令和2年度 障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書(概要)  法と条例の施行された平成28年度から令和2年度までの5年間の相談について推移を振返り。  府内市町村への支援や啓発活動も含めた障がい者差別解消の取組みと課題を検証。   1 広域支援相談員の体制等と相談対応  1.広域支援相談員の体制と役割  広域支援相談員の職務  丁寧で質の高い相談対応と、市町村への的確な助言等を行うため、情報共有と相談員間の連携強化を図る。(日々のケース進捗や市町村支援の取組みに関する日報作成、定期的なミーティングによるケース検討)  また、様々な専門性を有する合議体から助言をもらう仕組みとなっており、それによって相談員の対応力の向上が図られている。  法や条例の周知に伴う相談事案の複雑化・多様化が見込まれることから、さらなる専門性や調整力が必要。  広域支援相談員の人材育成や、市町村に対する幅広い支援を行うための人材確保が課題。  2.広域支援相談員の対応実績(令和2年4月1日から令和3年3月31日)  新規事案件数は148件(令和元年度からの継続件数4件と合わせ実相談件数152件)(前年度の新規事案件数は188件)  対応回数は1,713回と前年度と比較して新規事案件数が減少しているにも関わらず、大幅に増加(前年度は1,155回)、平均対応回数は11.3回。  コロナ禍であるがゆえに発生したと思われる事例もあり、障がいがあるという理由に加え、コロナ禍のもとでの社会的な活動の制限が理由とされている、いわば複合的な理由からの差別的取扱いも見られた。  「不当な差別的取扱い」は9件(前年度6件)、「合理的配慮の不提供」は5件(前年度18件)、「不適切な行為」は16件(前年度30件)であり、コロナ禍のため外出の機会が減ったことが、件数の減少に影響しているのではないか。   2 過去5年間の広域支援相談員による相談対応の推移  新規相談件数は法令の施行から、徐々に増加していたが、昨年度は一転減少する結果となった。  大部分の相談は5回以内の対応で終結に至っているが、10回以上の対応必要する相談も毎年1〜2割程度存在する。  市町村からの相談と直接大阪府にあった相談の比率は5年間を通して1:4から1:3の比率で推移している。  直接相談の内訳は障がい者や家族からの相談が多い一方、事業者からの相談は低調であることから、事業者からの相談も受け付けていることの周知が必要。  相談事案の内「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」に関する事案は全体の1〜3割で推移している。   3 合議体におけるあっせんの実施  あっせんの申立てが1件あり、第1回の合議体においてあっせんを開始することとしたが、第2回の合議体で検討した結果、「あっせんによっては紛争事案の解決の見込みがないと認め」、あっせんを終了とした。   4 府内市町村に対する支援の取組み  1.市町村支援における課題  (1)相談対応  相談窓口の周知を図るとともに、市町村の相談事例のキャッチ力や対応力の向上が求められる。  (2)支援地域協議会の設置  支援地域協議会の設置促進を図るとともに、有意義な会議体となるための運用の工夫が必要。  2.府内市町村の取組みに向けた支援  (1)出張情報交換会の実施  相談員が各市町村に出向き、情報交換や助言を実施(令和2年度は大阪市、堺市のみ実施)。  (2)令和元年度に引き続き、市町村職員に向けた障がい者差別解消に向けた研修や支援地域協議会の設置・運営の促進を目的とした研修を予定していたが、コロナウイルス感染拡大防止の観点から実施せず。   5 障がい理解に関する啓発の取組み  大阪ふれあいキャンペーン、大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度、心の輪を広げる障がい者理解促進事業、ヘルプマークの周知・普及、心のバリアフリー推進事業、事業者団体等への研修の実施、大阪府が作成した啓発物  大阪府では法の施行後、さまざまな啓発に取り組んできたが、いまだ十分に理解が進んでいる状況とは言えない。令和2年度はコロナウイルス感染拡大防止の観点から取組みは限られたが、令和3年度はオンラインによる啓発を行うなどの工夫をすることにより、切れ目なく啓発に取り組んでゆく。   6 まとめ  令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響から、実施することのできる取組みが限られることとなった。  一方で令和3年4月からは府条例の改正により事業者による合理的配慮の提供が義務化されることとなる。  広域自治体として市町村における対応力の向上を支援するため、事例の収集・共有や研修などを通じて、支援地域協議会の設置・運営をはじめとする市町村の取組みを支援してゆく。  コロナ禍においても実施できるようオンラインを活用するなどにより、啓発活動と相談体制の整備を継続的に取り組んでゆく。