどうかを判断する役割ではないので、障がい者間での差別のほか法上の差別かどうかはっきりしないような事案においても、障がいを理由として差別的な取扱いが発生していると思われる場合は、まずは関わっていき改善に向けた調整を図っていきます。  (イ)客観的に見ると差別ではないかと思われるような事業者の対応について、当初は障がい当事者が納得していた場合でも、本人の理解が深まったり状況が変化したりすることにより、考え方が変わることは当然ありうることを改めて認識して、相談対応を行います。  (ウ)手話通訳など合理的配慮の提供にあたり、事業者がその費用を負担することが難しい場合には、公的制度が利用できないか、これまでも市町村への問い合わせや相談をしてきたところですが、今後も障がい当事者の不利益な状況の改善を図る手段について、障がい当事者の意向も確認しながら、公的制度の活用も含めて検討していきます。  (エ)障がいのある人とない人で異なる手続き等を求められる環境を解消してほしい、というような相談の場合、広域支援相談員としてはその思いに沿った調整を図ることが難しいこともあります。しかしそのような場合でも、障がい当事者の思いを受け止めて事業者に伝えたり、その背景に障がい者に対する差別意識がないかという視点を持って、改善策の検討を事業者に働きかけたりする役割があることを認識して対応します。  イ.相談内容の分類と整理  (ア)「過重な負担」については、事業者の規模や経営状況等を考慮したうえで、データを示す等、社会的に納得できるような説明がなされているかという点も含めて検討を行います。  (イ)公立の指定管理の施設における事案については、事業者による差別と考えられますが、公立施設という性質上、紛争事案の解決の最終責任は行政機関等にあるとも捉えることができるので、行政機関等の対応要領に規定する解決の仕組みを活用することも念頭に置き、広域支援相談員の果たすべき役割を意識しながら、事案の解決に向けて柔軟に対応します。  ウ.今後の課題  (ア)法の目的である、共生社会の実現のためには、日常生活や社会生活における障がい者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要です。しかし、相談事例からは「障がいのある人が利用する」ということが想定されずに、社会の仕組みが作られていることから、障がい者が困難な状況に置かれていることが改めて確認されました。  (イ)障がいを理由とする差別の解消は、すべての府民が共に社会の一員として解決すべき社会全体の課題であるとの認識のもと、社会モデルの考え方も含めた法の理念や内容、障がい理解の促進に取り組んでいくことが必要です。  (ウ)法の理念や内容、障がいについての理解促進にあたっては、相談対応の際に個別の事業者に働きかけることで、当該事業者が障がい者差別解消について深く考えることにつながると考えられますが、社会全体への理解を広げていくためには、個人情報に配慮しつつも具体的な事例を紹介することも重要と考えられます。その際には、障がい者の特性はさまざまであるため、画一的な対応にならないよう啓発することも必要です。  (エ)これまで、助言型合議体を開催し、広域支援相談員への助言や相談事例の分析を行ってきました。また、法・条例施行以来、広域支援相談員が相談対応した事例は1,000件を超え、相談対応の参考となる事例の蓄積も進んでいます。一方、調整の具体的な手法については、広域支援相談員の経験によるところが大きく、文章化して共有することが難しい状況があります。広域支援相談員や職員の入れ替わりも前提に、障がい者差別に関する相談対応のノウハウをいかに積み上げて共有していくことができるのか、検討していく必要があります。    3 合議体によるあっせんの実施  令和3年度に合議体からあっせん案の提示を行ったあっせん申立てについては、令和4年度に申立人、被申立人双方よりあっせん案の受諾の意思が表明され、合意に至りました。条例施行以来初の、あっせん成立事案となりました。  令和4年度は、あっせんの申立てはありませんでした。    4 府内市町村に対する支援の取組み    1.府内市町村の取組みに向けた支援  条例では、府は、体制整備や啓発活動にあたっては、市町村と連携して実施するよう努めることとし、市町村が体制整備や啓発活動を実施しようとするときは、市町村に対し、情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援を行うことを規定しています。  そこで、府は、市町村に対し、相談への対応姿勢等についての助言を積極的に行うとともに、相談対応力の向上を目的に、意見交換の場を設定したり、研修を実施したりする等、支援に取り組んでいます。  (※啓発活動については、「5 障がい理解に関する啓発の取組み」に記載)   2.市町村支援における課題  (1)相談対応について  条例では、障がい者差別の解消における体制整備にあたり、市町村と連携してこれらを実施するものとしています。まずは住民に身近な相談窓口である市町村が対応し、それでも解決の困難な事案については広域支援相談員が市町村に対して情報提供や技術的助言等の支援を行うというように、広域・基礎自治体の役割に応じた機能を発揮することにより、府全体における障がいを理由とする差別の解消の推進につなげることを目指しており、市町村の役割は極めて重要です。  各市町村において、専門職の配置・活用や相談事案が起こった場合の検討体制の整備等が進められていますが、相談事例や対応ノウハウの蓄積はまだ十分とは言えません。  また相談窓口をたらい回しにされてようやく広域支援相談員につながった、という事案もあることから、市町村の相談窓口の周知を図るとともに、市町村の相談事例のキャッチ力や対応力の向上については引き続き取り組むべき課題と言えます。  (2)障害者差別解消支援地域協議会の設置について  大阪府では令和5年1月現在、20市町村で障害者差別解消支援地域協議会(以下、「支援地域協議会」という。)が未設置となっています。これらの市町村では、設置に至らない理由として、  ア.事例が挙がってこない中、支援地域協議会を立ち上げなければならない根拠が希薄であり、もし会議体を設置したとしても、どのように運用していくのかが悩ましい。  イ.事例がない中で、会議体が多く予算も限られていることから、設置にまで至らない。  ウ.既存の協議会で対応できる。仮に設置しても同じようなメンバーになってしまう。  エ.自治体の規模から考えて単独で設置することが困難。  オ.設置についての提案の声を聞かない。 といった点が挙げられます。  また、支援地域協議会を既に設置している市町村でも、  ア.行政の報告にとどまらず、互いに協力し合う関係性を構築できるような会議の運用をどのようにしていくかが悩ましい。  イ.設置はしているものの、参画してほしい委員を集めることが難しい。  ウ.参加委員から行政に対し、一方的に要望をする場になってしまっている。  といった点が課題として挙げられます。    これらの意見から、体制整備の一環として支援地域協議会を設置することについて、各自治体に理解を求めていく一方で、事案が少ない、または予算や人員が限られている中でどのような形で設置するかの工夫が求められます。また、既に支援地域協議会を設置した市町村においても、有意義な会議体となるためにはどのような議題を話し合うべきなのか、どのように幅広いメンバーに委員に就任してもらうかといった課題があると思われます。   3.府内市町村に対する支援の取組み  (1)相談事案への対応を通じた支援の実施  大阪府では府内市町村から障がい者差別に関する相談を受けた場合は、事案の内容を確認した上で対応方法について助言を行っています。また、市町村から求めがあった際は一緒に当事者より話を伺ったり、相手方となっている事業者を共同して訪問し、啓発をしたりするなどの取組みをすることもあります。これらの取組みを通じ、市町村の職員の資質向上を支援しています。  (2)オンライン情報交換会の実施  大阪府では、これまで広域支援相談員が市町村職員と面談形式で情報交換を行う、出張情報交換会を実施してきました。しかし、新型コロナウイルスの感染がなかなか落ち着かないことから、一堂に会して話し合うことはなかなか実施しにくい状況が続いています。  一方で、情報交換を実施することは、事例の共有や収集のみならず、各自治体の障がい者差別担当者と広域支援相談員が顔の見える関係性を築いていくためにも重要な取組みであると考えており、毎年開催していくべきではないかと考えています。  そこで令和3年度よりオンラインでの情報交換会を実施することとし、令和4年度は令和3年度に実施できていなかった2つの政令指定都市(第1回)と中河内・南河内地域(第2回)を対象に実施しました。  情報交換会の中では、大阪府も含め参加いただいた各市町から近年発生した相談事案や支援地域協議会の開催状況について紹介すると共に、参加者間での質疑応答を実施しました。また、支援地域協議会について、設置済みの自治体からどのような形で運営しているかを紹介頂くことで、未設置自治体とイメージの共有を図りました。また、相談事案がなく設置する理由が見いだせないという自治体に対して、まずは障がい者差別解消に関する周知啓発方法について考えること、他自治体で発生した事例を用いて、地域内で相談事案が発生した際に備えていくなど、立ち上げに向けた提案を行いました。  (3)その他  令和4年度は内閣府による「障害者差別解消支援地域協議会に係る体制整備・強化ブロック研修会」が開催され(令和4年11月)、府内市町村に対して参加を呼びかけました。研修会では、事前に内閣府の作成した支援地域協議会の解説と設置状況に関する動画と設置・運営方法についての動画を見た上でアンケートに回答し、研修当日はオンラインでアンケートの回答内容について参加者間での意見交換が実施されました(大阪府からの参加:10市町村)。  また上記研修会のみでは参加自治体に限りがあることから、大阪府においても差別解消法の改正や基本方針改定および支援地域協議会設置を促進するための研修会を実施しました。   4.今後の取組み  市町村における相談事案のキャッチ力や対応力の向上を図るため、引き続き広域支援相談員が市町村から寄せられた事案への対応について助言を行ったり、差別に関する相談に対応する流れをまとめたものを提供するなど、障がい者差別やその温床となる不適切な対応等について、事案を早期に発見し、適切に対応できるよう取り組んでいきます。  令和3年度から実施したオンラインを活用した情報交換会は一旦すべての地域を対象に実施しました。情報交換会の中では府と各市町村間のやり取りだけでなく、市町村間の意見交換を行うこともでき、有意義であったと考えています。参加する自治体の組み合わせを変えるなどして引き続きこの取組みを行っていきたいと考えています。  支援地域協議会の設置促進や運営の活性化に向けては、すでに設置している自治体がどのような形で設置・運営しているのかの好事例を情報提供していく必要があると考えています。また、大阪府の解消協議会においても令和4年度より、参加委員による情報交換や事例検討を実験的に実施してきましたが、この取組みを続けていくとともに、府内市町村にも積極的に傍聴してもらうことで運営のヒントにしていただきたいと考えています。  今後も障がい者差別解消を効果的に推進するために、より多くの市町村で支援地域協議会が設置されるよう、広域自治体として、市町村での取組状況の把握や情報発信をしながら、設置の推進に努めていきます。    5 障がい理解に関する啓発の取組み    1.啓発について  府では、依然として障がい者が日常生活の中で嫌な思いをすることがあるほか、差別を受けたと感じる現状もあります。これらは、障がいや障がい者に対する理解不足、誤解や偏見等が原因と考えられることが少なくないことから、障がい等に対する理解を深め、誤解や偏見等をなくすことが何よりも大切です。そうすることで、差別に係る相談の迅速な解決や紛争の未然防止も期待できると考えます。  そのため、条例では、「啓発活動」を、「体制整備」とともに、車の両輪として差別の解消に取り組むこととしています。   2.啓発の課題  事業者の中には、知識や経験が不足しているために不適切な対応であるという自覚がなかったり、具体的な方法がわからなかったりするために、結果として差別的な行動をしてしまうことがあります。  そこで「知識や経験の不足」が要因となって差別に至ることを未然に防止するためにも、事業者が「気づく」ことを第一歩に、これまでの事例の蓄積を活かし、事業者に対する啓発事業を工夫して取り組んでいくことが必要です。  また、条例においては、府民もまた、条例の基本理念にのっとり、障がい及び障がい者に対する関心と理解を深めていくことが求められています。法や条例の施行以降、府では、様々な啓発事業の実施や啓発冊子の作成に取り組んできましたが、令和3年度に実施した、府民モニター1,000名を対象としたアンケート調査の結果においても、合理的配慮について、その意味まで理解している人は1割にも満たない状況であり、府民の認知度が十分ではないというのが現状です。引き続き市町村や関係団体、機関と連携しながら、「オール大阪」による啓発活動をさらに進めていくことが重要です。   3.啓発の取組み  府では、障がいを理由とする差別の解消は、全ての府民が共に社会の一員として解決すべき全体の課題との認識のもと、民間事業者等のご協力と関係機関等との連携等により、様々な啓発活動に取り組んでいます。  (1)大阪ふれあいキャンペーン  障がい者団体及び関係団体、行政が連携した障がい理解を深めるための取組みとして、昭和58年の「国連・障害者の10年」を契機に始まり、現在88団体(障がい者団体・地域福祉団体等44団体、府、府内全43市町村)で構成された実行委員会により活動を行っています。  取組みの一環として、障がいに関する基本的な事項を学ぶ「ふれあいおりがみ」を府内全小学3年生に配布するとともに、行政機関や障がい者団体等でも活用しています。  また、障がいのある人に対する配慮や工夫等を学ぶ「ふれあいすごろく」を府内の全小学校に配布しています。配布にあたっては、合理的配慮や社会モデルの概念をわかりやすく伝えられるよう、授業で活用できる資料を新たに作成する等、ツールの工夫を行っています。  このほかにも、幅広い世代の方に障がいに関する理解を深めていただくために、クリアファイルを作成し、配布するとともに、SNS(Instagram,Twitter)を活用した啓発活動を実施しました。  (2)共に生きる障がい者展  障がい者の自立と社会参加の促進をテーマとするとともに、障がいや障がい者への正しい理解を目的とした「大阪の障がい者の祭典」です。  大阪府、大阪府教育委員会、社会福祉法人大阪障害者自立支援協会が主催し、行政と障がい者団体等から構成される実行委員会により運営を行っています。障がい福祉分野に留まらず庁内連携を図りながら、障がいのある人もない人も共に楽しく学べるイベントを実施しています。  プログラムの一つとして今年度は、知的障がい者や発達障がい者の障がい特性を知っていただくとともに「合理的配慮の提供」について理解していただくことを目的に、フォーラム「事例から考える知的障がい・発達障がいと合理的配慮について」を開催しました。フォーラムでは、疑似体験や当事者の家族と支援者による事例紹介をもとに、有識者、事業者、一般府民の立場としての芸能人等によるパネルディスカッションを行いました。この様子は動画としてWeb上で広く府民に公開し、特に事業者の研修等で活用いただけるよう、あわせて広報しています。  他にも、障がい者の作品展示やダンス等のパフォーマンス、法や条例に関するリーフレットの配布など、障がい理解や差別の解消に向けた啓発活動を実施しています。  (3)心の輪を広げる障がい者理解促進事業(体験作文・障がい者週間ポスター募集)  「障がい者週間」(12月3日〜9日)を広く周知するとともに、府民の障がいに対する正 しい理解を深めることを目的としています。  具体的には、内閣府との共催事業として、小学生、中学生、高校生、一般の各部門で障がいのある人とない人との心のふれあい体験をつづった作文の募集や、小学生、中学生の両部門で「障がいの有無にかかわらず、誰もが能力を発揮して安全に安心して生活できる社会の実現」をテーマとしたポスターの募集をしています。作文及びポスターの最優秀賞・優秀賞受賞者には、知事による表彰を実施するとともに、受賞者の作品集を作成して府内の学校等に配布しています。  (4)大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度  公共施設や商業施設等における車いす使用者用の駐車区画等の適正利用を促進するために、利用証を大阪府が交付する制度です。  大阪府では、車いすを使用する方を利用対象とする「車いす使用者用駐車区画」と、車いす使用者以外の移動に配慮が必要な方を利用対象とする「ゆずりあい駐車区画」の両方を整備する「ダブルスペース」の整備を推進しており、本制度の協力施設を募集しています。  (5)ヘルプマークの周知・普及  ヘルプマークは、外見からはわからない援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう作成されたマークです。  大阪府では、平成29年6月から一般財団法人大阪府地域福祉推進財団との協働事業として実施し、府及び府内市区町村で配布をしています。  行政機関や障がい者団体等に加えて、公共交通機関や小売店等の民間事業者から協力を得て、ポスターの掲示やチラシ・リーフレットの配架、啓発物の配布、広報誌への掲載等、広く府民に向けた普及・啓発を実施しています。  (6)心のバリアフリー推進事業  事業者が、従業員等を対象とした障がい理解の促進や差別解消に関する研修等に自主的に取り組むことを目的に、事業者等の意見も踏まえながら、事例の検討を通じて、障がい理解と法内容の理解を進めるための教材を作成しています。  これまでも、障がい理解や法に関する体系的な研修を自主的に実施していない又は実施することが困難な状況にある事業者を対象として、効果的・効率的に取り組みやすい漫画や、障がい理解に関する事業に取り組まれた事業者の活動内容や効果等を具体的に分かりやすく伝える「インタビュー記事」を、事業者団体を中心に配布しました。  さらに、大阪府障がい者差別解消条例の改正に合わせてチラシや大阪府障がい者差別解消ガイドライン(第3版)を作成し、事業者団体や障がい者団体等に配布し、会員に向けた周知を依頼してきました。  令和4年度は、「共に生きる障がい者展」において実施した「フォーラム」の様子を動画として配信し、事業者の研修に活用してもらえるよう、周知を行いました(「A共に生きる障がい者展」参照)。  また、2025年の大阪・関西万博開催を見据え、主に接客を行う事業者を対象にした冊子(i-Welcome“合理的配慮”接客のヒント集)を事業者団体等を通じて配布していく予定です。    (7)事業者団体への研修の実施  希望する事業者団体に対して、大阪府障がい者差別解消条例の改正についての説明を主な内容とする障がい理解に関する研修を実施しています。  また、今年度はオンラインでの事業者向け研修を行い、法や基本方針の改正について説明するとともに、合理的配慮などについても学んでいただく機会を設けました。  (8)大阪府が作成した啓発物  ア.条例改正周知チラシ  令和3年4月の大阪府障がい者差別解消条例の改正により、新たに事業者による合理的配慮の提供が義務となることから、主に事業者を対象に合理的配慮とは何であるのかを説明したチラシです。  イ.大阪府障がい者差別解消ガイドライン  法や国の基本方針に基づき、何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような対応が望ましいのか等について基本的な考え方や、具体的な事例等をわかりやすく記載することで、障がいを理由とする差別について府民の関心と理解を深めるため、平成27年3月に作成しました。そして令和3年4月の条例改正に対応させるため、令和3年3月に改訂しました。  ウ.「ほんま、おおきに!!〜ひろげよう こころの輪〜」障がい理解ハンドブック  障がいや障がいのある人についての理解を深め、必要な配慮を考えるきっかけとなることを目的に作成しました。障がい特性ごとに配慮事項を記載しています。令和3年4月の条例改正に対応させるとともに内容を充実させるため、令和3年3月に改訂しました。  エ.マンガ「お客様一人ひとりに向き合う」インタビュー記事「できることを“一緒”に魅力ある事業者への第一歩」  障がい理解や法に関する体系的な研修を自主的に実施していない又は実施することが困難な状況にある事業者を対象に、効果的・効率的に取り組みやすい「マンガ」と、障がい理解に関する事業に取り組まれた事業者の活動内容や効果等を具体的に分かりやすく伝える「インタビュー記事」を作成しています。  オ.社員研修教材「障がいのあるお客様への対応から、人を大切にする接客を学ぶ」  事業者が、従業員等を対象とした障がい理解の促進や差別解消に関する研修等に自主的に取り組むことを目的として作成した、事例の検討を通じて障がい理解と法内容を理解するための教材です。  カ.DVD「障がいのある お客様との接し方 〜外食の場面を中心に〜」  法の趣旨を理解していただくため、何が差別に当たるか、合理的配慮としてどのような対応が望ましいか等について、基本的な考え方をまとめたDISC1「よく分かる障害者差別解消法」と、障がいのある人との接し方や対応するときのヒントについてまとめたDISC2「障がいのあるお客様との接し方〜外食の場面を中心に〜」で構成しているDVDです。  キ.「i-Welcome」“合理的配慮”接客のヒント集  サービス業の事業者に向けて、サービス提供時における「合理的配慮」とは何かを考えるきっかけとなる事例を掲載した接客のヒント集です。(令和5年3月一部改訂)   4.今後の取組み  障がいを理由とする差別の解消は、全ての府民が共に社会の一員として解決すべき課題であり、全体で取り組む必要があります。そのためには、それぞれの主体がそれぞれの立場において、障がい理解を深め、差別解消に向けて具体的に取り組むことが求められています。  府では、広域的な観点から、府民全体での差別解消に向けた取組みの一層の浸透を図るため、府民や事業者が障がい理解を深められるよう工夫した啓発活動を今後も展開していきます。  特に令和3年4月の大阪府障がい者差別解消条例の一部改正により、法においては努力義務とされている事業者による合理的配慮の提供を義務化したことから、主に事業者を対象に合理的配慮についての理解をより進めていくような取組みが求められます。そのためにも、引き続き、事業者が利用しやすいツールの作成を進め、啓発活動に努めていきます。(法においても事業者による合理的配慮の提供を義務化することを主な内容とした改正が行われ、令和6年4月1日に施行されます。)  令和4年度は、新型コロナウイルス感染症対策を行いながらも、できるだけ多くの方に啓発することができるよう工夫を行いました。府民や事業者を主な対象とする啓発のためのイベントについては、会場開催とオンライン配信を組み合わせて実施しました。  引き続き、公民連携の取組みや、障がい福祉分野と他分野との連携などの拡充を図ることで、障がい者差別のない社会を構築し、障がいのある人もない人も暮らしやすい共生社会が実現できるよう、取り組んでいきます。  府内市町村に対しては、特徴ある啓発活動についての情報共有や啓発物の提供等を通じて、市町村による啓発の支援に取り組みます。また、支援地域協議会の設置等を契機に、地域におけるネットワークを広げ、お互いにできることを少しずつでも実行していく取組みの実現に向け、市町村へ助言を行う等の支援を継続していきます。    おわりに   本報告書では、広域支援相談員が令和4年度の1年間に受けた相談について分類・整理すると共に、助言型合議体における議論の結果や大阪府が実施した市町村に対する支援や啓発活動について課題や取り組み内容を記載しました。  条例施行以来、広域支援相談員は障がいを理由とした差別に関する相談に対応してきましたが、この7年間で対応した相談件数は1,000件を超えました。ここ数年間は、新型コロナウイルス感染症の影響により社会活動が制限されたこともあり、年間の相談件数は令和元年度に比べると少ない状況が続いていますが、令和5年5月8日から、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の五類感染症に位置付けられたことに伴い、社会活動が活発となり、相談件数も増加すると予想されます。  このような中、令和5年3月17日には、改正障害者差別解消法の施行日が令和6年4月1日に定められ、法改正に基づく基本方針の変更も閣議決定されました。改正法の大きな変更点は、事業者による合理的配慮の提供が全国的に法的義務となることですが、加えて、地方公共団体には差別を解消するための支援措置の強化として、相談や紛争の防止等のための体制整備や事例等の収集に努めることが求められており、改定後の基本方針にも項目が追記されました。  大阪府においては、令和3年の条例改正により事業者による合理的配慮の提供はすでに義務となっていますが、広域支援相談員が対応した相談事案では、事業者が法や条例を知らないことも多く、改正法施行に向けて、さらに事業者への周知・啓発に取り組む必要があります。また、改正法や改定された基本方針で、国・都道府県・市町村の役割分担・連携協力により相談対応等を行うことが明確化されており、大阪府としては引き続き、市町村への助言や広域的・専門的な事案についての支援や連携を行ってまいります。  また、2025年大阪・関西万博の開催に向け、大阪・関西万博推進本部会議では万博会場外においてもユニバーサルデザインの推進とともに、誰もが快適に利用できる宿泊施設や観光・集客施設、飲食店の拡大、情報アクセシビリティの確保をはじめとした事業者や府民理解の促進、誰もが円滑に移動できるよう交通機関や道路等における環境整備の推進を目指して取り組みを推進することとしております。その中で法や障がい理解について研修等を実施することで、府民や事業者へ周知をはかり、誰もが快適に過ごせる大阪府の実現に取り組んでまいります。    参考資料    参考資料1 相談事例の分類の考え方及び広域支援相談員の対応  対応実績の集計にあたって、相談事例の分類や整理の考え方および広域支援相談員の対応については、合議体における意見等をふまえ、次のとおり整理。現時点における分類や整理の区分等の考え方は、以下のとおりだが、今後も障害者差別解消協議会及び合議体の意見を踏まえ、随時見直し、改善を図ることとする。  1.「相談類型」における整理  相談類型は広域支援相談員の対応をへた上で以下の8つの定義にそって整理して分類。なお、相談対応中で未整理の段階では、主訴等を参考に暫定的に分類しておき、後日整理できた時点で改めて確定させる取扱いとしている。  (1)不当な差別的取扱い  調査の結果、不当な差別的取扱いに該当するもの、又は不当な差別的取扱いに該当するおそれのあるもの。  (2)合理的配慮の不提供  調査の結果、合理的配慮の不提供に該当するもの、又は合理的配慮の不提供に該当するおそれのあるもの。  (3)不適切な行為  調査の結果、(1)(2)の障害者差別解消法の差別類型には該当しない(おそれも含む)が、差別的・不適切な行為があったと思われるもの。  (4)不快・不満  調査の結果、差別的・不適切な行為があったことを確認できないが、相談者が差別的と捉え、不快・不満があったもの。  (5)環境の整備  環境の改善を求めるもの。  (6)その他相談・意見・要望等  相談者が差別的と捉えているが、相談者の調査拒否等により、事実関係を確認できないもの。  障がい者差別以外の相談、意見、要望に類するもの。  年金や給付金等他制度への不満・苦情を要因とするもの。  (7)問合せ  庁内、市町村、他府県等からの相談や情報提供で、(1)から(5)以外のもの。  (8)虐待  障がい者虐待に該当すると思われるもの。  (9)その他  上記に分類できないもの。  2.広域支援相談員の活動手法  広域支援相談員が相談事案を受理した際の対応については、次のように活動手法を整理。  (1)調整   広域支援相談員が、相談事案の解決に向け、下記の3類型のいずれかをおこなった場合など。  ア.自主解決型  相談者と関係事業者の相互の考え方について、広域支援相談員が整理して伝達等することにより、自主的な解決の方向に向かったもの。  イ.助言型  相談者と関係事業者の相互の考え方について、広域支援相談員が整理して伝達することに加え、障害者差別解消法の趣旨等の説明や対応等への助言を行ったもの。  ウ.指導型  相談者と関係事業者の相互の意思、意向、考え方について、広域支援相談員が整理して伝達することに加え、障害者差別解消法の趣旨等の説明等を行い、さらに障害者差別解消協議会(合議体)の助言を踏まえた見解を明示するなど、広域支援相談員が指導的な助言を行ったもの。  この3類型に該当しないものの、市町村や各所管行政機関、専門的相談機関等と、それぞれの対応や改善方策の具体的な調整、関係者間の話し合いの場の設定も調整に含むものとする。  相談員が、現地調査や事業所等に出向き事実関係の確認等を行った場合、調査・調整・啓発等を同時に行い、相談者にも報告しているため、調整とする。  (2)調査  広域支援相談員が、電話等での関係事業者への事実の聞取りを詳細に行い、資料の収集等により相談内容の事実を確認した場合等。  (3)助言  広域支援相談員が、相談者、市町村又は関係事業者等に対し、相談事案の解決に向け、具体的な対応や改善方策等の助言を行った場合等。  (4)情報提供  広域支援相談員が、相談者又は市町村に対し、制度の説明や関係機関の紹介、事実に関する事項の情報を提供した場合等。  (5)情報共有  広域支援相談員が、市町村や府庁内や関係機関等に対し相談事案について事実に関する事項の情報共有・交換・伝達・引継ぎを行った場合等。  (6)問合せ  市町村、府庁内等から、差別事案に該当するか、同様の相談事案があるか等についての問合わせ等があるが、詳細についてまで言及がないもの。  (7)傾聴・伝達  受容的・共感的態度で相談者の話を聴き、相談者が自分自身の考えを整理し、納得のいく結論や判断に到達するよう支援した場合等。  事業者に、相談者の差別的であると感じた思いや意向を伝えた場合等。  (8)その他  上記以外の対応   参考資料2 合議体での事例検討様式(令和4年度使用)  下記に、様式に記載する項目を列記します。  相談事例主題  (1)受付  受付日時、受付方法 来所・電話・書面(手紙・文書・ファックス・メール)・その他  (2)相談分野の区分  商品サービス、福祉サービス、医療サービス、公共交通機関、住宅、教育、雇用、行政機関、その他  (3)相談者の属性  市町村、障がい者本人、家族、支援者、事業者、他機関、その他、不明  (4)障がい者の状況  年齢、性別、  障害種別 身体(視覚・聴覚等・盲ろう・肢体不自由・その他)、知的、精神、発達、難病、その他、不明、不特定  障害の確認 手帳の所持、診断書、本人の申し出、その他  (5)相談申出者の主訴  (6)相談への対応・経過  (7)対応結果  その後の状況を確認した場合はその内容を含む  (8)相談員の所見及び確認したいポイント  (9)事案の検討・分析  参考:基本方針、大阪府障がい者差別解消ガイドライン  ア.不当な差別的取扱いかどうか  (ア)商品やサービス等の提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりしているか  拒否、制限、条件付け  上記3つのうちいずれかに該当する(根拠)  (イ)「障がいを理由として」いるか  a.「障害を理由として」に該当するか  直接障害を理由とするだけではなく、関連する事由(車いす、補助犬その他の支援器具等の利用、介助者の付添い等の社会的不利を補う手段の利用等)を理由とする場合を含む  b.上記に該当する(根拠)    (ウ)「正当な理由」があるか  a.(根拠)  b.「正当な理由」があると判断した場合、相手方は障害者にその「正当な理由」を具体的に説明すること、理解を得るように努めたか。     イ.合理的配慮の不提供かどうか  (ア)障がい者(本人・家族・支援者等)はどのような配慮を求めたか  a.求めた配慮の内容、誰が、どのように「意思の表明」を行ったか等  b.「意思の表明」がなかった場合は、「合理的配慮の不提供」には当たらないが、配慮を必要としていることが明らかだった場合、障がい者と話し合い、適切な配慮を提案するなど自主的な配慮に努めたか  c.「環境の整備」の状況  当時の環境の整備の状況(ハード面でのバリアフリー化、情報の取得、利用・発信におけるアクセシビリティ、職員研修等)  (イ)求められた配慮に対して、行われた対応はどのようなものか  a.対応の類型   物理的環境への配慮、意思疎通の配慮、ルール・慣行の柔軟な変更、その他  b.対応の内容  c.対応にあたっての観点  (a)障がい者の性別、年齢、状態等に配慮したか。  (b)代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解があったか。  (c)対応は、必要かつ合理的な範囲で柔軟におこなわれたか。  (d)根拠  (ウ)求められた配慮に対して、行われなかった対応があるか  a.対応の類型  物理的環境への配慮、意思疎通の配慮、ルール・慣行の柔軟な変更、その他  b.対応の内容  c.対応の内容  d.対応にあたっての観点  (a)障がい者の性別、年齢、状態等に配慮したか。  (b)代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解があったか。  (c)対応は、必要かつ合理的な範囲で柔軟におこなわれたか。  (d)根拠  (エ)求められた配慮が基本方針記載の留意内容に抵触しているか。  a.その概要と判断  (オ)「過重な負担」が生じていたか  「過重な負担」が生じるため合理的配慮の不提供に当たらないとした理由  a.事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)  b.実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)  c.費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況  d.根拠  ウ.不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供には当たらない場合  a.不適切な行為、不快・不満、その他相談・意見・要望等、問合せ、虐待、その他  b.上記項目とする根拠   参考資料3 広域支援相談員と大阪府障害者差別解消協議会  1.広域支援相談員  (1)根拠  障害者差別の解消に関する知識経験を有する者の中から、知事が任命(大阪府障害者差別解消条例第8条)  (2)身分等  地方公務員法に基づく一般職の地方公務員(非常勤職員)     (3)職務  (ア)市町村の相談機関における相談事案の解決を支援するため、必要な助言、調査、相談事案に関する関係者間の調整を実施  (イ)障害者等や事業者からの相談に応じ、相談機関と連携して、必要な助言、調査、相談事案に関する関係者間の調整を実施  (ウ)相談機関相互の連携の促進、相談事案に係る情報の収集及び分析  (4)責務  中立かつ公正に職務を遂行  2.大阪府障がい者差別解消協議会(以下、解消協議会とする。)  (1)構成  委員20人以内(専門事項を調査審議させるために、専門委員を若干置くことができる)  委員は、障がい者、障がい者の自立と社会参加に関する事業に従事する者、学識経験者、事業者等から知事が任命  障がい者団体代表7人、事業者7人、学識経験者3人、権利擁護関係者3人  オブザーバーとして、国の機関(法務局、労働局・運輸局)及び市町村代表が参画  会長は関川 芳孝 大阪公立大学大学院 現代システム科学研究科兼現代システム科学域教育福祉学類教授  (2)担任事務  (ア)法規定事務(解消協議会は、法第17条の支援地域協議会の機能を担う。)  a.情報交換、相談及び事例を踏まえた取組に関する協議  b.構成機関等に対し、情報の提供、意見表明その他必要な協力の求め   (イ)条例規定事務  a.知事が諮問する差別解消の推進に関する事項への意見申述べ   b.知事に対し、正当な理由なくあっせん案に従わない者等への勧告の求め  c.知事が正当な理由なく勧告に従わない者を公表しようとするときの意見申述べ  d.合議体を設置し、紛争事案や相談事案に対応  3.合議体の運営  (1)担任事務  (ア)広域支援相談員による解決が難しい場合、紛争の解決をするためのあっせんを実施   あっせん実施型の合議体  (イ)相談状況の総合的な分析・検証を行い広域支援相談員への助言を実施   助言・検証実施型の合議体  (2)構成等  会長が、委員及び専門委員の中から分野や障がい種別等を踏まえた事案に応じて5人を指名   参考資料4 大阪府障がい者差別解消協議会  1.委員名簿  以下、令和5年3月時点での氏名、所属及び職名の順に、委員及びオブザーバーを記載します。(五十音順)  大竹 浩司 公益社団法人大阪聴力障害者協会会長  大野 素子 公益社団法人大阪府精神障害者家族会連合会会長  小田 浩伸 大阪大谷大学教育学部長教授  坂本 ヒロ子 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会理事長  塩見 洋介 障害者(児)を守る全大阪連絡協議会特定非営利活動法人大阪障害者センター事務局長  柴原 浩嗣 一般財団法人大阪府人権協会業務執行理事兼事務局長  関川 芳孝 大阪公立大学大学院現代システム科学研究科兼現代科学域教育福祉学類教授  橋 あい子 一般財団法人大阪府視覚障害者福祉協会会長  辻川 圭乃 弁護士  堤添 隆弘 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会 地域福祉部 権利擁護推進室 室長  寺田 一男 一般財団法人大阪府身体障害者福祉協会会長  長尾 喜一郎 一般社団法人大阪精神科病院協会会長  南條 正幸 関西鉄道協会専務理事  西尾 元秀 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議事務局長   林 幹二 日本チェーンストア協会関西支部事務局長  久澤 貢 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会セルプ部会副部会長  福島 豪 関西大学法学部教授  前川 たかし 一般社団法人大阪府医師会理事  藪本 青吾 大阪私立学校人権教育研究会 障がい者問題研究委員会委員  (オブザーバー)  大阪法務局人権擁護部第二課長  大阪労働局職業安定部職業対策課長  近畿運輸局交通政策部バリアフリー推進課長  市長会代表市 担当課長  町村長会代表町村 担当課長  2.専門委員名簿  以下、令和5年3月時点での氏名、所属及び職名の順に記載します。  大下 芳典 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会セルプ部会部会長  岡村 武彦 一般社団法人大阪精神科病院協会理事  小澤 佳代子 特定非営利活動法人大阪難病連理事長  河辺 豊子 一般社団法人大阪自閉スペクトラム症協会理事  阪本 栄 一般社団法人大阪府医師会副会長  田垣 正晋 大阪公立大学大学院現代システム科学研究科現代システム科学域教育福祉学類 教授  田中 直人 島根大学総合理工学部客員教授  田中 米男 一般財団法人大阪府身体障害者福祉協会副会長  中鹿 直樹 立命館大学総合心理学部准教授  東野 弓子 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会理事  古田 朋也 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議議長  細井 大輔 弁護士   宮脇 淳 一般社団法人大阪脊髄損傷者協会理事  山本 深雪 大阪精神障害者連絡会代表   参考資料5 大阪府障がい者差別解消協議会・合議体の開催状況  以下、会議名、開催日、議題等の順に記載します。また、「大阪府障がい者差別解消協議会」を「解消協」、「大阪府障がい者差別解消条例」を「条例」と記載します。  第18回解消協  令和4年6月23日  1.会長の選出について  2.令和4年度 合議体の運営について  3.障がい者差別解消に向けた大阪府の活動報告書(案)について  4.その他  (1)府内市町村の状況について  第1回 合議体  令和4年10月5日  ・広域支援相談員の受け付けた相談事例への助言について  第2回 合議体  令和5年2月15日  1.広域支援相談員の受け付けた相談事例への助言について  第19回解消協  令和5年3月8日  1.障がい者差別解消に向けた大阪府の活動報告書(案)について  2.その他     参考資料6 令和4年度府内市町村における支援地域協議会の設置状況について(令和5年4月1日現在)  各市町村ごとの障害者差別解消支援地域協議会の設置について、設置済みまたは設置予定、検討中のいずれかで示しています。また、設置済み又は設置予定の場合は時期を示しています。  大阪市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年4月  堺市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年4月  岸和田市 支援地域協議会、設置済み、設置時期平成28年11月  豊中市 支援地域協議会、設置済み、設置時期平成28年7月  池田市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年8月  吹田市 支援地域協議会、設置済み、設置時期令和元年4月  泉大津市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年11月  高槻市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年8月  貝塚市 支援地域協議会、設置済み、設置時期平成28年6月  守口市 検討中  枚方市 支援地域協議会、設置済み、設置時期平成28年4月  茨木市 支援地域協議会、設置済み、設置時期平成30年8月  八尾市 既存の協議会等を活用、設置予定、未定  泉佐野市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年4月  富田林市 検討中  寝屋川市 支援地域協議会、設置済み、設置時期令和2年4月  河内長野市 検討中  松原市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成29年4月  大東市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年3月  和泉市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年8月  箕面市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成31年1月  柏原市 検討中  羽曳野市 検討中  門真市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成30年3月  摂津市 検討中  高石市 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成29年4月  藤井寺市 検討中  東大阪市 支援地域協議会、設置済み、設置時期平成28年4月  泉南市 検討中  四條畷市 支援地域協議会、設置済み、設置時期平成28年11月  交野市 検討中  大阪狭山市 検討中  阪南市 検討中  島本町 検討中  豊能町 検討中  能勢町 検討中  忠岡町 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年11月  熊取町 検討中  田尻町 既存の協議会等を活用、設置済み、設置時期平成28年4月  岬町 検討中  太子町 検討中  河南町 検討中  千早赤阪村 検討中  各項目の合計(府内43市町村)  障害者差別解消支援地域協議会の設置について  支援地域協議会設置済み 9市  支援地域協議会設置予定 なし  既存の協議会等を活用して設置済み 14市町  既存の協議会等を活用して設置予定 1市  検討中 19市町村   条例制定状況について  茨木市 平成30年4月茨木市障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例制定  他42市町村 予定なし  12月3日から9日は「障がい者週間」です。  「障がい者週間」とは、障がいの有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、国民の間に地域社会での共生や差別の禁止等に関する理解を深めるとともに、障がい者が社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動への参加を促進することを目的として、障害者基本法に定められています。  「ヘルプマーク」  外見からはわからない援助や配慮を必要としている方のためのマークです。 このマークを見かけたら、電車内で席をゆずる、困っているようであれば声をかける等、思いやりのある行動をお願いします。  (お問い合わせ先)  大阪府福祉部 障がい福祉室 障がい福祉企画課 権利擁護グループ  〒540-8570 大阪市中央区大手前3丁目2−12別館1階  電話 06-6944-6271 ファックス 06-6942-7215           (相談窓口)  大阪府広域支援相談室  業務時間:平日10時から17時まで  (土日祝、年末年始(12月29日から1月3日)はお休みです。)  Eメール・ファックスでのご相談に対しては、翌業務日以降に対応させていただきます。  電話 06-6944-0721   Eメール sabetsu-soudan@gbox.pref.osaka.lg.jp  ファックス 06-6942-7215