資料3−3 平成30年度 合議体(3月)において検証した相談事案について   株主総会における障がい者への対応について   1 相談の内容  市より相談。身体障がい者が、介助者同伴で株主総会に参加しようとしたところ、「定款の規定により介助者の入場はできないため、社員が介助を行う」旨を会社から説明された。本人が強く抗議し、最終的には介助者とともに総会参加ができたものの、会社側の対応が不適切だったとして、市に相談があった。本件の対応について、市から広域支援相談員に支援依頼があったもの。   2 相談員の対応概要  会社に確認したところ、同伴者は原則入場できないが、本人が強く抗議をしたのでやむをえず、介助者同伴で参加されたものであり、本来であれば介助者同伴を認めるべきではなかった、という認識であった。ただし、今回の件にかかわらず、社会の流れを鑑みて、今後は同伴者を認める方針であるとのこと。会社との話し合いにおいて、障がい者や介助者に関する理解不足が見受けられたことから、社員の障がい理解のための働きかけを行なった。(対応継続中)   3 論点  1.株主総会は、障害者差別解消法第8条の規定上、どのように整理されるか。  2.株主総会のルールにより、介助者が株主総会に入場できず、その結果、障がいのある株主が総会に参加できなかった場合、不当な差別的取扱いに当たるのか。  3.会社は、「株主以外は株主総会に参加することはできない」というルールを変更するという合理的配慮をすべきだったか。   4 分類  不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供、不適切な対応   5 相談内容の分類と整理に関する助言  1.障害者差別解消法第8条の条文では、「その事業を行うに当たり」と記載されていることから、一般的なサービス提供事業者の位置づけとは異なり、株主総会は事業として行なっているというより、株主という限定された参加者による組織内部の運営であるため、顧客対応とは区別して考える必要はないか。  2.ただし、株主総会が法第8条の適用対象ではなかったとしても、法の趣旨からすると、顧客であろうと株主であろうと、差別をしてはいけないということに変わりはない。  3.株主総会は会社にとってはまさに「事業」であり、法第8条が適用されるものと思われる。そのため、本件についてあっせんの申出があった場合は、あっせんを受け付けて対応することが考えられる。  4.原則として株主には総会へ参加する権利があることから、障害者差別解消法がある以上、介助者同伴であることを理由に総会への参加を認めないという対応は、大阪府障がい者差別解消ガイドラインの考え方に即しても、不当な差別的取扱いに該当すると言えるのではないか。  5.本件の場合には、結果的に参加ができたとはいえ、「参加した/しなかった」という問題で線引きするのではなく、最初に介助者の同伴を拒否した時点で、障がい者差別と言えるのではないか。  6.合理的配慮の不提供に関する事案というより、環境の整備に関する事案とも考えられるのではないか。   6 事業者側の対応に関わる意見  1.株主は共益権(議決権)を有しているが、無制限に行使できるものではなく、株主総会が有する議事整理権によって制限されていることがある。しかし、議事整理権は、いわゆる総会屋が、これまで総会を混乱させてきた経緯をふまえて規定された権利であり、会社側の懸念については一定理解できるものの、その懸念をもって介助者は原則入場できないとすることは適切ではないのではないか。  2.介助者の同伴により総会が混乱するのではないかという会社側の抱える抽象的な恐れは理解できるものの、抽象的な不安では、株主総会に参加する権利を制限する正当な理由とはいえず、その恐れの解消を図るのであれば、介助者であることがわかるよう工夫する、事前に介助者同伴か否かを確認する、介助者には発言権を認めないようにするなど、介助者が同伴する場合のルールや手続を予め規定すれば、解決できるのではないか。  3.介助者を認めるか否かの判断は、その会社の規模や、これまで総会屋により議事が混乱をきたした経過がどれほどあるのかによって事情が異なるものと考えられる。この判断は、株主総会を運営する側の権利を優先しているものでは決してなく、総会が株主に会社の事業の評価や理解を得る場であることを前提にするものであるが、今までに会社が想定していなかった株主総会への参加のケースが生じてきていることから、会社は株主総会の運営の在り方について検討していく必要があると思われる。  4.株主総会に、介助者を同伴した株主の参加を認めない場合、株主が有する議決権が行使できないことから、総会決議が取消または無効といわれるリスクがある。  5.原則、介助者は同伴できないとの説明だけでは、本人に対する説明として不十分であったと思われる。  6.障がい者にとっては、社員が代わりに介助するのではなく、慣れた介助者に対応してもらうことが望ましいことを理解してもらうことが必要だと思われる。  7.このような事例を通して、障がいのある人にも議決権を行使してもらう仕組みが会社の中で作られることは、望ましい方向に進んでいると言えるのではないか。   参考資料   1 障害者差別解消法(事業者における障害を理由とする差別の禁止について)  第8条第1項 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。  第2項 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。   2 会社法(株主の権利について)  第105条第1項  株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。  第1号  剰余金の配当を受ける権利  第2号  残余財産の分配を受ける権利  第3号 株主総会における議決権  第2項  株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。   3 会社法(議長の権限について)  第315条第1項 株主総会の議長は、当該株主総会の秩序を維持し、議事を整理する。  第2項 株主総会の議長は、その命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる。