参考資料1−2 大阪府における障がいを理由とする差別の解消に向けた実効性のある取組みについて(これまでの議論の整理)  平成27年8月 大阪府障がい者施策推進協議会差別解消部会  目次  1 はじめに  2 取組みの基本的な方向性について  3 相談、紛争の防止・解決の体制整備の具体的方策について  4 実効性の確保のための措置の必要性について  5 条例の必要性について  参考資料1 大阪府障がい者施策推進協議会差別解消部会委員名簿  参考資料2 大阪府障がい者施策推進協議会差別解消部会開催状況 ゲストスピーカー   1 はじめに  大阪府障がい者施策推進協議会差別解消部会(以下「差別解消部会」という。)は、障がい当事者団体、事業者団体、相談機関や人権団体等の関係機関・団体、学識経験者等により構成され、大阪府における障がいを理由とする差別の解消に向けた取組みを検討してきた。  平成26年9月には、(1)何が差別に当たるのかについて、府民共通の物差しとなる「ガイドラインの策定」、(2)障がいを理由とする差別に関する「相談、紛争の防止・解決の体制整備」、(3)障がいや障がい者に対する理解を深めるための「啓発活動の促進」、を取組みの3本柱とする「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定を踏まえた大阪府における障がいを理由とする差別の解消に向けた取組みについて(提言)」(以下「提言」という。)をとりまとめた。  提言を受けて、大阪府は、国連の障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)を受けて制定された障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)に基づいて、何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのかなどについて基本的な考え方や具体的な事例等をわかりやすく記載することで、障がいを理由とする差別について府民の関心と理解を深めるため、平成27年3月に、「大阪府障がい者差別解消ガイドライン(第1版)」(以下「府ガイドライン」という。)を策定・公表した。  府ガイドライン等により理解を深めていくことはもっとも重要な、基礎となる取組みであるが、平成28年4月の障害者差別解消法の施行を控え、差別解消部会では、障がいを理由とする差別の解消に向けた実効性のある取組みについて議論を行ってきた。  具体的には、(1)相談、紛争の防止・解決の体制整備の具体的方策、(2)実効性の確保のための措置(勧告、公表、罰則)の必要性、(3)((1)・(2)の議論を通じて)条例の必要性、について検討を行い、平成27年8月まで5回にわたり議論した内容を、ここに整理したので、府におかれては、障害者差別解消法の施行に向けて、障がいを理由とする差別の解消に向けた実効性のある取組みを適切に進められたい。  なお、より幅広い意見を聞いて、差別解消部会での議論をより深めるため、障がい当事者団体・事業者団体から9人のゲストスピーカーをお呼びして、意見を表明いただいた。ご多忙の中、意見を表明いただいたゲストスピーカー諸氏には改めて感謝申し上げたい。   2 取組みの基本的な方向性について  提言における取組みの基本理念及び原則のもと、障がいを理由とする差別の解消に向けた実効性のある取組みを進めるにあたり、取組みの基本的な方向性について、あらためて検討を行った。  提言(抜粋)  取組みの基本理念   障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法の趣旨を踏まえ、広域自治体として、障がいを理由とする差別の解消に向けた取組みを推進するとともに、もって、障がいの有無によって分け隔てられることなく、障がい者と他の者との平等を基礎として、相互に尊重しながら共生する社会の実現を目指すことを基本理念とする。  取組みの原則  基本理念に基づき、障がいを理由とする差別の解消に向けた取組みを、広く府民の理解を得ながら行っていくため、以下の事項を原則とする。  1.障がい者は社会の中で特別な存在ではなく、地域社会で共に暮らす一員であることを旨として取組みを行うこと  2.障がいや障がい者に対する理解を深めることがもっとも重要な、かつ基礎となる取組みであること  3.障がい者施策におけるこれまでの先進的な取組みを継承しつつ、法的整備を含む現状を踏まえて、府ならではの取組みを行うこと  4.府、市町村、障がい当事者や事業者を含む府民がそれぞれの役割の下に相互に連携しつつ、取組みを行うこと  5.府は広域自治体として、積極的に広域的な仕組みを整備し、府民誰もが同様の仕組みを享受できるようにすること  6.取組み内容を定期的に検証し、改善を図ること  (1)共生社会を目指して  障害者差別解消法は、障がい者の社会参加を制約している社会的障壁を取り除き、その権利を保障することで、共生社会をつくるための重要なルールである。  第4次大阪府障がい者計画においても「人が人間(ひと)として支え合いともに生きる自立支援社会づくり」をめざしており、共生社会実現のためには、多様な主体による協働が必要である。  障害者差別解消法は、そのための重要なツールでもあり、障がい者、その家族、支援者等や行政はもとより、事業者を含め府民全体に周知徹底していくことが必要である。  なお、障がい者自身が差別されたと気づいていない場合があり、法の理念や合理的配慮等について、障がい者に対する啓発も重要になる。  また、差別の問題の根底には、障がいや障がい者についての理解の不足があると考えられるため、たとえ相談、紛争の防止・解決の体制を形式的に整備したとしても、事業者を含め府民全体の意識が変わらないことには、根本的な解決とはならないことを認識しておく必要がある。  (2)府ガイドラインの普及啓発  (1)の観点からも、府ガイドラインを国よりも先に策定・公表したのは非常に意義がある。今後、障害者差別解消法の施行に向けて、府ガイドラインを活用した周知が重要である。  たとえば、精神障がい者の理解が十分に進んでいないことから、何が起こるかわからないという不安が生じ、退去や入居拒否が起こっているのではないかとの指摘があり、提言の原則にある「障がい理解を深めることが重要」、また府ガイドラインの冒頭にある「大切なのは理解し合うこと。そのために対話すること」という視点から、啓発の取組みを続けていく必要がある。  また、啓発に当たっては、行政だけでなく、事業者を含め府民や障がい者団体にもそれぞれ担うべき役割がある。  (3)事業者の取組み  事業者も一方の当事者であり、同じ共生社会を目指す一員という認識で取組みを進める必要がある。 差別解消部会においては、事業者団体における取組みとして、団体でのセミナー・研修による障害者差別解消法の内容等の周知や苦情相談窓口の整備等の自主的な取組みが紹介された。  さらに、事業者として、未然防止の観点から、府ガイドライン等を活用して、啓発に取り組んでいくとの説明があった。  よって、民間事業者としても、こうした自主的な取組みに最大限努力していくことが求められるが、一方で、中小企業、とりわけ規模の零細な企業にとって、過重な負担とならないよう経営状況等にも配慮した慎重な運営を求める意見もあり、また、特に、新しい概念である合理的配慮は、法律上も努力義務とされている趣旨を踏まえつつ、零細企業を含む事業者に対し広く概念自体の周知と十分な浸透が重要である。  こうしたことから、企業や経営者の納得を十分に得ながら、一歩一歩、差別解消の取組みを社会に定着させていくことが大事である。  (4)取組みを進めるに当たっての視点  差別かどうかという視点もあるが、生活全般から問題を捉えていく視点が大切である。障がい者が地域で安心して暮らせるということを守り、保障していくことが差別解消につながる。  現在の障がいのとらえ方は、社会モデルと呼ばれる考え方が基本になっており、障がい者が日常生活や社会生活の中で不便を感じるのは、その人に障がいがあるからではなく、不便を生み出しているのは社会の側であり、問題の解決のためには社会が変わらなければならない。  障がい者を権利の主体ととらえ、社会モデルの考え方に基づき、人々の意識を変え、社会のあり方を変える取組みは進められているが、現在の社会の中には、障がい者は保護の客体であるという見方がまだ残っており、これらが解消しない限り、障害者差別解消法のめざす趣旨は実現しない。  たとえば、タッチパネル式の券売機は視覚障がい者にとって、高機能の電子機器は知的障がい者にとって、扱いにくいものとなっているとの指摘があり、技術の進展は重要であるが、新しい技術や商品・サービスは、障がい者を排除せず、障がい者を含め府民の誰もが利用しやすいものであることが、共生社会のあり方として求められることになる。  また、障がいの種別や時代によって、差別解消を進めるために求められる内容は変わっていくことからも、形式的に規制するということよりも、共生社会をどのように実現していくのかという視点が大事である。 特に、合理的配慮については、社会に定着するよう取組みを進めていく中で、個々の状況や時代によって、配慮の中身も常に変わることに留意する必要がある。  以上のことからも、障がいや障がい者に対する理解を深めるための啓発活動が非常に重要である。   3 相談、紛争の防止・解決の体制整備の具体的方策について  障害者差別解消法の趣旨に沿って、市町村等身近な地域・既存の相談機関等(以下「地域・既存の相談機関等」という。)の活用・充実を図ることを基本としつつ、府・市町村の適切な役割分担のもと、府は広域的な立場から、府における相談、紛争の防止・解決の体制整備を図る。  具体的には、地域・既存の相談機関等において事案を解決することを基本としつつ、府においては、以下の体制整備を図ることについて、検討を行った。  (1)地域・既存の相談機関等における解決を支援する仕組み  (2)上記の支援によっても、地域・既存の相談機関等における解決が困難な場合に、より専門的・中立的な立場から対応する仕組み  以下、(1)と(2)の具体的な内容を記載する。   (1)地域・既存の相談機関等における解決の仕組み  障害者差別解消法において、地方公共団体(都道府県・市町村)の体制整備の責務が規定されたことを踏まえ、千葉県等法に先行して条例による体制整備を行った事例と、法施行後に法の定めるところに従って府が取り組むべき体制整備のあり方とは、区別して整理が必要である。  法施行後は、市町村も地方公共団体として体制整備を行い、相談に対応し、紛争を解決することが求められる。その上で、市町村が対応できない部分について、府がどのように関わるのかがポイントになる。  具体的には、880万人という府の人口規模等も考慮すると、市町村の障がい福祉担当課をはじめとする既存の障がい者に係る相談体制を活用するなど、一義的には、市町村で整備された相談体制により対応することとする。  府は、市町村で整備された相談体制による解決を支援する観点から、地域・既存の相談機関等だけでは解決が困難な事例や市域をまたがるなど広域的な対応が必要な事案を取り扱うのが適当である。  事業者側からも「市町村の障がい福祉担当課等が窓口となり、なるべく地域で解決する、地域で解決が困難であれば、府の専門性ある組織で対応する体制は、理にかなっている。」との意見があった。  市町村における体制整備にあたって  地域・既存の相談機関等による体制は各市町村で様々であるが、まずは市町村の中で、その市町村における社会資源の状況等を踏まえながら、障害者差別解消法の施行に向けて、相談体制を確立・整理する。 その中で、たとえば、市の障がい福祉担当課、基幹相談支援センターや相談支援事業所など、中核となる窓口を明確にして、府がそれらの相談窓口と連携する体制が適当であると考えられる。  具体的な相談事案は、一義的には身近な地域の相談機関が対応することになるが、その際、相談機関は1か所ではなく、複数あって選択できるように、様々な地域・既存の相談機関等が引き受ける。ただし、それを市町村レベルでどのように連携し、府の広域的な相談体制にどのようにつないでいくのか、明確にする必要がある。  なお、以下の意見があった。  1.他の相談機関の対応は、相談機関同士でもよくわからない現状があり、相談機関同士の情報交換も必要になってくる。  2.市町村で、たとえば、専門的な相談員を置くことも考えられる。  3.既存の身体障がい者相談員、知的障がい者相談員、精神障がい者相談員が、身近な相談相手として、最初の相談の受け手となることも考えられる。しかしながら、最終的に差別に関する相談に対応することについては、その役割や他県の状況から難しいと思われる。また、個人情報保護の関係で、どこに相談員がいるのか公表できない課題もある。  4.既存の相談窓口として、市町村の人権相談窓口があるので、その活用を図るべきである。  5.障がい者の意識として、人権問題であっても福祉問題として相談に行くこともある。今の人権相談体制では障がい者のニーズに対応できていないのではないか。  6.既存の相談窓口が障がい者のニーズに対応するとともに、差別に関する相談に対応できるようにすること、さらには既存の相談機関が連携して相談に対応していくことが求められる。  実際の相談対応  千葉県等における相談の状況を見ると、差別に係る事案は全体の4分の1であり、生活上の不安や困りごとに関する相談が多い。また、実際の相談対応では、福祉の分野で、市町村をはじめ既存の相談機関でもされているように、当事者に寄り添い、その人と共に不安や困りごとの解決を図り、自立した生活の実現を支援するソーシャルワークの方法による対応・調整を行っている。  よって、様々な相談が寄せられることが考えられるが、その対応に当たって、対象事案は相談段階では幅広く捉え、生活上の相談も含めていくことが求められる。  また、単に当事者の話に耳を傾けるだけでなく、ソーシャルワークの方法を用いて、生活上の具体的な助言を行ったり、実際に当事者のところに出向いて話を聞いて、調査や調整を行ったりすることが求められる。  また、相談対応においては、障がい者に対して、手話、点字や絵カード等情報提供やコミュニケーションに関する配慮が求められる。  事業者からの相談への対応  円滑な制度運営のためには、対応を求められる企業サイドの窓口も必要であり、事業者からの、対応が必要十分であるかといった個別具体的な相談に対応することが求められる。それにより、差別解消の考え方や対応方法がより広がっていくことになる。  業界によっては、苦情相談窓口を設けているところがあり、障害者差別解消法の施行に向けて、理解と認識を深め、事業者で自主的に対応できるよう、取組みがされていくことを受けて、それらの業界の相談窓口との連携も重要である。  なお、地域・既存の相談機関等が、まず事業者からの相談に対応し、企業や業界団体の相談窓口等と連携することが求められるが、特に、広域的な対応が必要な事案については、(2)の仕組みによる支援が重要である。  雇用分野に係る事案  雇用の相談・紛争事案は労働紛争という性格があるので、状況等を把握した上で、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という。)に定める労働局などの相談や紛争解決の仕組みにつなぐことが適切である。  市町村における体制整備に向けた府の役割  市町村がそれぞれの判断で体制整備を行っていくことになるが、広域自治体としての府のビジョンを持って、地域における相談体制のイメージや一定の考え方を市町村に対して示すことが必要である。  相談窓口の明確化のためには、各市町村と府における相談窓口の一覧表を作成し、府民に知らせるべきである。  また、障害者差別解消法の施行後は、市町村も地方公共団体として、相談や紛争解決などに対応する職員の専門性の向上などを図ることにより、体制整備を行うことが求められる。よって、市町村における相談員の養成・専門性の向上も、体制整備の一環として市町村の担うべき役割であるが、他の市町村の相談の状況がよくわからないといったことから、市町村ではなかなかできない部分も想定される。  そのため、たとえば、府が担うべき人材育成や質の向上に関する役割として、相談事例の収集・分析を行い、相談対応に必要な知識・経験などの情報を市町村と共有することが考えられる。  なお、以下の意見があった。  1.市町村としても、なすべきことを進めていくので、府独自の体制整備や条例検討の行方について、準備時間の確保のため、政令市も含め市町村への技術支援、早期の情報提供が望まれる。  (2)地域・既存の相談機関等における解決を支援する仕組み  府においては、専門性を有する人材として、広域専門相談員を配置して、地域・既存の相談機関等における解決を支援する仕組みとする。  広域専門相談員は、相談機能とともに当事者間の調整による最終的な紛争解決機能を担うことになり、その役割は重要である。  広域専門相談員が行うべき業務としては、たとえば、以下のものが考えられる。  1.地域・既存の相談機関等に対する助言  2.事案の当事者に対する意見聴取、調査  3.相談員を交えた当事者間の話し合い(協議)や関係機関の調整  4.地域・既存の相談機関等間の連携促進  5.相談事案の収集と分析  なお、広域専門相談員の配置については、広域で市町村の相談窓口と連携したり、内容も難しく継続した相談に対応したりする場合が考えられることから、予算や人数の面で十分に対応できる体制の整備が必要である。  また、以下の意見があった。  1.広域専門相談員のところには、レベルの高い、難しい相談があがってくることも考えられるので、広域専門相談員のアドバイザーの体制を作っておく必要がある。  2.広域専門相談員が対応する相談は、幅広い内容になるので、一人の相談員がそれらに関する知識をすべて持っているわけではなく、関係機関相互の連携体制が非常に必要であり、相談の支援ネットワークというものも考えられる。  3.一義的には市町村等地域の窓口であるが、市町村の窓口ではなく、最初から府の窓口に相談することも考えられるので、相談者の思いを尊重し、市町村とも連携しつつ、府における対応が求められる。   (3)(2)の支援によっても、地域・既存の相談機関等における解決が困難な場合に、より専門的・中立的な立場から対応する仕組み  府においては、合議体を設置して、より専門的・中立的な立場から対応する仕組みとする。  合議体は、障がい者、家族その他の関係者からのあっせんの申し立てを受けて、当事者双方に対する調査を行い、あっせん案を提示する。  中立性や第三者性は大事な部分であり、合議体は、学識経験者、障がい当事者、事業者等から構成することが考えられる。  対象事案の取扱い  不当な差別的取扱いに係る事案は、広域専門相談員が調整を図っていくが、それでも解決できない場合には、最終的に合議体で対応していくのが適当である。  合理的配慮の不提供に係る事案を対象事案とするかについては、以下の意見があり、今後の相談事案の集積や国の動向等を踏まえて、検討を進めていくことが適当である。  1.広域専門相談員が調整という形で解決を図っていくのが適切であり、合理的配慮の中身は、当事者間のコミュニケーションの中で決まってくるものであるため、第三者による判断は難しい。  2.合議体のあっせんは、法的な強制力をもつものではないが、実効性の確保のための措置とあわせて考えると、それは、事実上の強制力をもってくるので、法律上義務付けられていない合理的配慮の不提供に係る事案まで合議体が踏み込んで判定していくのは、なかなか難しい。また、根拠規定を作ったとしても、技術的に、グレーなところを判定できるのか、難しいという課題がある。  3.事業者側からすると、合理的配慮は新しい概念なので、企業サイドも万全の体制とはなっていない中、懲罰的な指導よりも、建設的なアドバイスを行う姿勢で臨んでほしい。  4.一方で、障害者差別解消法では、合理的配慮の不提供に係る事案も助言・勧告まではできる。現実的には、不当な差別的取扱いに係る事案や合理的配慮に係る事案は区別しづらく、合理的配慮がどこまでできるかにかかわって不当な差別的取扱いにあたるかどうかということが多いことから、切り分けることができない。  5.合議体にどのような事案がどの程度の頻度で上がってくるのかは実際に動き出してみないとわからないので、仕組みを動かしながら今後の方向性を考えていくということも必要である。  雇用分野に係る事案  雇用の相談・紛争事案は労働紛争という性格があるので、合議体の対象事案とするのではなく、障害者雇用促進法に定める労働局などの相談や紛争解決の仕組みにつなぐことが適切である。   (4)障害者差別解消支援地域協議会  障害者差別解消支援地域協議会は、合議体とは別のものとして、当事者も入って、相談事例の収集・分析、情報交換や今後のあり方などを協議する役割が考えられる。  なお、市町村によっては、障がい者自立支援協議会の中に位置づけることも考えられる。   4 実効性の確保のための措置の必要性について  障害者差別解消法の趣旨に沿って、事業者における自主的な取組みを促すこと、かつ、相談、紛争の防止・解決の体制を整備して、当事者間の調整を行い、話し合いによる解決を図ることを基本とすべきである。 しかしながら、当事者間の話し合いによる解決に期待することが困難な場合を想定しておく必要がある。  たとえば、合議体によるあっせんを行っても、正当な理由なく、事業者があっせんに従わない場合が想定されるが、障害者差別解消法が規定する行政措置を踏まえた上で、府独自の仕組みとして、実効性の確保のための措置を設ける必要があるかについての検討を行った。具体的には、実効性の確保のための措置として、勧告、公表、罰則が考えられる。  このうち、罰則については、事業者の自主的な取組みを促すこと、また、話し合いによる解決を図ることを基本とする法の趣旨を踏まえた取組みにそぐわないことや事業者の活動に過度な制限をもたらすのではないかという懸念があることなどから、適当ではない。  よって、以下の意見があったが、実効性の確保のためには、知事の権限として、勧告または公表の権限を定め、適切な対応をしていくことが必要である。  なお、勧告や勧告不服従の場合の公表といった制裁措置を設ける場合には、その具体的な要件や相手方にあらかじめ意見を述べる機会を設けるなど手続等を明示した根拠規定を条例で定める必要がある。  1.障がい者に平等な機会とアクセスを保障するためには、差別禁止の実効性は重要な課題であるが、あまり踏み込み過ぎると、事業者の経済的自由という別の価値との関係が問題になってくる。障がい者と事業者の協力という観点からの検討が必要である。  2.ナショナルスタンダードである法が来年度からスタートする中、まだ、法の周知も不十分であり、条例で、違反企業社名の公表など企業の対応に対するハードルをいきなりあげることは、慎重にすべきである。   5 条例の必要性について  相談、紛争の防止・解決の体制整備の具体的方策及び実効性の確保のための措置(勧告、公表、罰則)の必要性の議論を通じて、条例の必要性について検討を行った。 具体的には、条例制定に関する方向性として、以下の3つの方向性が考えられる。  (ア)まずは、府ガイドライン等により普及啓発を進め、その後、障害者差別解消法施行後の状況を踏まえて、条例の必要性を判断する。  (イ)相談体制の整備等法が明確に規定していない部分を補完するための条例を制定する。  (ウ)合理的配慮の法的義務化等含む、いわゆる「上乗せ・横出し」条例を制定する。  条例の必要性  障害者差別解消法が制定されているものの、なお大阪府として条例を制定することについては、次のような意義が認められる。すなわち、障がいを理由とする差別のない、共生社会の構築に向けては、条例による裏付けが取組みの実効性を高めることになる、条例を制定すること自体に啓発効果がある、全体の仕組みがわかりやすくなり、事業者としても、利用者への対応がしやすい、相談や紛争解決の仕組みを明確にできる。こうしたことから、大阪府においても条例が必要との方向でおおむね一致した。    なお、この点に関しては、以下の意見もあった。  1.まずは、条例を制定した自治体の障がい者が、条例をどのように評価し、活用しているのかを研究する必要がある。その上で、条例を制定する場合は、障がい者のニーズにあったものにする必要がある。  2.企業においては、法の周知にかなりの労力を要するので、まずは、周知を徹底した上で、条例の検討・制定は、一歩ずつ慎重に進めていく必要がある。  条例の内容・施行時期  条例制定の方向性のうち、(イ)と(ウ)に係る条例の内容については、以下の意見があった。  1.まずは、府ガイドライン等により普及啓発を図ることが非常に重要であり、条例でも、啓発の重要性を規定すべきである。  2.障害者差別解消法の制定・施行後は、法で十分規律されておらず、地方公共団体に委ねられている事項、具体的には、相談や紛争解決の仕組みを条例で規定することに意義がある。  3.ナショナルスタンダードである法が来年度からスタートする中、まだ、周知も不十分であり、条例で、合理的配慮の法的義務化や違反企業社名の公表など企業の対応に対するハードルをいきなりあげることは、慎重にすべきである。  4.「上乗せ・横出し」の視点で法の曖昧さや不十分さを地域の実情に照らして、具体化をしていくことが課題になる。  5.条例の役割として、差別の定義を明確にし、府ガイドラインを条例に基づく指針にする、障がい者が差別事案を訴える根拠があることを明確にする、相談員に調整の権限を付与する、紛争解決機関に助言・あっせんの権限を与える、知事に勧告・公表の権限を与える、啓発の役割を行政あるいは事業者の責務として定めること等が考えられる。  6.平成28年4月の法施行にこだわらず、法施行後の国の動き、府内の相談対応等の状況や障がい者・事業者の意見等を踏まえて、条例の内容についてより検討を深めるべきである。  7.平成28年4月の法施行にあわせて、条例を制定すべきであり、条例の内容は体制整備等法を補完するようなものにすべきである。その場合は、府民の理解も得られやすい。  まとめ  部会における検討の結果、まずは、府ガイドライン等により普及啓発を図ることが非常に重要であるが、条例の制定が必要であるとの方向でおおむね一致した。  条例制定の方向性については、(ウ)の方向を考えるならば、平成28年4月の障害者差別解消法の施行にこだわることなく、法施行後の状況等を踏まえて、条例の内容についてより検討を深めるべきとの意見が多かった。  なお、その進め方として、合議体による判定など障害者差別解消法では規定されていない府独自の体制整備を図る場合、また、勧告・公表といった府独自の実効性の確保のための措置を定める場合は、根拠規定として条例が必要であることから、まずは、法施行と同時に、(イ)の方向性で条例を制定し、その後、法施行後の状況等を踏まえながら、より充実した内容に向けて、条例改正の必要性を検討すべきとの意見があった。  府におかれては、今後、障がい当事者や関係事業者等幅広い意見も聞きつつ、適切に判断されたい。    参考資料1 大阪府障がい者施策推進協議会差別解消部会委員名簿  (平成27年6月現在)  以下、氏名、所属及び職名の順に、19名の委員及び2名のオブザーバーを記載します。  (委員)  部会長 せきかわ よしたか 大阪府立大学大学院人間社会学研究科教授  あらしだに やすお 一般財団法人大阪府身体障害者福祉協会会長  ありさわ ともこ 大阪学院大学法学部教授  いなもり きみよし 京都大学大学院法学研究科教授  いのうえ せいいち 一般財団法人大阪府視覚障害者福祉協会前会長  えぐち けいこ 社会福祉法人大阪障害者自立支援協会相談室長  おおたけ こうじ 公益社団法人大阪聴力障害者協会会長  おだ のぼる 関西鉄道協会専務理事  くらまち きみゆき 公益社団法人大阪府精神障害者家族会連合会会長  さかもと ひろこ 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会理事長  しばはら こうじ 一般財団法人大阪府人権協会業務執行理事兼事務局長  つじかわ たまの 弁護士  つぼた まきこ 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会大阪後見支援センター所長  なかしま よしはる パナソニック交野株式会社代表取締役社長  ひさざわ みつぐ 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会セルプ部会副部会長  ふくしま ごう 関西大学法学部准教授  ふじもり つぎかつ 一般社団法人大阪府医師会理事  ふせ あきら 日本チェーンストア協会関西支部事務局長  よしかわ かずお 大阪私立学校人権教育研究会障がい者問題研究委員会代表委員 (オブザーバー)  くわた なおき 大阪市福祉局障がい者施策部障がい福祉課課長代理  いしい つとむ  大阪市教育委員会事務局指導部インクルーシブ教育推進担当総括指導主事  参考資料2 大阪府障がい者施策推進協議会差別解消部会開催状況  以下、開催日、議題等の順に記載します。  第11回 平成27年6月3日   1 取組の基本理念について 2 委員意見表明 3 ゲストスピーカー発言  第12回 平成27年6月29日  1 ゲストスピーカー発言 2 相談、紛争の防止・解決の体制整備の具体的方策について  第13回 平成27年7月10日  1 ゲストスピーカー発言 2 相談、紛争の防止・解決の体制整備の具体的方策について 3 実効性の確保のための措置(勧告、公表、罰則)の必要性について  第14回 平成27年7月30日  1 ゲストスピーカー発言 2 これまでの議論の整理 第15回 平成27年8月17日  1 これまでの議論の整理  以下、ゲストスピーカーについて記載します。  第11回  中内 福成 障害者(児)を守る全大阪連絡協議会代表幹事  古田 朋也 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議議長(代理出席 西尾 元秀 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議事務局長)  鈴木京子 国際障害者交流センター事業プロデューサー  第12回  近藤 博宣 大阪商工会議所総務広報部長  鍛治田 雅弘 一般社団法人全旅協大阪府旅行業協会局長  第13回  橋本 嘉夫 一般社団法人大阪府宅地建物取引業協会副会長  川端 啓壱 公益社団法人全日本不動産協会大阪府本部教育研修委員長  村井 康夫 大阪府商店街振興組合連合会副理事長  第14回  酒井 政夫 生活衛生同業組合大阪興行協会常務理事兼事務局長