資料2−1 令和3年度 障がい者差別解消に向けた大阪府の活動報告書(概要)  令和3年度に大阪府に寄せられた相談事案について整理・分類した。  2年ぶりに「助言・検証実施型」の合議体を開催し、広域支援相談員が対応に苦慮した4事案について、その対応の検証を実施した。  府内市町村への支援や啓発活動も含めた障がい者差別解消の取組みと課題について取りまとめた。   1 広域支援相談員の体制等と相談対応  1.広域支援相談員の体制と役割  広域支援相談員の職務  丁寧で質の高い相談対応と、市町村への的確な助言等を行うため、情報共有と相談員間の連携強化を図る。  (日々のケース進捗や市町村支援の取組みに関する日報作成、定期的なミーティングによるケース検討)  また、様々な専門性を有する合議体から助言をもらう仕組みとなっており、それによって相談員の対応力の向上が図られている。  法や条例の周知に伴う相談事案の複雑化・多様化に加え、新型コロナウイルス感染症の影響によって発生したと考えられる事案もあり、さらなる専門性や調整力、対応力が必要。  ひきつづき、広域支援相談員の人材育成や、市町村に対する幅広い支援を行うための人材確保が課題。  2.広域支援相談員の対応実績(2021年4月1日から2022年3月31日)  新規事案件数は157件(令和2年度からの継続件数2件と合わせ実相談件数159件)(前年度の新規事案件数は148件)  対応回数は1,123回と前年度より減少(前年度の対応回数は1,713回)、平均対応回数は1件あたり7.1回。  「不当な差別的取扱い」は7件(前年度9件)で、「合理的配慮の不提供」は23件(前年度5件)。「不適切な行為」は4件(前年度16件)であり、法上の差別に該当しない事案についてもキャッチし対応。  3.広域支援相談員の対応した相談事例等  広域支援相談員の対応した相談のうち「不当な差別的取扱い」「合理的配慮の不提供」「不適切な行為」「不快・不満」「環境の整備」に該当すると思われるものを紹介。コロナ禍の影響により発生したと思われるものに印をつけた。   2 合議体における助言・検証の実施  1.広域支援相談員の相談対応  「合議体での主な意見」  対応に困った際には、事業者団体のキーパーソン、外部の専門職、障がい者団体、解消協の委員等の協力や助言を求めてもいいのではないか。  調整にあたっては、同業の事業者の具体的な取組例を紹介して、事業者に検討してもらうことが有効。  「府における整理と課題」  建設的対話に消極的な事業者等との調整においては、事業者団体等さまざまな機関と連携しながらアプローチ方法を検討。  具体的な取組例を事業者に示し検討してもらうことが有効と考えられるため、今後も事例の蓄積や情報収集を実施。  2.相談の分類と整理  「合議体での主な意見」  「合理的配慮の範囲ではない」と明らかに言えない場合は、いったん合理的配慮の問題として捉え、その上で過重な負担にあたるか、均衡を失した対応になっていないか等を考えるといいのではないか。  「府における整理と課題」  合理的配慮にあたるか判断が難しい場合でも、相談対応においては、社会モデルに照らし合理的配慮を広めに解釈して、過重な負担に当たるかどうかの検討や、代替措置の検討等を行う。  3.合議体による「あっせん」の考え方  「合議体での主な意見」  事業者が頑なに対応を拒む場合などは、広域支援相談員から事業者に対し、障がい当事者によるあっせん申立ての可能性を示すことが考えられる。  広域支援相談員が事業者に対し、当事者によるあっせん申立ての可能性を示そうと思えるためには、合議体の質を高めていく必要がある。  「府における整理と課題」  当事者によるあっせん申立ての可能性を事業者に示唆することも視野に入れて、広域支援相談員は対応を行う。  合議体の質の向上のために、合議体での議論の内容について委員等と共有を行うとともに、解消協での事例の共有や検討を行う。  4.今後の課題  障がい者を考慮せずに社会の仕組みが作られていることが一因と思われる事案もあるため、社会モデルの考え方も含めた法の理念や内容、障がい理解の促進に取り組んでいくことが必要。  広域支援相談員が相談対応した事例の蓄積は進んでいるが、調整の具体的手法の共有が難しい状況。相談対応のノウハウをいかに積み上げて共有していくことができるのか検討が必要。   3 合議体におけるあっせんの実施   あっせんの申立てが1件あり、合議体で計4回の検討を実施。障がい者が受けた不利益の改善や今後の障がい者差別解消につながる方策の検討に重点を置いて議論し、年度末にあっせん案を提示。   4 府内市町村に対する支援の取組み  1.市町村支援における課題  (1)相談対応  相談事例や対応ノウハウの蓄積はまだ十分とは言えず、市町村の相談窓口の周知も足りていない部分がある。  (2)支援地域協議会の設置・運営  事案が少なく、予算・人員も限られているなかでの設置に向けた工夫が必要。また、すでに設置している自治体においても、どのように運営すれば良いのか悩ましいといった意見も聞かれる。  2.府内市町村に対する支援の取組み  (1)情報交換会の実施  相談員が各市町村に出向いた際に情報交換や助言を実施。また、オンライン情報交換会を実施し、情報交換や意見交換だけでなく、広域支援相談員と担当職員が顔の見える関係づくりにも取り組んだ。  支援地域協議会設置・運営促進の取組みとして、オンライン情報交換会で、地域協議会未設置の市町に対して、まずは周知啓発方法について考えたり、他の自治体で発生した事案について話し合うなどの形でスタートし、相談事案が出てきた際に対応できる体制づくりを進めることについて提案するなど設置に向けた働きかけを行った。  (2)その他  内閣府主催の障害者差別解消支援地域協議会に係る体制整備・強化ブロック研修会への参加を呼びかけた。   5 障がい理解に関する啓発の取組み  大阪ふれあいキャンペーン、共に生きる障がい者展、心の輪を広げる障がい者理解促進事業、大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度、ヘルプマークの周知・普及、心のバリアフリー推進事業、事業者団体等への研修の実施、大阪府が作成した啓発物の配布  これまで紙媒体やイベントによる周知啓発が主な取組みであったが、令和3年度はSNSやオンライン動画なども活用した啓発にも取り組んだ。   6 まとめ  令和3年度も前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症の影響と考えられる相談が少なからず寄せられた。  令和3年4月からは府条例が改正され、府内において事業者による合理的配慮の提供が義務化された。また、令和3年6月には改正障害者差別解消法が公布され、その中では地方公共団体において障がいを理由とする差別に関する相談に対応するための人材育成・確保や情報収集・整理等が新たに求められている。このような状況に対応するために自治体として、対応力向上等に引き続き努めてゆく。  啓発については令和3年度よりオンラインによる取組みを始めた。コロナ禍の有無にかかわらず、またこれまでの方法では啓発が届かなかった層に対してもアプローチしていくことができるよう、取組みを模索してゆきたい。