資料2−1 令和元年度 障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書(概要)    広域支援相談員の相談事例等の分析から  「助言・検証実施型」の合議体における広域支援相談員の相談事例等の総合的な分析  府内市町村への支援や啓発活動も含めた障がい者差別解消の取組みと課題を検証   1広域支援相談員の体制等と相談対応  1.広域支援相談員の体制と役割  広域支援相談員の職務  丁寧で質の高い相談対応と、市町村への的確な助言等を行うため、情報共有と相談員間の連携強化を図る(日々のケース進捗や市町村支援の取組みに関する日報作成、定期的なミーティングによるケース検討)  また、様々な専門性を有する合議体から助言をもらう仕組みとなっており、それによって相談員の対応力の向上が図られている  法や条例の周知に伴う相談事案の複雑化・多様化を見込まれることから、さらなる専門性や調整力が必要  広域支援相談員の人材育成や、市町村に対する幅広い支援を行うための人材確保が課題  2.広域支援相談員の対応実績(2019年4月1日から2019年12月31日まで)  新規事案件数は151件(2019年継続件数2件と合わせ実相談件数153件)  (前年度4月から12月まで 新規133件)  対応回数は860回と前年度より減少(前年度4月から12月まで 980回)、平均対応回数は1件あたり5.6回。  不当な差別的取扱いは4件で(前年度14件)、合理的配慮の不提供は15件(前年度14件)。  「不適切な行為」は29件(前年度29件)であり、法上の差別に該当しない事案についてもキャッチし対応。   2合議体における助言・検証の実施  1.広域支援相談員の相談対応  合議体での主な意見  広域支援相談員の業務は、合理的配慮の不提供か否かを判断することではなく、障がいのある方がサービス等を利用できるよう、事業者への働きかけや調整を行うことである。  府における整理と検証  障がいのある方の機会平等の確保に向け、当事者間の建設的対話を促し、双方が納得する配慮の手法・対応が見いだせるよう、調整等を行う。  2.相談の分類と整理  合議体での主な意見  合理的配慮は「思いやり」や「優しさ」ではなく、障がいのある方にとって正当な権利として申し出るもの。機会平等の立場から、配慮することの合理性・妥当性を検討することが必要。  合理的配慮の提供にあたり、一般的・抽象的な安全確保という点だけで障がいのある方の社会参加の機会を奪うことは正当化できず、法の理念が損なわれる。  施設の環境整備は根本的な課題として検討すべき。  府における整理と検証  合理的配慮の考え方に照らし合わせ、社会で認識の共有を図っていけるよう、今後も様々な事例の検証を積み重ねるとともに、啓発に取り組む。  3.合議体による「あっせん」の考え方  合議体での主な委員意見  合議体は、当事者双方を合意形成に導くことが役割であり、合理的配慮の不提供か否かの判断を行う機関ではない。  当事者間の合意がない場合、合議体が解決策を提示するかどうかは事例ごとに判断すべき。合議体が提示する解決策で当事者が合意すれば、それがあっせん案として成立する。  事案によっては、意見が対立している当事者に解決策を提示する場合も想定されることから、今後も様々な事例を積み重ね、分析・検証し、解消協委員、専門委員等の理解を深めていく。  4.今後の課題   事業者側の障がいや社会モデルの考え方、合理的配慮の理解の欠如といった要因により紛争に至る事例が複数あることから、社会モデルの考え方も含めた法の理念や内容、障がい理解の促進に取り組んでいくことが必要。  「あっせん」については、具体的なスキームの検証や、あっせん案を作成するにあたって想定すべき事項などについて、議論と検証が必要。   3府内市町村に対する支援の取組み  1.市町村支援における課題  (1)相談対応  相談窓口の周知を図るとともに、市町村の相談事例のキャッチ力や対応力の向上が求められる  (2)支援地域協議会の設置  地域協議会の設置促進を図るとともに、有意義な会議体となるための運用の工夫が必要  2.府内市町村の取組みに向けた支援  (1)出張情報交換会の実施  相談員が各市町村に出向き、情報交換や助言を実施。  (2)研修の実施  市町村職員を対象とした権利擁護に関する研修を実施。  (3)支援地域協議会設置・運営促進の取組み  出張情報交換会で、地域協議会未設置の市町村と、現状・設置にあたっての課題を意見交換し、設置意義や設置済市町村の地域協議会のスキームや運営のアイディア等を提示し、設置に向けた働きかけを行った。  内閣府「地域協議会体制整備・強化ブロック研修会」(西日本ブロック)を大阪府で実施し、更なる設置促進や取組みの充実に向けた検討を行った。   4障がい理解に関する啓発の取組み  大阪ふれあいキャンペーン、共に生きる障がい者展、心の輪を広げる障がい者理解促進事業、大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度、ヘルプマークの周知・普及、心のバリアフリー推進事業、事業者団体等への研修の実施、啓発物の配布  事業者や府民が障がい理解を深められるよう、工夫した啓発活動を展開するとともに、市町村への様々な情報提供等を通じて市町村による啓発活動を支援する。   5まとめ  障がい者差別の解消のためには、事例の蓄積を活かしながら「気づく」力を身に付けることが第一歩。  府民や事業者に対して「気づき」を促すことが、紛争防止や合理的配慮の提供につながり、「建設的対話」の文化を醸成。  事例を通して、障がい者や事業者、多様な分野の関係機関が関わり合うことが、障がい者差別への気づきや、障がい理解につながっていく。  身近な相談窓口である市町村は、多種多様な問題が混在する相談の中から差別に気づくとともに、差別以外の相談についても適切な機関につなぐといった対応が求められる。  差別に「気づく」力を向上させ、様々な関係機関とがネットワークを構築し、その構成員が主体的な役割を果たすことで、障がい者差別を解消することが求められる。