資料1−2 障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書(平成30年度)〜広域支援相談員が受けた相談事例等の分析から〜  平成31年3月 大阪府   目次   はじめに  1 広域支援相談員の体制等と相談対応  (1)広域支援相談員の体制と役割  (2)広域支援相談員の対応実績  2 合議体における助言・検証の実施   (1)相談事例等  1.保育園における発達障がい児への対応  2.住宅分野における車いす利用者への対応  3.飲食店におけるヘルパーに係る対応  4.生活上の支援に関する発達障がい者への対応  5.旅行会社における身体障がいのある人への対応  6.公共施設利用時における車いす利用者への対応  (2)相談事例等の整理と検証  3 質的調査手法を用いた差別解消の取組みの検証  4 府内市町村に対する支援の取組み  (1)府内市町村との連携  (2)府内市町村の取組みに向けた支援  (3)市町村支援における課題  5 障がい理解に関する啓発の取組み  6 まとめ  参考資料1 相談事例の分類の考え方及び広域支援相談員の対応  参考資料2 合議体での事例検討様式  参考資料3 広域支援相談員と大阪府障がい者差別解消協議会   参考資料4 大阪府障がい者差別解消協議会 委員・専門委員名簿  参考資料5 大阪府障がい者差別解消協議会・合議体の開催状況    はじめに   大阪府では、障害者差別解消法の施行にあわせ、大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例(以下、「障がい者差別解消条例」という。)を平成28年4月に施行し、啓発活動と相談及び紛争の防止又は解決のための体制整備を車の両輪として、差別解消に取り組んでいます。  条例に基づく相談等の体制整備の一環として、広域支援相談員を配置するとともに、知事の附属機関として「大阪府障害者差別解消協議会(以下、「障がい者差別解消協議会」という。)」を設置し、その協議会の下に組織した合議体において、広域支援相談員が受けた相談事例等に関し総合的に分析と検証を実施してきました。  また、広域支援相談員へのヒアリングや市町村との意見交換などを通じて、広域支援相談員、市町村及び合議体の機能並びに関係性について、質的調査手法により分析しました。  本報告書は、これらの分析結果をもとに、大阪府における障がい者差別解消の取組みを検証し、条例附則に規定する条例の見直し検討に資することを目的に、とりまとめたものです。  今後とも、障害者差別解消法の趣旨を踏まえた差別解消の取組みを着実に推進していくために、府に寄せられる様々な相談事案を蓄積し、取組みの分析や評価等を行うとともに、法の趣旨の普及や障がい理解を促進する啓発活動の充実に取り組んでまいります。  1 広域支援相談員の体制等と相談対応  (1)広域支援相談員の体制と役割  大阪府では、障がいを理由とする差別に係る相談事案に的確に対応し、解決を図るため、高度な相談・調整技術と専門性を有する人材として広域支援相談員を配置しています。  広域支援相談員は、1.市町村に設置された相談窓口等(相談機関)における相談事案の解決を支援するための助言、調査、調整等、2.障がい者等及び事業者からの相談に応じ、相談機関と連携した助言、調査、調整等、3.相談機関相互の連携の促進と相談事案に係る情報の収集、分析を職務としています。  大阪府では、丁寧で質の高い相談対応と、市町村への的確な助言等を行うため、日々のケースの進捗や市町村支援の取組みに関して日報を作成し、相談員間で常に情報共有を図るとともに、定期的なミーティングによるケース検討を行うなど、広域支援相談員間の連携を強化しています。  障がいを理由とする差別は、障がい者の自立と社会参加に関わるあらゆる場面で発生する可能性があることから、上記の取組みに加え、様々な専門性を有する協議会の委員及び専門委員から選任される合議体が、必要に応じ、広域支援相談員に対し助言を行うことが出来るよう条例で規定しており、広域支援相談員が幅広い相談事案に的確に対応できるよう支援する仕組みが確保されています。  法・条例施行後3年が経過し、これまでの相談事例の蓄積と上述の合議体による助言により、広域支援相談員の対応力は向上しつつあると考えられます。  一方、法や条例の周知が進むことにより相談件数が増加し、それに伴い相談内容がさらに複雑化・多様化していることから、広域支援相談員にはさらなる専門性や調整力が必要とされ、人材育成が喫緊の課題となっています。また、個別事案の対応のみならず、身近な相談窓口である市町村職員の対応力向上を図るため、広域支援相談員が研修や情報交換を実施するなど、市町村に対する幅広い支援を行うことが求められており、そのための人材の確保も重要となっています。  (2)広域支援相談員の対応実績  広域支援相談員が対応する相談事案は、事業者における障がいを理由とする差別に関する相談等を対象としています。広域支援相談員は、市町村の相談機関への支援を通じて相談事案の解決にあたるだけでなく、直接相談にも対応し、市町村等関係機関と適宜連携しながら、必要な助言、調査及び関係者間の調整を行っています。  今年度において広域支援相談員が対応した実相談件数は、新規事案が133件(4月から12月時点)、前年度から継続している相談事案9件と合わせ、142件となっており、前年度の実相談件数(=新規事案件数)125件を上回っています。また、対応回数は979回となっており、前年度同期間の807回を上回っています。相談対応にあたっては、電話対応のみならず、実際に事業者を訪問して聞き取りを行ったり、市町村や関係者と話し合いの場を設けたりするなど、現場に向かって調整を図ることが増加してきたものと考えます。  相談者の内訳において、市町村からの相談の比率は2割程度にとどまっていますが、これまで直接対応してきた相談者の定着による複数回の相談が増加したことにより、直接相談の比率が高まったものと考えられます。  障がい種別においては、前年度同様「肢体不自由」が最も多く、全体の半数以上を占めており、次いで視覚障がい、精神障がいの順となっています。  相談内容の類型については、不当な差別的取扱いが10件となっており、前年度22件(4月から12月)より減少していますが、(参考1)にあるように、市町村から相談を受けた「不当な差別的取扱い」と分類される相談内容において、前年度同期間の10件に比べて、今年度は2件に減少していることも影響していると考えられます。合理的配慮の不提供については12件となっており、前年度同期間11件とほぼ横ばいです。一方、「その他」のうち「不適切な行為」は、前年度同期間の11件に比べ今年度は20件と増加していることから、障害者差別解消法上の差別の類型には該当しないが、事業者による不適切な発言や態度のあった事案についても、キャッチし、対応しているものと考えられます。  平成30年4月から平成30年12月までに広域支援相談員が対応した相談の状況は次のとおりです。    平成30年度大阪府広域支援相談員 相談の対応状況について  平成30年度の対応状況については、平成30年4月から12月までの件数を集計。  平成31年3月末までの件数は確定次第更新し、本報告書に反映予定。   1 平成30年度 月別・相談件数および対応回数  新規事案件数 計133件(平成29年度同期間 新規事案件数125件、年間163件)(別途、平成29年度継続件数9件あり)  相談対応回数(4月から12月) 計979回  (平成29年度同期間 807回、年間989回)  平成30年度 月別の対応状況  (以下、対応件数は、前月以前より引き続き相談対応した件数を含む)  4月 新規12件、対応件数20件、対応回数77回  5月 新規20件、対応件数31件、対応回数91回  6月 新規24件、対応件数33件、対応回数126回  7月 新規20件、対応件数29件、対応回数101回  8月 新規16件、対応件数29件、対応回数109回  9月 新規7件、対応件数23件、対応回数78回  10月 新規9件、対応件数22件、対応回数120回  11月 新規11件、対応件数20件、対応回数123回  12月 新規14件、対応件数25件、対応回数154回  新規事案件数 計133件  対応回数 計979回  (参考)平成29年度 月別対応状況  4月 新規18件、対応件数24件、対応回数86回  5月 新規19件、対応件数28件、対応回数76回  6月 新規12件、対応件数23件、対応回数123回  7月 新規11件、対応件数21件、対応回数89回  8月 新規13件、対応件数22件、対応回数75回  9月 新規12件、対応件数25件、対応回数85回  10月 新規15件、対応件数25件、対応回数116回  11月 新規14件、対応件数21件、対応回数67回  12月 新規11件、対応件数19件、対応回数90回  1月 新規12件、対応件数17件、対応回数67回  2月 新規5件、対応件数11件、対応回数34回  3月 新規21件、対応件数24件、対応回数81回  新規事案件数 163件(実相談件数 170件)  対応回数989回  1件あたりの平均対応回数7.4回  相談1件あたりの対応回数の内訳  1〜5回 92件、6〜10回 13件、11〜15回 12件、16〜20回 7件、21〜25回 3件、26〜30回 2件、31回以上 4件  (参考)平成29年度  1件あたりの平均対応回数6.1回   2 相談者の内訳  (新規事案件数133件に継続件数9件を足した142件の内訳)  市町村 31件(22%)  直接相談 111件(78%)  (直接相談の内訳)  障がい者 82件(74%)、家族 10件(9%)、支援者7件(6%)、事業者4件(3%)、行政機関(大阪府以外)4件(4%)、府庁内3件(3%)、その他1件(1%)  (参考)平成29年度 相談者の内訳  市町村 53件(31%)、直接相談117件(69%)   3 相談内容の類型  (重複があった場合、1類型に絞って集計)  (1)不当な差別的取扱い 10件  不当な差別的取扱いの内訳(10件の内数、重複あり)  拒否 6件、制限 2件、条件付け 1件、その他 4件  うち、合理的配慮の不提供も含まれると考えられるもの 1件  (2)合理的配慮の不提供 12件  合理的配慮の不提供の内訳(不当な差別的取扱いに含めた1件を加えた12件の内数)(重複あり)  物理的環境への配慮 4件、意思疎通への配慮 4件、ルール 7件、その他 2件  (3)その他 111件  (3)の内訳  不適切な行為 20件、不快・不満 38件、環境の整備 3件、相談・意見・要望 22件、問合せ 21件、その他 7件  (参考)平成29年度(平成29年4月から平成30年3月まで)  (1)不当な差別的取扱い 31件  うち、合理的配慮の不提供も含まれると考えられるもの 12件  (2)合理的配慮の不提供 14件  (3)その他 125件  (3)の内訳  不適切な行為 16件、不快・不満 37件、相談・意見・要望 41件、問合せ 27件、虐待 1件、その他 3件  (参考1)相談者ごとの相談内容の類型  以下、相談内容の類型ごとに、相談者の件数を記載します。  不当な差別的取扱い  市町村 2件、障がい者 7件、行政機関(府以外) 1件  合理的配慮の不提供  市町村 3件、障がい者 8件、支援者 1件  不適切な行為  市町村 6件、障がい者 11件、家族 2件、府庁内 1件  不快・不満   市町村 3件、障がい者 32件、家族 2件、支援者 1件  環境の整備  市町村 1件、障がい者 1件、支援者 1件  相談・意見・要望  市町村 2件、障がい者 13件、家族 4件、支援者 2件、事業者 1件  問合せ  市町村 10件、障がい者 3件、支援者 2件、事業者 2件、行政機関(府以外) 3件、府庁内 1件  その他  市町村 1件、障がい者 5件、その他 1件   4 対象分野別件数  商品・サービス 43件、福祉サービス 10件、公共交通機関 22件、住宅 5件、教育 8件、医療 8件、雇用 5件、行政機関 19件、その他 13件  (参考)平成29年度(平成29年4月から平成30年3月まで)  商品・サービス 50件、福祉サービス 10件、公共交通機関 28件、住宅 7件、教育 6件、医療 9件、雇用 10件、行政機関 35件、その他 15件  (参考2)分野ごとの相談内容の類型  以下、相談内容の類型ごとに、分野別の件数を記載します。  不当な差別的取扱い  商品・サービス 7件、公共交通 1件、住宅 1件、医療 1件  合理的配慮の不提供  商品・サービス 6件、公共交通 4件、教育 1件、医療 1件  不適切な行為  商品・サービス 7件、福祉 1件、公共交通 5件、教育 1件、雇用 1件、行政機関 3件、その他 2件  不快・不満  商品・サービス 12件、福祉 5件、公共交通 2件、住宅 1件、教育 1件、医療 3件、雇用 3件、行政機関 8件、その他 3件  環境の整備  商品・サービス 3件  相談・意見・要望  商品・サービス 6件、福祉 2件、公共交通 4件、住宅 2件、教育 2件、医療 1件、行政機関 3件、その他 2件  問合せ  商品・サービス 2件、福祉 2件、公共交通 5件、住宅 1件、教育 3件、雇用 1件、行政機関 4件、その他 3件  その他  公共交通 1件、医療 2件、行政機関 1件、その他 3件   5 障がい種別ごとの取扱い件数(重複あり)  身体障がいのうち、視覚障がい 23件、聴覚・言語障がい 11件、肢体不自由 70件、内部障がい 4件  知的障がい 10件、精神障がい 18件、発達障がい 4件、難病 4件、その他(身体以外) 1件、不明 4件、不特定 2件  (「不明」は障がい種別に係る情報が不明で分類できないもの。「不特定」は障がい全般にわたるもの)  (参考)平成29年度(平成29年4月から平成30年3月まで)  身体障がいのうち、視覚障がい 24件、聴覚・言語障がい 16件、肢体不自由 50件、内部障がい 9件、その他の身体障がい 2件  知的障がい 15件、精神障がい 31件、発達障がい 12件、重症心身障がい 1件、難病 6件、不明 16件、不特定 7件  (参考3)相談内容の類型ごとの障がい種別件数(重複あり)  以下、障がい種別ごとに、相談内容の類型の件数を記載します。  視覚障がい  不当差別 3件、合理的配慮 2件、不快・不満 10件、相談・意見・要望 6件、問合せ 2件   聴覚・言語障がい  合理的配慮 2件、不適切な行為 5件、不快・不満 1件、問合せ 3件  肢体不自由  不当差別 5件、合理的配慮 8件、不適切な行為 11件、不快・不満 20件、環境の整備 3件、相談・意見・要望 11件、問合せ 10件、その他 2件  内部障がい  不適切な行為 2件、不快・不満 2件  知的障がい  不適切な行為 3件、不快・不満 3件、相談・意見・要望 3件、問合せ 1件  精神障がい  不当差別 1件、不適切な行為 1件、不快・不満 9件、相談・意見・要望 1件、問合せ 2件、その他 4件  発達障がい  不当差別 1件、不適切な行為 1件、不快・不満 1件、相談・意見・要望 1件  難病  不快・不満 2件、相談・意見・要望 1件、その他 1件  その他(身体障がい以外)  その他 1件  不明  不快・不満 1件、相談・意見・要望 1件、問合せ 2件  不特定  問合せ 2件  (参考4)分野ごとの障がい種別件数(重複あり)  以下、障がい種別ごとに、分野別の件数を記載します。  視覚障がい  商品・サービス 11件、福祉 3件、公共交通 1件、医療 2件、行政機関 4件、その他 2件  聴覚・言語障がい  商品・サービス 1件、福祉 1件、公共交通 1件、教育 2件、医療 1件、行政機関 4件、その他 1件  肢体不自由  商品・サービス 25件、福祉 3件、公共交通 18件、住宅 3件、教育 4件、医療 1件、雇用 3件、行政機関 8件、その他 5件  内部障がい  商品・サービス 3件、医療 1件  知的障がい  福祉 1件、公共交通 3件、教育 2件、行政機関 1件、その他 3件  精神障がい  商品・サービス 2件、福祉 3件、公共交通 1件、住宅 1件、教育 1件、医療 3件、雇用 1件、行政機関 3件、その他 3件  発達障がい  商品・サービス 1件、福祉 1件、雇用 2件  難病  福祉 2件、医療 1件、その他 1件  その他(身体障がい以外)  その他 1件  不明  商品・サービス 2件、公共交通 1件、その他 1 件  不特定  行政機関 2件    2 合議体における助言・    検証の実施  大阪府では、障がい者、事業者、学識経験者等で構成する障がい者差別解消協議会を設置し、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する事項を審議するとともに、協議会の下に合議体を組織し、事業者における不当な差別的取扱いに係る紛争事案に関するあっせんや、広域支援相談員が幅広い相談事案に的確に対応できるよう、様々な事例に関する助言・検証を行うこととしています。  具体的には、広域支援相談員の受け付けた相談事案やその対応について広域支援相談員への助言を行い、総合的な分析・検証を行う「助言・検証実施型の合議体」を定期的に開催し、各年度において「障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書」(以下、「検証報告書」という。)をとりまとめ、公表しています。  障害者差別解消法及び障がい者差別解消条例は施行後3年が経過しましたが、法の周知や趣旨の普及が課題であり、特に合理的配慮の概念は、未だ社会全体に定着しているとは言えません。  このため、条例に基づく相談等の体制の効果的な運用に向け、引き続き事例を蓄積・整理し、府内市町村とも共有化するなど、今後の施策に活かしていくことが必要です。  次項以降では、平成30年度における障がい者差別解消協議会(平成30年5月、平成31年3月に開催)及び助言・検証実施型の合議体(平成30年6月から平成31年12月までに4回開催)における議論等を経て、広域支援相談員の対応実績や相談事例等についての整理・分析、この1年間の府の取組みに関する検証をしています。   (1)相談事例等  より多くの事例を分析・整理することが、制度運用の改善及び差別解消の取組みの充実につながります。  平成30年度においては、広域支援相談員が対応や判断に苦慮した(あるいは苦慮している)困難事例を中心に、相談事例の検証を合議体にて行いました。  なお、検証した相談事例は、大阪府障がい者差別解消ガイドラインで示した分野に則って整理しています。  大阪府障がい者差別解消ガイドライン(第2版)(平成30年3月策定)  「理解し合うこと」「話し合うこと」「考えること」  障がいを理由とする差別について、府民の関心と理解を深めるため、大阪府障がい者差別解消ガイドライン(以下、「ガイドライン」という。)の第1版を平成27年3月に策定し、平成30年3月にはガイドライン第2版を「解説編」と「事例編」に分冊化して改訂しました。  ガイドラインでは、国の基本方針に即して、何が不当な差別的取扱いに当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのかなど、基本的な考え方をわかりやすく示しています。また、府民の皆様により具体的なイメージをもって理解していただくために、府民生活に深くかかわる6分野(商品・サービス、福祉サービス、公共交通機関、住宅、教育、医療)ごとに事例等を記載するとともに、障がいを理由とする差別に関わる「環境の整備」や「不適切な行為」についても事例を盛り込んでいます。  差別をなくすためには、「理解し合うこと」、「話し合うこと」、「考えること」が大切です。そのきっかけに、ガイドラインを活用ください。  データ掲載URL  大阪府 「障がいを理由とする差別の解消に向けて」ウエブページ http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/syougai-plan/sabekai-kaisai.html  平成30年度 合議体において検証した相談事例について  相談対応にあたっては、実際の具体的な場面や状況を確認できないといった理由により明確な事実確認ができず、障がいを理由とする差別の当否の判断が難しい場合もあります。  しかし、法の趣旨は建設的対話によって差別を解消することです。そのため、障がい者差別であるか否かが明確にわからなかったとしても、障がい者と事業者の円満解決を図ることが広域支援相談員の第いち義的な目的であることをふまえて対応し、様々な事例を蓄積していくことが差別の解消につながります。  このため、不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供であるかが明確にはわからない事例であっても、差別の温床となると思われる「不適切な行為」等の事例も含めて、合議体での分析等の対象としています。  本報告書では、下記に示す相談事例について掲載し、合議体の意見をとりまとめています。  助言・検証を実施した合議体への提出事例  1 保育園における発達障がい児への対応  2 住宅分野における車いす利用者への対応  3 飲食店におけるヘルパーに係る対応  4 生活上の支援に関する発達障がい者への対応  5 旅行会社における身体障がい者への対応  6 公共施設利用時における車いす利用者への対応  事例の取扱いにあたっては、個人情報取扱事務の適正な執行を図る観点から、実際の事例を踏まえつつ、内容を一部変更するなどの加工を行っています。  事例1  保育園における発達障がい児への対応(福祉サービス分野)  (相談の内容)  保護者からの相談。子どもが発達障がいの診断を受けてから、保育園にて園長より突然退園を強く迫られ、別の園に転園するよう言われた。園側の理由として、本人の特性が園の方針や保育内容に合わないこと、多動のため本人の安全を確保できないことが挙げられたが、今まではそのような話を園から言われておらず、また担任との話し合いの場も設けられなかった。    (相談員の対応概要)  保護者から経過の聞き取りや意向を確認。また、当該市の保育園所管課や市障がい差別解消担当課とも情報を共有し、本件に関わる情報収集を行った。園長にも連絡を取り、保育園の現場確認も行った。  園長の主張では、「本人の安全性の確保とその特性を考慮すると、転園する方が良いと考え、転園の提案を以前からしていた」「即、退園の話をした覚えはない」とのことで、保護者の認識と食い違いが見られた。具体的な調査について、園長は頑なに拒否し、他の保育士からの聞き取り等を行うことはできなかった。    (論点)  本件のように双方の主張に食い違いがある中、園側が障がいのある児童に転園を求めたことが不当な差別的取扱いと考えることができるか。  また、広域支援相談員の働きかけに否定的な事業者に対して、どこまでアプローチすることができるか。広域支援相談員や市との連携において対応は妥当であったか。  (分類)不当な差別的取扱い  (合議体開催後)  当該市の保育園所管課や市障がい差別解消担当課とともに再度保育園を訪問し、以下、合議体からの意見として、不当な差別的取扱いに該当する可能性があること、本人への支援が困難だったとしても、保護者に対して丁寧な説明が求められること等を園長に伝えた。  (相談内容の分類と整理に関する助言)  園は強制的に退園を迫ったのか、それとも退園を促しただけで最終的に退園を選んだのは保護者であるのかについては、当事者間の食い違いがあることから、客観的に判断することが難しい部分がある。しかし、明確な事実確認ができなかったとしても、限りなく不当な差別的取扱いが疑われる事案であり、退園までのプロセスは非常に不適切であったと考えられる。  仮に園側が保護者に対して退園を迫ったという事実があれば、サービス提供の拒否とみなされ、不当な差別的取扱いに該当する可能性がある。  正当な理由の有無については、保護者と園長からの聞き取りのみでしか調査ができず、判断する根拠が十分ではないが、抽象的な危険を理由にしているのであれば、正当であるとは言えないのではないか。  園の差別的な意思が推定され、結果としてサービス提供の拒否と同様の状況を招いており、また園からの説明が十分になされていないことを勘案すると、現段階では不当な差別的取扱いと評価せざるを得ない、と考えられるのではないか。  (広域支援相談員の相談対応に関する助言)  これまでの、広域支援相談員の活動手法の1つである「調整」は、「自主解決型の調整」もしくは「助言型の調整」であり、知識や理解を促すことによって事業者側の対応の改善を促すなどにより調整を図っていたが、本件については、広域支援相談員が行う「調整」のうち、「指導型の調整」を行う必要があると考えられるのではないか。  障害者差別解消法施行令第3条を見ると、主務大臣の権限が他法令によって自治体に移譲されている場合には、その自治体の長が事業者に対して報告徴収や指導を行うことができる、と解釈することができる。そのため、指導監督権限のある機関(本件の場合は児童福祉法を所管する市の保育園所管課)と連携し、障害者差別解消法第12条に基づき指導することが可能なのではないか。  各法令の指導監督権限のある所管に対しても、本件のような事例を通して障害者差別解消法を周知し、障がい者差別解消担当課と様々な関係部局と連携して対応する必要があることを、市町村や大阪府庁内関係所管課に対して周知すべきであると思われる。  障がい者差別を解消するにあたっては、行政が事業者に対して不適切な対応の改善を求めるとともに、適切な支援や仕組みづくりなどの解決策を提示するというソフトなアプローチをすることに意義があると思われる。そのため、問題解決に当たっては、法の適用で事実認定をすることではなく、柔軟に調整を図ることが重要だろう。  (参考)  障害者差別解消法 (一部抜粋)  (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)  第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。  障害者差別解消法施行令 (一部抜粋)  (地方公共団体の長等が処理する事務)  第三条 法第十二条に規定する主務大臣の権限に属する事務は、事業者が行う事業であって当該主務大臣が所管するものについての報告の徴収、検査、勧告その他の監督に係る権限に属する事務の全部又は一部が他の法令の規定により地方公共団体の長その他の執行機関(以下この条において「地方公共団体の長等」という。)が行うこととされているときは、当該地方公共団体の長等が行うこととする。ただし、障害を理由とする差別の解消に適正かつ効率的に対処するため特に必要があると認めるときは、主務大臣が自らその事務を行うことを妨げない。  (合議体による「あっせん」の考え方に関する意見)  仮にあっせんの申し出があった場合、合議体は不当な差別的取扱いと認定する機関ではなく、解決策を見出すことを目的としていることから、不当な差別的取扱いだと明確に認定することが困難だったとしても、あっせん案を作成することはできるのではないか。  本件では、正当な理由を判断する根拠を集約するための事実確認がさらに必要である。あっせんの申し出があった場合には、事実確認を進める方法として、現在の広域支援相談員の権限でできる範囲の調査に加え、条例第10条第3項の規定に基づき、例えば立会や記録、事業者に説明資料の提出や説明を求める等によって調査を行う、というアプローチが考えられるのではないか。  保育園からの調査協力が得られない場合には、条例第11項第2項による勧告や第12条第1項の公表を行うことも想定される。知事が行う勧告や公表は、事業者にとって社会的な制裁を受けることと同様の効果があることから、当該園のみならず、他の保育園への影響も考えられる。しかしながら、事業者側が弁護士を立てる等の対応をすることも考えられることから、勧告や公表の判断は慎重にすべきであろう。    (参考)  大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例 (一部抜粋)  (あっせん)  第十条 知事は、前条第一項の規定によるあっせんの求めがあったときは、合議体にあっせんを行わせるものとする。  2 合議体は、前条第一項の規定によるあっせんの求めがあったときは、当該あっせんの求めに係る紛争事案が法第八条第一項の規定に違反する取扱いに係るものでないと認めるときその他あっせんを行うことが適当でないと認めるときを除き、あっせんを行うものとする。  3 合議体は、あっせんを行うために必要があると認めるときは、紛争事案の関係者に対し、あっせんを行うために必要な限度において、必要な資料の提出及び説明を求めることその他の必要な調査を行うことができる。  (勧告)  第十一条 協議会は、次のいずれかに該当する者に対して、当該あっせんに係る紛争事案を放置することが著しく公益に反すると認めるときは、知事に対し、必要な措置を講ずべきことを勧告するよう求めることができる。  一 前条第二項の規定によりあっせんを行った場合において、正当な理由なく、あっせん案を受諾せず、又は受諾したあっせん案に従わない者  二 正当な理由なく、前条第三項の調査を拒み、妨げ、又は忌避した紛争事案の関係者  三 前条第三項の調査に対して虚偽の資料の提出又は説明を行った紛争事案の関係者  2 前項の規定による勧告の求めがあった場合において、知事は、必要があると認めるときは、当該勧告の求めに係る者に対して、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。  (公表)  第十二条 知事は、前条第二項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。  (事業者側の対応に関わる意見)  園の主張する、本人の行動の「危険性」については、抽象的なものではなく、具体的な説明をすることが求められるのではないか。  実際に本人を園で受け入れることに負担が大きかったとしても、園の姿勢として、保護者に対し、本人への支援や合理的配慮に努めたけれども、これ以上の対応は難しかったといった説明を丁寧に行った上で、園と保護者との間で円満に話し合いがなされるべきはないかと思われる。    (保育における課題について)  障がい児を受け入れるにあたり、加配を付けるなど体制を整えるだけではなく、その園の保育力・支援力が問われるのではないか。保育園も受け入れにあたって困ることや悩むことがある中、障がい児への対応について支援体制を充実させなければ、根本的な解決には至らないのではないか。  本件と類似の事例は多くあると考えられるため、今後このようなことが繰り返されないような対応が必要であると考えられる。また、入園時には障がいの診断はなかったが、入園後に発達障がい等の診断がなされる事例もあることから、本件を次につながるようなかたちで示すと良いのではないか。  事例2  住宅分野における車いす利用者への対応(住宅分野)  (相談の内容)  障がい者からの相談。賃貸住宅について、宅建業者を通じて管理会社に対し、車いす利用者が入居できるかどうか問い合わせたところ、「車いす利用者は入居できない」と言われた。この発言は、入居差別に当たるのではないか。  (対応概要)  広域支援相談員が宅建業者及び管理会社に対して事実確認を行ったところ、宅建業者は「管理会社より、スロープや扉などの住宅改造ができないことや、車いすで廊下に傷がつく等の話があり、車いす利用者の入居はできないと言われた。」とのことであった。また、管理会社からは、「正式な申込みではなく問合せの段階で、バリアフリーに対応しておらず車いす利用者の入居は難しいとは説明したが、入居できないとは言っていない。」「家主の意向で、高収入が見込まれる人等希望の条件があるため、入居が難しいかと思った。」「入居審査は信販会社や家主、管理会社の総合審査で判断し、却下の場合はその理由を伝えないこととしている。」という回答があった。  本件について、大阪府住宅まちづくり部と情報共有を図ったところ、当該所管課は宅建業者に対して指導監督権限はあるものの、管理会社や家主に対する権限を有していないとのことであった。  広域支援相談員より本人の意向を確認すると、「宅建業者は十分に障がい者を理解し、対応している。」「宅建業者と管理会社との関係悪化は避けたいため、各事業者への働きかけはこれ以上求めない」とのことであった。しかし、1入居差別について、誰がどのような理由で拒否しているのか明らかにしてほしい、2本件について会議の場で報告し、このような現実があることを共有してほしい、という2点を要望された。  (論点)  管理会社側の「物件はバリアフリー対応していないため入居が難しい」という主張が正当な理由に当たると言えるか否か。なお、賃貸住宅の入居手続きにおいては、入居審査が却下された場合、誰がどのような判断をしたのかが不明瞭な仕組みとなっている。  また本件について、相談者は上記2点以上の対応を求めていなかったが、もし管理会社や関係者へのさらなる働きかけを望んだ場合には、広域支援相談員としてどのような対応が考えられるか。  (分類)不当な差別的取扱い  (相談内容の分類と整理に関する助言)  住宅分野においては、家主の意向が契約に大きく影響しており、家主が賃借人に関する希望条件を管理会社に伝えていた場合に、入居が難しいと言われた理由が家主の希望条件によるのか、障がいを理由としているのか否かは、判然としない部分があると思われる。  家主が賃借人を選んでいることは、契約自由の原則から違法性があるとは言い難い。その条件が伏せられていれば、不当な差別的取扱いに該当すると明確に言うことは難しいかもしれないが、車いす利用者であることを理由に入居を断わった場合は、不当な差別的取扱いだと考えられる。  入居できない理由として、物件がバリアフリーに対応しておらず住宅改造をされては困ることを管理会社は挙げているが、その言い分が抽象的な場合や、自身で住宅改造の費用を負担し原状復帰するにもかかわらず入居を認めないという場合は、正当な理由があると言えないのではないか。  障がい者に対する入居差別については、実際には障がいを理由として断っているにもかかわらず、障がい者であることとは別の理由に紐づけて説明されることがある。本件において、障がいを理由としているか否かは家主や管理会社から明確に示されていないものの、障がい者に対し「わからない」「不安があり受け入れに躊躇している」という姿勢が表れているのではないか。  また、管理会社は「正式な申込みはされておらず、断ったものではない」と主張しているが、問合せ段階であったとしても、入居が難しいと言われたことは、本人にとって事実上断られたことと同様であるため、入居差別に当たる可能性があると整理すべきではないか。  バリアフリーに関して言えば、一定の要件を満たす物件であれば、大阪府福祉のまちづくり条例において、地上階にある住戸の出入口まではバリアフリー化が求められている。ただ、その物件が古くバリアフリーに対応していなかったとしても、昨今の時世の流れからすれば、家主との話し合いをもって歩み寄ることを模索することが必要ではないか。  (事業者側の対応に関わる意見)  宅建業者は家主と入居希望者のニーズの狭間で仲介する立場にある中、入居差別してはいけないことや、また家主等に対しても啓発する必要があることを意識はしているものの、物件所有者である家主のほうが力を持っているという現実がある。そのため、住宅分野においては、家主の障がい者に対する意識改革が根本的に必要であると思われる。  この事例について、家主の希望条件がうまく伝わっていなかったという、宅建業者、管理会社、本人とのコミュニケーションに行き違いのあった案件だと仮に捉えた場合、三者でどのようなやりとりをすればスムーズであったと考えられるか。内覧の際に、宅建業者と本人、管理会社も立ち会った上で、具体的なアクセスの確保や住宅改造の必要な箇所、入居にあたっての約束事を確認した上でなお入居が困難という結果であったならば、本人は障がいを理由に差別を受けたという印象は持たなかったかもしれない。  宅建業者においても障がい者に対する理解にばらつきがあり、本人にとっては丁寧に対応してくれる業者は貴重な存在であったと思われる。しかしながら、入居差別は繰り返し起こっている問題であることから、このような事例を通して議論を深め、住宅分野全体としてどのようなことができるのか、考えていく必要があるのではないか。  (広域支援相談員の相談対応に関する助言)  本件については具体的な調査にまでは至らなかったが、本人としては個別案件としての解決は望まないものの、入居差別の問題を会議体等に取り上げることで解消してほしいという思いであったと思われる。このような事例が障がい者差別に当たりうるという判断をはっきりと示し、次につながるようにすべきではないか。  入居差別は長年起こっている問題であり、広域支援相談員だけでアプローチすることは難しいのではないか。そのため、広域支援相談員を含めた障がい福祉企画課として、住宅分野に関わる他課とも連携しながら解決を図ることが求められると思われる。  (合議体による「あっせん」の考え方に関する意見)  本件において、仮にあっせんを申し出られた場合には、障がい福祉企画課あるいは広域支援相談員が家主や管理会社に調査を行うことも考えられ、事業者からの話を聞く中で具体的な事実や理由が明確になってくれば、別の判断になる可能性もある。  現状、宅建業者に対する指導監督権限は行政が有している一方で、家主等に対しては、行政が啓発は行なっているものの、府住宅まちづくり部には指導監督権限がない。法や条例などの制度によって、障がい者に対し入居差別をしてはいけないことがルール化され、広域支援相談員が介入し家主等に対しても障がい者差別について助言・調整することができれば、宅建業者が家主にも働きかけやすくなるのではないか。    事例3  飲食店におけるヘルパーに係る対応(商品・サービス分野)  (相談の内容)  市より相談。ヘルパー同伴の障がい者が、飲食店にてバイキングを注文しようとしたところ、ヘルパーにも、せめてワンオーダーでいいので注文してほしいと店側から言われた。結局、本人はその店に入店はしなかったようだが、このような事例が差別に当たるかどうか。  (対応概要)  市に対して、ヘルパーはあくまで障がいの部分を補てんする存在であるため、例えば補助犬のように支援するものと同様の役割として捉えられるのではないか。ヘルパーがオーダーしないことを理由に入店を拒否しているのであれば差別に当たるのではないか、と回答。  その後に再度、大阪府障がい福祉企画課内で協議し、ヘルパーは「人」であることから、補助犬と同様の役割と考えることはできず、現時点で差別に当たると言い切ることは難しいのではないかという意見が挙がったため、市には修正した見解を伝えた。  (論点)  バイキングという飲食の提供スタイルを考慮したとしても、いんしょくてんがわわ、ヘルパーにオーダーを求めずに入店できるように柔軟な対応をするという合理的配慮を提供すべきだったといえるか。  (分類)合理的配慮の不提供、問合せ  (相談内容の分類と整理に関する助言)  店側にとっては、ヘルパーか否かにかかわらず、バイキングを頼む客と頼まない客がともに来店した場合に、頼まない客に対してワンオーダーをしてもらう方針としているならば、障がいの有無とは関係がないため、障がいを理由としている差別とは言い難いと思われる。ただし、ヘルパーは障がい者を支援する立場であったことから、当該障がい者が店の方針なりルールなりを柔軟に変更することを求めたのであれば、合理的配慮の不提供として捉えられるのではないか。  ヘルパーの料金を求めないといった対応が望ましいとは思われるが、店側は、特にバイキングという提供スタイルの性質上、飲食をしてしまった場合を危惧している。例えば、明らかに注文していない人が一口だけ食べる、というのを許してしまうと、エスカレートしてしまったり線引きできなくなったりすることから、店側としては悩んだ挙句にワンオーダーで譲歩することとし、配慮を行ったのかもしれない。  一方、障がい者の立場からすると、ヘルパーと飲食店等に来店してヘルパーへの費用が発生する場合には、利用者(障がい者)自身が支払うことが多く、社会参加に負担を強いられていると感じる。また、障がい者の場合は、家族や友人と行く時と、ヘルパーと行く時とで、関係性が同じではないことを理解してもらいたい。そのため、店舗にはできるだけ柔軟に対応してもらい、もしヘルパーも飲食してしまった場合には料金を支払ってもらうという合意形成を図っておくことも考えられるのではないか。  もしヘルパーがワンオーダーしないと入店できないというのであれば、店員が代わりに本人の食事を手伝うといった配慮をするといった対応も考えられる。ただし、バイキングという形式上、店側は人件費を抑えていることが推測されるため、店員が介助をする方が負担は大きいだろうと思われる。  店側の対応に違法性があるとまでは言わないが、本人の負担を鑑みると、ヘルパーに対する費用負担は求めないが、ヘルパーも飲食してしまった場合には料金を支払ってもらうという約束をするのが望ましい対応かもしれない。  事例4  生活上の支援に関する発達障がい者への対応(福祉サービス分野)  (相談の内容)  発達障がい者の家族より広域支援相談員に相談。生活上の支援を事業者から受けていたが、本人の障がい特性に応じた適切な支援を求めるも改善がなされない。また、事業者から、今まで家族が求めてきた要望をこれ以上繰り返すのであれば、支援することはできないと言われた。これは、障がい者差別ではないか、とのこと。  広域支援相談員が事業者に対し事実確認を行ったところ、事業者としては、相手がたに既に謝罪を行い、障がい理解の研修を実施するなど、できる限りの対応をしてきたが、どのような支援内容を提案しても家族が納得しない。そのため、支援の限界であるとの結論に至り、これ以上の要望を出さないことを条件に、今後の支援について検討する旨を伝えたとのこと。  (対応概要)  家族や事業者、関係機関に対し、面談や訪問等による事実確認及び調整を図ったが、すぐさま解決の糸口をつかむことは難しく、対応継続中。  (論点)  本人への支援の継続が困難なことを理由に、支援を実質的に拒否することは、「不当な差別的取扱い」といえるか。また、本人や家族が求める障がい特性に応じた支援は「合理的配慮」といえるか。  (分類)不適切な対応、不快・不満  (相談内容の分類と整理に関する助言)  相談者から、事業者による行為のどの部分が障がい者差別であったのかが具体的に示されていないため、障がい者差別の問題として取り扱うことは難しいのではないか。  事業者において、専門性が追い付かず、人員も十分に確保できない状況のなか、本人や家族の要望を満たした支援を十分に行うことができないことをもって、支援を行うにあたり条件を付すことは、障がいを理由として差別をしているとは言えないだろうと思われる。  事業者が、これ以上の要望を出すのであれば支援しないと一方的に打ち切ったことは適切ではなかったが、本人及び家族への対応が十分ではないという相談であれば、事業者におけるサービスや支援内容の問題であり、障害者差別解消法に規定する差別の枠組みで検討するものではないのではないか。  家族は、障がい特性に応じた支援を合理的配慮として事業者に求めているが、障がい特性を理解し個別のニーズに応じた支援を行うことと、合理的配慮の提供とは区別されるべきではないか。前者は、福祉サービスの質の問題であるのに対し、合理的配慮とは、障がいのある人を障がいのない人と同じように取り扱うことが結果として著しい機会の不均等となる場合に調整を求め、機会の平等を確保するものであることから、機会不平等の是正という観点から考えて、特別な取扱いが正当化されるかどうかがポイントであると思われる。  (事業者側の対応に関する意見)  事業者は、障がい特性を踏まえて支援すべきであり、専門性や人員が不足している点については改善を図っていくべきではないか。  事業者としては、家族への対応に疲弊しているなかで、事業が成り立たなくなる状態を避けるためにも、一定、対応に線引きをする必要はあるだろう。しかしながら、本人や家族の要望が高いことのみを一方的に理由として挙げ、支援ができなくても仕方がない、と判断することは、不適切ではないかと思われる。  事例5  旅行会社における身体障がい者への対応(商品・サービス分野)  (相談の内容)  他府県に居住する身体障がい者より広域支援相談員に相談。他府県の旅行代理店(西日本本部の所在地は大阪府内)でパッケージ旅行を申し込んだ際、航空機での座席の配慮を希望する旨を伝えたところ、窓口担当者より、「障がい者は面倒。」と言われた。相談者は、旅行には参加したものの、希望する座席の配慮は なされなかったとのこと。  旅行会社側は窓口担当者の対応について相談者に謝罪をしたが、その後何の説明もないまま、当該旅行会社で今後の取引を拒否される事態に至った。これは障がい者差別ではないかとのこと。  (対応概要)  広域支援相談員が旅行会社の西日本本部に事実確認をしたところ、窓口担当者の発言について本人には謝罪したが、「障がい者は面倒」との発言は、本人が障がい者であるからではなく、本人から再三の要望があったことを理由としているとのことであった。座席の配慮については、パッケージ旅行の場合は当日に希望の座席を確保できないこともあることから、要望に対応できなかったとのこと。  また、今後の取引を断ったことについては、本人が今回の旅行について訴訟を起こすような旨を強く主張してきたことに加え、本件以外のこれまでの経過を含めて断ることとした、という回答であった。  (論点)  旅行会社が今後の取引を断ったことが、不当な差別的取扱いといえるか。また、パッケージ旅行において座席の確保ができなかったことが合理的配慮の不提供といえるか。  他府県の相談について、広域支援相談員はどこまで対応できると考えられるか。また、相談受理後のプロセスの中で内容が複雑化した事案について、どのようにアプローチできるか。  (分類)不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供、不適切な対応、不快・不満  (相談内容の分類と整理に関する助言)  「障がい者は面倒」という発言など、窓口での対応は差別的であると言える。結果としてパッケージ旅行の契約を締結しツアーに参加しているが、サービスを提供されたから良しとするのではなく、個々の事例で検討をしていく必要があり、本事案における窓口対応については問題があったと思われる。  今後の一切の取引を拒否したことが「障がいを理由としている」か否か、正当な理由があるか否かについては、事業者から十分な説明がなく、事実関係や具体的な理由が明確にならないと判断できないが、広域支援相談員に強制的な調査権限が与えられていないことを考えると、これ以上の調整は困難であると思われる。  相談者との取引を拒否したことが、これまで不適切な言動を繰り返してきたことが理由であったとすれば、それは事業者の経営判断によるものなので、合議体で判断することは難しいのではないか。最終的には、違法な権利侵害に当たるか否かの判断は、民事訴訟などの法的措置で対応することも考えられる。  旅行代理店は、添乗員に座席の配慮が必要な旨を伝えて配慮の提供に努めることはできたと考えられるため、過重な負担があったとはいえないのではないか。座席の配慮について、ルールがあって対応できないとするのではなく、対応するためにはどのような方法が現実に考えられ、かつ実施可能であるのかを検討していく必要がある。  (広域支援相談員の対応に関する意見)  広域支援相談員には、調査に当たって強制的な権限はないことから、広域支援相談員が十分に調査できない場合には、障害者差別解消法に基づき、主務大臣から事業者に対し調査するという方法を検討できないか。  本事案は他府県に居住する人から他府県で起きた事案に関する相談である。条例では、相談対象となる障がい者等や事業者の範囲について規定はないが、事案が府内で起きたものか、事業者が府内に所在するかというのが一つの合理的解釈であると考えられる。旅行がいしゃの本部が府内にあれば調整の範囲内であると考えられるが、広域支援相談員がどこまで実効的な調整ができるのかということは、今後、整理が必要だろう。  事例6  公共施設利用時における車いす利用者への対応(商品・サービス分野)  (相談の内容)  手動車いす利用者から広域支援相談員に相談。相談者は、2つの公共施設(A施設と、別場所にあるB施設)を管理する事業者に対し、事前に施設利用について確認したところ、事業者からA施設の方がB施設より段差が少ないと言われたため、A施設を利用することとした。当日、相談者がA施設に電動車いすでいったところ、段差が高く、スタッフ複数名で持ち上げるも車いすの重量等で持ち上げられなかったため、結局は利用を諦めた。その際、B施設の方が、段差の高低差が小さく通路の幅が広いなど、B施設であれば利用できたかもしれないことがとわかった。それであれば、事業者は事前確認時にB施設を案内すべきであり、今回の対応は障がい者差別ではないか、とのこと。  広域支援相談員が事業者に事実確認をしたところ、事業者側は、相談者が以前にA施設を利用したことがあることや、A施設の方が相談者の自宅から近いことを考慮して施設の情報を伝えたとのことであった。また、事業者としては、相談者が以前利用した際は手動車いすであったことから、A施設で対応可能と考えたとのことであった。  (対応概要)  広域支援相談員より事業者に連絡。事業者より相談者に説明と謝罪をするとのことであった。後日、相談者から連絡があり、事業者と相談者とで話し合いをし、今後、両施設に手動式車いすを配置することになったとのこと。  (論点)  合理的配慮を提供しようとしていたにもかかわらず、事前に十分な調整ができていなかったため、結果的に必要な支援ができなかったことが、合理的配慮の不提供といえるか。  (分類)不適切な行為、不快・不満  (相談内容の分類と整理に関する助言)  相談者は結果として施設を利用できなかったが、合理的配慮の提供には過重な負担があったと考えられる。しかし本事案は、事前の調整が十分にできていなかったことが原因で起こっていることから、双方の建設的対話がなされていたか否かが、合理的配慮の不提供と捉えるポイントの1つではないか。  施設側は、合理的配慮を提供しようとしたという点で「合理的配慮の不提供」とまではいえないが、対応が不十分であった事案であると考えられる。 はいりょの ふていきょー」とまでわ いえないが、 たいおーが ふじゅーぶんで あった じあんで あると かんがえられる。  事業者は、安全配慮義務があり、車いすを担いで複数の段差を超えることは、事故につながりかねない危険な行為であるため、職員が業務上対応できなかったことには、一定の合理性があるのではないか。合理的配慮の不提供か否かを考えるにあたっては、過重な負担の判断基準以外にも、合理性があるかどうかの検討が必要となる事例であるといえる。  事業者が、事前確認時にB施設を案内しなかったことが、障がいを理由としたものなのか、慎重に検討する必要がある。本件においては、相談者が施設利用をできなかったとしても、事業者が相談者の施設利用を拒否する意図や事情が確認できないのであれば、障がいを理由とした拒否にはあたらないのではないか。  (事業者側の対応に関する意見)  手動車いすを予め配置するという改善策がなされたが、それ以外にも、再発防止策を検討したほうが良いのではないか。例えば、障がい者も利用することを見据えた対応マニュアルの改善や、その施設の設備状況について確認するなど、より丁寧な対応を検討する必要があるのではないか。   (2)相談事例等の整理と検証  条例 附則における「条例の見直し検討」に資することを目的に、助言・検証実施型の合議体において事例の分析等を行ってきました。合議体での主な意見と現時点での大阪府における整理・検証については次のとおりです。  1 合議体での主な意見  ア 広域支援相談員の相談対応に関する助言  広域支援相談員による「調整」は、これまで、知識や理解を促すことによって事業者側の改善を促すといった対応を図っていたが、時に、「指導型の調整」を行う事案が生じてくることが考えられる。その場合には、指導監督権限のある機関と連携し、障害者差別解消法第12条に基づき指導するなど、様々な関係部局と協力して対応することが必要ではないか。  本人のニーズとして、個別的な解決は望まないという意向であったとしても、障がい者差別に当たる事例を明確に示していくことで、次につながるようにすべきではないか。その際、広域支援相談員だけではアプローチすることが難しいことも考えられるため、広域支援相談員を含めた障がい福祉企画課として、関係機関と協力しながら解決を図ることが求められると思われる。  行政が障がい者差別を解消するにあたっては、裁判のように法の適用で事実認定をすることを主とするのではなく、事業者に対して不適切な対応の改善を求めるとともに、適切な支援や仕組みづくり等の解決策を提示するといった、柔軟な調整を図ることが重要ではないか。  広域支援相談員が対応する事案に係る障がい者や事業者の範囲について、条例では規定はなく、当該事案の起きた場所や事業者所在地が府内にあるというのが合理的解釈として考えられるが、広域支援相談員がどこまで実効的な調整ができるのか、今後、整理が必要だろう。  イ 相談内容の分類と整理に関する助言  障がい者と事業者の間で食い違いがあり、明確な事実確認ができなかったとしても、事業者側の差別的な意思が推定され、結果としてサービス提供の拒否と同様の状況を招いており、また十分な説明が障がい者等になされていないような事例については、不当な差別的取扱いと評価せざるを得ないのではないか。  サービスの提供を拒否された理由として、事業者が障がい者であることとは別の理由を紐づけて説明していても、その背景として実際には障がいを理由として断っていることも考えられる。そのため、具体的な理由について判然としない部分があったとしても、不当な差別的取扱いの可能性がある事例として考える必要があるのではないか。  合理的配慮の不提供として捉えられる事案においては、事業者がどのように対応すべきか悩むことも想定されるが、障がい者の立場を理解し、できるだけ柔軟に対応し、互いに話し合って合意形成を図ることが望ましいものと思われる。  合理的配慮を提供しようとしたが、調整が十分でなく結果的に配慮ができなかった事案については、合理的配慮の不提供とまではいえないかもしれないが、対応が不十分だった点については改善がなされるべきであり、より丁寧な対応を検討することが求められる。  一方で、個々の障がい特性に応じたサービスや支援が障がい者にとって十分でないという相談については、「合理的配慮は、障がいのある人を障がいのない人との機会不平等が起こる場合に求められる調整である」という観点から、合理的配慮の範疇で考えられるか否かを整理する必要があるのではないか。  ウ 合議体による「あっせん」の考え方に関する意見  合議体は不当な差別的取扱いと認定する機関ではなく、解決策を見出すことを目的としていることから、差別の当否の判断が困難だとしても、あっせん案を作成できるのではないか。  あっせんの申し出があった場合には、正当な理由を判断する根拠を集約することが必要であることから、さらなる事実確認が必要だと判断される場合、合議体は、広域支援相談員の権限でできる範囲の調査に加え、条例第10条第3項の規定に基づき、例えば立ち合いや記録、口頭での説明等によって調査を行うことが考えられる。  エ 府の役割に関する助言  各法令の指導監督権限のある所管に対しても、障がい者差別の事例を通して障害者差別解消法について啓発するとともに、障がい者差別解消担当課と様々な関係部局と連携して対応する必要があることを周知すべきであると思われる。  障がい者差別の事例は繰り返し起こっている問題であり、事業者によって障がい理解にばらつきもあることから、事例を通して議論を深め、その問題に関わる関係機関全体で考えていく必要があるのではないか。  2 府における整理と検証  ア 広域支援相談員の相談対応  「指導型の調整」が必要な相談対応にあたっては、指導監査権限のある行政機関等、様々な関係機関と情報共有や連携を図り、障がい者差別の解消に向けて事業者に働きかけていきます。  また、個別事案として解決には至らない事例があったとしても、当該事例を明確に示していくことで事業者の適切な対応を促し、関係機関と協力しながら、今後の障がい者差別の解消につながるよう取り組んでいきます。  事業者による障がい者差別の解消に向けては、不適切な対応の改善を求めるとともに、相談事例の経過や紛争に至った要因分析をふまえた適切なアプローチを検討の上、支援や仕組み作り等の解決策を提示するなど、柔軟な調整を図っていきます。  広域支援相談員が対応する事案は、他府県に及ぶことも想定されますが、事例に応じて柔軟に調整を図りながら、広域自治体としての役割を適切に果たしていけるよう、他府県との連携を図っていきます。  イ 相談内容の分類と整理  事実確認が十分でなく、正当な理由があるかの判断が困難な事例であったとしても、事業者側の不適切な対応によって障がい者の権利利益が侵害されているか否かという観点から、不当な差別的取扱いが疑われる事例として捉え、検証していきます。  また、事業者にサービス提供を断られたことが、障がいを理由としているか否か判然としなかったとしても、その事例の経過をふまえ、障がいを理由とする差別が背景にある可能性を鑑みて、対応していきます。  合理的配慮について、事業者側にとっては、事務・事業の目的・内容・機能の本質や、過重な負担を考慮した上で、どのように対応すべきか悩ましい事例も生じていることが考えられます。さらに、合理的配慮を提供しようとしたが結果的に提供できなかったという事例も想定されます。  そのような事例において、府は、合理的配慮の不提供の当否の判断を主眼とするのではなく、障がい者の立場に立ちながら、望ましい対応や改善策について事業者とともに話し合い、考える姿勢を培うことができるよう対応していきます。  そして、合理的配慮は「障がいのある人が障がいのない人と同じように活動することができるようにするために、個々の場面で、物理的環境や時間及び場所等を調整したり、人的支援などを行ったりすることで、同等の機会を提供するためのもの」(大阪府障がい者差別解消ガイドラインより抜粋)という考え方に照らし合わせ、認識の共有を図っていけるよう、今後も様々な事例の検証を積み重ねていきます。  ウ 合議体による「あっせん」の考え方  合議体は不当な差別的取扱いと認定する機関ではなく、解決策を提示することが第一義的な目的であるという趣旨を鑑み、不当な差別的取扱いの疑いがあると考えられる場合は、あっせん可能なものとして対応します。  あっせん案の作成にあたっては、正当な理由の有無について根拠を集約する必要があることから、合議体の権限によって障がい者や事業者、関係機関を調査し、具体的な事実を確認するといった手続きを想定しながら、事例検証を行っていきます。  エ 今後の課題  前述のとおり、大阪府では平成28年度以降毎年、「助言・検証実施型の合議体」を開催し、広域支援相談員への助言や、相談事例の分析と蓄積を図ってきました。これまでの合議体での議論により、障がい者差別の解消に関する様々な視点やあっせんの考え方を整理してきました。  広域支援相談員の相談対応においても、柔軟な調整を図りつつ、改善が必要であると考えられる事案には指導的な姿勢で働きかけるなど、対応力が向上してきたものと考えます。これまでの検証により、広域支援相談員の「調整」のあり方や他機関との連携、障がい者差別に関する考え方が深まってきたことから、今後も継続的に、合議体で議論を重ねることが大切であると思われます。特に、「合理的配慮」の概念はまだ十分に浸透しているとは言えないことから、合理的配慮に係る個別具体的な事例を通して議論し、考え方を整理することが必要だと考えます。  また、「あっせん」については、具体的なスキームの検証や、あっせん案を作成するにあたって想定すべき事項など、より深く議論と検証を重ねていくことが求められます。  広域支援相談員が受け付けた相談事案に対する「助言・検証」や「あっせん」を行う合議体、そしてその母体となる障がい者差別解消協議会が、それぞれどのような役割・機能をもち、どのような仕組みを作れば、相談事例の紛争解決や、障がい者差別に関わる紛争の未然防止、府民・事業者に向けての周知・啓発を図っていくことができるのか、課題や今後の取組みを検証することが必要であると考えます。  これらの検証により、解消協議会が、法に規定される「障がい者差別解消支援地域協議会」としてどのような取組みが必要なのかといった議論につながるものと思われます。  (合議体や解消協議会の機能については、「4 質的調査手法を用いた相談事例の検証」においても検証しています。)  オ 府の役割  「府の役割」については、本報告書「6 まとめ」において後述します。    3 質的調査手法を用いた 相談体制整備の検証   (1)目的  平成28年度より施行した大阪府障害者差別解消条例に定めた相談体制の整備状況について検証するため、相談体制の基盤となる、市町村、広域支援相談員、合議体それぞれの機能・役割と関係性について、質的調査手法を用いた分析を実施しました。また、この分析を通して、合議体の母体となる解消協議会の役割についても検討しました。  本調査は、市町村と大阪府広域支援相談員との関係や連携のあり方、広域支援相談員に対して合議体が果たしてきた機能等について具体的に示し、その相互作用を分析することにより、条例に規定した相談体制の整備状況について検証することを目的としています。   (2)方法  条例に規定する相談体制の整備状況について、  ア 大阪府障害者差別解消条例運用状況に関するワーキング  イ 広域支援相談員による出張情報交換会  ウ 大阪府障害者差別解消ワーキング(市町村ワーキング)  で得られた意見に関する記録を基に、質的調査手法を用いて分析を行いました。  アは、障害当事者や学識者等から条例に規定した相談体制の運用状況に関する意見聴取の場、イ及びウは広域支援相談員と市町村との情報交換の場です。いずれも、1.市町村や広域支援相談員、合議体に関する状況や、評価、課題等について議論がなされていること、また、2.相談体制の整備状況に関する意見の偏りが出るのを避けるために、構成員の異なる様々な会議体による記録を用いる必要があること、という2点の理由により、これらのデータを本調査の分析対象としました。  質的調査とは(大阪府立大学 たがき まさくに)  社会調査は、えられたデータを数値に置き換えて統計的処理をする「量的調査」と、言葉の意味内容のまとまりや つながりを見出していく「質的調査」に区分されます。前者の例にはアンケート、後者のそれにはインタビュー(聞き取り)調査や自由記述があります。それぞれの手法に利点と課題がありますが、本報告書は質的調査をベースにしています。同手法は、調査への協力者や事例数が少ないという課題があるものの、事象が生じた場面、関係する人々の発言や行動を具体的に検討することができます。  今年度の報告書の特徴、府及び関係会議等の議論を質的に分析したことです。このような手法は、専門職の業務過程の分析に有効と考えられています。読者の方々が、議論の展開を臨場感をもって理解してくだされば幸いです。  1.分析対象としたデータ  本調査で分析対象としたデータは、次のとおりです。  ア 条例運用状況に関するワーキング  イ 平成30年度 大阪府広域支援相談員 出張情報交換会(府内市町村がブロックごとに集まり開催、計4回分のデータを分析)  ウ 平成30年度 第1回大阪府障害者差別解消ワーキング(市町村ワーキング)  2.分析の手続き  データの分析に当たっては、以下のような手続きをとりました。  ア 各意見聴取・情報交換の記録ごとに、その内容を表す単語や短い語句(コード)を付ける。  イ 類似のコード同士をまとめ、その1つのまとまりを「カテゴリー」とする。  ウ 上記Uで作成したカテゴリー間の関連付けを行う。    (3)調査結果  上記のような分析により得られたコードについて、市町村、広域支援相談員、合議体それぞれの機能と関係性に関わるコードを整理し、カテゴリーを抽出しました。各コードを下位カテゴリー及び上位カテゴリーに分類し、表2のとおり整理しました。  下記に示すコードは、代表的なものを いち例として抜粋しており、このコードに類似した記述は、他の記録においても見られます。  なお、匿名性担保のため、データは事実関係を損ねない程度に加工して掲載しています。  (注釈)各コードの末尾には、主な条例運用状況に関するワーキングの意見、広域支援相談員の意見、市町村の意見について、それぞれ(ワーキング)、(相談員)、(市町村)と示しています。  以下、データから作成したカテゴリーと代表的な記述について、上位カテゴリー、下位カテゴリー、代表的なコード(一部抜粋)の順に記載します。  「市町村の取組み」のうち、  上位カテゴリー 1 相談の内容が多種多様  下位カテゴリー ア 差別と一般的な生活支援が混在  コード 生活の困りごとは市町村が差別に気づくポイントである(ワーキング)、差別の部分だけでは解決できない事例がある(相談員)、差別しか対応しないという区分けはしていない(市町村)、「その他の相談」は思い起こせば差別と関わる内容もあった(市町村)  下位カテゴリー イ チーム作り  コード 小さい相談でも聞けるようにし、臨時で集まることも想定(市町村)、サービス調整が必要か見て関係機関と連携(市町村)、基幹相談センターでノウハウの引継ぎを担保(市町村)、相談対応チームは市町村だけの対応ではない(市町村)  上位カテゴリー 2 相談対応が困難  下位カテゴリー ア 対応と判断の難しさ  コード 窓口では差別に当たるかどうかの判断は難しい(ワーキング)、「相談の流れ」は、なかなかその通りにはいかない(市町村)、障害者の話をどこまで聞くかも難しい(市町村)  下位カテゴリー イ 自分以外に担当がいない不安  コード 自分だけで対応しており判断や対応をするのは怖い(市町村)、担当が少なくノウハウの引継ぎが難しい(市町村)、事例も少なく一緒にやって教えることが難しい(市町村)  上位カテゴリー 3 「地域」の活用  下位カテゴリー ア 地域に特色  コード 良い事例も悪い事例も積み上げて各市町村の特徴が現れる(ワーキング)、地域の資源を利用していくことが必要(ワーキング)、色々な市町村でノウハウや工夫がある(ワーキング)  下位カテゴリー イ 地域協議会が有効  コード 司法・福祉・障害者の三者で色々な議論ができる(ワーキング)、他機関が入ると事業者側が話しやすい(市町村)、地域とコラボするなど障害者以外の参加者も増加(市町村)、本当に困ったときに相談できる体制がありがたい(市町村)  「府と市町村の関係」のうち、  上位カテゴリー 4 府と市町村の役割が異なる  下位カテゴリー ア 府と市町村で役割を分担  コード 相談員と市町村が機能分担するという考え方でいくべき(ワーキング)、市町村が紛争解決を担いつつ担い切れない部分を府が補完(ワーキング)、地域の窓口が同じような対応ができる体制が必要(ワーキング)、「まず相談を受け止める」姿勢を府が市町村に示す(ワーキング)  下位カテゴリー イ 都道府県と市町村の法上の役割  コード 条例では府が助言をするという書き方が精一杯(ワーキング)、法が都道府県と市町村の役割を明記しておらず曖昧(ワーキング)、法は基礎自治体と広域自治体の重層的な役割分担を想定(ワーキング)  「相談員(大阪府)の役割」のうち、  上位カテゴリー 5 個別事例への助言  下位カテゴリー ア 困難事例への専門的助言  コード 専門性を要する事案や対応に苦慮する際の助言・連携(ワーキング)、困難事例や職員の資質向上において府と市町村で連携(ワーキング)、専門的な団体から助言をもらえることが専門性(ワーキング)、合議体のように考え方や解釈を示してほしい(市町村)  下位カテゴリー イ 合理的配慮の判断  コード 配慮と厚意の範囲が整理されているか(相談員)、過重な負担だと事業者が主張するときの対応が難しい(市町村)、合理的配慮と不当な差別的取扱いの境目が難しい(市町村)、事業者と相談者の意向の調整や過重な負担の判断(市町村)  下位カテゴリー ウ 広域的な事例への助言や調整  コード 国や他の自治体との調整(ワーキング)、つなぎと役割分担による連携や調整が広域性(ワーキング)、個別事案ではなく本社体制全体の指導が求められる(相談員)、全国的なチェーン店や広域に渡る事業者の対応(市町村)  上位カテゴリー 6 具体的な情報の提供  下位カテゴリー ア 事例の分析  コード 共通の課題や傾向を分析し市町村に提供(ワーキング)、相談を集約して事例が起きる背景を探る(ワーキング)、市町村の人員体制では難しい調査研究(ワーキング)、市町村に気づきや視点を府として示すことが重要(ワーキング)  下位カテゴリー イ 他市町村の取組み状況  コード 市町村の好事例を発信するとよい(ワーキング)、他市でも類似ケースがあるのかを質問したい(市町村)、相談窓口など各市町村の状況を聞きたい(市町村)、他の圏域市町村情報交換会の状況も知りたい(市町村)  下位カテゴリー ウ 具体的な資料やツール  コード 府で作成した資料や窓口のひな型を周知(ワーキング)、検証報告書を活用するのもよいのでは(ワーキング)、研修やガイドライン作成、情報提供を府に求める(市町村)  上位カテゴリー 7 市町村との関係構築  下位カテゴリー ア 一緒に取り組む「仲間」  コード 府が「一緒にがんばろう」と市町村に働きかける(ワーキング)、直接相談によって市町村と同じ目線の助言(ワーキング)、相談員は精神面のサポートに繋がる(市町村)、実際に顔を合わせて話し、小さな質問もしていいと安心した(市町村)  下位カテゴリー イ 市町村同士の交流の場  コード 市町村の状況や事例を集約して交流する体制を作る(ワーキング)、市町村支援として勉強会や出張情報交換会を実施(ワーキング)、事例として起こったことの共有を図りたい(市町村)  「相談員の課題」のうち、  上位カテゴリー 8 差別事案の「調整」の困難さ  下位カテゴリー ア 当事者間を調整  コード 当事者間の意向が通じ合わない(相談員)、当事者の言い分は、事例の部分の切り取り方が違う(相談員)、平行線をたどっていたり、空回りすることがあって難しい(相談員)、相談は様々な背景があり主旨を聞き間違えないことが大切(相談員)  下位カテゴリー イ 事業者側が抵抗  コード 事業者が受け入れてくれたか頑なであったか(ワーキング)、相談員には強制的な権限が無い(ワーキング)、事業者が否定的な場合に困難なのは行政の対応の限界(ワーキング)、担当者がわかっても会社の方針も絡むと踏み込みにくい(相談員)  下位カテゴリー ウ 「差別解消」の相談の範疇  コード 相談員は生活の困りごとや福祉の支援にはタッチできない(相談員)、相談員は「ケース支援」を市町村に提案するのが立場上難しい(相談員)、地域の啓発は府として難しい(相談員)  上位カテゴリー 9 市町村支援の課題  下位カテゴリー 市町村支援の課題  コード 市町村にも温度差がある中どううまく連携するか(ワーキング)、機能を果たせない市町村がある中どう障害者に関わるか(ワーキング)、情報交換会をしても、市町村職員の異動等で連携が取りにくい(相談員)、同行もあれば考え方の整理もあり、関わり方は様々(相談員)  上位カテゴリー 10 相談員のスキルアップ  下位カテゴリー 相談員のスキルアップ  コード 相談員は複数で互いに意見を言いながら整理(相談員)、相談員は交代勤務で伝達が不十分なことあり(相談員)、相談員のスキルアップとスーパーバイズ体制が必要(相談員)、  「合議体の役割」のうち、  上位カテゴリー 11 相談員へのスーパーバイズ  下位カテゴリー ア 多角的な助言と分析  コード 合議体で全体的な見識が深まり対応力が向上(ワーキング)、相談員は合議体で整理してもらいそれをもとに対応(相談員)、困難事例を様々な みかたから助言してもらえるのはありがたい(相談員)、合議体で自分と違う観点の議論は相談員にとってプラス(相談員)  下位カテゴリー イ 今後の相談対応に活かす  コード 検証から出た課題を今後の相談や啓発に反映(ワーキング)、課題の積み重ねが日々の相談に返っていく(ワーキング)、事例検証を積み上げまとめることが合議体の役割(ワーキング)  上位カテゴリー 12 施策につながる課題抽出  下位カテゴリー 施策につながる課題抽出  コード 相談じれいから挙がった問題を施策検討につなげる(ワーキング)、個別の相談解決のために制度や仕組につなげる(ワーキング)、合議体での検証が府の方策にも跳ね返される(ワーキング)  上位カテゴリー 13 合議体の課題  下位カテゴリー ア 合議体だけではできないこと  コード 合議体だけでは当事者意見が十分反映されない(ワーキング)、施策全般以外の日常の話は合議体で検証すると理解(ワーキング)、市町村の相談体制が実際にどうなのか検証する必要あり(ワーキング)  下位カテゴリー イ 合議体からの即時の助言  コード 合議体の助言・検証が的確か懸念(ワーキング)、個々の相談にタイムリーな議論は難しい(ワーキング)、合議体にすぐに助言できる機動性を持たせる工夫が必要(ワーキング)  「解消協の役割」のうち、  上位カテゴリー 14 地域協議会としての役割  下位カテゴリー 地域協議会としての役割  コード 合議体が地域協議会の機能の一部を果たす(ワーキング)、解消協と地域協議会としての役割との整理が必要(ワーキング)、施策へつなげる議論は合議体か解消協か(ワーキング)、解消協で意見交換や議論ができる中身がほしい(ワーキング)  それぞれのカテゴリーと、各カテゴリー間の関係について、詳しく見ていきます。   主に「市町村の取組み」  1 相談の内容が多種多様  市町村においては、障害者差別だけではなく、生活支援に関する相談なども含めた、幅広い相談を窓口で受け付けており「差別と一般的な生活支援が混在」しています。そのため市町村では、差別には該当しない相談については、一般の相談として受け付け、適切な支援につないでいくといった対応が必要です。一方で、様々な相談が混在した中では、どの部分を障害者差別として捉え、対応するかが困難な場合もあると考えられます。  また、障害者差別解消の担当窓口だけではなく、基幹相談支援センターや、市町村内各部局に相談が入るなど、様々な窓口に相談が入ることが想定されることから、相談を受け付け対応するための「チーム作り」が必要です。障害者差別解消担当者のみならず、組織内で情報共有をし、事案に対してどのような対応が考えられるのか、チームで検討し、決定するスキームで対応することが求められます。  2 相談対応が困難  市町村には様々な相談が入ってくる中、相談じあんを障害者差別と捉えるのか否かの判断や、実際にどのように調整すべきなのかといった実務的なアプローチ方法など、個々の事例について「対応と判断の難しさ」を感じることが少なくありません。  また、各市町村で障害者差別に関する相談体制の状況は異なりますが、市町村によっては担当が少なく一緒に検討や対応することが難しいことがあります。そのため、「自分以外に担当がいない不安」、すなわち自分だけで判断してよいのか、他の職員と一緒に対応できない、といった不安を抱えることがある、という意見が市町村から挙がっています。  3 地域の活用  市町村において、その地域で起こり得る差別事案や、活用できる社会資源には「地域それぞれの特色」があると考えられます。その特色を把握するためには、各市町村が自らの地域の事例を積み上げていくことが重要です。  さらに、地域協議会の設置により、相談じあんが入った時に、事業者や障害当事者など、様々な機関に相談がしやすく、障害福祉担当や人権担当だけで話し合うだけではわからなかった知識や対応について助言・協力が得られるなど、「地域協議会が有効」であると考えられます。  主に「府と市町村の関係」  4 府と市町村の役割が異なる  「府と市町村で役割を分担」するにあたっては、府と市町村において、どちらがどのような機能を果たし連携していくかという整理が必要であると考えられます。府が市町村を補完する、もしくは、府が市町村のリードをしていくなど、役割分担には様々な考え方があると思われます。  一方、「都道府県と市町村の法上の役割」に関して、障害者差別解消法上は明記しておらず、また、条例においても、府は市町村に情報提供や助言などの後方的支援を行うといった記載にとどめています。このことは、双方が相談じあんの状況や、府内の差別解消の状況に応じて、柔軟に連携し合うことが求められている、とも考えられます。  主に「相談員(大阪府)の役割」  5 個別事例への助言  相談員は条例上、市町村に対して助言を行う等の後方支援を行う機関として位置づけられていますが、具体的には、「困難事例への専門的助言」、「ごーりてき 配慮の判断」、「広域的な事例の助言や調整」といったことが求められているといえます。  「困難事例への専門的助言」については、障害者差別解消に関する知識や見解のみならず、当事者間の具体的な調整方法や、どこにつなぐのが適切であるかといった情報、当事者への聞き取りの仕方などが求められていると考えられます。  「ごーりてき 配慮の判断」では、相談じあんの中でも特に判断の難しい合理的配慮に関し、過重な負担の考え方や、当事者間の理解と納得を得られる調整など、事例の蓄積や対応スキルが一層求められる事例に関して、相談員が適切に対応することが求められます。市町村から、合理的配慮に関する判断や当事者間の調整に関して、悩ましさを感じている意見が挙がっていることから、相談員による市町村支援のポイントの1つとも考えられます。  「広域的な事例の助言や調整」については、相談者と事業者の市町村が異なる、あるいはチェーン店などで本社対応も必要なケースなどが想定されます。その場合に、府と市町村それぞれが主導する部分はどこなのか、事案や状況に応じて方針を決め、その上で市町村と協力していくことが、相談員には求められているといえます。  6 具体的な情報提供  個別の相談じあんに関する助言とは別に、各市町村が事案に対応するための(具体的な情報提供)をすることもまた相談員に求められており、「事例の分析」や「他市町村の取組状況」といった情報や、「具体的な資料やツール」の提供などが考えられます。  「事例の分析」においては、府で対応した事例、さらには合議体で審議した事例について解釈を示し、市町村職員向け研修・出張情報交換会や検証報告書等の中で発信することが考えられます。  「他市町村の取組み状況」については、各市町村の相談体制整備状況や地域協議会の運営方法、啓発手法の工夫などを府が情報 取集し、その内容を発信するなど、市町村が今後の取組みを推し進める材料を提供することが挙げられ、市町村からニーズのある府の役割と言えます。  「具体的な資料やツール」については、大阪府障害者差別解消ガイドラインや、啓発冊子、実務的な相談対応を掲載した手引きの提供など、各市町村の研修やイベント、地域協議会で発信していくことが考えられます。  7 市町村との関係構築  市町村が様々な相談を受ける中で対応や判断に困難さを感じるとき、相談員が「一緒に取り組む『仲間』」として市町村の悩みを受け止め、相談を聞く姿勢が重要です。  また、相談員が市町村の相談を聞くだけではなく、府が「市町村同士の交流の場」を設け、市町村同士の関係構築を図ることも必要であると考えられます。  主に「相談員の課題」  8 差別事案の「調整」の困難さ  相談員が相談者から直接的に、あるいは市町村から間接的に相談を受けるにあたり、困難を抱える場合も少なくありません。相談員が困難だと感じる点として、まず「当事者間を調整」することが挙げられます。相談員は、障害者と事業者側の意向に折り合いがつけられなかったり、言い分が異なっていたり、主訴が変化したりする中で調整を行わねばなりません。どこが調整のポイントとなりうるかという分析は個々の事案によって異なることから、事案の経過に関する分析力や、相談対応の経験値など、高いスキルが求められるといえます。  次に「事業者側が抵抗」することが挙げられます。事業者側が相談員からの働きかけに否定的であったり、障害者に対する無理解があったりする場合、相談員には強制的な権限が付与されていないことから、話し合いの場を設けるといった対応が進まないこともあります。また、事業者によっては現場と上席の考え方に食い違いがあることもあり、その場合には事業者内部の方針も調整する必要が出てきます。  そして、「『差別解消』の相談の範疇」も、相談対応の困難さを招くことがあります。相談員は幅広く障害者等の相談を受けますが、障害者差別の側面以外の課題や支援の必要性が見られるケースにおいて、関われる範囲が限られることから、関わることが難しい部分については市町村や関係機関につなぐといったケースワークが求められます。  9 市町村支援の課題  相談員の重要な機能として市町村支援が挙げられます。しかし、市町村との連携のあり方や、市町村が十分機能しない場合の支援のあり方について、広域支援相談員がどのような役割を発揮していくかが、課題となっています。  10 相談員のスキルアップ  相談員は市町村に対する助言を行う立場にあり、また直接相談の対応においても、専門性や広域性を求められるため、相談員自身もまた、常にスキルアップが求められます。相談員は複数名体制で勤務しているため、当日出勤の相談員同士で対応方法を検討したり、定期的な会議等により情報共有を図ったりするとともに、合議体による助言によりスキルアップを図っています。一方で、交代制勤務のためその場で相談や共有をするのが難しい時があることや、対応や判断が困難な事例について即座に合議体からの助言をもらえないことから、相談員のスキルアップをいかにしていくかが、相談員の課題といえます。  主に「合議体の役割」  11 相談員へのスーパーバイズ  助言・検証実施型合議体において、相談員に対する助言や事例検証を行なってきました。その成果の1つとして、相談員の受け付けた事例に対する「多角的な助言と分析」が挙げられます。様々な委員・専門委員による事例に関する議論は、相談員にとってプラスとなっていることが、相談員の意見として挙がっています。  また、合議体による助言・検証は、個別の当該事例のみならず、それを通して浮かび上がってきた考え方や適切な対応方法を整理することにより、「今後の相談対応に活かす」ことができます。  12 施策につながる課題抽出  合議体の助言・検証から見えてきた課題が、個々の当事者の問題だけではなく、制度や施策の課題が背景となっている場合には、「施策につながる課題抽出」を行うことも、合議体の機能として挙げられるといえます。  13 合議体の課題  上記のような、合議体が果たす機能がある一方で、合議体にもまた課題があります。まず、「合議体だけではできないこと」として、合議体構成員が少人数に限られていることから多数の意見を反映できないことや、また合議体は個別事例に対する助言を役割としているため、制度や施策に関する提言、あるいは市町村の体制に関する検証は、合議体では担えないものと考えられます。  また、相談員はいつどのような相談が入るかわからない中で即座に判断し、相談者に回答したり調整を図ったりすることが求められ、その判断や対応で本当に良かったか迷うときがあっても、「合議体からの即時の助言」ができないことも、課題の1つといえます。  主に「解消協議会の役割」  14 地域協議会としての役割  解消協議会は、条例上、法上の「地域協議会としての役割」を持つものと位置づけられます。解消協議会の下にある合議体において事例の助言・検証を行っていることから、解消協議会(合議体)は、地域協議会としての役割の一部を果たしているともいえます。しかし、「地域協議会」には、事例の助言・検証だけではなく、施策全般について審議するなどの役割もあると考えられるため、解消協議会と合議体の機能整理をする必要があると考えられます。   (4)考察  上記の調査結果から、府では、市町村、広域支援相談員、合議体それぞれの機能や関係性について、カテゴリー間の関係が考えられると整理しました。この整理に基づき、相談体制の整備状況について分析しました。  1.市町村と広域支援相談員(大阪府)の機能と関係性  市町村は、障害者差別解消に特化した窓口を設置するというより、障害者に関する様々な相談を受け付ける体制をとっていることが多いため、相談内容が多種多様です。市町村には、その中から差別事象を把握するとともに、差別事象ではなかったとしても、適切な支援につなげることが求められます。また相談は市町村の窓口に限らず、相談支援事業所や他部局にも入る可能性があることから、様々な窓口に入る相談を集約して対応する「チーム作り」も大切です。  このような体制は、間口を広くし連携して対応できるというメリットがありながら、専門性の高い事例が入った際に、相談対応が困難であることが考えられます。そこで、相談員(大阪府)から個別事例への助言や具体的な情報の提供により、市町村で相談対応が困難な事例の対応を支援することが、相談員の重要な役割であると言えます。  府が市町村の支援を行うためのベースとして、市町村との関係構築が必要です。特に、市町村の体制によっては、少人数での対応で、自分以外に担当がいない不安を抱えながら対応しなければなりません。そのため相談員は、実務的で専門的な助言を行うとともに、相談対応に携わる仲間として支え合う関係を作ることが大切であると考えられます。  また、市町村同士のつながりを作る場を設けて、市町村同士が互いに支え合えるような関係作りを図ることも必要です。例えば、他市町村にわたる事案が入った時にも連携をとりやすい関係性を構築することや、啓発や地域協議会の取組みなどについて市町村同士で円滑な情報交換を行えるようにしていくことも、障害者差別解消の推進につながるものと思われます。  府が、市町村支援を行うことだけが、府と市町村の関係ではありません。市町村だからこそ担うべき役割についても考え、府と市町村の役割が異なることについて整理をする必要があります。  相談員は、障害者差別の個別事案に関する専門的な窓口であり、基本的には「差別解消」の相談の範疇の中でその事案ごとに調整を図ることから、相談者の生活全体や、地域全体の啓発について支援を行うことが難しいという点が、相談員における差別事案の「調整」の困難さの1つとして挙げられます。  そのため、障害者差別に関する相談を通して、相談者の様々な困りごとをアセスメントして支援を行い、その人が地域で暮らしやすい生活全体を組み立てることは、市町村の役割として整理されるものと考えられます。  さらに、地域の活用については、市町村が各地域の状況や特色に応じた取組みを進めていくことが必要であり、その地域の実情把握のための支援や協力は、広域的な立場にある相談員よりも、地域協議会が有効であると思われます。その地域の様々な関係者が集まり、互いの状況や意見を交わし合うことが、障害者と障害者でない者との対話を促し、差別解消につながるものと考えられます。  2.広域支援相談員(大阪府)と合議体の機能と関係性  相談員にとっての差別事案の「調整」の困難さに関して、合議体がその事例への助言・検証を行うことは、相談員へのスーパーバイズとして、相談員のスキルアップにつなげる、という重要な機能を果たし、相談員から市町村に対しての助言や調整に反映され、ひいては市町村への相談対応力向上につながるものと考えられます。また、合議体の助言・検証をふまえて、府がガイドラインや検証報告書などの具体的なツールを作成することにより、事例や法・条例の考え方の周知が図られるなど、間接的に市町村への支援にも貢献していると考えられます。  一方で、相談員に対する支援を、合議体がすべてできるわけではありません。差別事案の「調整」の困難さの中でも、事業者側が抵抗を示した場合には、相談員の調整に委ねるのか、それとも、相談員に対する権限強化など条例の見直しを図るのか、といった課題が考えられますが、制度や施策に関する検討は合議体で審議できるものではないと考えられます。  また、当事者間を調整する際、今まさに対応が求められている当事者への返答や、関係機関への働きかけなどは、その場でともに相談対応をしている相談員同士で情報共有やアプローチ方法を協議したり、会議等により互いの見解を伝え合ったりすることで、差別解消の考え方を深め、対応力を高めていくという側面があります。このような、個別的、即時的、流動的な調整については、合議体での助言・検証だけで十分なのかを検討する必要があります。  さらに、市町村支援の課題については、個別事例を取り扱う合議体によっては、解決を図ることは難しいことが考えられます。上記のとおり、個々の事例に関する合議体の助言は、相談員を通じて、市町村による相談対応への支援に反映されていますが、市町村との連携のあり方や市町村間の取組みのばらつきなど、大阪府が広域自治体として行うべき取組みについては、合議体で審議する枠を超える部分があるものと思われます。  3.合議体と解消協議会の役割に関する整理  合議体には、事例の検証を通して、施策につなげる課題抽出をするという役割が考えられますが、その施策そのものは解消協議会で審議することになります。また、当事者意見が十分に反映されない、市町村の取組みに関して検証することは難しいといった合議体の課題に対して、解決を図る仕組み作りの検討が必要であると考えられます。  また、地域協議会としての役割として何が求められているのかも、検討すべき論点であると考えられます。解消協議会の下にある合議体による事例の助言・検証は、地域協議会の機能の一部を果たしていると考えられますが、それだけでは差別の解消に向けた議題をすべてカバーしているとは言えません。そのため、「障害者差別解消支援地域協議会の設置・運営等に関するガイドライン(平成29年5月 内閣府政策統括官)」なども参考にしながら、地域協議会として、合議体で果たすべき役割と、解消協議会で果たすべき役割の整理をすることも必要であると考えられます。  上記1.〜3.のように、市町村、広域支援相談員、合議体、そして解消協議会の機能や関係性について考察しましたが、それぞれの機能は明確に線引きできるものではなく、時に重なり合いながら連携し合う関係にあるものといえます。  大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例(一部抜粋)  (協議会への諮問等)  第八条 知事は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する事項について、必要があると認めるときは、大阪府障害者差別解消協議会(以下「協議会」という。)に諮問し、その意見を聴かなければならない。  2 協議会の委員は、障害者、障害者の自立と社会参加に関する事業に従事する者、学識経験のある者、事業者を代表する者その他適当と認める者のうちから、知事が任命する。  3 協議会に、専門の事項を調査審議させるため必要があるときは、専門委員を置くことができる。  4 専門委員は、学識経験のある者その他適当と認める者のうちから、知事が任命する。  5 協議会は、委員及び専門委員のうちから協議会が指名する者をもって構成する合議体(以下「合議体」という。)で、次に掲げる事項を取り扱う。  一 法第八条第一項に規定する事項に係る紛争の事案(以下「紛争事案」という。)を解決するためのあっせん  二 広域支援相談員が行う職務に関する助言  6 協議会は、法第十七条に規定する障害者差別解消支援地域協議会の機能を併せ有する。   (5)まとめ  この質的調査では、市町村、広域支援相談員、合議体の機能とそれぞれの関係性について、質的調査を用いて分析を行いました。条例上、市町村が身近な相談窓口として役割を発揮し、広域支援相談員は市町村の後方支援として専門的な助言が必要な事例や、広域的な調整が必要な事例について対応するとともに、その相談員の対応について助言・検証を合議体が行うという位置づけとなっています。  また、それぞれが十分に機能を発揮するために、障害者差別に関する専門的知識及び対応方法を知ることだけではなく、その土台として、様々な視点や立場で意見交換ができるネットワークを広めていくことが、相談じれいの解決や差別の解消につながるものと考えます。そして、市町村と相談員の関係はもちろんのこと、市町村と地域協議会、相談員と合議体など、多種多様な機関が、それぞれ主体的に担うべき役割を果たしながら、互いの意見を尊重し、対話し合える関係性を構築する取組みが求められるといえます。  条例施行後3年が経過しましたが、市町村、広域支援相談員、合議体が果たしてきた役割やその相互作用を分析することで、条例の運用において、相談員から市町村への、また合議体から相談員への助言機能が発揮されているなどの評価される点が見出された一方で、個別事例への助言ではなく制度や施策に関する提言、市町村の状況把握及び取組みの推進に関してどうしていくかなどの課題となる点が浮き彫りになったといえます。  平成29・30年度の2か年で、質的調査手法を用いた相談体制整備の検証を行い、相談・調整の手法及び市町村も含めた体制整備と連携についてカテゴリーを分類し整理を行いました。今後は、評価される点をいかに発展させ、継続していくかを検討するとともに、相談じれい等の蓄積により見えてくる課題の解決をどのように進めていくかを議論することで、相談体制の充実化を図ることが必要であると考えます。  (付記)この質的調査は、大阪府立大学との連携事業の一部です。    4 府内市町村に対する支援の取組み   (1)府内市町村との連携  条例では、府は、体制整備や啓発活動に当たっては、市町村と連携して実施するよう努めることとし、市町村が体制整備や啓発活動を実施しようとするときは、市町村に対し、情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援を行うことを規定としています。  市町村に対して有意義な情報提供や後方支援を行うためには、府内市町村のニーズをキャッチし、連携できる関係構築を図ることが重要です。  また、今後は、これまでの相談事例の蓄積をふまえながら、広域自治体である府と市町村との役割分担や対応スキームの検証が求められるのではないかと考えます。   (2)府内市町村の取組みに向けた支援  広域支援相談員は、府内市町村への後方支援を担う役割があります。平成30年度においても、市町村ワーキングや出張情報交換会を実施し、障がい者差別に関する相談対応について支援を行うとともに、新たに支援地域協議会の設置について市町村ヒアリングを実施することにより、各市町村の現状や課題について意見交換を行いました。  1 大阪府障がい者差別解消ワーキング(市町村ワーキング)  障がい者差別の解消に向けて、障がい者権利擁護の対応主体である市町村とともに、差別解消の取組みの充実・強化を図るため、「大阪府障がい者差別解消ワーキング」を設置し、年3回程度実施しています。  平成30年度のワーキングでは、相談対応の実務的な手引きとなる「相談の流れ」についてさらに実務に活用しやすくなるよう、参画市より意見をいただきながら事例を追記するなど、内容の充実化を図りました。  また、各市の支援地域協議会の運用や対応状況、差別解消に向けた取組みについて意見交換をしながら、他市の参考となるような情報の収集を図りました。(ワーキングで挙がった支援地域協議会の意見は、143ページに記載しています。)  2 出張情報交換会の実施  大阪府では、広域支援相談員が府内市町村に直接出向いて、市町村職員と面談形式で情報交換を行う、出張情報交換会を実施しています。  平成30年度においては、各市町村同士の情報交換の場となるよう、各圏域(豊能・三島・北河内・中河内・  南河内・泉州)の市町村が集まり、広域支援相談員がそれぞれの地域に出向いて実施しました。  出張情報交換会では、広域支援相談員から、障害者差別解消法の考え方や大阪府の障がい者差別の解消に関する取組み等について研修を実施した後、各市町村の取組みや相談事例の状況について情報交換を行いました。市町村からは、出張情報交換会に関して、以下のような意見がありました。  ・今日のように実際に顔を合わせて話す機会を設けることで、小さな質問等もしていいのだと安心した。  ・どんなことで相談していいのか、壁を感じていたが、広域支援相談員に直接会えたことで相談しやすくなった。  ・他圏域の市町村のケースも聞き、起こった事例の共有を図りたい。  ・出張情報交換会を継続してほしい。  これらの意見より、広域支援相談員は、市町村からの相談を受動的に受け付けるのではなく、能動的に市町村へ働きかけることや、市町村同士の交流の場を設けることが、広域的な支援として必要であると考えられます。  今後も、市町村に対して積極的に関わる取組みを継続して市町村における相談事案のキャッチ力や対応力の向上を図ることにより、障がい者差別やその温床となる不適切な対応について早期に発見、適切に対応できるよう取り組んでいきます。  3 市町村ヒアリング  大阪府では、障がい(児)福祉計画の成果目標に係る課題や、その他市町村における各取組状況等について、ブロック別に市町村合同ヒアリングを行なっています。  その一項目として、平成30年度は、市町村における支援地域協議会に関するヒアリングを実施しました。  市町村が相談事案に適切に対応するために支援地域協議会の設置が求められていますが、大阪府が広域自治体として設置を促進するにあたっては、まず課題を把握することが必要です。  そのため、支援地域協議会を設置している市町村に対してはその議題や内容、支援地域協議会を設置していない市町村に対しては今後の検討状況や設置していない理由等について、直接ヒアリングを実施しました。  4 支援地域協議会に関する市町村の意見  1から3の取組みを通して、各市町村からは以下のような意見が挙がりました。  【支援地域協議会を設置している市町村からの意見】  ・事案の相談や情報共有をする際に、支援地域協議会に参画している委員がいると話がしやすいなど、ネットワークとして対応しやすい。  ・法上の差別事例はないが、障がい者差別解消法に関する勉強会を開催したところ、委員からは好評であった。  ・委員同士で横のつながりを持ってもらい、様々な関係機関が差別解消に向けて建設的対話ができるよう、工夫した進め方が必要。  ・支援地域協議会の運用にあたっては、事例検討や障がい理解、周知啓発などが議題として考えられるが、何を継続して議論していくのか等、検討しなければならない。  ・行政が受けた事案を報告し意見をもらう場にとどまっているため、構成員が事例を持ち寄って意見交換する場としてどのように活用すべきかが悩ましい。  ・事例件数が増えると頻度を増やす必要があるのではないかということや、どこまで事例の内容を深められるかが課題だと感じている。  ・自立支援協議会の下に専門部会として起ち上げているが、自立支援協議会は相談支援や地域移行等、協議事項が多い。単独設置するために新たな会議体設置に向けて庁内調整した場合、「また会議が増えた」という意見が出てくることが想定されるため、既存の会議体をどのように活用できるか、模索中である。  ・支援地域協議会を設置しているが、メンバー集めが難しく、予算も限られているため、委員になってほしい関係機関に参画してもらえない。  【支援地域協議会を設置していない市町村からの意見】  ・支援地域協議会を起ち上げるとすれば、自立支援協議会とメンバーが重複するため、その下に部会として設置することが考えられる。  ・支援地域協議会設置を検討しているものの、その他の様々な会議が多く、また庁内への周知や事業者への啓発など、他にもやるべきことが多いため、起ち上げに踏み切ることができていない。  ・すでに様々な会議体が多い中、差別に関する事例が挙がっていないことから、予算面などを勘案すると、新たな会議体を設置する根拠が希薄であるように感じる。  ・仮に支援地域協議会を設置した場合に、どのように運用すれば有意義な会議体として機能するのか。起ち上げをきっかけに差別解消に取り組んでいくとしても、参画してもらいたいメンバーを集めることが難しいように思われる。   (3)市町村支援における課題  1 相談対応について  条例では、障がい者差別の解消における体制整備及び啓発活動にあたり、市町村と連携してこれらを実施するものとしており、まずは住民に身近な相談窓口である市町村が対応することが府全体における障がいを理由とする差別の解消の推進につながることから、市町村の役割は極めて重要です。  そのため、市町村の相談窓口の周知を図るとともに、市町村の相談事例のキャッチ力や対応力の向上が求められます。  各市町村において、「何が障がい者差別に当たるのか」を広めるために、研修等における大阪府障がい者差別解消ガイドラインの活用や、障がい当事者をはじめとした府民を対象とする勉強会の開催といった取組みが徐々に進んできていますが、相談事例や対応ノウハウの蓄積はまだ十分とは言えません。  今後も、府に対する市町村のニーズを踏まえ、対応や判断に迷う事例への助言や、対応力向上のための「相談の流れ」など実務的な資料の作成、府内市町村の差別解消に関する具体的な取組みに関する情報などを、市町村へフィードバックするといった取組みにより、大阪府全体の差別解消の取組み体制のボトムアップを図っていくことが重要であると考えられます。  2 支援地域協議会の設置について  市町村ワーキングや出張情報交換会、市町村ヒアリングで各市町村より挙がった意見から、以下のような課題が考えられます。  1)支援地域協議会を設置していない市町村における課題  ・事例が挙がってこない中、支援地域協議会を起ち上げねばならない根拠が希薄であり、もし会議体を設置したとしても、どのように運用していくのかが悩ましい。  ・事例がない中で、会議体が多く予算も限られていることから、設置にまで至らない。  2)支援地域協議会を既に設置している市町村における課題  ・行政の報告にとどまらず、互いに協力し合う関係性を構築できるような会議の運用をどのようにしていくかが悩ましい。  ・設置はしているものの、参画してほしい委員を集めることが難しい。  これらの意見から、相談体制整備の一環として支援地域協議会を設置することが求められる一方で、既に支援地域協議会を設置した市町村においても、有意義な会議体となるためにはどのように運用すべきなのか、といった課題があると思われます。  そのため、大阪府が各市町村の支援地域協議会の設置や運用を支援するにあたっては、  ・設置していない市町村に対して支援地域協議会を設置することのメリットを、研修や情報交換の場を通じて具体的に示すとともに、会議体が多く予算も限られている中で効率的に運用する必要があることから、既に設置している市町村における運用の工夫を情報提供していくこと  ・事例を十分にキャッチすることができず、設置や開催に至っていないという意見があることから、各市町村が相談事例を挙げられなかったとしても、勉強会を開催したり、大阪府で作成した検証報告書やガイドラインの掲載事例を用いて話し合いの場を設けたりするなど、協議会の設置・開催に向けて具体的な議題の提案を行うこと  といった取組みが求められるのではないかと考えます。  今後も、市町村の支援地域協議会に関して情報交換や実施状況の把握をしながら、設置の推進に努めていきます。    5 障がい理解に関する啓発の取組み   大阪府では、障がいを理由とする差別の解消は、全ての府民が共に社会の一員として解決すべき社会全体の課題との認識のもと、民間事業者等のご協力と関係機関等との連携などにより、様々な啓発活動に取り組んでいます。   (1)大阪ふれあいキャンペーン  障がい者団体及び関係団体、行政が連携した障がい理解を深めるための取組みとして、昭和58年の「国連・障害者の10年」を契機に始まり、現在85団体(障がい者団体・地域福祉団体等41団体、府、府内全43市町村)で構成された実行委員会により活動を行っています。  取組みの一環として、障がいに関する基本的な事項を学ぶ「ふれあいおりがみ」を府内全小学3年生に配布するとともに、行政機関や障がい者団体等で活用しています。 また、障がいのある人に対する配慮や工夫などを学ぶ「ふれあい すごろく」を府内の全小学校に配布しています。配布にあたっては、合理的配慮や社会モデルの概念をわかりやすく伝えられるよう、授業で活用できる資料を新たに作成するなど、啓発ツールの工夫を行っています。   (2)共に生きる障がい者展  障がい者の自立と社会参加の促進をテーマとするとともに、障がいや障がdaiい者への正しい理解を目的とした「大阪の障がい者の祭典」です。  大阪府、大阪府教育委員会、社会福祉法人大阪障害者自立支援協会が主催で、行政と障がい者団体等から構成される実行委員会を運営主体とし、障がい福祉分野に留まらず庁内連携を図りながら、障がいのある人もない人も共に楽しく学べるイベントを実施しています。  このイベントでは、障がい者の作品展示やパフォーマンス、ゲストトークショーのほかに、障害者差別解消法や障がい者差別解消条例に関するリーフレットの配布や、合理的配慮について学ぶe-ラーニングの実施等も行い、障がい理解や差別の解消に向けた啓発活動を実施しています。   (3)心の輪を広げる障がい者理解促進事業(体験作文・障がい者週間ポスター募集)  「障がい者週間」(12月3日〜9日)を広く周知するとともに、府民の障がいに対する正しい理解を深めることを目的としています。  具体的には、内閣府との共催事業として、小学生、中学生、高校生・一般の各部門で障がいのある人とない人との心のふれあい体験をつづった作文の募集や、小学生、中学生の両部門で「障がいの有無にかかわらず、誰もが能力を発揮して安全に安心して生活できる社会の実現」をテーマとしたポスターの募集をしています。作文及びポスターの最優秀賞・優秀賞受賞者には、障がい者週間中に知事による表彰を実施するとともに、受賞者の作品集を作成して府内の学校に配布しています。   (4)大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度  公共施設や商業施設などにおける車いす使用者用の駐車区画等の適正利用を促進するために、利用証を大阪府が交付する制度です。  大阪府では、車いすを使用するかたを利用対象とする「車いす使用者用駐車区画」と、車いす使用者以外の移動に配慮が必要なかたを利用対象とする「ゆずりあい駐車区画」の両方を整備する「ダブルスペース」の整備を推進しており、本制度の協力施設を募集しています。     (5)ヘルプマークの周知・普及  ヘルプマークは、援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう作成されたマークです。  大阪府では、平成29年6月から一般財団法人大阪府地域福祉推進財団との協働事業として実施し、府及び府内市区町村で配布をしています。  行政機関や障がい者団体等に加えて、公共交通機関や小売店等の民間事業者から協力を得て、ポスターの掲示やチラシ・リーフレットの配架、啓発物の配布、広報誌への掲載等、広く府民に向けた普及・啓発を実施しています。   (6)心のバリアフリー推進事業  府内企業等に対し、平成29年度に作成した汎用性の高い研修プログラム(テキスト及びDVDの作成)の周知・普及を行うとともに、企業等において府研修プログラムを活用した研修の実施を支援することで、障がい理解の促進や差別解消に向けて自主的に取り組むことを支援しています。あわせて、ヘルプマークの啓発や府が推進する障がい理解に関する啓発事業と連携した取組みを実施しています。   (7)大阪府が作成した啓発冊子  1 大阪府障がい者差別解消ガイドライン  障害者差別解消法や国の基本方針に基づき、何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのかなどについて基本的な考え方や、具体的な事例等をわかりやすく記載することで、障がいを理由とする差別について府民の関心と理解を深めるため、平成27年3月に作成しました(平成30年3月改訂)。(32ページ参照)  2 「ほんま、おおきに!!−ひろげよう こころの輪―」障がい理解ハンドブック  障がいや障がいのある人についての理解を深め、必要な配慮を考えるきっかけとなることを目的に作成しました。障がい特性ごとに配慮事項を記載しています。  3 「i-welcome」“合理的配慮”接客のヒント集  障害者差別解消法の施行を踏まえ、サービス業の事業者に向けて、サービス提供時における「合理的配慮」とは何か考えるきっかけとなる事例を掲載した接客のヒント集です。   (8)今後の課題  上記(1)〜(7)のとおり、啓発活動を実施してきました。その中で、事業者が障がい者差別に「気づく」ための研修や啓発が求められることが、課題の1つとして挙げられます。平成29年度検証報告書における「質的調査」で示したように、事業者の中には、不適切な対応をしたという自覚がなく、知識や経験、具体的な方法がわからなかったために、結果的に差別に至ってしまうことがあります。  「知識や経験の不足」が要因となって差別に至ることを未然に防止するためにも、事業者が「気づく」ことを第いっぽに、これまでの事例の蓄積を活かし、事業者に対する啓発事業を工夫していくことが必要です。  また、障がい者差別解消条例においては、府民もまた、条例の基本理念にのっとり、障がい及び障がい者に対する関心と理解を深めていくことが求められています。大阪府では、様々な啓発事業や啓発冊子の作成に取り組んできましたが、「オール大阪」による啓発活動をさらに進めていくことが重要です。  具体的には、公民連携の取組みや、障がい福祉分野と他分野との連携などの拡充を図ることで、障がい者差別のない社会を構築し、障がいのある人もない人も暮らしやすい共生社会が実現できるよう、取り組んでいきます。  【参考】条例運用状況に関するワーキング    平成30年度においては、障がい者差別解消条例施行から3年目を迎えるにあたり、条例附則施行後3年目を目途とした見直し検討規定を踏まえ、見直し検討に必要な条例の運用状況について幅広い意見を求めるため、条例運用状況に関するワーキングを設置しました。  より掘り下げた議論を行うため、ワーキングの下に「相談体制等ワーキング・セッション」と「啓発ワーキング・セッション」の2つのワーキング・セッションを設ける構成とし、それぞれ以下のような役割で議論を進めてきました。  1 条例運用状況に関するワーキング  ・ワーキングの企画や各ワーキング・セッションにおける議論の整理。  2 相談体制等ワーキング・セッション  ア 相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備  ・広域支援相談員の機能・役割  ・合議体の機能・役割  ・大阪府障がい者差別解消協議会の機能・役割  ・大阪府による市町村への助言等の機能・役割  イ 事業者による合理的配慮の提供   ・事業者における法等の理解に向けた取組みの実施状況  ・事業者における合理的配慮の不提供についての条例上の取扱い  3 啓発ワーキング・セッション  ア 短期的及び中長期的な啓発活動のあり方  ・府民の障がいに対する理解の促進  ・事業者の合理的配慮にかかる理解の促進  ワーキングにおける意見の整理は、別途、「大阪府障がい者差別解消条例に関する運用状況について」で整理しています。    6 まとめ    本報告書では、合議体での議論をとりまとめ、相談対応・内容の分類、合議体における「あっせん」の考え方、府の役割等について整理しました。また、市町村に対する支援や啓発活動について現状と課題を検討するとともに、質的調査により、市町村、広域支援相談員、合議体それぞれの機能と関係性について示しました。  障がい者差別解消のためには、事例の蓄積を活かしながら、府民や事業者、相談窓口となる市町村が、まずは「気づく」力を身に付けていくことが、障がい者差別の解消の第いっぽです。  府民や事業者においては、障がい(しゃ)に対する理解に努めるとともに、日常生活やサービス提供時の中に埋もれている差別や、その温床となる不適切な行為に対して気づくことが、障がい者差別に関する紛争の防止や、合理的配慮の提供につながります。そして、それぞれが相手の状況や気持ちについて互いに何ができるのかを主体的に考えることが、「建設的対話」の文化を醸成していくと言えます。 身近な相談窓口である市町村にもまた、「気づく」力が求められます。質的調査による分析にもあるように、市町村が受け付ける相談は障がいを理由とする差別を超えて多種多様であることから、市町村には様々な問題が混在する相談内容の中から差別に気づくとともに、生活上の支援が必要な部分は適切な機関につなぐといった対応が求められます。このような対応力は、市町村と相談員が個々の事例の対応について連携したり、出張情報交換会や研修等を実施したりすることを通して、培われていくものと思われます。 また、事例を通して、障がい者や事業者、多様な分野の関係機関が関わり合い、様々な立場からの視点や意見を交わし合うことが、障がい者差別に気づく契機となります。そして、あらゆる場面において、障がい者と事業者、障がい福祉と他分野の関係機関など、これまでは接点が希薄だった人どうしが交流し、関係性を構築することが、障がい理解につながります。  そのために、障がい者差別解消に係る啓発活動を充実させることが取組みの基盤となるといえます。今後はさらに、公民連携や他分野との連携による啓発の推進が求められます。地域においても、市町村における支援地域協議会の設置などを契機にしながら、ネットワークを広げ、お互いにできることを少しずつでも実行していく取組みが必要だと考えられます。  障がい者差別に関する周知と理解が進むことで、市町村の窓口への相談が増え、広域支援相談員においても、直接受け付ける相談事例及び市町村から求められる助言や支援の増加と、それに伴い内容がさらに複雑化・多様化することも見込まれます。このような事例に適切に対応するためには、広域支援相談員の対応力向上を図るとともに、各分野に係る指導監査権限のある機関など、様々な関係機関との情報共有や連携が不可欠だと思われます。  さらには、広域支援相談員に対する助言を担う合議体、その母体となる解消協議会が、障がい者差別の解消に向けたあらゆる取組みに対して、今後どのような役割が求められ、その責務をどのように果たしていくことができるのか、検討することが必要です。  障がい者差別に関する未然防止となる啓発活動、また実際に差別が起こった際の再発防止となる相談体制の整備、いずれにおいても、障がい者差別に対し「気づく」力を向上させることや、事業者や関係機関とネットワークを構築し連携していくこと、そのネットワークを構成する1人ひとりが主体的に、差別の解消に向けてできることを実行することが、障がい者差別の解消につながるものと思われます。  今後も、啓発活動と相談体制の整備を両輪に、障がい者差別の解消を推進し、障がいのある人もない人もともに支え合う共生社会が実現されるよう、工夫した取組みを行っていきます。    参考資料   参考資料1  相談事例の分類の考え方および広域支援相談員の対応  対応実績の集計にあたって、相談事例の分類や整理の考え方および広域支援相談員の対応については、合議体における意見等をふまえ、次のとおり整理。現時点における分類や整理の区分等の考え方は、以下のとおりだが、今後も障害者差別解消協議会及び合議体の意見を踏まえ、随時見直し、改善を図ることとする。  1.「相談類型」における整理  相談類型は広域支援相談員の対応をへた上で以下の定義にそって整理して分類。(なお、相談対応中で未整理の段階では、主訴等を参考に暫定的に分類しておき、後日整理できた時点で改めて確定させる取扱いとしている。)  ア 不当な差別的取扱い  不当な差別的取扱いに該当するもの、又は不当な差別的取扱いに該当するおそれのあるもの。  イ 合理的配慮の不提供  合理的配慮の不提供に該当するもの、又は合理的配慮の不提供に該当するおそれのあるもの。  合理的配慮は、その行為に応じて「物理的環境への配慮」「意思疎通の配慮」「柔軟なルール・慣行の変更の配慮」に類型化できます。  ウ 不適切な行為  障害者差別解消法の差別類型には該当しない(おそれも含む)が、差別的・不適切な行為があったと思われるもの。  エ 不快・不満  差別的・不適切な行為があったことを確認できないが、相談者が差別的と捉え、不快・不満があったもの。ただし、年金や給付金等た制度への不満・苦情を要因とするものは除く。  オ その他相談・意見・要望等  年金や給付金等た制度への不満・苦情を要因とするものや、差別以外の相談、意見、要望に類するもの。  カ 問合せ  法や条例、制度等の内容に関する問い合わせ。  キ 虐待  障害者虐待に該当すると思われるもの。  ク その他  上記に分類できないもの。  2.広域支援相談員の活動手法  広域支援相談員が相談事案を受理した際の対応については、次のように活動手法を整理。  ア 調整   広域支援相談員が、相談事案の解決に向け、下記の3類型のいずれかをおこなった場合など。  自主解決型  相談者と関係事業者の相互の考え方について、広域支援相談員が整理して伝達等することにより、自主的な解決の方向に向かったもの。  助言型  相談者と関係事業者の相互の考え方について、広域支援相談員が整理して伝達することに加え、障害者差別解消法の趣旨等の説明や対応等への助言をおこなったもの。  指導型  相談者と関係事業者の相互の意思、意向、考え方について、広域支援相談員が整理して伝達することに加え、障害者差別解消法の趣旨等の説明等をおこない、さらに障害者差別解消協議会(合議体)の助言を踏まえた見解を明示するなど、広域支援相談員が指導的な助言をおこなったもの。  この3類けいに該当しないものの、市町村や各所管行政機関、専門的相談機関等と、それぞれの対応や改善方策の具体的な調整、関係者間の話し合いの場の設定も調整に含むものとする。  イ 調査  広域支援相談員が、現地調査や関係事業者への事実の聴き取り、資料の収集等により相談内容の事実を確認した場合など。  ウ 助言  広域支援相談員が、相談者又は関係事業者等に対し、相談事案の解決に向け、具体的な対応や改善方策等の助言をおこなった場合など。  エ 情報提供  広域支援相談員が、相談者に対し、単に、制度の説明や関係機関の紹介、事実に関する事項の情報を提供した場合など。  オ 傾聴  受容的・共感的態度で相談者の話を聴き、相談者が自分自身の考えを整理し、納得のいく結論や判断に到達するよう支援した場合など。  カ 情報共有・伝達  広域支援相談員が、相談事案について、市町村や関係機関等との情報共有・交換や、事実に関する事項の情報を伝達や引き継いだ場合など。  キ 事後確認等  広域支援相談員が調整等をおこなった事案について、改善状況を確認した場合など。  ク その他  上記以外の対応   参考資料2   合議体での事例検討様式(平成31年2月時点使用)  相談事例主題                                   受付 受付日時、受付方法 来所・電話・書面(手紙・文書・FAX・メール)・その他  相談分野の区分 商品サービス・福祉サービス・医療サービス・公共交通機関・住宅・教育・雇用・行政機関・その他  相談者の属性 市町村・当事者本人・家族・支援者・事業者・他機関・その他・不明  当事者(障害者)の状況  年齢   性別 男・女・不明  障害種別 身体(視覚・聴覚等・盲ろう・肢体不自由・その他)・知的・精神・発達・難病・その他・不明・不特定  障害の確認 手帳の所持・診断書・本人の申し出・その他  相談申出者(当事者)の主訴  主訴の背景・経過、その時の心情等  相談への対応   対象 当事者・家族・支援者・事業者・関係機関   結果およびその後のフォロー 終結・継続(受付日より3ヶ月間連絡を取っていない場合は、終結とする)   相談員の確認事項等  相談員の所見  事案の検討・分析(基本方針と大阪府障害者差別解消ガイドラインにそって分析する。)  1.不当な差別的取扱いかどうか  (1)商品やサービス等の提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりしているか。  「商品やサービス等の提供を拒否する」(商品やサービス、各種機会の提供を拒否すること)に該当するか。  「商品やサービス等の提供を制限する」(提供にあたって場所・時間帯などを制限すること)に該当するか。  「商品やサービス等の提供に条件を付ける」(障害のない人に対しては付けない条件を付けること)に該当するか。  (2)「障害を理由として」いるか  「障害を理由として」に該当するか  直接障害を理由とするだけではなく、関連する事由(車いす、補助犬その他の支援器具等の利用、介助者の付添い等の社会的不利を補い手段の利用等)を理由とする場合を含む  (3)「正当な理由」があるか  「正当な理由」がある場合、基本指針記載の正当な理由の判断の視点に相当するか。  「正当な理由」があると判断した場合、相手方は障害者にその「正当な理由」を具体的に説明すること、理解をえるように努めたか。     2.合理的配慮の不提供かどうか  (1)当事者(本人・家族・支援者等)はどのような配慮を求めたか  求められた配慮の概要  「意思の表明」の手段と「意思の表明」をおこなった者  「意思の表明」がなかった場合は、「合理的配慮の不提供」にはあたらないが、配慮を必要としていることが明らかだった場合、障害者と話し合い、適切な配慮を提案するなど自主的な配慮に努めたか。  「環境の整備」の状況  当時の環境の整備の状況(ハード面でのバリアフリー化、情報の取得、利用・発信におけるアクセシビリティ、職員研修等)  (2)求められた配慮に対してどのような対応がなされたか  求められた配慮に対しておこなわれなかった対応の類型とその詳細。(おこなった対応がある場合、その内容詳細を記載)  対応の類型   物理的環境への配慮、意思疎通の配慮、ルール・慣行の柔軟な変更、その他  内容詳細  障害者の性別、年齢、状態等に配慮したか。  代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解があったか。  対応は、必要かつ合理的な範囲で柔軟におこなわれたか。  求められた配慮が基本方針記載の留意内容に抵触した場合、その概要と判断  (3)「過重な負担」が生じていたか  「過重な負担」が生じるため合理的配慮の不提供に当たらないとした理由  事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)  実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)  費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況  相談分類について  不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供、その他(不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供ではない場合の分類 不適切な行為、不快・不満、その他相談・意見・要望等、問合せ、虐待、その他)  その項目とする根拠   体制整備について  相談及び紛争の防止又は解決のための体制が機能しているか  (1)市町村における対応   当事者(本人や家族等)との直接面接  関係者との連絡調整・情報収集  現場での調査(現地訪問、事業者への聞き取り等)  会議の実施  他機関への引き継ぎ、情報共有  情報提供・資料送付  (2)広域支援相談員における対応(市町村からの広域支援要請:あり・なし)  調整(自主解決型・助言型・指導型・その他)  調査(現地訪問、事業者への聞き取り等)  助言  情報提供  傾聴  情報共有・伝達  事後確認等  その他  (3)合議体への助言求め  継続中   終了後   参考資料3  広域支援相談員と大阪府障害者差別解消協議会  広域支援相談員  根拠  障害者差別の解消に関する知識経験を有する者の中から、知事が任命(大阪府障害者差別解消条例第7条)  身分等  地方公務員法に基づく一般職の地方公務員(非常勤職員)     職務  市町村の相談機関における相談事案の解決を支援するため、必要な助言、調査、相談事案に関する関係者間の調整を実施  障害者等や事業者からの相談に応じ、相談機関と連携して、必要な助言、調査、相談事案に関する関係者間の調整を実施  相談機関相互の連携の促進、相談事案に係る情報の収集及び分析  責務  中立かつ公正に職務を遂行  大阪府障害者差別解消協議会(解消協)  構成  委員20人以内 (専門事項を調査審議させるために、専門委員を若干置くことができる)  委員は、障害者、障害者の自立と社会参加に関する事業に従事する者、学識経験者、事業者等から知事が任命  障害者団体代表 7人、事業者 7人、学識経験者2人、権利擁護関係者3人  オブザーバーとして、国の機関(法務局、労働局・運輸局)及び市町村代表が参画  会長 関川 芳孝 大阪府立大学大学院 人間社会システム科学研究科兼地域保健学域教育福祉学類教授  担任事務  法規定事務(解消協は、障害者差別解消法第17条の「障害者差別解消支援地域協議会」の機能を担う。)  情報交換、相談及び事例を踏まえた取組に関する協議  構成機関等に対し、情報の提供、意見表明その他必要な協力の求め   条例規定事務  知事が諮問する差別解消の推進に関する事項への意見申述べ   知事に対し、正当な理由なくあっせん案に従わないもの等への勧告の求め  知事が正当な理由なく勧告に従わない者を公表しようとするときの意見申述べ  合議体を設置し、紛争事案や相談事案に対応    合議体の運営  担任事務  広域支援相談員による解決が難しい場合、紛争の解決をするためのあっせんを実施(あっせん実施型の合議体)  相談状況の総合的な分析・検証をおこない広域支援相談員への助言を実施(助言・検証実施型の合議体)    構成等  会長が、委員及び専門委員の中から分野や障害種別を踏まえた事案に応じて5人を指名   参考資料4  大阪府障がい者差別解消協議会 委員名簿(平成31年3月現在)  以下、氏名、所属及び職名の順に、委員、オブザーバーを記載します。  (委員)  大竹 浩司 公益社団法人大阪聴力障害者協会会長  小田 昇 関西鉄道協会専務理事  小田 浩伸 大阪大谷大学教育学部特別支援教育専攻教授  河ア 建人 一般社団法人大阪精神科病院協会会長  倉町 公之 公益社団法人大阪府精神障害者家族会連合会会長  坂本 ヒロ子 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会理事長  塩見 洋介 障害者(児)を守る全大阪連絡協議会特定非営利活動法人大阪障害者センター事務局長 篠村 安弘 日本チェーンストア協会関西支部事務局長  柴原 浩嗣 一般財団法人大阪府人権協会業務執行理事兼事務局長  関川 芳孝 大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科兼地域保健学域教育福祉学類 教授  橋 あい子 一般財団法人大阪府視覚障害者福祉協会会長  辻川 圭乃 弁護士  坪田 真起子 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会大阪後見支援センター所長  豊田 泰隆 株式会社KOTOYA代表取締役社長  中井 悌治 一般財団法人大阪府身体障害者福祉協会会長  西尾 元秀 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議事務局長   久澤 貢 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会セルプ部会副部会長  前川 たかし 一般社団法人大阪府医師会理事  藪本 青吾 大阪私立学校人権教育研究会 障がい者問題研究委員会委員  (オブザーバー)  大阪法務局人権擁護部第二課長  大阪労働局職業安定部職業対策課長  近畿運輸局交通政策部消費者行政・情報課長  市長会代表市 担当課長  町村長会代表町村 担当課長  大阪府障害者差別解消協議会専門委員名簿(平成31年3月現在)   以下、氏名、所属及び職名の順に専門委員を記載します。  (専門委員)  大下 芳典 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会セルプ部会副部会長  阪本 栄 一般社団法人大阪府医師会理事  田垣 正晋 大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科兼地域保健学域教育福祉学類教授  田中 直人 島根大学総合理工学部客員教授  寺田 一男 一般社団法人大阪府身体障害者福祉協会副会長  長尾 喜一郎 一般社団法人大阪精神科病院協会副会長  中鹿 直樹 立命館大学総合心理学部准教授  羽藤 隆 一般社団法人大阪脊髄損傷者協会副代表理事  東野 弓子 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会理事  福島 豪 関西大学法学部 教授  福田 啓子 一般社団法人大阪自閉スペクトラム症協会理事  古田 朋也 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議議長  細井 大輔 弁護士 松本 信代 特定非営利活動法人大阪難病連理事長 山本 深雪 大阪精神障害者連絡会代表   参考資料5  大阪府障がい者差別解消協議会・合議体の開催状況   以下、会議名、開催日、議題等の順に記載します。  第6回大阪府障がい者差別解消協議会  平成30年5月28日  1 会長の選出について  2 平成30年度 合議体の運営について  3 その他  大阪府障がい者差別解消条例運用状況に関するワーキングの設置について  平成29年度大阪府広域支援相談員対応状況等について  府内市町村の状況について  心のバリアフリー推進事業について    第1回合議体  平成30年6月27日  1 広域支援相談員の受け付けた相談事案について    第2回合議体  平成30年9月10日  1 広域支援相談員の受け付けた相談事例の検証  第3回合議体  平成30年10月29日  1 あっせんについて    第4回合議体  平成30年11月29日  1 あっせんについて  第5回合議体  平成30年12月3日  1 広域支援相談員の受け付けた相談事案について  2 障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書(素案)について  第6回合議体  平成31年2月4日  1 障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書(素案)について  2 広域支援相談員の受け付けた相談事案について  第7回大阪府障がい者差別解消協議会  平成31年3月4日  1 障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書について  2 その他  障がい者差別解消条例の運用状況について  第7回合議体  平成31年3月4日  1 広域支援相談員が受け付けた相談事例の検証について