参考資料1−4 大阪府障がい者差別解消条例に関する運用状況について  大阪府(以下、「府」という。)では、障害者差別解消法(以下、「法」という。)の施行にあわせ、大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例(以下、「条例」という。)を平成28年4月に施行しました。  条例施行から3年、府では、条例に基づき、法の趣旨の普及や障がい理解を促進する啓発活動に取り組むとともに、広域支援相談員(以下、「相談員」という。)の配置や、知事の附属機関である「大阪府障がい者差別解消協議会(以下、「解消協」という。)の設置、解消協の下に組織した合議体における相談事例等の分析・検証など、条例に基づく相談及び紛争の防止又は解決のための体制整備を進めてきた。  今年度、条例附則の施行後3年を目途とした見直し検討規定を踏まえ、条例に基づき取り組んできた啓発活動と相談体制等の整備の取組状況や課題などについて、条例運用状況に関するワーキングを設置し、幅広い意見を聴取・整理した。  (参考)条例附則  1(略)  2 知事は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。  3 前項の検討に当たっては、法第8条第2項に規定する配慮の実施状況について特に留意するとともに、必要があると認めるときは、この条例の施行後3年以内においても速やかに当該配慮の義務付けの在り方も含めた見直しを検討するものとする。    1 条例に関する運用状況整理の手法   1.ワーキングの構成  (1)条例運用状況に関するワーキング  ワーキングの企画や各ワーキング・セッション間の調整  障がい者差別解消協議会に報告するため、各ワーキング・セッションにおける議論の整理  以下、ワーキング構成員について順に、氏名、所属の順に記載します。(五十音順、敬称略)  関川 芳孝 大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科兼地域保健学域教育福祉学類教授  たがき まさくに 大阪府立大学 人間社会システム科学研究科兼地域保健学域教育福祉学類教授  福島 豪 関西大学法学部 教授    (2)相談体制等ワーキング・セッション  1 相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備  相談員の機能・役割  合議体の機能・役割  解消協の機能・役割  府による市町村への助言等の機能・役割  2 事業者における合理的配慮の提供  事業者における法等の理解に向けた取組みの実施状況  事業者における合理的配慮の不提供についての条例上の取扱い  以下、相談体制等ワーキングセッションの構成員について、氏名、所属の順に記載します。(五十音順、敬称略)  倉町 公之  公益社団法人大阪府精神障害者家族会連合会 会長  坂本 ヒロ子  社会福祉法人 大阪手をつなぐ育成会 理事長  柴原 浩嗣 一般財団法人大阪府人権協会 業務執行理事兼事務局長  たがき まさくに 大阪府立大学 人間社会システム科学研究科兼地域保健学域教育福祉学類 教授 西尾 元秀  障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 事務局長  福島 豪 関西大学法学部 教授    (3)啓発ワーキング・セッション  3 短期的及び中長期的な啓発活動のあり方  府民の障がいに対する理解の促進  事業者の合理的配慮にかかる理解の促進  以下、啓発ワーキングセッションの構成員について、氏名、所属の順に記載します。(五十音順、敬称略)  こび りゅーいち  社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 常務理事  たがき まさくに  大阪府立大学 人間社会システム科学研究科兼地域保健学域教育福祉学類 教授   永井 文雄  一般財団法人大阪府地域福祉推進財団 事務局次長  2 ワーキング等の開催状況  以下、 ワーキング、 相談体制等ワーキング・セッション 、啓発ワーキング・セッション の順に開催状況を記載します。  ワーキング  第1回  5月28日、第2回  10月1日、第3回 1月28日  相談体制等ワーキング・セッション  第1回 7月17日 相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備について 第2回 9月12日 相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備について  第3回 11月13日 事業者における合理的配慮の提供について  第4回 1月18日 事業者における合理的配慮の提供について  啓発ワーキング・セッション  第1回 7月23日 府の啓発活動の現状と課題 第2回 9月12日 法に沿った啓発のあり方(事業者向け) 第3回 1月7日 法に沿った啓発のあり方(府民向け)  ゲストスピーカーとして府内市町村職員・事業者・障がい者団体の招聘や聴き取りにより、障がい理解の促進に向けた取組みや法の理解状況等について意見聴取した。?    2 条例運用状況の整理   1 相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備  (1)相談員の機能・役割  (3か年の取組状況と自己評価)  府では、相談事案に的確に対応し解決を図るため、平成28年4月より、高度な相談・調整技術と専門性を有する人材として相談員を配置し、市町村における相談事案の解決支援のための助言・調査・調整等や、障がい者等及び事業者から相談員に寄せられた相談への対応等を行っている。  相談員は、条例上の対応の対象範囲外の相談(障がい者差別につながりかねない不適切な行為や、障がい者等が不快・不満に感じるような行為等)にも、当事者の思いに寄り添いながら丁寧に対応してきた。また、相談事案に関し、組織内で情報の共有化を図るための日報の作成や、定期的なミーティングによる事例検討など、相談員間の連携強化により、円滑な相談対応と対応力の向上に努めてきた。 条例施行後3年が経過し、このような取組みや事例の蓄積、合議体からの助言((2)に詳述)により、相談員の対応力は向上しつつある。  今後、相談事案の増加と複雑化・多様化に伴い、より高度な専門性や調整力を有する人材の確保と育成を図っていく必要がある。  (ワーキングの意見のポイント)  市町村の相談体制の質を向上させるという相談員の役割と効果は大きい。  行政(相談員)が紛争解決を図ることの限界は存在。  事業者への制裁を設ける場合、合議体によるあっせんとの2層構造の意味合いが失われる。  事業者の協力義務を条例で規定することも一つだが、第5条との整理が必要。  (ワーキングでの意見概要)  相談員は、直接相談を受ける経験から、相談における心構え・ノウハウを市町村に示すことで、府全体の相談体制の質を向上させるという役割を果たしている。  また、民間の相談窓口では対応できない部分で、相談事案の調整機能を果たしており、その役割と効果が大きいことは、相談件数が年々増加していることからも伺える。  法は、行政指導等で差別事案の解決を図ることを予定しており、判決によって権利の回復を図る裁判所とは解決方法が異なる。相談員は指導的調整も含めた紛争解決の役割を担っているが、行政が紛争解決を図ることの限界は存在する。その「限界」があるなかで、事業者が相談員の提示した解決案を受け入れたのであれば、事業者側の受入姿勢に関係なく、相談員は十分に機能していると評価してよい。  相談対応では、相談員が相談者に対して選択肢を示し、相談者自身が次の方法を決定するというプロセスを踏むことが大切である。  事業者は、相談員の調整に対して当初は消極的姿勢であっても、障がい理解がすすむなかで、対応の改善が図られていくことがある。  事業者に対して指導監督権限のある機関がない場合や、当該機関が「民・民の問題にまで立ち入って指導ができない」とした場合に、法及び条例には、自治体による調査権限を定める規定がないことから、現状では、相談員が事業者に対し調査を十分に行うことができない可能性がある。 条例で相談員に実効性のある調査権限を付与することや、法的意味合いは有さないとしても事業者に対する協力義務規定を設けることは、それによって相談員が活動しやすくなるのであれば、意味がある。  条例に調査協力義務を規定する方法ではなくても、第5条の規定の解釈として、協力義務があることを「大阪府障がい者差別解消ガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)で明確にし、周知する手法も考えられる。  相談員の活動に実効性を担保するためには、事業者が相談員の調査等に頑なに協力しない場合に、最終的に府知事名による勧告・公表を行う仕組みを設け、制裁を与えるという選択肢がある。 しかし、その場合、勧告・公表までに至る手続きを定めることにより、相談員の有する裁量がある程度失われることを考慮する必要があることと、現在、2段階構成での仕組み(相談員による対応と、合議体によるあっせん・府知事名での勧告・公表)を設けている意味合いが失われるため、現行の仕組みを維持するだけでいいのではないか。  (2)合議体の機能・役割  (3か年の取組状況と自己評価)  府では、平成28年4月の条例施行に合わせて、解消協委員及び専門委員から選任される合議体を組織し、法第8条第1項に規定する事項(事業者における不当な差別的取扱い)に係る紛争事案を解決するためのあっせん及び相談員が幅広い相談事案に的確に対応できるよう助言を実施することとしている。  合議体における委員の多様な議論の積み重ねと個々の事例を深く掘り下げた分析は、府の障がい者差別解消の取組みの推進に向けた貴重な財産となっている。  一方で、相談事案の複雑化・多様化などを背景に、相談員が相談対応に当たって合議体からの即時助言を求めるケースの増加が想定される。 今後、相談員の対応力の強化に向け、合議体による助言や検証の取組みを継続しつつ、相談員への助言を一層有効に機能させていくための手法の検討が必要である。  (ワーキングの意見のポイント)  合議体による助言や分析は、相談員の対応力向上につながっており、継続すべき。  合議体には、裁判所のような実効的な紛争解決の権限がなく、限界がある。  即時助言の手法としては、合議体の構成人数を減らし機動的に開催する方法がある。  専門家の非常勤雇用は、個人からの助言であり、透明性の確保や明確な責任の所在、合議体が有する助言機能との整理が課題。  (ワーキングでの意見概要)  「助言・検証型」の合議体は、様々な立場の委員が集まり意見交換をすることで全体的な見識が深まり、その結果、日常の相談現場での対応力向上や将来のあっせん事例に備えることができ、有意義な取組みである。事例や考え方の蓄積のため、今後も「助言・検証型」合議体の継続が必要である。  相談事案を踏まえた障がい者差別解消施策のあり方検討を行う会議体として、解消協と合議体のいずれが適切かは、障がい当事者の意見をより反映させるという観点から整理する必要がある。 政策課題への対応に関しては、合議体は構成人数が限定されるため、障がい当事者の意見を施策に反映させるという点での限界がある。  事例の背景にある制度的な問題や相談に共通する課題が見えてくる。合議体の機能・役割として行政施策の検討に繋げていくことが必要である。  合議体の特徴の一つに、当事者同士が一堂に会することと、あっせん案を提示し、事業者が従わない場合に知事による勧告や公表という事実上の制裁が発生することがあり、合議体は、相談員が行う調整に比べ、踏み込んだ解決策の提示が可能である。ただし、法上、行政は裁判所のような実効的な紛争解決の権限を有していないため、行政が行うことには限界がある。  解消協の下に合議体を設置し、合議体に相談員に対する助言・検証機能を担わせている条例上の仕組みを考えると、相談員への助言は、第三者で構成する組織が合議によって透明性を確保しながら行うことが必要である。解消協委員や専門委員は附属機関の構成員であることから、個々から意見を聴取するのではなく、府は、解消協や合議体という会議を通じてしか助言を求めることができない。 合議体とは異なる仕組みを構築することは難しく、相談員に対する即時助言の手法としては、合議体の構成人数を減らすことで機動性を高めるといった運用上の工夫を検討すべきではないか。  弁護士等の専門家を非常勤で個別に雇用する手法も考えられるが、個人からの助言に基づき相談対応の方針を決定することは、意思決定の透明性の確保や責任の所在の不明確さという課題や、類似機能の重複を避けるためにも合議体が有する助言機能との整理が必要である。  (3)解消協の機能・役割  (3か年の取組状況と自己評価)  府では、平成28年4月の条例施行に合わせて、障がいを理由とする差別の解消の推進に関して審議するため、障がい者、事業者、学識経験者等で構成する解消協を知事の附属機関として設置している。  合議体は、5人の構成員で構成し、あっせんや相談員への助言という機能を担う一方、解消協は、障がい者差別解消の推進に関する事項に関する協議等の機能を有しており、それぞれが異なる役割を果たしてきた。また、解消協は、法に規定される「障がい者差別解消支援地域協議会」(以下「支援地域協議会」という。)の機能も兼ね備えており、この機能の一部は、合議体による助言・検証により果たしてきた。   今後、相談員に対する助言を担う合議体、その母体となる解消協が、支援地域協議会としての機能を果たすために、どのような役割が求められ、その責務をどのように果たしていくことができるのかを検討することが必要である。     (ワーキングの意見のポイント)  支援地域協議会としては、合議体が、助言・検証を行うことで、その機能の一部を果たしている。  現在の解消協は、取組みを主体的に行うネットワークとしては、十分に機能できていない。解消協委員が、地域で新たなネットワークや社会資源を開発する社会的な活動を展開できるよう、解消協のあり方検討が必要。  合議体での課題や施策の方向性に関して、解消協で取り扱う会議運営を検討すべき。  (ワーキングでの意見概要)  支援地域協議会としては、解消協の下にある合議体が相談員の受け付けた相談事例に対する助言・検証を行うことにより、その機能の一部を果たしている。また、解消協は府の施策に関する意見具申の機能を有する一方で、合議体は個別事例に対する助言・検証を行う機能を有しており、それぞれが有する機能は整理されている。  現在の解消協は、府への政策提言が中心であり、府内の地域の実情に応じた差別解消のための取組みを主体的に行うネットワークとしては、十分に機能できているとは言い難い。構成機関による周知啓発の取組み、必要な社会資源の開発・改善などの検討・実施に取り組むことができていない。  支援地域協議会としての機能強化に向け、解消協が有するネットワークを活用し、市町村とも連携しつつ、障がいを理由とする差別のない地域づくりを支援する施策展開を検討する必要がある。  解消協委員各自が、支援地域協議会のメンバーであることを意識し、障がい者差別のない地域社会づくりに向けて、地域住民の意識を喚起し、新たなネットワークや社会資源を開発する社会的な活動を展開できるように、協議会組織のあり方を検討する必要がある。  相談対応に積極的ではない市町村に対する働きかけとして、各市町村の取組みに対して、解消協委員が参画している当事者団体のネットワークを活用し、各地域の団体から市町村に働きかけていくことも必要ではないか。  合議体での事例検証の中で明らかとなる課題や施策の方向性に関して、解消協で意見交換ができるような会議運営を検討すべきである。  (4)府による市町村への助言等の機能・役割  (3か年の取組状況と自己評価)  条例では、府は市町村との適切な役割分担のもとで相談体制を整備するものと規定し、市町村との連携で実施することとしている。府は市町村に対し、情報の提供、技術的な助言や必要な支援を行い、住民に身近な相談窓口である市町村において、相談事案の解決が図られることを基本としている。  府は、市町村に対し、相談への対応姿勢等についての情報伝達を積極的に行うとともに、相談対応力の向上に向け、市町村の個々の状況を踏まえた意見交換の場を設定するなど支援に取り組んできたが、事例や対応ノウハウの蓄積が十分とは言えないのが現状である。  市町村には、相談事例のキャッチ力や対応力の向上が求められており、府としては、ガイドラインをはじめ、市町村との意見交換の場などを通じて、さらに多くの事例を発信していくことが必要である。 また、これらの支援を進めることにより、市町村で受理する相談事案の増加が想定され、相談員の活動は、これまでに比べて市町村への後方支援にシフトするものと考えられる。市町村との関係を構築しながら、助言や広域的な調整、具体的な情報提供により、困難な相談事例への対応を支援することが必要となる。さらに、障がい者差別解消を効果的に推進するために、より多くの市町村で支援地域協議会が設置されるよう、今後も広域自治体として、市町村での取組状況の把握や情報発信が必要である。(設置済22団体(平成30年4月1日現在))  (ワーキングの意見のポイント)  市町村の権限に関する条例規定は困難で、市町村との連携や支援のあり方を検討すべき。  府の役割は、勉強会などの場を通じて、市町村に差別事案の「気づき」の視点や観点を示すことにある。  府は、相談機能が有効な市町村の事例の周知や、積極的な助言など具体的な働きかけが必要。  府は、機能している支援地域協議会の取組内容や成果を周知し、設置促進と充実を支援すべき。  (ワーキングでの意見概要)  府と市町村は対等な関係にあることから、条例に市町村の権限に関する規定を設けることは困難である。現行条例の規定に基づき、条例運用の中で、市町村との連携や支援のあり方を検討すべきである。  身近な相談窓口となる市町村が相談に対応すべきで、そのために、相談員の有する相談の心構え・ノウハウをどう市町村に伝えていくかが大事である。  相談件数が少ない市町村は、相談窓口の周知が不十分なのか、窓口が十分に機能していないのかといった課題があるはずであり、その分析を行わなければならない。 府としては、相談機能が有効に働いている市町村の取組事例の周知や積極的な助言など具体的な働きかけを行う必要がある。  市町村職員の資質向上は市町村で対応するには難しいことから府と市町村が連携して行うことや、市町村との事例の検討会議の開催や研修の実施、検証報告書の活用の働きかけという形で相談力を高めていくことが必要である。  埋もれている差別事案をすくい上げ、事例を積み上げるなどにより、地域の資源(地域の相談員などの人材)を活用していくことが大事である。  府が、障がい者の生活上の困りごとに関わるのは限界があり、そこはまさに市町村が関わっていくものである。府の役割は、勉強会などの場を通じて、市町村が相談事例に対応するなかで、これは差別事案ではないかという「気づき」の視点や観点を示すことにある。  府は、支援地域協議会としてのネットワークを活用しながら事例検討を行うなど、支援地域協議会をうまく機能させながら差別解消に取り組んでいる市町村について、その取組内容や成果を各市町村に周知することで、市町村における支援地域協議会の設置促進とその充実に向けた取組みを支援すべきである。  府は市町村の相談体制の整備状況を確認すべきである。   2 事業者における合理的配慮の提供  (1)事業者における法等の理解に向けた取組みの実施状況  (3か年の取組状況と自己評価)  府は、条例施行を見据えてガイドラインを策定するとともに、施行後、新たな取組みとして、障がい者を講師として事業者に派遣し、障がい理解を深める出前講座の実施や、汎用性のある研修プログラム(DVDなど)の開発・周知による事業者の研修実施の支援により、事業者の障がい理解や差別解消に向けた自主的な取組みの促進を図ってきた。しかし、合理的配慮の概念は未だ社会全体に充分に定着しているとは言えず、建設的対話を通じた合理的配慮の提供の必要性を広く社会で共有し、浸透させることが重要である。  今後も、事業者に対するガイドライン等を活用した啓発とともに、事業者が自ら障がい理解を深める取組みを行うような支援の充実が求められる。  (ワーキングの意見のポイント)  不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮についての本質的な理解には至っていない。  合理的配慮の概念が事業者に浸透したことを、何をもって示すのかの整理が必要。  合理的配慮の理解促進については、定量的な評価は難しく、定性的な評価をした方が良い。  事案がない事業者団体で新たに差別解消研修の実施は難しい。  (ワーキングでの意見概要)  法や条例施行後、不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮は一定広まっているが、本質的な理解にまでは至っていない。また、管理職は知っていても、現場の従業員まで浸透していない。法で一番大切にしなければならないのは、障がいがあるということを理由に、障がいのない人と同じサービスが受けられないということをなくすために、様々な工夫をしていこうということであるが、そのことが浸透していない。  法や条例施行後、合理的配慮の概念が事業者に浸透したかは、法の施行によって合理的配慮を全く知らなかった事業者における言葉の認知を言うのか、内容の熟知までを言うのかの整理が必要である。  合理的配慮の理解促進について、定量的な評価は難しい。仮に事業者に対する世論調査を行い、定量的に浸透度を出したとしても、何パーセントになれば良いと考えるのかという問題が残る。事業者における合理的配慮の概念の浸透状況については、定性的な評価をした方が良い。  何か事案があり、それに対する事業者の責任として取り組んできた事業者団体は、既に人権問題に関する研修を実施しており、差別解消に関する研修も実施しやすいが、そうではない事業者団体では、新たに差別解消の研修を実施することは難しい。  行政機関においても、法等の理解が進んでいないというのが現状である。  (2)事業者における合理的配慮の不提供についての条例上の取扱い  1.あっせんの対象に、法第8条第2項の合理的配慮の不提供(努力義務)を加えることに ついて  (ワーキングの意見のポイント)  現在も合理的配慮の不提供により不当な差別的取扱いに至ると考えられる場合はあっせん対象。  合理的配慮の提供が努力義務である以上、あっせんの対象に加える実益があまりない。  合議体は、相談員とは異なる解決方法の提示等ができる可能性があり、意味はある。  合理的配慮の提供を法的義務とすることの是非を検討した方が良い。  努力義務のままとし、事例を積み重ねたうえで義務化した方が良い。  (ワーキングでの意見概要)  より良い方向へ向かう仕組みとして、仮に努力義務のままであったとしても、あっせんの対象に入れることは検討してもよい。  努力義務のまま、事業者における合理的配慮の不提供をあっせんの対象に加えた場合、努力義務である以上、知事による勧告・公表規定の対象からは除外することになる。しかし、合議体は、知事による勧告・公表の可能性を背景に、当事者間の話し合いを促すことに意味があるため、勧告・公表の対象から除外した場合、合議体が行うあっせんは結局、相談員の調整と同じとなることから、あっせんの対象に加える実益があまりない。  第三者で構成される合議体は、相談員とは異なる意見や解決方法を示す可能性もあり、合理的配慮の不提供を知事による勧告・公表の対象から除外したとしても、なお合議体があっせんで議論する価値はあるのではないか。  条例の運用では、事業者における合理的配慮の不提供により不当な差別的取扱いに至ると考えられる場合にも、あっせんの対象に加えるとしているので、努力義務のままであっせんの対象に加えるかどうかではなく、法的義務とし、あっせんの対象にするという方向で、義務化の是非を検討すべきである。   当事者間で建設的対話を行うことが重要であることから、合理的配慮の概念がまだ浸透しき れていない現状においては、努力義務のままとし、事例を積み重ねたうえで義務化した方が良 いのではないか。  2.合理的配慮の提供の義務化の検討  ア 意義・効果  (ワーキングの意見のポイント)  事業者の合理的配慮の浸透度合いと、義務化の議論を結び付けて考えることは妥当なのか。  法が権利条約を、条例が法を具体化していることを踏まえると、権利条約では合理的配慮の提供が義務であれば、条例でも義務化すべき。  義務化によって、事業者の社会的責任が周知され、合理的配慮の提供に向けた体制整備や取組みが進むという点で社会的意義は大きい。  義務化の前段階として、合理的配慮の概念の浸透や紛争解決の仕組みの充実に向けた取組みが重要。  事業者の過重な負担の免責があり、あっせんに司法権限がないため、義務化に期待するほどの法的効果はない。  義務化の検討に当たっては、社会的効果と法的効果の両方の検証が必要。  法改正があれば条例改正しやすく、義務化は法改正を踏まえた対応とするのも一つ。  (ワーキングでの意見概要)  事業者に合理的配慮の概念が充分に浸透したことをもって義務化するのか、あるいは、義務化することで合理的配慮の概念を浸透させていくのかという2つのアプローチがある。事業者における合理的配慮の概念の浸透度合いと、合理的配慮の提供の義務化の議論を結び付けて考えることは妥当なのかという点を整理する必要がある。  法は権利条約を具体化するために制定されており、条例は、法を具体化したものなので、その意味では権利条約を具体化していると考えることもでき、権利条約が義務であれば、条例で合理的配慮の提供を法的義務にするという考え方はある。  法において、事業者は努力義務とされたのは経過措置である。10月に施行された東京都の条例においては義務規定であり、法が施行された平成28年度当時とは状況が異なる。義務化によって、事業者の社会的責任が周知され、事業者における合理的配慮の提供に当たっての体制整備や取組みが進むという点で社会的意義は大きい。  義務化の意味は、合理的配慮の不提供をあっせんの対象に加えることにとどまるが、努力義務の場合においても他都道府県の条例からあっせんの対象に加えることは可能であり、法的義務とする「法的意味」はない。つまり、義務化するかは、「合理的配慮は提供されなければならない」ということを府民に明示するという「社会的意味」を持たせるかどうかである。  合理的配慮という言葉は浸透しつつあることから、今後は、義務化によって事業者の内容理解を深め、意識を変えていくことが求められる。  義務化により、障がい者は、条例を根拠に事業者に合理的配慮の提供を権利として要求でき、事業者は義務不履行時に過重な負担があることの説明をしなければならなくなるという新たな権利と義務が発生することになる。このことがどのような社会的な効果・影響をもつのか見極める必要がある。  また、事業者と障がい者の関係に実際にどのような影響を与えるか、特に紛争予防・解決の仕組みやプロセスにどのような影響を与えるかについても考慮する必要がある。  義務化は、障がい者を中心とした社会がより住みやすくなるための一つの重要なツールではあるが、義務化することで事業者への周知が図られるということはおそらくありえない。大事なことは、努力義務でも今の取組みを地道に継続することで、結果的に合理的配慮の考え方を事業者に周知していくことである。合理的配慮の浸透方法は義務化だけではなく、義務化の前段階として、合理的配慮の概念等の周知徹底や相談紛争解決の仕組みをより有効なものにすることが重要である。  あっせんは司法とは異なり、法的拘束力のある命令まではできないため、義務化には期待するほどの効果はない。義務化については、社会的効果と様々な紛争解決の仕組みとをセットで検討しなければならない。 合議体が行う紛争解決は、司法で権利救済ができるような拘束力はないという法的解釈がある ことを障がい者に理解いただく必要があり、社会的効果と法的効果の議論が必要である。  啓発の取組みを強化するなかで、社会規範として合理的配慮が周知徹底され、かつ、法改正がなされた状況にあれば、条例改正がしやすい環境ができるのではないか。  法は、行政指導により実効性を確保する仕組みであることから法的効果として限界があり、義務化によって一定の改善がなされることはあっても、事業者としては過重な負担があり提供できない場合がある。法的効果としてどの程度のものを想定できるか確認が必要である。  紛争解決の体制整備を行うという条例趣旨を考えると、義務化により、当事者の意見が大きく食い違う時にあっせんで合意形成を促すことに意味があるが、現在の条例の運用レベルでも対応可能。現時点ではあっせんの対象に合理的配慮の不提供を含めるという仕組みの検討を視野に入れつつ、条例改正による合理的配慮の提供の法的義務化については、国の法改正を踏まえて対応することも考えうる。  社会的効果として、合理的配慮の提供をしなければならないということを明確化することに意味はあるが、社会規範として法的義務化できる状況にあるのかということも確認が必要である。  イ 事業者に与える影響及びその内容  (ワーキングの意見のポイント)  事業者に意見聴取しつつ、合理的配慮の浸透状況や事業者への社会的影響を踏まえて判断することが必要。  過重な負担を求められない以上、法的義務、努力義務に違いはない。  事業者には、合理的配慮の提供範囲や過重な負担の基準に関する不安や懸念の声があり、合理的配慮を誤解している節もある。  義務化にあたり、ガイドライン改訂や事業者への啓発、解消協・合議体の役割整理が必要。  障がい者と事業者が建設的対話をするために、府が対話の中核的役割を担うべき。  義務化しても、行政の調整等で建設的対話を促すという条例の性格は変わらない。  条例で差別事例を明示することで差別の範囲が限定されて解釈される懸念。  (ワーキングでの意見概要)  条例制定時、法を踏まえ、事業者にとって合理的配慮の概念が新しく、法的義務はハードルが高いとして努力義務にした経過がある。必ずしも、合理的配慮の概念が浸透していなければ義務化できないものでないが、条例制定の経緯を考えると、社会規範として合理的配慮の概念が浸透したか、事業者に与える影響はどうかについて、事業者の意見を把握したうえで義務化を判断する必要がある。  過重な負担を求められるものではない以上、法的義務であっても努力義務であっても求められることに違いはないので、法的義務化をしても良いのではないか。  合理的配慮は個別性・多様性が高いものであり、一般化できないものであることから、事業者には、義務化に当たって合理的配慮の提供の範囲や過重な負担の基準に関する不安や懸念の声がある。一方で、事業者の声として、「義務化されると、過重な負担を求められる恐れがある」というように合理的配慮を誤解している節があることから、義務化に当たっては、合理的配慮の提供は、過重な負担のない範囲で行うことになることを伝えていくことが求められる。  ガイドラインで合理的配慮の提供に係る事例や過重な負担の基準化を一緒に考えていくことが求められる。  合理的配慮の提供は個別性が高いことから、ガイドラインで全てを示すことはできないので、例示によって事業者の不安や懸念の声をすべてなくすことは難しい。府は条例を施行し、様々な事例を積み上げてきており、相談員は事業者からの相談も受けていることを周知することで、事業者の不安や懸念を払拭していくことができるのではないか。そのために相談機能の強化が必要になる可能性はある。障がい者と事業者が建設的対話をすることが法・条例の本質であり、合理的配慮の提供として形にしていくことが必要。そのように条例を運用するためにも、合理的配慮の提供を義務化し、府が間に入ることを増やすようにするべき。府が対話の中核的役割を担うことは十分できる。  義務化に当たっては、ガイドラインをどう改訂するか、府として事業者に合理的配慮の概念をどう浸透させていくか、また、解消協や合議体の役割はどう変えていく必要があるのかなどを整理する必要がある。  法や条例は、義務違反を摘発し刑罰や行政罰を適用するものではなく、国や府のソフトな関与・調整によって、事業者に対し理解と協力を求め、望ましい社会のあり方に向けて取り組んでいくものである。法的義務化によって、この条例の性格が変わるものではない。  合理的配慮の提供を義務化しても、啓発の取組の強化は必要であり、事業者の意識がどう変わったかを把握するツールの開発が必要である。  条例で不当な差別的取扱い等の事例を明示すると、該当の行為だけが不当な差別的取扱い等であると解釈されてしまう懸念があり、抽象的に規定することのメリットもある。  ウ 合議体  (ワーキングの意見のポイント)  条例を根拠に事業者との調整が可能となり、あっせんにも支障はそれほどない。  構成員間で合理的配慮の不提供か否かの判断が異なることは、ある程度やむを得ない。  あっせんには司法権限がないなど限界があることも含め、義務化を検討すべき。  合議体構成員の資質向上や判断の安定化に向け、合議体の仕組みの検討が必要。  (ワーキングでの意見概要)  合議体によるあっせんは、当事者間で合意形成により紛争解決をめざすものであり、それ以上の権限はなく、裁判所のように法的判断はできない。あっせんによって紛争解決ができない場合は、司法が対応すべきであり、それが、合議体が行うあっせんの限界である。  義務化した場合、合議体は、事業者に対し、条例を根拠として促しやすくなる。また、当事者が合意しない事例などはあっせん不調になるため、あっせんの過程においてもそれほど支障は出ないと考える。  過重な負担に該当するかどうかの判断が難しい事例や両者の主張に歩み寄りが期待できない事例については、あっせん不調という形での終結も考えられる。紛争解決の仕組みとしては限界があるということも含めて、義務化の議論をしていく必要がある。  義務化により、相談員としては合理的配慮の不提供か否か、どう対応すればいいか、判断に迷うことが増え、合議体に即時助言を求めることが想定される。合議体の開催を迅速化するため、開催人数を少人数とすることは一つの案であるが、多様な意見が反映されなくなり、偏った判断をする可能性があることも考慮しなければならない。また、合議体の判断を安定化させるためには構成員を固定化することが望ましいが、多様な 意見を反映させることが難しくなる。あっせんの申し出が増えれば、構成員を固定化することが難しくなるが、そのことで合議体の判断が都度異なることに対し、社会的な批判や信頼を失わない仕組みの検討が必要である。  合理的配慮は曖昧で抽象的な概念であり、合議体構成員間で合理的配慮の不提供か否かの判断が異なることは、ある程度、やむを得ない。  合議体が行うあっせんが不調に終わった場合、当事者が泣き寝入りにならないか懸念される。  義務化する場合は、相談員の権限を実効性のあるものにしなければ、合議体におけるあっせんの検討にあたり、事実確認ができずに判断ができないことがありうる。   3 短期的及び中長期的な啓発活動のあり方  (1)府民の障がいに対する理解の促進  (3か年の取組状況と自己評価)  府では、障がいを理由とする差別の解消は、全ての府?が共に社会の?員として解決すべき社会全体の課題であるとの認識のもと、障がいを理由とする差別の解消について、府民の関心と理解を深めるためのガイドラインの作成や、障がい者団体や関係団体、行政が連携した「大阪ふれあいキャンペーン」など、様々な啓発活動等に取り組んでいる。  啓発活動の実施にあたっては、多様な主体との連携による周知機会の創出や、府民の行動につながるよう企画内容の充実が重要である。  今後も、府民の障がいや障がい者に対する理解を一層深めるために、関係機関等と連携を進めるとともに、より効果的な周知・啓発手法の検討が求められる。  1.取組状況  (ワーキングの意見のポイント)  法や条例が事業者や府民に期待する役割の浸透が不足。  障がい者が法を理解するための工夫が必要。  連携について、市町村の好事例・課題などの把握や庁内各部局向けの視点が不足。民間事業者も含めて、現状の丁寧な整理と一層の推進が必要。  府民の行動につながる施策が不足。  (ワーキングでの意見概要)  現在府が取り組んでいる啓発活動は、障がい理解を中心に行われてきたが、啓発活動が対象とする内容が広すぎるため、法や条例が求める社会のあり方、事業者や府民に期待する役割の浸透が十分ではなかったかもしれない。  障がい者の中でも、法についての関心のレベルが異なることから、障がい者が法を理解することも必要であり、そのためにどう工夫していくかが課題。  様々な主体との連携を進めているが、市町村との連携においては、自治体間の取組みに差が出てきており、各市町村の啓発への取組状況や好事例、課題などの把握が不足している。府庁内各部局との連携は以前と比較して少ない印象があり、民間事業者も含め、現在の連携状況について、丁寧に整理し一層進めることが求められる。  条例には、「府民は関心と理解を深め自己啓発に努める」と規定されているが、従来から行っている「ツール作成」といった施策に重きがあり、府民の行動につながるよう具現化するための施策が不足している。 ?  2.今後の府民向け啓発のあり方  (ワーキングの意見のポイント)  既存事業や広報物の評価及び周知手法の検討と再考が必要。  ターゲットを絞り、可能な範囲で量的評価と効果測定が必要。  20歳未満への啓発手法を検討し、将来の社会・経済活動の担い手に新しい価値観を。  障がい者に対し、法により障がい者は権利を有していることを周知するための啓発が必要。  各連携主体の取組状況の「見える化」が必要。   教育や、特に府民の関心が高い防災や環境、日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)等の分野も見据えるべき。  「地域社会には様々な人がいて、自分は何をすべきか、自らの問題として考える」地域レベルの仕掛けづくりが必要。  解消協は、地域づくりの一つとして差別のない社会構築の方策を検討する役割も担っているので、解消協が有するネットワークを活用し、委員各自が主体的に啓発に関わることが望ましい。  (ワーキングでの意見概要)  啓発物はシンプルでわかりやすいものが望ましく、イベントについては、府民が参加しやすい雰囲気の醸成が必要。既存事業や広報物などマンネリ化しているものをどのように評価するかということが大事である。作成が目的ではなく、対象を絞った広報や、教材としての柔軟な活用といった工夫、理解につなげて自らの行動を促す段階に進むなど、広めるための手法の検討や、思い切った再考が必要である。  法、条例がめざす社会づくりに向けて、全ての人に理解してもらうことを基礎としつつも、漠然と全体に実施するのではなく、例えば高校生など一定ターゲットを絞り、かつ量的な評価ができるところはフィードバックして広い意味での効果を地道に測ることが求められる。  20歳未満の世代に障がい理解を進めていく啓発手法を検討することで、エンドユーザーである将来の府民の意識が変わり、新しい価値観を持った子どもたちが将来の社会・経済活動の担い手になっていくと考える。  違法な差別を受けたという事実を社会に訴えられない障がい者も少なくない可能性があり、障がい当事者を対象とした社会モデルに基づく障がい理解や法に関する権利に係る啓発も必要。  啓発は民間との協力や民生委員等の活用などオール大阪で取り組むべきものであり、府は広域自治体が果たすべく役割として、各連携主体の取組みがどういった状況にあるのかを「見える化」し、認識することが必要である。   現在実施している連携を一層進めるとともに、社会環境の変化等を踏まえると、例えば農福連携が最近進んでいるように、医療や保健といった福祉に関連する分野だけでなく、教育や、特に府民の関心が高いと考えられる分野(防災や裾野の広い環境分野、オリンピック・パラリンピック、日本国際博覧会等)について見据えるべきである。  啓発ツールを用いた幅広い周知の継続は必要であるが、ポスター等の啓発物だけでは府民の理解と関心がなかなか進まないため、ポスター掲示等による現行の啓発や行政主催の事業に加えて、地域社会の中で障がい者や高齢者などみんながふれあえる機会の提供や、障がい者施設の製品を道の駅などの商業施設で他の製品と共に販売するなど、障がい者の取り組みが日常の暮らしにビルドインして、「地域社会に様々な人がいることを知り、自分が何をすべきか、自らの問題として考える」といった地域レベルの仕掛けづくりが必要である。  行政が中心となって啓発を行うことが良いのかという思いがある。障がい者団体は、市町村など地域で活動していることから、障がい者差別のない地域社会づくりに向けて、その点にスポットを当てることも必要である。  解消協は、地域づくりの役割も担っていることから、地域づくりの一つとして、差別のない社会を構築していくためにはどのような方策が考えられるのかを検討する役割も担っていると考えられる。行政に任せるのではなく、当事者が主体的に関わることが望ましい。  ネットワークの中でお互いの経験値を出しながら、紛争のない社会、差別のない地域共生社会にソフトランディングさせていくことが究極の啓発である。?  (2)事業者の合理的配慮にかかる理解の促進  (3か年の取組状況と自己評価)  ページ「(1)事業者における法等の理解に向けた取組みの実施状況」参照  (ワーキングの意見のポイント)  事案がない事業者団体で新たに差別解消研修の実施は難しい。(再掲)  障がい者差別に「気付く」研修が必要。  エンドユーザーの意識変化が事業者の取組姿勢に変化をもたらしうる。  研修実施は方法、事例、資料提示や講師派遣といった行政の動機付けが必要。  既存ツールの整理と行動につなげる啓発が必要。  観光・量販店、公共交通など対象を絞った啓発と、事業者のノウハウや媒体を活用した啓発の検討が必要。  (ワーキングでの意見概要)  何か事案があり、それに対する事業者の責任として取り組んできた事業者団体は、既に人権問題に関する研修を実施しており、差別解消に関する研修も実施しやすいが、そうではない事業者団体では、新たに差別解消の研修を実施することは難しい。(再掲)  事業者自らの業務の中で障がい者差別に「気付く」ための研修や啓発が求められる。また、エンドユーザーの意識が変わることで、事業者の差別解消の取組みに対する姿勢も変わると考えられる。  事業者における研修の推進には、「研修を実施する」ことへのハードルの高さや実施時間、分量の問題があることから、行政による研修マニュアルの作成や短時間での研修方法や事例、わかりやすい資料の紹介、講師の派遣といった、事業者にとって簡単で取り組みやすい研修の動機付けが必要である。  作成した既存ツールを改めて整理、補足してSNSなども活用し広めていくなどの工夫とともに、広報や周知活動だけではなく、より高い理解に導いて、行動につなげるという啓発が必要である。  G20大阪サミット(2019年開催)、日本国際博覧会(2025年開催)、オリンピック・パラリンピック(2020年開催)を見据え、観光・量販店等の店舗、公共交通など 対象を絞った事業者向けの啓発が必要である。また、開催に当たっての事業者広報のなかに、差別解消に取り組む企業として事業者イメージを向上させるような広報活動を組み入れるなど、事業者のノウハウや媒体をうまく活用した啓発の検討が必要である。  合理的配慮の提供を義務化しても、啓発の取組の強化は必要であり、事業者の意識がどう変わったかを把握するツールの開発が必要である。(再掲)府は、事業者向けの啓発DVDを作成し、周知しているところだが、その活用方法や実績などの確認も必要である。  啓発活動のなかで、事業者が環境整備として取り組むことが大切である。事業者や事業者団体に具体的な取組みを助言できるような啓発がなされれば、当事者間の建設的対話が進んでいくと考える。これは解消協の課題である。