障害者差別解消の取組みと相談事例等の検証 平成28年度の相談事例等の分析から    平成29年3月 大阪府   目次  1 はじめに   2 合議体における助言・検証の実施   3 広域支援相談員の対応実績   4 相談事例等  (1)商品・サービス分野  (2)福祉サービス分野  (3)公共交通機関分野  (4)住宅分野  (5)教育分野  (6)医療分野  (7)その他 5 相談状況の整理と検証 6 参考資料  参考資料1 広域支援相談員と大阪府障害者差別解消協議会   参考資料2 大阪府障害者差別解消協議会 委員・専門委員名簿  参考資料3 大阪府障害者差別解消協議会合議体開催状況等  参考資料4 大阪府の障害者差別解消や障害理解に関する啓発     1 はじめに  大阪府では障害者差別解消法の施行にあわせ、障害者差別解消条例を平成28年4月に施行し、条例に基づく相談及び紛争の防止又は解決のための体制整備の一環として、府に広域支援相談員を配置するとともに、障害者差別解消協議会を設置しました。  その協議会の下に合議体を組織し、広域支援相談員の相談状況等を総合的に分析と検証を行う合議体(助言・検証実施型の合議体)を開催してきました。  本報告書では、この「助言・検証実施型の合議体」における相談事例等を分析し、大阪府における条例施行1年目における、障害者差別解消の取組みを検証し、条例附則に規定する条例の見直し検討に資することを目的としています。  障害者差別解消法の趣旨を踏まえた差別解消の取組みを着実に推進していくためには、今後とも、広域支援相談員による対応と障害者差別解消協議会及び合議体による検証等を通じ、府における相談事例の蓄積、取組みの分析や評価等を行うとともに、合理的配慮の概念をはじめとする差別解消に関する認識が社会的に共有されていくことをめざし、法の趣旨の啓発を促進してまいります。   2 合議体における助言・検証の実施  大阪府は障害者差別解消条例を施行し、相談及び紛争の防止又は解決のための体制整備の一環として、府に広域支援相談員を配置するとともに、新たな附属機関として障害者差別解消協議会を設置しました。  広域支援相談員は、(1)市町村に設置された相談窓口等(相談機関)における相談事案の解決を支援するための助言、調査、調整等、(2)障害者等及び事業者からの相談に応じ、相談機関と連携した助言、調査、調整等、(3)相談機関相互の連携の促進と相談事案に係る情報の収集、分析を職務としています。  障がい者差別解消協議会は、障がい当事者等、事業者、学識経験のある者等で構成し、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する事項を審議するとともに、その下に合議体を組織し、障害者差別解消法第8条第1項に規定する事項に係る紛争事案(事業者による不当な差別的取扱い)を解決するためのあっせんや、広域支援相談員が行う職務に関する助言を行うこととしています。  法施行から間もない平成28年度においては、当面、広域支援相談員が行う職務に関する助言を行う合議体である「助言・検証実施型の合議体」を1〜2か月に1回の頻度で開催し、広域支援相談員等が対応した相談事例の分析等を行い、差別解消の取組を検証することを平成28年6月に開催した第1回障害者差別解消協議会で決定しました。  次項以降では、障害者差別解消協議会(平成28年6月と平成29年2月に開催)及び合議体(平成28年7月から平成29年1月までに開催)における検証等を経て、広域支援相談員の対応実績や相談事例等についての整理・分析、及びこの1年間の府の取組の検証等をおこなっています。   3 広域支援相談員の対応実績  広域支援相談員の対応実績については、4月〜6月分を7月の第1回合議体で、4月〜9月分を10月の第4回合議体で、4月〜12月分を平成29年1月の第7回合議体で報告しました。  なお、対応実績の集計にあたっての考え方、分類や整理の区分などは、合議体における意見等を踏まえ、見直しをおこなってきました。  次ページ以降に、直近の対応実績を掲載するとともに、分類や整理の区分等の考え方を掲載していますが、今後も対応実績を定期的に報告するとともに、公表及び集計にあたっての考え方等は障害者差別解消協議会及び合議体の意見を踏まえ、随時改善を図っていきます。      1.広域支援相談員の対応実績  平成28年度大阪府広域支援相談員の対応状況について  平成28年4月から平成29年3月までに広域支援相談員が対応した相談の状況は以下のとおりです。   大阪府広域支援相談員 相談の受付状況(平成28年4月1日〜平成29年3月31日)  (1)新規相談件数  計125件  月別相談件数および対応回数  新規相談件数 4月7件、5月11件、6月7件、7月5件、8月18件、9月4件、10月13件、11月7件、12月12件、1月10件、2月9件、3月22件  継続相談件数(前月以前より引き続き相談対応をした件数) 4月0件、5月5件、6月4件、7月0件、8月2件、9月8件、10月2件、11月6件、12月6件、1月3件、2月7件、3月5件  対応回数 517回 4月17回、5月42回、6月24回、7月11回、8月51回、9月42回、10月43回、11月42回、12月55回、1月28回、2月47回、3月115回  対応回数の内訳(同一事案で複数回対応した件数も含め) 1〜5回 96件、6〜10回 18件、11〜15回 5件、16〜20回 2件、21回 2件  (2)相談者の内訳  市町村27件、直接相談98件(直接相談の内訳 当事者53件、家族17件、支援者6件、事業者13件、他機関3件、その他3件、不明3件)  (3)相談内容の類型(重複があった場合、1類型に絞って集計)  不当な差別的取扱い26件(うち、合理的配慮の不提供も含まれると考えられるもの12件)、合理的配慮の不提供4件、その他95件(「その他」の内訳 不適切な行為7件、不快・不満18件、相談・意見・要望31件、問合せ32件、虐待1件、その他6件)  (参考1)相談者ごとの相談内容の類型  不当な差別的取り扱い 市町村11、当事者4、家族4、支援者4、他3   合理的配慮の不提供 市町村2、当事者2   その他(以下その他の内訳)   不適切な行為 市町村4、当事者3  不快・不満 市町村1、当事者13、家族4        相談・意見・要望 市町村1、当事者20、家族7、支援者2、他1  問合せ 市町村8、当事者5、家族2、事業者13、他4  虐待 当事者1  その他 当事者5、他1    (4)対象分野別件数  商品サービス34件、福祉サービス10件、公共交通機関13件、住宅6件、教育4件、医療5件、雇用8件、行政機関23件、その他22件  (参考2)分野ごとの相談内容の類型  不当な差別的取扱い 商品サービス17、公共交通機関5、住宅2、医療2  合理的配慮の不提供 福祉サービス2、教育1、行政機関1  不適切な行為 商品サービス2、公共交通機関2、医療1、行政機関1、その他1  不快・不満 商品サービス2、福祉サービス2、公共交通機関2、住宅1、教育1、医療1、行政機関5、その他4  相談・意見・要望 商品サービス1、福祉サービス3、公共交通機関3、教育2、雇用2、行政機関13、その他6  問合せ 商品サービス12、福祉サービス3、公共交通機関1、住宅2、医療1、雇用4、行政機関3、その他6  虐待 雇用1  その他 雇用1、その他5  (5)障害種別ごとの取扱い件数 (重複あり)  身体障害(視覚障害12件、聴覚障害10件、肢体47件、その他4件)、知的障害11件、精神障害18件、発達障害6件、難病4件、その他(身体障害以外)1件、不明13件、不特定11件  (参考3)相談内容ごとの障害種別件数(重複あり)  視覚障害 不当な差別的取扱い4、合理的配慮の不提供1、不快・不満1、相談・意見・要望3、問合せ3  聴覚障害 不当な差別的取扱い2、合理的配慮の不提供2、不快・不満1、問合せ4、虐待1  肢体不自由 不当な差別的取扱い16、不適切な行為3、不快・不満3、相談・意見・要望15、問合せ9、その他1  その他の身体障害 不快・不満2、相談・意見・要望2  知的障害 不当な差別的取扱い2、不適切な行為3、不快・不満1、相談・意見・要望3、問合せ2  精神障害 不当な差別的取扱い2、合理的配慮の不提供1、不快・不満4、相談・意見・要望5、問合せ3、その他3  発達障害 不当な差別的取扱い3、不快・不満2、問合せ1  難病 不当な差別的取扱い2、不快・不満1、相談・意見・要望1  その他(身体障害以外) 相談・意見・要望1  不明 不適切な行為1、不快・不満2、相談・意見・要望4、問合せ5、その他1  不特定 不快・不満2、相談・意見・要望2、問合せ6、その他1  (参考4)対象分野ごとの障害種別件数 (重複あり)  視覚障害 商品サービス5、福祉1、公共交通1、行政機関2、その他3  聴覚障害 商品サービス4、福祉2、公共交通1、教育1、雇用2  肢体不自由 商品サービス16、福祉5、公共交通7、住宅4、教育1、医療2、行政機関8、その他4  その他の身体障害 公共交通1、雇用1、行政機関2  知的障害 福祉2、公共交通1、住宅2、医療2、行政機関2、その他2   精神障害 商品サービス3、福祉3、公共交通1、住宅1、雇用2、行政機関3、その他5   発達障害 商品サービス3、教育1、雇用1、行政機関1  難病 住宅1、医療1、行政機関1、その他1  その他(身体障害以外) 行政機関1  不明 公共交通1、住宅1、教育1、雇用2、行政機関3、その他5  不特定 商品サービス4、住宅1、医療1、行政機関2、その他3    2.分類や整理の考え方  なお、「1.広域支援相談員の対応実績」の作成にあたっては、合議体における意見等を踏まえ、相談事例の分類や整理の考え方を作成しています。 現時点の考え方は以下のとおりです。        相談事例の分類や整理の考え方(平成28年12月 大阪府広域支援相談員取扱い概要)  相談事例の分類や整理の考え方については、合議体における意見等を踏まえ、次の通り整理する。   1 「相談類型」における整理  相談類型の選択にあたっては、相談者の主訴が、当初の相談受付時と相談対応の中で相談類型を整理した後では、相談類型が異なることがある。相談類型は広域支援相談員が対応を経た上で下記の定義に該当するものとなるよう、整理して分類すること。なお、相談対応中で未整理の段階では、主訴等を参考に暫定的に分類しておき、後日整理できた時点で改めて確定させる取扱いも可とする。  以下に、8つの相談類型とそれぞれの定義について示す。  1.不当な差別的取扱い  不当な差別的取扱いに該当するもの、又は不当な差別的取扱いに該当するおそれのあるもの。  2.合理的配慮の不提供  合理的配慮の不提供に該当するもの、又は合理的配慮の不提供に該当するおそれのあるもの。  3.不適切な行為  障害者差別解消法の差別類型には該当しない(おそれも含む)が、差別的・不適切な行為があったと思われるもの。  4.不快・不満  差別的・不適切な行為があったことを確認できないが、相談者が差別的と捉え、不快・不満があったもの。ただし、年金や給付金等他制度への不満・苦情を要因とするものは除く。  5.その他相談・意見・要望等  年金や給付金等他制度への不満・苦情を要因とするものや、差別以外の相談、意見、要望に類するもの。  6.問合せ  法や条例、制度等の内容に関する問い合わせ。  7.虐待  障害者虐待に該当すると思われるもの。  8.その他  上記に分類できないもの。   2 「性別・年齢」に関する留意点  相談等の主訴の対象となる者について、選択すること。  事業者や市町村が相談してきた場合は、相談してきた者の性別や年齢を選択記入するのではなく、相談事案の主体となる障害者の性別や年齢を選択する。  特に性別が不特定の場合は、「複数者(男性及び女性)」を選択する。   性別項目   男性、女性、複数者(男性のみ)、複数者(女性のみ)、複数者(男性及び女性)、不明   年齢項目  10代以下、20代、30代、40代、50代、60代、70代、不明、不特定    3 「対応の分類」に関する留意点  後述する「広域支援相談員の対応」の「調整」と「調整」以外が重複する事案については、主な対応について「調整」の選択を優先するものとする。  1.広域支援相談員の活動手法  以下に、9つの活動手法の分類とそれぞれの定義について示す。  (1)来庁対応  相談者が来庁し、相談等に対応した場合  (2)電話・メール等  電話・メール・FAX等により、相談等に対応した場合  (3)訪問  庁外に赴き、相談等に対応した場合  (4)事業者調査  相談内容に基づき、訪問・電話等により事業者への事実の確認等をおこなった場合  (5)資料確認等  各種資料やホームページ等により相談に関する情報を確認した場合  (6)現場確認  現場に赴き相談に関する情報を確認した場合  (7)情報共有等  市町村をはじめとする関係機関との情報共有等をおこなった場合  (8)ケース検討  市町村をはじめとする関係機関と、それぞれの役割を確認・整理・発揮し、個別・具体的な対応方針の検討をおこなった場合  (9)調整会議等  当事者を含め、関係者間の話し合いの場を設定した場合  2.広域支援相談員の対応  以下に、8つの対応の分類とそれぞれの定義について示す。  (1)調整   広域支援相談員が、相談事案の解決に向け、下記の3類型のいずれかをおこなった場合など。  自主解決型  相談者と関係事業者の相互の考え方について、広域支援相談員が整理して伝達等することにより、自主的な解決の方向に向かったもの。  助言型  相談者と関係事業者の相互の考え方について、広域支援相談員が整理して伝達することに加え、障害者差別解消法の趣旨等の説明や対応等への助言をおこなったもの。  指導型  相談者と関係事業者の相互の意思、意向、考え方について、広域支援相談員が整理して伝達することに加え、障害者差別解消法の趣旨等の説明等をおこない、さらに障害者差別解消協議会(合議体)の助言を踏まえた見解を明示するなど、広域支援相談員が指導的な助言をおこなったもの。  この3類型に該当しないものの、市町村や各所管行政機関、専門的相談機関等と、それぞれの対応や改善方策の具体的な調整、関係者間の話し合いの場の設定も調整に含むものとする。  (2)調査  広域支援相談員が、現地調査や関係事業者への事実の聴き取り、資料の収集等により相談内容の事実を確認した場合など。  (3)助言  広域支援相談員が、相談者又は関係事業者等に対し、相談事案の解決に向け、具体的な対応や改善方策等の助言をおこなった場合など。  (4)情報提供  広域支援相談員が、相談者に対し、単に、制度の説明や関係機関の紹介、事実に関する事項の情報を提供した場合など。  (5)傾聴  受容的・共感的態度で相談者の話を聴き、相談者が自分自身の考えを整理し、納得のいく結論や判断に到達するよう支援した場合など。  (6)情報共有・伝達  広域支援相談員が、相談事案について、市町村や関係機関等との情報共有・交換や、事実に関する事項の情報を伝達や引き継いだ場合など。  (7)事後確認等  広域支援相談員が調整等をおこなった事案について、改善状況を確認した場合など。  (8)その他  上記以外の対応     「広域支援相談員の活動手法」と「広域支援相談員の対応」の関係の概念図(イメージ)  広域支援相談員の「活動手法」と「対応」の関係を、以下の6つに分類し整理。  ア 該当する  イ 通常該当する   ウ それのみでは該当しない(例:来庁対応のみでは、調整や調査には該当しない)  エ 該当しない  オ 事例による(具体的な事例で判断)  カ 市町村等(市町村や他機関、他の相談機関の場合に該当)  以下、広域支援相談員の「対応」に対して該当する「活動手法」について示す。  1.「調整」の場合の活動手法  該当する ケース検討、調整会議等  それのみでは該当しない 来庁、電話・メール等、訪問  2.「調査」の場合の活動手法  該当する 事業者調査、資料確認等、現場確認  それのみでは該当しない 来庁、電話・メール等、訪問  3.「助言」の場合の活動手法  通常該当する 来庁、電話・メール等、訪問  4.「情報提供」の場合の活動手法  通常該当する 来庁、電話・メール等、訪問  5.「傾聴」の場合の活動手法  通常該当する 来庁、電話・メール等、訪問  6.「情報共有・伝達」の場合の活動手法  市町村等の場合に該当する 来庁、電話・メール等、訪問、情報共有等  7.「事後確認等」の場合の活動手法  通常該当する 事業者調査、資料確認等、現場確認  それのみでは該当しない 来庁、電話・メール等、訪問  市町村等の場合に該当する 情報共有等  8.「その他」の場合の活動手法  具体的な事例によって活動手法を判断する。   4 「連携先関係機関」の記載に関する留意点  「対応の分類」における「調整」「調査」に該当した場合において、当該分類に関係した機関を連携先関係機関として記載する。   5 その他  対応回数の積算においては、下記を原則とする。  面談は、その実施ごとに1回とする。  電話は、架電毎、受電ごとにそれぞれ1回とする。  メールは、送信、受信ごとにそれぞれ1回とする。  メールの受信のみであっても、内容を確認する必要があることから、1回と確認する。この他の対応回数の計上は、上記の対応を参考とする。   4 相談事例等  より多くの事例を分析・整理をすることが、制度運用の改善および差別解消の取組みの充実につながりますが、現状では、相談事例の蓄積が必ずしも十分とは言えません。そこで、合議体では、広域支援相談員が対応した事例等のほか、合議体構成委員の協力により提供された事例等についても分析等をおこないました。以降は、合議体での事例検討様式を掲載するとともに、合議体で助言等を得た事例について、大阪府障害者差別解消ガイドラインで整理した分野ごとに、一般化した事例として例示しています。   大阪府障害者差別解消ガイドライン(第1版、平成27年3月策定)  「理解し合うこと」「対話すること」「考えること」  障害を理由とする差別について府民の皆様の関心と理解を深めるため、何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのかなどについて基本的な考え方や具体的な事例等を記載したガイドラインを平成27年3月に策定しています。  ガイドラインでは、府民生活に深くかかわる6分野(商品・サービス、福祉サービス、公共交通機関、住宅、教育、医療)ごとに事例等を記載しています。  ガイドラインは、国の基本方針を参考に、まず差別についての基本的な考え方をよりわかりやすく示し、差別や望ましい合理的配慮の具体的な事例を盛り込むことで、府民の皆様により具体的なイメージをもって理解していただくことを目指しています。  差別をなくすためには、「理解し合うこと」、「話し合うこと」、「考えること」が大切です。そのきっかけにガイドラインを活用ください。  データ掲載URL  大阪府「障害を理由とする差別の解消に向けて」ウエブページ  http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/syougai-plan/sabekai-kaisai.html       合議体での事例検討様式(平成29年3月時点使用)   相談事例主題                                    受付 受付日時、受付方法 来所・電話・書面(手紙・文書・FAX・メール)・その他   相談分野の区分 商品サービス・福祉サービス・医療サービス・公共交通機関・住宅・教育・雇用・行政機関・その他   相談者の属性 市町村・当事者本人・家族・支援者・事業者・他機関・その他・不明   当事者(障害者)の状況  年齢   性別 男・女・不明  障害種別 身体(視覚・聴覚等・盲ろう・肢体不自由・その他)・知的・精神・発達・難病・その他・不明・不特定  障害の確認 手帳の所持・診断書・本人の申し出・その他   相談申出者(当事者)の主訴   主訴の背景・経過、その時の心情等   相談への対応   対象 当事者・家族・支援者・事業者・関係機関    結果およびその後のフォロー 終結・継続(受付日より3ヶ月間連絡を取っていない場合は、終結とする)    相談員の確認事項等   相談員の所見   事案の検討・分析(基本方針と大阪府障害者差別解消ガイドラインにそって分析する。)  1.不当な差別的取扱いかどうか  (1)商品やサービス等の提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりしているか。  「商品やサービス等の提供を拒否する」(商品やサービス、各種機会の提供を拒否すること)に該当するか。  「商品やサービス等の提供を制限する」(提供にあたって場所・時間帯などを制限すること)に該当するか。  「商品やサービス等の提供に条件を付ける」(障害のない人に対しては付けない条件を付けること)に該当するか。  (2)「障害を理由として」いるか  「障害を理由として」に該当するか   直接障害を理由とするだけではなく、関連する事由(車いす、補助犬その他の支援器具等の利用、介助者の付添い等の社会的不利を補い手段の利用等)を理由とする場合を含む  (3)「正当な理由」があるか  「正当な理由」がある場合、基本指針記載の正当な理由の判断の視点に相当するか。  「正当な理由」があると判断した場合、相手方は障害者にその「正当な理由」を具体的に説明すること、理解を得るように努めたか。     2.合理的配慮の不提供かどうか  (1)当事者(本人・家族・支援者等)はどのような配慮を求めたか  求められた配慮の概要  「意思の表明」の手段と「意思の表明」をおこなった者  「意思の表明」がなかった場合は、「合理的配慮の不提供」にはあたらないが、配慮を必要としていることが明らかだった場合、障害者と話し合い、適切な配慮を提案するなど自主的な配慮に努めたか。  「環境の整備」の状況  当時の環境の整備の状況(ハード面でのバリアフリー化、情報の取得、利用・発信におけるアクセシビリティ、職員研修等)  (2)求められた配慮に対してどのような対応がなされたか  求められた配慮に対しておこなわれなかった対応の類型とその詳細。(おこなった対応がある場合、その内容詳細を記載)  対応の類型   物理的環境への配慮、意思疎通の配慮、ルール・慣行の柔軟な変更、その他  内容詳細  障害者の性別、年齢、状態等に配慮したか。  代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解があったか。  対応は、必要かつ合理的な範囲で柔軟におこなわれたか。  求められた配慮が基本方針記載の留意内容に抵触した場合、その概要と判断  (3)「過重な負担」が生じていたか  「過重な負担」が生じるため合理的配慮の不提供に当たらないとした理由  事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)  実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)  費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況   相談分類について  不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供、その他(不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供ではない場合の分類 不適切な行為、不快・不満、その他相談・意見・要望等、問合せ、虐待、その他)  その項目とする根拠    体制整備について  相談及び紛争の防止又は解決のための体制が機能しているか  (1)市町村における対応   当事者(本人や家族等)との直接面接  関係者との連絡調整・情報収集  現場での調査(現地訪問、事業者への聞き取り等)  会議の実施  他機関への引き継ぎ、情報共有  情報提供・資料送付  (2)広域支援相談員における対応(市町村からの広域支援要請:有・無 )  調整(自主解決型・助言型・指導型・その他)  調査(現地訪問、事業者への聞き取り等)  助言  情報提供  傾聴  情報共有・伝達  事後確認等  その他  (3)合議体への助言求め  継続中   終了後    分野ごとの事例一覧(合議体への提出事例)   商品・サービス分野  (1)感覚過敏がある人のプール利用  (2)盲導犬利用者の飲食店利用  (3)電動車いす利用者の移動における対応  (4)講習会における要約筆記利用  (5)遊戯施設における車いす利用者への制限等  (6)車いす利用者のショー鑑賞(委員提供事例)  (7)遊戯施設における電動車いす利用(委員提供事例)  (8)精神障害があると伝えた人に対する引越し業者の対応     福祉サービス分野  (1)看護師配置や医療機器が整えられない場合のサービス提供の制限(委員提供事例)  (2)本人に地域でのトラブルがあった経歴がある場合のサービス提供の制限(委員提供事例)  (3)無届外出を頻繁にされるなど本人の安全管理が難しい場合のサービス提供の制限(委員提供事例)  (4)ヘルパーと利用者のトラブルによるサービス提供の制限(委員提供事例)  (5)家族から自宅に帰ることを拒否されていることを理由とする施設入所の継続(委員提供事例)          (6)意思の表明が難しい方へのサービス提供(委員提供事例)   公共交通機関分野  (1)盲導犬利用者の飛行機搭乗  (2)電動車いす利用者に対するタクシー乗務員の言動  (3)鉄道連結部の点字表記(委員提供事例)  (4)駅の無人化 (委員提供事例)     住宅分野  (1)障害のある人の家族からの住宅賃借の相談  (2)障害者の住宅賃借(委員提供事例)   教育分野  (1)小学校の事例(委員提供事例)  (2)小学校の事例(委員提供事例)  (3)中学校の事例(委員提供事例)  (4)高等学校の事例(委員提供事例)   医療分野  (1)電動車いす利用者の受診   その他  (1)聴覚障害がある人に対する職場の対応  事例の取り扱いにあたっては、個人情報取扱事務の適正な執行を図る観点から、実際の事例を踏まえつつ内容を一部変更するなどの加工をおこなっています。    1.商品・サービス分野   商品・サービス分野 事例1 感覚過敏がある人のプール利用  相談の内容   プールを家族と利用しようとした際、入水にあたってスイミングキャップを被るよう言われた。家族には自閉症、感覚過敏があり、スイミングキャップを被れない事を説明するが入水を拒否された。  対応概要   当該市町村の差別解消の窓口電話を紹介した。相談しても納得できない、解決しない時は、再度、府に連絡してほしい旨伝え、相談者は了解された。以後、連絡はない。  分類   不当な差別的取扱い・合理的配慮の不提供     相談員の対応に関わる助言  広域支援相談員の対応として、可能であれば連絡先などを確認し、フォローするべきではないか。  なお、電話での相談等があって、その後一定期間ご本人からの連絡がなければ終結といった取扱いでいいかもしれない。その後動きがあれば、新たなケースとして取り扱えばいいのではないか。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  スイミングキャップを被らなければならないというルール設定の目的と趣旨は何か。スイミングキャップを被ることが、プールの運営管理にとって変更不可能な本質的なものと認められるかどうか。なお、本件については、スイミングキャップを被らずプール利用しても、特に支障ないと思われる。  スイミングキャップを被るよう、利用者に求めることは、運営者側のプールの維持管理にとって合理性があるとしても、一人について例外を認めることが著しい不合理になるかどうかを考えても良いのではないか。なお、本件については、一人についての例外が著しい不合理にはならないと思われる。  本件は、本来提供するべき合理的配慮を提供しなかったために生じたプール利用拒否であり、合理的配慮の必要性は、感覚過敏という障害によって発生しているもので、これも広く見れば障害を理由とする差別的取扱いだという理解ができるかもしれない。  合理的配慮の不提供事例に関連するが、あわせて不当な差別的取扱いと位置付けるべきではないか。ただ、分類については、さらに事例の蓄積を経て検討していくべき。     商品・サービス分野 事例2 盲導犬利用者の飲食店利用  相談の内容  盲導犬を連れて飲食店に入ったところ入店を断られた。仕方なく他の飲食店に入ると食事ができた。  対応と結果  ご本人が、身体障害者補助犬法の所管課に連絡していると思い込んでおられたことから、相談員が改めて当該窓口を案内し、相談が終了した。(その後、身体障害者補助犬法の所管課へは情報共有済み。)  分類   不当な差別的取扱い      相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  身体障害者補助犬法の趣旨から、盲導犬の入店拒否はあってはならないことだが、食料を取り扱う飲食店の拒否の理由には、衛生面や動物アレルギー等が考えられるかもしれない。これらを正当な理由と考えるかどうか整理する必要があるのではないか。  障害者差別解消法は、障害者の利益を守るための法律なので、通常の社会通念だけではなく、当事者がどこに困っているのか、それで制約される利益は何なのかということを深く考える必要がある。その一方で、事業者側の利益との調整で、差別かどうかの規範が作られるプロセスとなっていることから、事業者側が何に困って拒否等するのか、それは正当な理由があるのかないのかというところも検討して、社会的に納得できるラインというものを考えていく必要があるのではないか。   商品・サービス分野 事例3 電動車いす利用者の移動における対応  相談の内容  事業者として、電動車いす利用者の移動について、どのように対応すればよいか。電動車いすの方がエレベーター乗降時、後ろ向きに降りる際など、他の客にぶつからないか。電動車いすの場合エレベーター内で向きを変えられるのかどうか。また、電動車いすの速度コントロールがどうなっているのか。バリアフリーになっていないところでは、どう介助すればよいか。  対応と結果  電動車いすのスピードを調節するレバーにて速度を遅くすることが可能であること、移動の際に手動への切り替えをお願いすればどうかと助言した。電動車いすはエレベーター内で回転することができないため、エレベーター内の鏡を見ながら後退することになること(簡易に設置できるフィルムミラーもある)や、バリアフリーになっていないため車いすを抱えて移動する必要があるときは、必ず4人でしっかりフレームを持ち抱えること、など車いす介助方法について一般的な助言した。また、電動車いす利用者に手伝いが必要なことがあるかを個別に聞くことが必要であることも伝えた。  分類   問合せ   啓発等に関わる助言  電動車いすは本人にとって体の一部である、という意識が強く、そういった考え方への理解が深まるよう周知していく必要がある。また、電動車いすに関する情報や知識を周知できるような啓発手法を考えることが必要ではないか。  事業者側は、どういったことが不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供にあたるのか、理解が十分でない場合もあるため、事例を積み重ねていき、記録として残しておいて、Q&Aを作るなど、事業者の理解促進を図るような取り組みをおこなってほしい。「加害者と被害者」という対峙の仕方ではない在り方を模索していくべきではないか。   商品・サービス分野 事例4 講習会における要約筆記利用  相談の内容  講習会に申し込んだ際、「聴覚障害があり、受講には要約筆記が必要である」と申し出たが、主催者からは要約筆記には対応できないとして、当該会場ではなく、他の会場での受講を勧められた。  対応と結果  相談員が本人と主催者とのやりとりを確認の上、主催者に対し、本件は合理的配慮の不提供にあたる旨を説明。主催者からは「担当者に配慮の知識がなかった」「本人が受講できるように検討していく」と回答があった。相談員からの合理的配慮と過重な負担についての説明等により、主催者側も理解し、本人が受講する際には要約筆記での対応がなされた。併せて、相談員から主催者側に、要約筆記対応の際、講師が講義の際、話す速度を落とすといった配慮が必要な旨を助言した。  分類  不当な差別的取扱い・合理的配慮の不提供   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  合理的配慮がきちんとなされていない結果として差別的取扱いとなっている事例と思われる。こういった相談が入った場合に、合議体におけるあっせんがなじむのかどうかについて、事例検証を通じて合意形成をしたい。   啓発等に関わる助言  事業者側に、これまで配慮が必要な方への対応経験がなかったとしても、4月より法が施行されたという点で、それ以前とは状況が異なる。各省庁の対応指針の周知徹底が必要なのではないか。  主催者側に、主務大臣の対応指針が理解されていなかったのではないか。相談を受けながら事業者にも啓発していくことが重要だろう。   商品・サービス分野 事例5 遊戯施設における車いす利用者への制限等  相談の内容  遊戯施設でアトラクションに設定された歩行困難者への制限をなくしてほしい。  アトラクションに乗る際に、車いす利用者であっても階段を利用するように言われた。  通路幅は車いすが通行可能でありながらも、「基準がある」ことを理由に車いす移動を断られた。  対応と結果  当該遊戯施設の所在市の担当者が状況確認をおこない、以下のような回答を得た。  (1)当該アトラクションに関しては、歩行困難者への制限が実際にはない。アトラクションについては、個々に消防法や建築基準法等様々な基準をクリアする必要があり、利用条件も異なる。また、一般的な安全基準よりも厳しい独自基準を設定しており、障害者だけでなく高齢者であっても安全上問題があれば利用ができない旨を伝えることとしている。  (2)一時的にケガなどで車いすを利用している方などもいることから、スタッフ専用のエレベーターを特別に利用された際には、次回の利用についての確認も含めて「ご利用の際には階段を利用していただくこととなります」といったような話をする場合はあると考えられる。  (3)独自の安全基準に則った対応をしており、(1)と同様の理由によるものと思われる。相談員からアトラクションの利用基準等について遊戯施設から聞き取ったところ、「障害がある方への対応は、それぞれ障害の状況が違うので、現場スタッフがその場で判断し対応している」とのこと。  分類   不当な差別的取扱い・合理的配慮の不提供   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  アトラクションに乗る際、階段ではなくエレベーターを使用したい、とのことだが、そのエレベーターが荷物用か人員用かで危険性が異なることがある。また、通路の幅員があったとしても、他にも大勢の車いすの方が来られたら困る、ということが想定されないか。  建築基準法やバリアフリー法に則って、行政がチェックをすることが想定されるが、遊戯施設の設備は特殊なものが多く、その安全性についてのチェックが確実なものかどうかは不明である。また、実際にチェックされる基準は障害のない人が利用することを想定しており、車いすの利用など、障害のある人については想定がなされていないのではないか。  スタッフがマニュアルに従ってサービス提供を拒否したことについては、他に判断の材料がなかったのではないか。  事業者側のスタッフに対して、障害者差別解消の周知や研修がなされていたかどうかという視点から、研修等の環境の整備がおこなわれていれば、合理的配慮は提供されていた、というケースではないか。     商品・サービス分野 事例6 車いす利用者のショー鑑賞(委員提供事例)  概要  車いす利用者2名でショーを見ようとしたところ、「車いすの人は2名並んで見られない」と言われた。会場所在地市町村の差別解消の窓口が会場側に確認したところ、「当該ショーには、車いす2台並んで見られるスペースがある」との回答があったが、3名並ぶのは不可で、立ち見席など車いすスペース以外での鑑賞は「消防法で認められていない」というのが会場側の主張であった。実際には消防法でそこまで決められているのかは不明な上、車いす席は舞台最後列のみで、前列などで見る場合は、俳優が通る時に邪魔になるという理由から、車いすからの移乗を求められる。  所見  本件のショーについては、演出上火気を使用する場面があり、火災予防もしくは火災発生時の観客の安全な避難の観点から、防火に関する法規が定められており、所定の手続きを経て一定の安全性を確保しているものと考えられる。また、個別の劇場等と消防署間等の所管行政機関との協議等については、ケースごとに解釈・判断されていることも考えられる。なお、前列での鑑賞時に車いすからの移乗を求められる点については、今のところは、理由が法規等によるものではなく、ショー演出上、俳優が通路を使った演技の際に俳優が誤って車いすと接触する危険性があるためと思われる。なお、舞台において、仮に一定の簡易な作業で当該車いす分だけ座席を一時的に除却することが可能な構造であれば、最前列に係る件については解消される可能性もあると思われる。施設側における対応については、消防法や建築基準法等に係る安全性について専門的見地をもって検討する必要があるのではないか。  分類  不当な差別的取扱い・合理的配慮の不提供・その他(不快・不満、意見)   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  当該施設の構造が古いのではないかと思われる。車いす席を真ん中にできるデザインなど、技術や工夫で十分に楽しめるものはあるため、施設の更新が求められるのではないか。コスト面についても、ユニバーサルデザインにすることによって、より一層施設をPRすることにつながるなど、目に見えない経済的、副次的効果があるのではないか。  電動車いす利用者が前列でショーを見ることについて、抽象的な危険性があるかもしれないが、個別具体的に見ればそれほど問題はないかもしれないと考えられる場合、正当性についてはどう考えるか。また、事故が起こった際は、誰が責任を取るのかが問われることも想定すべきではないか。  消防法上の理由とされているが、消防法には劇場等に関する細かな規定は定められておらず、おそらくは行政機関の裁量によると考えられる。その場合に、当事者、消防法所管を含む関係機関や関係市町村などと、「なぜこういった安全基準なのか」等、話し合う場を設ける必要があるのではないか。   商品・サービス分野 事例7 遊戯施設における電動車いす利用(委員提供事例)  概要  建物の中を見て回るアトラクションを、電動車いす利用者と介助者で利用したところ、建物内は狭くて暗く、スタッフから電動から手動への切り替えを強く求められたため、介助者が手動に切り替えた。しかし、当該障害者の電動車いすは、前輪駆動タイプで重く、手動時の細かい操作は非常に難しいことから移動に不便であった。当該遊戯施設からの回答は以下のとおりである。  アトラクション運営にあたり、建築基準法や消防法、バリアフリー法、当該自治体の定める条例等の法令を遵守し、事故防止及び緊急時対応のため、事業者独自の安全基準・マニュアルを定めている。  電動車いす利用者に対しては、事故防止の観点で電動車いすの電源は切るようお願いしている。なお、電動車いすの重量が重いなど介助者が適切に移動できない場合は手動の車いすを無償提供している。  所見  自走することが前提で作られた電動車いすは手動で動かすことが困難であることを説明しているのにもかかわらず、事業者側は柔軟な対応ができていない可能性がある。電動車いすが以前より改良され、進化している点について、一定レベルの知識が要求されることを想定し、事業者側もスタッフ教育等を適宜おこなうなど、適切な対応をおこなうための環境の整備に努めることが求められるのではないか。  分類  不当な差別的取扱い・合理的配慮の不提供・その他(スタッフ教育が十分でないといった環境の整備に起因する可能性あり)   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  建築計画の段階で、電動車いすなどの利用を念頭に置いておらず、事業者側も電動車いすの新製品情報についての知見はないため、他の客に対する衝突事故や巻き込みの危険性などが予見される場合、それが抽象的な危険の可能性であったとして、安全性の担保を理由にしていたとしても、仕方がない部分があるのではないか。  特に基準や規定が設けられているわけではないため、事業者側は既存のものをベースに対応や判断をするものと思われる。時代や状況が変わってきている中では、今は昔と違ってこのような対応が求められる、ということを伝えていく必要がある。  当事者は、遊戯施設にて障害がない人と同じように楽しみたいと思っているが、一方、単に「電動車いすは危ない」との思い込みから、手動への切り替えや乗り換えなどを求められることが多い。本人にとって電動車いすは身体の一部であり、自分の意思で動きたいという気持ちに対して、事業者側に配慮や努力をしてもらいたい。   商品・サービス分野 事例8 精神障害があると伝えた人に対する引越し業者の対応  相談の内容  引越し事業者との調整の中で、精神障害であることを伝えたところ、引越しの契約が出来なくなった、との相談があった。  対応と結果  本人は大阪府内在住、引越し事業者の所在地が他府県であった事例。他府県の関係行政機関から本人が相談先を探しているとの情報を得た相談員は、転居期日が迫っていたこと等から、転居に関する本人支援と転居に関する調整を居住市に依頼する一方、府で当該引越し事業者の状況調査の聞き取りを担うなどの居住市へのフォローをおこなうこととした。引越し事業所からは、「相談者の要望に対応できないと断ったのは事実である。支払い方法等について双方の認識に齟齬があったため、事業者担当者が混乱したものと思われる。」との説明を受けた。事業者担当者が既に退職していたため、事実確認ができず詳細は不明であった。転居期日が迫る中、引越しの契約を断られたのは、精神障害であることによるものである、と感じた本人への対応を居住市と府で分担したことにより、他の引越し事業者と契約の上、期日内に本人は転居できた事例。  分類  不当な差別的取扱い・合理的配慮の不提供・その他(不快・不満、契約トラブルの可能あり)   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  本人は、転居期日が迫る中、精神障害を理由に契約を断られたと感じ、適切な相談窓口がどこであるのかも分からず、自分で判断して行動することが困難な状況にあったと思われる。そうした中で、大阪府の相談員が状況を勘案して市と連携して対応したことは適切だったのではないか。  他市町村や他府県が関係する可能性のある事例については、事業者の所在地が対応すべきといった考え方もあると思われる。ただし、本件事例のように、本人の相談内容や状況をふまえ、広域支援相談員が積極的に調整を図り、関係機関で情報共有や連携をおこない、適切な支援のために対応を分担することが必要な場合もあるのではないか。    2.福祉サービス分野   福祉サービス分野 事例1 看護師配置や医療機器が整えられない場合のサービス提供の制限(委員提供事例)  概要  医療サービスが必要な方の受け入れについて、看護師配置や医療機器が整えられていないため、入所を断る場合、医療面で対応できないことを理由に入所を断ることは「正当な理由」にあたるか。また、合理的配慮の提供は可能か。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  単に看護師配置や医療機器が整えられていないというだけでは、正当な理由にはあたらないのではないか。  看護師配置や医療機器の整備がなされていなかったとしても、地域で専門的対応をおこなう他機関が整備されている場合に、本人等のニーズを丁寧に聴き取ることで、当該機関の活用や連携なども視野に入れれば、受け入れの可能性もあり、そうした検討をおこなうことが重要ではないか。   福祉サービス分野 事例2 本人に地域でのトラブルがあった経歴がある場合のサービス提供の制限(委員提供事例)  概要  窃盗や暴行などの迷惑行為で警察沙汰になるなど、地域でトラブルを起こした経歴があったことを理由として、入所を断る、またはサービスを制限したり条件をつけたりする場合、地域でトラブルを起こした経歴があったことは「正当な理由」にあたるか。また、特にトラブルが長期間にわたって繰り返し起こるなど、職員の業務に過重な負担がある場合はどうか。    相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  地域でトラブルがあったといった過去の経歴だけでは正当な理由に当たらず、受け入れを拒むことはできないのではないか。   福祉サービス分野 事例3 無届外出を頻繁にされるなど本人の安全管理が難しい場合のサービス提供の制限(委員提供事例)  概要  無届外出を頻繁にされたり、自殺企図があり自傷を繰り返されたりするなど、本人の安全管理をするのが難しいことを理由に入所を断る、もしくはサービスに制限をつけたり条件をつけたりする場合、本人の安全管理をするのが難しいことは「正当な理由」にあたるか。また、他のサービス利用者の安全性にも大きく影響がある場合はどうか。     相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  本人に対するサービスの提供ができるかどうかについて、事業者側がどれだけ検討したのか、そのプロセスが重要ではないか。本人の障害特性を理由に断るのではなく、受け入れるための対応をどうするかについて着目する必要があるのではないか。  受け入れるための対応としては、医療等必要な関係機関との連携に努めたか、あるいは連携しようと検討したかといったことは正当な理由を考える上での一つの要素となるかもしれない。  関係機関との連携や職員の専門的な支援力で対応できる部分があるとしても、全ての障害福祉サービス事業所でそれが可能かと言われると、現実には厳しいが、本人の安全管理をするのが難しいことのみでは正当な理由に当たらないのではないか。   福祉サービス分野 事例4 ヘルパーと利用者のトラブルによるサービス提供の制限(委員提供事例)  概要  部屋の掃除などの生活支援のために入ったヘルパーに対して、障害者が攻撃的な発言をするなどによりトラブルを起こし、ヘルパーが支援することを嫌がったことを理由にサービスの提供を打ち切る場合、ヘルパー等の支援者とのトラブルが起こったことは「正当な理由」にあたるか。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  トラブルがあったとしても、それが本人の障害特性やヘルパーとの関係性によるものだとしたら、支援の一環として対応すべきであり、ヘルパーとトラブルがあったことだけでは正当な理由に当たらないのではないか。  正当な理由の検討にあたっては、現在トラブルが起きているという、具体的なトラブルの可能性があるかどうかの視点があってもよいのではないか。   福祉サービス分野 事例5 家族から自宅に帰ることを拒否されていることを理由とする施設入所を継続(委員提供事例)  概要  施設に入所している障害者に対し、家族から自宅に帰ることを拒否されていることを理由に、施設入所を継続するなど、本人の意思に反していたとしても、家族が拒否していることは「正当な理由」にあたるか。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  厚生労働省の福祉事業者向け対応指針や大阪府障害者差別解消ガイドラインでは、本件の類似事例について「不当な差別的取扱い」になりうる、と示されている中、本件のような「家族が拒否している場合」という点を付加した、少し踏み込んだ内容を検討することは重要ではないか。  本人の意思に反して漠然と施設入所を継続させてはならず、家族が拒否している場合、新たな住居で生活できるように、その方法を提案し、地域でできる限り支援していくという方向で関係機関とともに取り組んでいくといった役割が施設に求められるのではないか。そういった観点からも、家族が帰宅に反対していることだけでは正当な理由に当たらないのではないか。   福祉サービス分野 事例6 意思の表明が難しい方へのサービス提供(委員提供事例)  概要  重度の知的障害であるため、自分の意思を伝えるのが難しい方に対し、入所施設職員との継続的な関係性にあっても、意思の表出をしていただくための対応が十分にできていない場合、合理的配慮は「意思の表明があった場合」とされているが、意思の表明そのものが難しい方への対応をどう考えるか。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  福祉分野においては、長期間にわたる継続的なやりとりが事業者と本人との間に生じる可能性が高いため、他の分野とは意思の表明の解釈が異なるのではないか。     福祉サービス分野全般について相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  障害者差別解消法は、法の条文などから、障害者と障害者の間の差別(障害者間差別)を対象としていないという見方もあり、法律を厳格に解釈すると法に基づく障害を理由とする差別に当たらないかもしれない。  しかしながら、共生社会の実現に向けては、法律をできるだけ柔軟にとらえ、差別的取扱いに準じたものとして取り扱うこともできるのではないか。  福祉サービス分野のうち、障害者だけにサービス提供している事業者は、障害者以外へのサービスを提供する保育などの他の福祉サービス事業者とは、「正当な理由」のレベル等が違ってくるのではないか。障害福祉サービスではより高度なレベルでの対応が求められるのではないか。    3.公共交通機関分野   公共交通機関分野 事例1 盲導犬利用者の飛行機搭乗  相談の内容  盲導犬利用者が複数名で飛行機の搭乗予約をしようとしたところ、1機につき1頭しか搭乗できないと言われ、一緒に搭乗できなかったため、別の航空会社の飛行機を利用した。当事者が当該航空会社に身体障害者補助犬法や障害者差別解消法を踏まえた対応を求めても、対応されない。  対応と結果  相談員が上記相談を受けた後、当該航空会社では、盲導犬の搭乗に関する規定(1機につき1頭)を撤廃する、との連絡を受けた。  分類  不当な差別的取扱い・合理的配慮の不提供   相談員の対応に関わる助言  広域支援相談員の対応として、当該規定における制限の理由や根拠が何なのかということを確認していく必要があるのではないか。障害者差別解消法が施行されてからは、事業者側のルールに一定の根拠が求められるはずであり、そういった視点をもって対応することが求められるのではないか。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  差別の類型として、不当な差別的取扱いに加え、ルールの変更や修正がなかったという点では、合理的配慮の不提供の要素も含まれるのではないか。   公共交通機関分野 事例2 電動車いす利用者に対するタクシー乗務員の言動  概要  外出時に、タクシーに乗車するため、折りたたみできる電動車いすをトランクに積みこんでもらった。乗車できたものの、タクシー乗務員から「タクシー運転手は電動車いすを乗せるのを嫌がっている」「出かけるときには小さな車いすにしてもらいたい」といった言動があった。  対応と結果  本人から複数の関係機関に相談が入ったことから、相談員は関係機関相互の調整をおこないながら、本人への直接相談対応を積み重ねた。タクシー乗務員は乗車を拒否していなかったものの、発言は不適切であったという見解を関係機関と府で共有し、本人にも伝えて納得を得る。また、タクシー事業者側は、電動車いすに関する研修に取り組むこととなった。  分類  不適切な行為     相談員の対応に関わる助言  障害者差別解消法上の差別の類型に該当しないものであっても、丁寧に対応することが重要ではないか。特に初期対応にあたっては、もし差別にあたらなかったとしても、本人の話を傾聴し、適切に関係機関につないでいくことが重要ではないか。  障害に関連するあまり適切ではない言動も、差別に当たり得る可能性があると考えて、市町村にもそうした差別的言動には十分配慮してほしいという形でお願いしていくことが必要かもしれない。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  相談分類上、「差別的な言動」のようなものを作り、相談対応のレベルでは、そういう行為も問題のある行動であるということを示唆するようなものに改めていくといいのではないか。  ただし、本人の受け取り方によって「差別的な言動」ととらえられる場合もあり、非常に取扱いが難しいのではないか。  差別的な言動などについては、ガイドライン上の差別の類型には該当せず、取り扱いは難しいものの、今後の検討課題としつつ、本人の希望があり調整できるものは調整していく必要があるのではないか。また、市町村とも、差別的言動に関する事例を共有しながら、窓口対応としての認識の共有を図っていただきたい。   公共交通機関分野 事例3 鉄道連結部の点字表記(委員提供事例)  概要  某鉄道の車両の連結部分(車間通路)の自動ドアを開閉するためのボタンについて、視覚障害がある人にもわかるように点字表記をしてほしい。鉄道会社の回答として、点字表記をおこなわない理由は以下のとおりであった。(1)国土交通省の指針等に車間通路の自動扉に点字表記に関する基準がなく、当社が独自に点字表記すると視覚障害者の方の混乱を招く恐れがある、(2)走行時の車間通路の移動は危険なため、できる限り通行を控えていただきたい。  所見  障害者差別解消法における国土交通省対応指針(鉄道事業関係)においては、合理的配慮の提供の具体例は記載されているものの、駅員等による人的対応に係る内容が列挙されているのみである。なお、その後相談者は鉄道会社からの説明等により、新型の車両では点字表記はないものの改良され、視覚障害のある方の通行が容易になっていること等で納得されたとのこと。鉄道事業者として、構造上、車両内部と異なり、強度の確保が困難な場合が多い車両連結部への誘導は、乗客の安全性確保の観点から控える、といった理由はあるものの、なぜ車両の表示改善がなされていないのかについての根本的な理由が不明。むしろ危険性等も含め点字表記をおこなうことが望ましいのではないか。  分類  合理的配慮の不提供、その他(不快・不満、意見)     相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  安全性を確保するために、表記をしなかったり、通行を制限したりすることに合理性があるのか。他の人は通れるのに視覚障害がある方は通れないという状況であるならば、安全性から言えば、視覚障害がある人でなくとも、小さな子どもや高齢者も通れなくなる、ということも言えるのではないか。また、点字表記をしないほうが、誤って連結部を通ってしまうなど、逆に危険性があるのではないか。  仮にこういったケースについて、点字表記をするなどのあっせん案を示すとした場合、事業者側にその根拠を示すことも必要になるのではないか。また、事業者側があっせん案を受けて点字表記したところ、通行した人が負傷するなどの事故が起こった場合、あっせんを図った大阪府に賠償を求めることも想定される。あっせん案の提示にあたっては、その根拠等について説明責任が生じることを念頭に、事案を取り扱う必要があるのではないか。   公共交通機関分野 事例4 駅の無人化(委員提供事例)  概要  某鉄道会社の駅が無人化されたため、駅の無人化の撤廃を求めたが、鉄道会社側は、経営的な理由により、駅員の配置はおこなわず、インターホンを設置し、連絡があった場合、隣駅からの駅員が駆けつける、という方法を取っている。当該障害者は、これにより、駅員が近隣駅から到着するまでの電車1〜2便待たなければならない。  所見  駅の無人化については、国土交通大臣から安全性の確保、サービス水準の確保、地元自治体等の理解等につき鉄道事業者に対し指導をおこなうこととされているが、具体的な作為義務を負うものとまで解釈できるかどうかは不明であり、仮に大臣による指導等がなされていたとしても、鉄道事業者への強制力がなければ、駅の無人化状態が解消されない状態が続くものと考えられる。「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」では、鉄道事業関係における差別的取扱いの具体例の記載でも、駅の無人化を差別的取扱と考えるのかどうかについての解釈は明確には示されていない。本件事例は、駅の無人化により障害者の安全が確保されず具体的な事件や事故につながったといった内容ではないものの、障害者が鉄道利用するにあたって一定の制約が生じているといった点から、個別の状況・場面によっては不当な差別的取扱いとなる可能性が生じることもあると考えられる。  分類  不当な差別的取扱い、その他(人員体制の整備(環境の整備)などの必要性)     相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  経営に関して合理性があるかどうかや、今いる人員でできるだけの対応(合理的配慮)はしているといった説明をされた際に正当性があるかどうかなどは、合議体で判断することは難しいのではないか。  電車への乗車までの時間の長さが正当な理由の有無に関係があると言えるのかどうか。障がいのない人との比較で、駅員不在のため、電車に乗れないという点では、待つ時間の長短ではない。ただし、3、4時間待たされるといった著しく長時間であれば、待たされた時間の長さも問題になるかもしれない。  有人駅から無人駅に駅員が向かう場合、有人駅の安全性の確保に時間がかかる、といったことから時間がかかっているといった場合、それが正当な理由といえるか。その場合、安全確認を効率的におこなうなど時間のかからない方法に改善しようとしているのかどうかといった観点が必要ではないか。  個別具体的な相談が入った場合、論点を整理しながら正当性の有無を考えていく必要があるのではないか。    4.住宅分野   住宅分野 事例1 障害のある人の家族からの住宅賃借の相談  相談の内容  生活保護受給中で障害がある家族が住宅を探しているが、不動産屋が見つけても家主から障害があることを理由に入居を断られている。相談窓口も、どこが中心になって相談に応じてくれるのかわからない。  対応と結果  (1)住居は生活上の基礎的なものであり、住宅扶助の給付をおこなっている生活保護部署が中心となり、関係機関が連携して支援するものと考えられること、(2)関係機関として市町村には「障害者自立支援協議会」があり、当事者団体、事業者団体、福祉施設など関係機関が参画して地域生活支援について検討していることなどの情報提供をおこなった。  分類  不当な差別的取扱い、その他(不快・不満、意見)   相談員の対応に関わる助言  広域支援相談員の対応について、入居への道筋をつけてほしいのか、相手側への調整が求められるかによって対応が異なってくる。もし後者であった場合には、広域支援相談員が、家主と本人との話を聞くといった対応が必要となってくるのではないか。本事例では、相談者の主訴は障害を理由とする差別に該当するかどうかを求めているのではなく、住居探しの支援をおこなう窓口等を求めるものであったため、本件のように、適切な相談窓口へつないでいくといった対応で良いのではないか。  なお、仮に、主訴が、「差別ではないか、調整をしてほしい。」といった求めであった場合、家主と本人の双方から話を聞くなどしていく必要があるのではないか。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  広域支援相談員による対応がなされたものの解決に至らず、その後あっせんの求めがあった場合、家主側の理由がよく分からない状況で、不当な差別的取扱いかどうか、事務局で判断できない場合、どのように取り扱うかを想定しておく必要がある。  条例上、障害者本人が、差別があったと考えるときに、あっせんの求めをすることができるとある。このため、条例規定の要件を満たせば、あっせんを取り扱う合議体において、その内容について、不当な差別的取扱いかどうかを判断した上で、対応することとなるのではないか。   住宅分野 事例2 障害者の住宅賃借(委員提供事例)  概要  生活保護を受給しており連帯保証人がいないことを理由に入居を断られた。「大家と保証会社の審査が厳しい」「連帯保証人害なければダメ」という理由だったが、単に断られたのではなく、障害者(特に精神障害者)に対する差別意識がその根本にあるのではないか。  所見  一般的な状況について 生活保護受給者には住宅扶助費が支給される。なお、精神障害者などでは、家賃保証の問題だけではなく、集合住宅内で様々な行動をするなどの誤解や偏見があり、「連帯保証人害なければダメ」等の理由を付けて、入居を拒否されることがある。当該物件を借りるにあたって、家賃保証会社の審査が通らず、借りることができないと伝えられる場合や、家主が入居を拒否していると伝えられる場合もある。  不動産会社と賃貸人、家賃債務保証会社に関係する法律等の確認 建物・土地の売買や不動産売買、賃借等の代理仲介等をおこなう不動産取引業をおこなう場合、宅地建物取引業法に基づいている。また、自らが貸主となり、土地や建物などの不動産を賃貸する不動産賃貸業では、宅地建物取引業法の免許は必要ではないが、賃貸住宅管理業の登録をおこなって事業を営むこととなる。大家・家主といった賃貸人は、法人から個人まで、またその賃貸の形態は様々だが、ここでは障害者差別解消法上の事業者として捉えることが可能。家賃債務保証会社は、賃貸住宅の契約時に必要な賃借人の連帯保証人を代行するものだが、家賃債務保証会社を規制する法律等は現時点ではない。  確認したその他の事実と所見 「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」では、不動産業関係における差別的取扱いの具体例の記載において、宅地建物取引事業者が不当な差別的取扱いとされるのは、“障害があることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整をおこなうことなく仲介を断る”とされている部分に「家賃債務保証会社」の記述があるのみでその他省庁の対応指針で「家賃債務保証会社」の業務を対象とした記載は見当たらない。  分類  不当な差別的取扱い、その他(各種施策・制度の推進状況に起因する可能性あり)   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  家主は障害者差別解消法上の事業主となるが、宅地建物取引業法などの取締法規の対象ではない。このため、障害者差別解消法第12条に基づき権限を行使する主務大臣がなく、仲介業者を通じて家主に間接的に働きかけることができたとしても、根本的な解決は難しいと思われる。  合議体の役割として、広域支援相談員への助言、あるいはあっせんの場において、家主や不動産業関係者へのヒアリングが可能であれば、本人と事業者との調整の中で、働きかけをおこなうことができるかもしれない。   啓発等に関わる助言  家主側の拒否の理由としては、物件がバリアフリー化されていないという理由から断るのではなく、トラブルなど、何かあったら困るという漠然とした不安から拒否しているのではないかと思われることから、障害理解を深める啓発が重要ではないか。  どのようにアプローチしていくべきかが難しいが、例えば家主が障害者に関わる機会が増えれば、障害理解は進んでいくと思われる。そういったプロセスを経て行けば、障害者に対する意識が変わり、障害者に対して入居を断るといった現状も変わるのではないか。    5.教育分野  教育分野については、事業者による障害を理由とする差別等の相談事例が広域支援相談員に寄せられていなかったため、委員提供事例を活用し、考え方を整理した。   教育分野 事例1 小学校の事例(委員提供事例)  概要  小学生の児童で、自閉スペクトラム症の診断があったケース。友達とのトラブルが続いたことと、勉強がわからなくなってきたことも重なって、不登校状態になっていた。本人は学校に行く準備はするが家から外に出ることができない状況であったことから、学校と保護者が話し合って、担任教員が一度朝家まで迎えにおこなってみることにした。担任教員が家まで行くとスムーズに登校して、一定の勉強をしてから帰った。その後、保護者からできれば毎日家まで迎えにきていただければ有り難いとの申し出があり、これを合理的配慮として取り組んでもらえないかと強い要望になった。   事例検証における考え方の整理  学校としては「支援教育における特別な配慮」の下でおこなった段階的な教育的アプローチをおこなったのではないか。例えば、はじめは担任教員が家まで迎えにいって一緒に登校、次の段階では、家の外で担任教員が待っていて一緒に登校、その次段階では、校門の前で待っていて一緒に校内に入るなどのようなステップの過程であったと考えられる。本件のような事例では、「合理的配慮」と「支援教育における特別な配慮」との区分や関係の整理が必要ではないか。  事例の分析にあたっては、本人・保護者・教員・その他の関係者等が、どのようなプロセスで登校に向けた取組みをおこなうか、その合意形成にむけた関係性が構築できていたかといったことの確認も重要となるのではないか。     教育分野 事例2 小学校の事例(委員提供事例)  概要  小学校の担任教員から、「学級の児童の中には発達障害等の診断がある児童もない児童も含めて、学習上の支援や配慮を必要とする児童が複数在籍している。こうした児童には一人ひとりに対して合理的配慮を考えていくことになるのか、また、集団における合理的配慮についてどのように考えていけばよいのか。」という相談があった。  (補足説明)教員は合理的配慮を必要とする対象が多数見込まれる場合、その関係性が長期にわたる場合は、その都度の合理的配慮ではなく、基礎的環境整備をおこなうことが望ましいこと、基礎的環境整備の状況によって、提供される合理的配慮は異なってくると考えられることは理解している。   事例検証における考え方の整理  本件のように、合理的配慮を必要とする対象が学級内に多数見込まれる事例では、「安心できる集団づくり」や、「わかる授業づくり」といった「学校単位の基礎的環境整備」をおこなうことを促す必要があるのではないか。さらに、教室環境の整備、板書の工夫、視覚的に示すことができる教材・教具の多用といった「授業における基礎的環境整備」の充実を教員に助言することが重要であると考えられる。   教育分野 事例3 中学校の事例(委員提供事例)  概要  発達障害の診断があり、書字が苦手な生徒について、中学校では中間・期末考査で時間延長の合理的配慮を提供することになったが、当該学年の他生徒から、配慮のない他の生徒と同じ採点基準で評価をしてよいのか、合理的配慮をした生徒の方が有利ではないかとの不公平感を感じたようであった。   事例検証における考え方の整理  本件のように、書字が他の人よりも時間がかかるため、試験の際に時間延長をするといった合理的配慮の提供にあたっては、延長時間や採点基準等について、学校レベルでの検討をおこなうとともに、「試験を受ける条件や機会を保障するための対応であり、試験結果を保障したり障害のある生徒を有利にするものではなく、生徒全員に試験を受ける条件を整えるためにおこなうものである」といった説明をおこなうなど、学校側は他の生徒や保護者に対し、対応についての理解や周知、啓発を図る必要があるのではないか。   教育分野 事例4 高等学校の事例(委員提供事例)  概要  発達障害の診断があり、視覚情報の処理が苦手であるため、黒板の板書が時間内にできないことが多い生徒。本人は勉強の意欲があり、最後まで写そうと努力していた。担当教員が本人と協議、検討し、合理的配慮として黒板の板書をタブレットで写真に撮ってノートに張ることになった。他の生徒は、当該生徒が板書しなくてもよいことに当初は不公平感を持っていたが、当該生徒が写真をノートに張るだけでなく、写真を活用して授業のポイントを強調したノートを作成していることが分かると、納得した様子であった。   事例検証における考え方の整理  対象生徒の学習実態を総合的に把握検討した結果、「黒板の板書をタブレットで写真に撮って活用する」という配慮に合理性が確認されたことから、合理的配慮として提供されることになったものと考えられる。本件のような合理的配慮の提供にあたっては、板書の量や内容によって必要な変更・調整をおこないつつ、学校レベルで理解や周知、啓発に至るプロセスも含めて対応情報を共有していくことが大切ではないか。  本件では、当初、生徒から申し出があったのではなく、担任教員との協議等をきっかけとして合理的配慮が提供されることとなった。教育分野においては、本人からの意思の表明がないと思われる場合であっても、「その生徒が十分な教育を受けているか」といった視点から、必要かつ合理的な配慮の提供を学校側から提案していくことも考えられるのではないか。    6.医療分野   医療分野 事例1 電動車いす利用者の受診  相談の内容  電動車いす利用者が受診する際、病院内では電動車いすの利用は禁止、病院が手動車いすと介助者を手配するので、院内では手動車いすに乗り換えてほしいと言われた。電動車いすの使用の禁止は差別に当たるのか。病院の代替策は合理的配慮に当たるのか。  対応と結果  相談員より、病院は車いすや介助職員の配置など一定の配慮をしているものの、電動車いす禁止の説明が不十分ではないかと思われたため、病院からの説明の仕方等を工夫する必要があると伝えた。また、車いすの乗り換えではなく、スイッチの切り替えで手動にできるので、本人の希望に沿って介助方法を決めてはどうかとも伝えた。  分類  不当な差別的取扱い   相談員の対応に関わる助言  この件では、病院側が電動車いすでの受診を禁止した理由が不明だが、どのような理由でこのような対応を病院がおこなったのか、確認を求める必要があったのではないか。今後、相談対応においては、関係市町村とともに連携し、可能な限り調査をおこなう必要があるのではないか。  事業者側は、どういったことが不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供に当たるのか、理解が十分でない場合もあるため、事例を積み重ねていき、記録として残しておいて、Q&Aを作るなど、事業者の理解促進を図るような取り組みをおこなってほしい。「加害者と被害者」という対峙の仕方ではない在り方を模索していくべきではないか。   相談事例の分類や整理の考え方等に関わる助言  分類については、電動車いすでの受診を禁止する、または電動車いすから手動車いすへ乗り換えを求めるという条件を付すものであると考えられることから、整理としては差別的取扱いに分類し、その次に、乗り換えを求めること又は電動車いすでの受診を禁止するという条件を付すことの正当な理由の有無について検討する、というように分析プロセスを整理してはどうか。  これまで乗り換えなしで健康診断を実施してきたところ、丁寧な説明なく乗り換えが必要となったのは、差別的取扱いと考えられる要素がある、となるのではないか。  病院側に電動車いすでの来院者への対応策があったのかどうか。医療機器の誤作動の恐れなどを鑑みて電動機器によるものを禁止せざるを得ないといった状況下であれば、手動車いすと介助者の提供は、合理的配慮の提供にあたる可能性がある。なお、そうした場合であっても、適宜電動から手動切り替えにするなど極力電動車いすから乗り換えないような対応を取れなかったのか。    7.その他   その他 事例1 聴覚障害がある人に対する職場の対応  相談の内容  職場にて「周囲からの対応が差別的だと感じる。障害者差別解消法と関連はあるか。」という主旨で問い合わせあり。職場では、聴覚障害への配慮が欠けており、業務に支障が出て困っている、とのこと。  対応と結果  本人からの問い合わせの切り口である「障害者差別解消法との関連」という部分については、「障害者雇用促進法の対象に該当すると思われる」旨を回答。その後、事務局にて、障害者虐待防止の観点から心理的虐待の疑いがある事案として捉え、本人と面談。状況を確認の上、障害者虐待防止法に基づき、労働局に報告した。ハローワーク、本人の職場、本人で話し合いをおこない、その後本人から、部署異動等の環境改善があったとの報告が入った。   相談員の対応に関わる助言  相談者は、相談しやすいところに相談するということもあることを考慮して対応する必要がある。対象外の相談であっても、一旦窓口として話を聞いた上で、適切な窓口にきっちりとつないでいくという対応が重要ではないか。  本件のような障害者雇用促進法上の相談が入ることもあることから、対応スキームについての知識を持っておき、今後とも適切につないでいくべきではないか。    5 相談状況の整理と検証  条例附則における「条例の見直し検討」の規定を踏まえ、条例の施行状況を評価・検証するため、助言・検証実施型の合議体において事例の分析等をおこなってきました。合議体での主な意見と現時点での大阪府における整理・検証については次のとおりです。    1.合議体での主な意見   (1)助言・検証で取り扱う相談事例の範囲  合議体で出された助言  「差別的発言」など、本人にとっては差別的で不快に感じる言動等については、障害者差別解消法上の差別の類型には直接は該当しないとの意見もあるが、一方で、世の中の理解としては、差別とみなされるものであり、啓発活動を通じ、法の趣旨の周知を図っていくべき対象と考えられることから、広く検討の対象範囲に入れて、議論するべき。   障害者差別解消法上、禁止される差別は障害者と障害者ではない者の不当な差別的取扱いであり、障害者間の異なる取扱いは、法に基づく障害を理由とする差別に当たらないかもしれないとの見解もあるが、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資するという法の目的に照らしあわせれば、法律をできるだけ柔軟にとらえ、差別的取扱いに準じたものとすべき。        (2)広域支援相談員の相談対応  合議体で出された助言  相談があった際、広域支援相談員や市町村等の相談窓口の初期対応が重要。仮に差別にあたらなかったとしても、否定から入るのではなく、本人の気持ちを汲み取り、傾聴したり別の関係機関につないだりして対応すべき。  仮に障害者差別解消法の範疇ではない相談(例えば、障害者雇用促進法に関する相談)があったとしても、「ここは担当窓口ではない」といった回答をするだけではなく、いったん相談内容を伺った上で権限があるところに適切につないでいく必要があるのではないか。  相談者は、通常、その相談が、行政機関等における障害を理由とする差別に関するものか、事業者における障害を理由とする差別に関するものか区別することはなく、相談しやすい窓口に相談したり、適切な窓口がわからないこともある。こういった相談についても、相談員は丁寧に対応する必要があるのではないか。        (3)相談内容の分類と整理  合議体で出された助言  合議体で、「不当な差別的取扱い」かどうかを分析するにあたり、まずは「差別的取扱い」に当たりうるかどうかを考え、当たりうると整理されたものについては、そこから「正当な理由」があるかどうか、という流れで分析してはどうか。  合理的配慮が提供されなかったために、不当な差別的取扱いに結び付いたとみなすことができる場合は、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」を別々のものとして線引きされるものではなく、2つがつながっていることもある。そういった場合は、「不当な差別的取扱い」で整理すべきではないか。     (4)合議体による「あっせん」の考え方  合議体で確認された考え方  条例上、「不当な差別的取扱い」かどうか、合議体が明確に判定するに至らなくても、話し合いや解決方法の模索を促すといった実質的な調整を図ることはできるのではないか。  条例上、障害者本人が、事業者による「不当な差別的取扱い」を受けたと考えるときに、あっせんの求めをすることができることから、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」の両方の可能性がある重複事例について、条例上の要件を満たせば、あっせんの対象とすることが可能ではないか。  合議体で出された助言(合議体を組織する委員等があっせん案を作成する際に持つべきスタンスや正当な理由についての考え方、留意点など)  障害者差別解消法は、障害者の利益を守る法律だが、事業者側の利益とも調整しなければならない。社会的に納得できるラインを考える必要がある。 あっせんの場でどのようなあっせん内容を書くかは、事例による。例えば、事業者に対し「合理的配慮として、点字表記を行うこと」を求める内容なども想定される。この場合、事業者側はその根拠を示すよう主張すると考えられることから、あっせん案をまとめるにあたっては、合理的な根拠が必要となるのではないか。 あっせん内容を書くにあたり、まず事業者側の事情等確認する必要があると考えられるが、事業者側の十分な協力が得られず、必要な情報を事業者側から得られない場合もあるのではないか。 あっせんにあたって、障害者も事業者も納得するような新しいルールを提示する際、同時に事業者側にその根拠を示すことも必要になるし、あっせん後に事故が起こったら、「大阪府に責任がある」として、賠償を求められることも想定される。 現在の合議体では、まだあっせん事案を取り扱っておらず、相談事例等の検証を積み重ねているところであるが、具体的なあっせん事案の取り扱いについては、一方的な内容ではなく、当事者双方が一定納得できる解決を図る必要があるのではないか。   (5)府の役割  合議体で出された助言  個別の事例から、今後の障害理解の促進にあたっての府の取組み方策を検討していくべきではないか。例えば、電動車いすにも折りたためるものと折りたためないものがあり、その取扱い等をわかりやすく事業者側に提示するような啓発手法を考えることが必要ではないか。府民全体に対して共通理解を作っていくことが府の役割ではないか。 相談対応を広く捉え、法上は差別の類型に該当しない事業者側がおこなったとされる差別的・不適切な言動等に関する相談にも対応し、本人の希望を踏まえ、可能なものは調整していくことを市町村とも共有を図るべき。 事業者側では、どういったことが差別的取扱いや合理的配慮にあたるかについて、まだ十分理解が浸透していないことも考えられる。具体的な事例をもとに、Q&Aを作るなど、事業者の理解促進を図るような取組みをおこなってほしい。「加害者と被害者」という対峙の仕方ではない在り方を模索していくべき。 府民社会における障害及び障害者に対する理解を深めるための啓発活動は、差別解消をはじめとする共生社会を達成するための最も基礎となる取組みであることから、啓発に関しても合議体において検討すべきではないか。    2.府における整理と検証   (1)合議体での分析等の対象とする相談事例の範囲  障害を理由とする差別については、一人ひとりの障害に関する知識の不足や障害者に対する意識の偏りに起因する面が大きいと考えられています。とりわけ、事業者でない一般私人の行為や思想、言論については、障害者差別解消法では規制する対象の範囲とはされていませんが、啓発活動を通じ、法の趣旨の周知を図っていくことが非常に重要と考えられます。 このため、不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供のほか、差別の温床となると思われる「差別的・不適切な言動」等の事例についても、合議体での分析等の対象としていきます。 障害者差別解消法は、個別の場面における特定の障害者に対する取扱いを対象とするものであり、他の法律により定められる立法内容そのものを対象とするものではありません。また、既存の制度に基づく個々の取り扱いについても、正当な理由がある場合には「不当な差別的取扱い」には当たらないと考えられています。  なお、障害者間の異なる取扱いにおいて、不当な差別的取扱いに当たるおそれがあるものについては、差別的取扱いに準じて取り扱っていきます。 今後、既存の制度に関する相談については、制度を所管する関係機関との連携を図りながら、必要に応じて合議体における助言を得た上で、適切な対応をおこなっていきます。   (2)広域支援相談員の相談対応  大阪府障害者差別解消条例では、事業者における障害を理由とする差別に関する相談等を対象としており、広域支援相談員は、市町村の相談機関への支援を通じて相談事案の解決にあたるだけでなく、直接相談にも対応し、市町村等関係機関と適宜連携しながら、必要な助言、調査及び関係者間の調整を行うことを職務としています。現在、広域支援相談員が受ける相談のうち、約8割が障害当事者等からの直接相談となっています。 相談内容は多岐にわたることから、他の関係機関等で対応すべきものも含まれています。例えば、雇用先での障害を理由とする差別に関する相談は、障害者雇用促進法の規定によるスキームで対応するもので、府としては、相談者から事情等確認の上、労働局に情報提供等を行うこととなります。 また、行政機関等における障害を理由とする差別に関する事案については、障害者差別解消法では、当該行政機関等が自ら対応する他、総務省の行政相談や、法務局等での人権相談などでの対応が想定されています。 このような他の関係機関や行政機関等自らが対応する必要がある事案についても、すみやかに適切な相談窓口につなぐことが解決に向け重要であると考えられます。 なお、相談事案の円滑な解決に向けては、初期対応が重要です。また、相談者にはどこに相談していいか不明な場合や、十分に自らの考えを整理して説明することができない場合が少なくないと考えられます。 このため、相談対応を通じて、相談者の申し出を適切に確認しながら内容を整理することは、権限のある関係機関先での円滑な対応につながり、結果的に解決に向けた近道となるものと考えられます。 広域支援相談員の相談対応にあたっては、条例上の対応の対象範囲外の相談であっても、差別解消を可能な限り迅速、円滑に図る観点から、障害者の相談に寄り添う姿勢を持つなど、特に初期対応を丁寧に行うよう努めていきます。   (3)相談の分類と整理  現在、合議体での助言を受け、相談対応を行った事例の相談類型を整理する際、正当な理由の有無が確認できない場合であっても、「不当な差別的取扱い」に当たる可能性があるものとして、取り扱うこととしています。同様に、過重な負担の有無を確認できない場合であっても、「合理的配慮の不提供」に当たる可能性があるものとして、取り扱うこととしています。 また、この間の相談内容から、「合理的配慮の不提供」によって「不当な差別的取扱い」となる可能性があると考えられる事案も多くみられ、両者が一体不可分となっており、区別することが困難と考えられます。 このため大阪府においては、合理的配慮が提供されなかったことが要因となって、商品やサービス等の提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりしているものであると考えられるものについても、「不当な差別的取扱い」として取り扱う運用を図っていきます。   (4)合議体による「あっせん」の考え方  条例では、障害者等は、事業者による「不当な差別的取扱い」を受けたと認める場合で、広域支援相談員が対応してもなおその解決が見込めないときは、障害者本人の意に反していない等の要件を満たせば、知事に対しあっせんを求めることができるとしています。 知事は、あっせんの求めがあったときは、合議体にあっせんを行わせるものとしており、合議体は、「不当な差別的取扱いに係るものではないと認めるとき」「その他あっせんを行うことが適当でないと認めるとき」を除き、あっせんを行うものとなっています。このため、不当な差別的取扱いと断定できないものについても、法の趣旨の実現のため、条例に基づくあっせんを活用して解決することも考えられます。 なお、合議体があっせん案を作成するにあたり、実質的な調整を図るため、事業者に合理的配慮を促す内容が含まれることもあると考えらえますが、その内容には対外的に説明可能な合理的な根拠が求められると考えられます。 一方で、過重な負担の有無について、客観的な判断を行うことが難しい場合等において、事業者側とどのように調整していくか、一つひとつの事例に対応しながら検討して行くこととなると思われます。この場合、あっせんを履行した後の社会に及ぼす様々な影響に留意しつつ、あっせんを求めた障害者本人の意向に十分留意するとともに、共生社会の実現に資することを基本的なスタンスとして、検討する必要があります。     (5)府の役割  障害を理由とする差別の解消は、全ての府民が共に社会の一員として解決すべき課題であり、社会全体で取り組む必要があります。そのためには、それぞれの主体がそれぞれの立場において、障害理解を深め、差別解消に向けて具体的に取り組むことが求められています。特に、地方公共団体等においては、法に位置付けられた責務の一つとして必要な啓発活動を行うこととされております。 大阪府は、広域的な観点から、府民全体で差別解消に向けた取組みの一層の浸透を図るため、これまでの分析等の成果を踏まえ、大阪府障害者差別解消ガイドラインの改訂等も視野に入れながら、府民や事業者が障害理解を深められるよう、工夫した啓発活動を展開してまいります。 また、法では行政機関等だけでなく事業者に対しても、差別の解消に向けた具体的取組を求めています。国が障害者差別解消に関する施策の基本的な方向等を示した基本方針では、「事業者においては、障害者に対して適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、研修等を通じて、法の趣旨の普及を図るとともに、障害に関する理解の促進に努める」こととされています。  府は、広域的な役割を踏まえ、障害理解を深めるための企業等向け出前講座事業の充実を始め、合理的配慮の実践や差別解消の取組みに関する好事例を広く示すなど、差別解消に向けた事業者の自主的な取組みを支援してまいります。  また、障害者差別の解消を効果的に推進するためには、障害者にとって身近な地域において、主体的な取組みがなされることが重要です。既に大阪府内の全ての市町村には相談窓口が設けられていますが、相談への迅速かつ適切な対応など、相談対応力のさらなる向上が期待されています。 一方、相談内容によっては、市町村のみでは対応が困難な事案もあり、その解決に向けて、府と市町村が連携して取り組むことが求められます。  こうした取組みを効果的に行うためには、障害者差別解消に向けた考え方や望ましい対応の在り方などに関して、共通の認識が必要となります。  このため、府においては、相談への対応姿勢等について、市町村への情報伝達を積極的に行うとともに、相談対応力の向上に向け、市町村の個々の状況を踏まえた意見交換の場を設定するなど、市町村への支援に取り組んでまいります。  広域支援相談員が対応した相談等については、引き続き、合議体での分析と検証などを踏まえ、事例の蓄積と課題や対応等の整理を行い、広域支援相談員の対応力の強化を図ってまいります。また、条例に位置付けられた合議体の職務の一つであるあっせんが効果的に運用できるよう、あっせんの求めがあった場合を想定しながら、合議体での検討等を進めてまいります。  さらに、合議体での検討等の成果を事業者等への啓発に活かすなど、府域における障害者差別の解消に向けた取組みの充実に努めてまいります。なお、ガイドラインをはじめとする各種啓発は、広域支援相談員の活動に密接に関わるものであることから、広域支援相談員の活動への助言の一環として、合議体での助言を得てまいります。   まとめ  法施行から約1年が経過しましたが、相談窓口に寄せられている相談事例をみると、障害に関する理解の不足に起因するものが大きいと考えられます。差別のない社会を実現するためには、社会全体の理解と関心を深めることが非常に重要であると考えられますので、引き続き法の趣旨の普及や障害理解を促進する啓発活動の充実を図っていく必要があります。 条例の附則に規定する「見直し検討」については、引き続き具体的な相談事例を収集し、分析・評価を積み重ね、その結果を踏まえることが必要であると認識しています。特に、合理的配慮の概念は社会に定着しているとは言えず、「建設的対話」を通じた「合理的配慮」の取組みを広く社会で共有し、浸透させることが重要です。 さらに、積み重ねた分析等を踏まえ、条例上、府民が適切に行動するための指針として位置付けている大阪府障害者差別解消ガイドラインについて、具体的な事例を盛り込む等、内容の充実を図ることも必要です。 今後とも、障害者差別解消協議会やその下で組織される合議体等で幅広い意見をお聴きしながら、合理的配慮等の差別解消に関する認識が社会的に共有されるよう、必要な取組みを進めてまいります。     6 参考資料      参考資料1         広域支援相談員と大阪府障害者差別解消協議会    広域支援相談員   根拠  障害者差別の解消に関する知識経験を有する者の中から、知事が任命(大阪府障害者差別解消条例第7条)   身分等  地方公務員法に基づく一般職の地方公務員(非常勤職員)      職務  市町村の相談機関における相談事案の解決を支援するため、必要な助言、調査、相談事案に関する関係者間の調整を実施  障害者等や事業者からの相談に応じ、相談機関と連携して、必要な助言、調査、相談事案に関する関係者間の調整を実施  相談機関相互の連携の促進、相談事案に係る情報の収集及び分析   責務  中立かつ公正に職務を遂行    大阪府障害者差別解消協議会(解消協)   構成  委員20人以内 (専門事項を調査審議させるために、専門委員を若干置くことができる)  委員は、障害者、障害者の自立と社会参加に関する事業に従事する者、学識経験者、事業者等から知事が任命  障害者団体代表 7人、事業者 7人、学識経験者3人、権利擁護関係者3人  オブザーバーとして、国の機関(法務局、労働局・運輸局)及び市町村代表が参画  会長 関川 芳孝 大阪府立大学教育福祉学類長 教授   担任事務  法規定事務(解消協は、障害者差別解消法第17条の「障害者差別解消支援地域協議会」の機能を担う。)  情報交換、相談及び事例を踏まえた取組に関する協議  構成機関等に対し、情報の提供、意見表明その他必要な協力の求め   条例規定事務  知事が諮問する差別解消の推進に関する事項への意見申述べ   知事に対し、正当な理由なくあっせん案に従わない者等への勧告の求め  知事が正当な理由なく勧告に従わない者を公表しようとするときの意見申述べ  合議体を設置し、紛争事案や相談事案に対応     合議体の運営  担任事務  広域支援相談員による解決が難しい場合、紛争の解決をするためのあっせんを実施 → あっせん実施型の合議体  相談状況の総合的な分析・検証をおこない広域支援相談員への助言を実施 → 助言・検証実施型の合議体     構成等  会長が、委員及び専門委員の中から分野や障害種別を踏まえた事案に応じて5人を指名    参考資料2     大阪府障害者差別解消協議会委員名簿(平成29年3月現在)   以下、氏名、所属及び職名の順に、委員を記載します。  嵐谷 安雄 一般財団法人大阪府身体障害者福祉協会会長  大竹 浩司 公益社団法人大阪聴力障害者協会会長  小田 昇 関西鉄道協会専務理事  小田 浩伸 大阪大谷大学教育学部特別支援教育専攻 特別支援教育実践研究センター長 教授  河ア 建人 一般社団法人大阪精神科病院協会会長  倉町 公之 公益社団法人大阪府精神障害者家族会連合会会長  坂本 ヒロ子 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会理事長  柴原 浩嗣 一般財団法人大阪府人権協会業務執行理事兼事務局長  下村 喜幸 日本チェーンストア協会関西支部事務局長  関川 芳孝 大阪府立大学教育福祉学類長 教授  高橋 あい子 一般財団法人大阪府視覚障害者福祉協会会長  辻川 圭乃 弁護士  坪田 真起子 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会大阪後見支援センター所長  豊田 泰隆 株式会社KOTOYA代表取締役  中内 福成 障害者(児)を守る全大阪連絡協議会代表幹事  西尾 元秀 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議事務局長   久澤 貢 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会セルプ部会副部会長  前川 たかし 一般社団法人大阪府医師会理事  吉川 和夫 学校法人大阪初芝学園初芝立命館高等学校教諭、大阪私立学校人権教育研究会 障害者問題研究委員会代表委員  與那嶺 司 神戸女学院大学文学部総合文化学科准教授  (オブザーバー)  大阪法務局人権擁護部第二課長  大阪労働局職業安定部職業対策課長  近畿運輸局交通政策部消費者行政・情報課長  市長会代表市 担当課長  町村長会代表町村 担当課長   大阪府障害者差別解消協議会専門委員名簿(平成29年3月現在)   以下、氏名、所属及び職名の順に、専門委員を記載します。                            伊丹 昌一 梅花女子大学心理こども学部心理学科教授  位田 浩 弁護士  井上 計雄 弁護士  魚谷 和世 弁護士  大下 芳典 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会セルプ部会副部会長  大槻 和夫 弁護士  尾ア 泰子 関西女子短期大学養護保健学科准教授  小尾 隆一 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会理事兼事務局長  近藤 厚志 弁護士  阪本 栄 一般社団法人大阪府医師会理事  田垣 正晋 大阪府立大学地域保健学域教育福祉学類人間社会システム科学研究科准教授  田中 直人 島根大学大学院総合理工学研究科特任教授  丹波 一夫 特定非営利活動法人大阪難病連理事長  たにぐち まゆ 大阪精神障害者連絡会事務局長代行  中井 悌治 一般社団法人大阪府身体障害者福祉協会副会長  長尾 喜一郎 一般社団法人大阪精神科病院協会理事  羽藤 隆 一般社団法人大阪脊髄損傷者協会 副代表理事  原田 和明 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会支援センターい〜な相談支援室長  東野 弓子 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会副理事長  福島 豪 関西大学法学部准教授  福田 啓子 一般社団法人大阪自閉スペクトラム症協会副会長  古田 朋也 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議議長  細井 大輔 弁護士  山本 勝子 公益社団法人大阪府精神障害者家族会連合会監事  山本 深雪 大阪精神障害者連絡会代表    参考資料3   大阪府障害者差別解消協議会・合議体の開催状況  以下、会議名、開催日及び議題等の順に、専門委員を記載します。     第1回大阪府障害者差別解消協議会  平成28年6月29日  1 会長の選出について  2 大阪府障害者差別解消協議会の運営について  3 障害を理由とする差別の解消に向けた体制整備の状況について     第1回合議体  平成28年7月27日  1 相談事案の分析の方向性と合議体開催のスケジュールについて  2 広域支援相談員の対応状況について     第2回合議体  平成28年8月22日  1 福祉サービス分野の想定事案について  2 その他の相談事案について  3 助言・検証実施型の合議体で活用する差別事案の収集について     第3回合議体  平成28年9月28日  1 視覚障害及び聴覚障害に関する相談事案について  2 委員提供事例について     第4回合議体  平成28年10月28日  1 相談事案・委員提供事例について  1.商品・サービス分野の相談事案・委員提供事例について  2.公共交通機関分野の委員提供事例について  3.住宅分野の相談事案・委員提供事例について  2 広域支援相談員の対応状況について     第5回合議体  平成28年11月30日  1 教育分野に係るゲストスピーカーからの意見聴取について  2 委員からの情報提供について     第6回合議体  平成28年12月26日  1 ゲストスピーカーからの意見聴取について  2 相談事案について  3 相談事例等の検証のまとめ(素案)について     第7回合議体  平成29年1月30日  1 障害者差別解消の取組みと相談事例等の検証(素案)について     第2回大阪府障害者差別解消協議会  平成29年2月17日    参考資料4   大阪府の障害者差別解消、障害理解に関する啓発   大阪府障害者差別解消ガイドライン  「理解し合うこと」「対話すること」「考えること」  このガイドラインは、障害者差別解消法に基づいて、何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのかなどについて基本的な考え方や具体的な事例等をわかりやすく記載することで、府民の関心と理解を深めるために作成。  このガイドラインでは、府民の皆様に、より具体的なイメージで理解していただくために、6つの分野ごとに記載。   障害理解を深めるための企業等向け出前講座事業  差別の解消に向けた具体的な取組みが求められる企業等において、障害理解を深めるため、企業等に障害当事者等を講師として派遣し、講義・体験型の講座を実施。   障害理解ハンドブック「ほんま、おおきに!!」  障害の有無に関わらず、誰もがお互いに人格と個性を尊重し、共に支え合う「共生社会」を実現するためには、障害や障害のある人を正しく理解し、必要な配慮を考えていくことが重要。  このため、障害理解ハンドブックは、障害や障害のある人について知り、必要な配慮を考えるきっかけとなることを目的として作成。   合理的配慮 接客のヒント集 「i-Welcome」  障害者差別解消法の施行を踏まえ、合理的配慮の提供が求められるコンビニやスーパー、レストラン等のサービス業の事業者に向けて、サービス提供時における「合理的配慮」とは何か、考えるきっかけとなる事例を掲載したマニュアルを作成。   ふれあいキャンペーン  行政、障害者団体や地域福祉団体が連携して、実行委員会を組織し(大阪府、府内43市町村、障害者団体や地域福祉団体等41団体の計85団体で構成)、障害理解を深める取組みを実施。  具体的には、府内の全ての小学校3年生を対象におりがみを折る体験を通じて障害に関する基本的な事項を学ぶ「大阪ふれあいおりがみ」やすごろく・ポスター等を作成・配布。   共に生きる障害者展  障害者の自立と社会参加の促進をテーマとするとともに、府民に障害や障害者を正しく理解してもらうことを目的とした「大阪の障害者の祭典」。  主なプログラムとしては、トークショーや障害者作品展、障害者芸術・文化コンテスト等。 入場者は、2日間で約1万人。   心の輪を広げる障害者理解促進事業(体験作文、障害者週間のポスター募集)  「障害者週間」(12月3日〜9日)を広く周知するとともに、障害者に対する府民の理解の促進を図るため、府民を対象に、障害のある人とない人が、学校や社会の中で、相互に心のふれあう体験を通じて学んだことや感じたこと、あるいは社会に訴えたいこと等をつづった「心の輪を広げる体験作文」と、障害理解を深める「障害者週間のポスター」を募集。入賞者には知事からの賞状に加え、副賞を贈呈。   大阪府障害者等用駐車区画利用証制度  公共施設や商業施設などにおける車いす使用者用の駐車区画等の適正利用を促進するために、利用証を大阪府が交付する制度。   12月3日〜9日は「障害者週間」です。  「障害者週間」とは  「障害者週間」とは、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、国民の間に地域社会での共生や差別の禁止などに関する理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動への参加を促進することを目的として、障害者基本法に定められています。  「ヘルプマーク」  援助や配慮を必要としている方のためのマークです。  このマークを見かけたら、電車内で席をゆずる、困っているようであれば声をかける等、思いやりのある行動をお願いします。   お問い合わせ先  大阪府福祉部 障害福祉室 障害福祉企画課 権利擁護グループ  〒540-0008 大阪市中央区大手前3丁目2−12別館1階  電話 06-6941-0351 ファックス 06-6942-7215            相談窓口  大阪府広域支援相談室  業務時間:平日10時から17時まで  土日祝、年末年始(12月29日から1月3日)はお休みです。  Eメール・FAXでのご相談に対しては、翌業務日以降に対応させていただきます。  電話06-6944-0721   Eメール  syogaikikaku-02@gbox.pref.osaka.lg.jp  ファックス 06-6942-7215