資料1−1 平成30年度 障害者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書 広域支援相談員の相談事例等の分析から(概要)  「助言・検証実施型」の合議体における広域支援相談員の相談事例等の総合的な分析  府内市町村への支援や啓発活動も含めた障害者差別解消の取組みと課題を検証  条例に規定した相談体制整備について、市町村・広域支援相談員・合議体の機能と関係に着目し質的調査を実施   広域支援相談員の体制等と相談対応  広域支援相談員の体制と役割  広域支援相談員の職務  丁寧で質の高い相談対応と、市町村への的確な助言等を行うため、情報共有と相談員間の連携強化を図る(日々のケース進捗や市町村支援の取組みに関する日報作成、定期的なミーティングによるケース検討)  また、様々な専門性を有する合議体から助言をもらう仕組みとなっており、それによって相談員の対応力の向上が図られている  法や条例の周知に伴う相談事案の複雑化・多様化を見込まれることから、さらなる専門性や調整力が必要  広域支援相談員の人材育成や、市町村に対する幅広い支援を行うための人材確保が課題   広域支援相談員の対応実績  (平成30年4月1日から平成30年12月31日)  新規事案件数は133件(平成29年度 継続件数9件と合わせ実相談件数142件)(前年度4月から12月 新規125件)  (「不当な差別的取扱い」10件、「合理的配慮の不提供」12件、その他111件(うち、「不適切な行為」20件 など)  対応回数は979回と前年度より増加(前年度4〜12月 807回)、平均対応回数は1件あたり7.4回。  相談対応にあたっては、電話対応のみならず、現場に向かって調整を図ることが増加してきている。  不当な差別的取扱いは10件で前年度より減少(H29同期間で22件)、一方で「不適切な行為」は今年度は20件(H29同期間で11件)と増加しており、法上の差別に該当しない事案についてもキャッチし対応。   合議体における助言・検証の実施  1 広域支援相談員の相談対応  合議体での主な意見  「指導型の調整」を行う必要がある事案については指導監査権限のある機関と連携するなど、様々な関係部局と協力して対応することが必要ではないか。  条例では、相談対象となる障害者や事業者の範囲について規定がないため、他府県が関わる事例について、どこまで広域支援相談員が実効的な調整ができるのか、整理が必要。  府における整理と検証  「指導型の調整」が必要な相談対応において指導監査権限のある行政機関等と協力するなど、様々な関係機関と情報共有や連携を図り、事業者に働きかけていく。   他府県に渡る事例の対応も想定されるが、事例に応じて柔軟に調整を図りながら、広域自治体としての役割を果たせるよう、他府県と連携を図っていく。  2 相談の分類と整理  合議体での主な意見  不当な差別的取扱いについて、障害を理由とするか否か、正当な理由があるか否かの判断ができない場合でも、障害者差別の可能性がある事例として考える必要があるのではないか。  合理的配慮の不提供について、事業者がどのように対応すべきか悩ましいことも考えられるが、互いに話し合って合意形成を図ることが望ましいと思われる。  府における整理と検証  事実確認が十分でなく、障害を理由とするか否かや、正当な理由があるか否かが判然としない場合でも、不当な差別的取扱いに当たる可能性を鑑みて対応していく。  合理的配慮の不提供については、その当否の判断を主眼とするのではなく、障害者の立場に立ちながら、双方の話し合いや考える姿勢を培うべく対応していく。   3 合議体による「あっせん」の考え方  合議体での主な意見  合議体は「不当な差別的取扱い」と認定する機関ではなく、解決策を見出だすことが目的であるため、差別の当否の判断が困難でも、あっせん案を作成できるのではないか。   あっせんの申出があり、さらなる事実確認が必要な場合には、広域支援相談員による調査に加え、合議体による調査を行うことが考えられる。  府における整理と検証  合議体は解決策を提示することが第一義的な目的であるという趣旨を鑑み、不当な差別的取扱いの疑いがあると考えられる場合は、あっせん可能なものとして対応する。  あっせん案の作成に当たっては、さらなる具体的な事実を確認する手続きが見込まれることも想定して、事例検証を行なっていく  4 今後の課題  広域支援相談員の「調整」の在り方や他機関との連携、障害者差別に関する考え方が深まってきたことから、今後も継続して合議体での議論を重ねることが大切。特に、「合理的配慮」に関して、個別具体的な事例を通して議論し、考え方の整理が必要。   「あっせん」については、具体的なスキームの検証や、あっせん案を作成するにあたって想定すべき事項などについて、議論と検証が必要。  広域支援相談員、合議体、解消協議会の役割・機能やしくみについて、課題や今後の取組みを検証することが求められる。   質的調査手法を用いた相談体制の整備状況の検証  条例に定めた相談体制整備の基盤となる、市町村、広域支援相談員、合議体それぞれの機能・役割と関係性について分析。  方法は、以下の記録を基に質的調査手法を用いて分析  大阪府障害者差別解消条例運用状況に関するワーキング  広域支援相談員による出張情報交換会  大阪府障害者差別解消ワーキング(市町村ワーキング)  結果・考察  1 市町村と相談員の役割と関係  相談員は差別の個別事案に関する専門窓口であり、相談者の生活全体や地域全体の啓発について関わることは、市町村につなぐといった役割分担が考えられる。  一方、相談員は、差別事案に関し専門的な助言や広域的な調整、市町村同士の関係構築を図る場の設定といった役割を担い、市町村をバックアップ。  2 相談員と合議体の役割と関係  合議体による助言・検証が、相談員へのスーパーバイズ機能を果たし、相談員のスキルアップや、ひいては市町村への助言につながる。  しかし、合議体だけで相談員や大阪府の課題をすべてクリアできるものではないことから、解消協議会の役割についても整理が必要。  まとめ  この質的調査により、市町村、相談員、合議体の果たしてきた役割や相談体制の整備状況について分析することで、相談員から市町村への、また合議体から相談員への助言機能が発揮されているなどの評価される点と、制度や施策に関する審議、市町村の状況把握及び取組みの推進についてどうしていくかなどの課題となる点が浮き彫りになった。今後は、評価される点を発展させ継続していくとともに、明らかとなった課題の解決を図るための議論が必要。  また、このしくみを十分機能させるためには、互いに対話し合える関係性の構築が重要。    府内市町村に対する支援の取組み  府内市町村の取組みに向けた支援  1 市町村ワーキング  相談対応の手引きとなる「相談の流れ」に事例を追記するなど内容を充実。また、地域協議会の運用状況等、差別解消の取組みに関する情報交換  2 市町村勉強会の開催  府内市町村職員を対象に、基礎知識の習得、実務の理解、取組に関する情報共有  3 出張情報交換会の実施  相談員が各圏域に出向き、相談員による研修を行うとともに、市町村同士の情報交換を実施。  4 市町村ヒアリング  地域協議会の設置や運用に関する意見や課題を聴取。  地域協議会の設置にあたっては、効率的な運用や参画委員の確保が課題。また、設置後は、ネットワークとして活用しやすいというメリットがある反面、どのように有効に運用するかが課題。  市町村支援における課題  1 相談対応  相談窓口の周知を図るとともに、市町村の相談事例のキャッチ力や対応力の向上が求められる  2 地域協議会の設置  地域協議会の設置促進を図るとともに、設置後の運用についても府が情報提供をすることが必要   障害理解に関する啓発の取組み  大阪ふれあいキャンペーン、共に生きる障害者展、心の輪を広げる障害者理解促進事業、大阪府障害者等用駐車区画利用証制度、ヘルプマークの周知・普及、心のバリアフリー推進事業  事業者や府民の差別への「気づき」を促す工夫をするとともに、公民連携や、障害福祉分野と他分野との連携を図る   まとめ  障害者差別の解消のためには、事例の蓄積を活かしながら「気づく」力を身に付けることが第一歩。  事業者に対して「気づき」を促すことが、紛争防止や合理的配慮の提供につながり、「建設的対話」の文化を醸成。  身近な相談窓口である市町村は、多種多様な問題が混在する相談の中から差別に気づくとともに、差別以外の相談についても適切な機関につなぐといった対応が求められる。  また事例を通して、障害者や事業者、多様な分野の関係機関が関わり合うことが、障害者差別への気づきや、障害理解につながっていく。  これらによって障害者差別に関する周知や理解が進めば相談事例の増加と、複雑化・多様化が見込まれるため、市町村や広域支援相談員の対応力の向上を図るとともに、適切な解決のため様々な関係機関と連携していく。  相談員の相談事例の助言を担う合議体、その母体となる解消協議会の役割や責務についても検討。     府の役割  障害者差別の解消に向けては、差別への「気づき」、様々な関係機関とのネットワークの構築、その構成員が主体的な役割を果たすことが必要。今後も、啓発と相談体制の両輪で、差別解消に向けた取組みの工夫を進めていく。