概要版 大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例施行状況の検討について(提言)   1 はじめに  府では、平成28年4月に、大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例(以下、「条例」という。)を施行。「相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備」及び「啓発活動」の取組みを推進。  和元年度、条例附則の施行後3年を目途とした見直し検討規定を踏まえ、知事の附属機関である「大阪府障害者差別解消協議会」(以下、「解消協」という。)において、条例の施行状況を検討し、課題や対応を整理し、条例の運用上の取組みや必要な方策について意見を取りまとめた。  事業者による合理的配慮の提供については、府が実施した府内1,000事業者を抽出したアンケート(以下、「事業者アンケート」という。)や事業者団体・障がい者団体へのアンケート(以下、「団体アンケート」という。)の結果を踏まえ、検討。   2 大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例施行状況の検討について  1.相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備について  (1)広域支援相談員の機能について  広域支援相談員は有効に機能しているが、相談対応の質が担保できる仕組みとして、相談員の体制整備の充実が必要。  (2)府による市町村への助言等の機能について  市町村での相談体制の更なる整備が必要。府は、市町村支援等の方策を充実させていくことが必要。  (3)大阪府障害者差別解消協議会の機能について  解消協に参画する構成員が、地域のネットワークとつながり、地域や業界の埋もれた差別事案を、紛争に至る前に、行政と連携して解決できる取組みが必要。  (4)合議体の機能について  合理的配慮の不提供をあっせんの対象にするためには、合理的配慮の提供の法的義務化が必要。なお、現行でも、合理的配慮の不提供により、不当な差別的取扱いに至る事例はあっせんの対象。  合議体は、様々な意見を踏まえながら判断の安定性を確保する仕組み。今後も現行の仕組みのまま、合議体を運用することが望ましい。  2.啓発活動について  解消協が「障害者差別解消支援地域協議会」(以下、「地域協議会」という。)の機能を発揮し、地域と連携した啓発が必要。  (1)府民に対する啓発について  府民の障がい理解が十分ではないと考えられる。教育との連携による取組みや障がい者に対しても障害者差別解消法(以下、「法」という。)の更なる啓発が必要。  (2)事業者に対する啓発について  事業者アンケートの結果から、事業者の法の浸透度は不十分であると考えられる。一方、合理的配慮の不提供は差別であるという認識は浸透。大半の事業者は、社会的責任としてできる限り対応していると考えられる。  現場の従業員への法の浸透に向け、事例検討を通じた研修支援や場面・対象を絞った啓発物の作成などによる業界への啓発が必要。  3.事業者による合理的配慮の提供について  条例附則の規定に基づき、事業者による合理的配慮の義務付けのあり方について検討。  (1)義務化の根拠  障害者権利条約では、合理的配慮の提供は法的義務。  法では、行政機関等は法的義務と規定されており、同内容のサービスを提供するにあたり、実施主体で配慮を区別すること自体が極めて不合理。  合理的配慮の提供に不可欠な建設的対話を促すためには、努力義務では極めて不十分。  SDGsに基づいた取組みや大阪・関西万博に向けて国際基準を満たした共生社会づくりが必要。  法の理念等の浸透と障がい者差別解消のためには、啓発以外の仕組みや取組みの充実が求められている。  整理にあたり、考慮した事項は下記のとおり。  合理的配慮の概念が浸透していることは、義務化の前提条件ではない。  義務化している他自治体で特段の支障や課題は生じていないと考えられる。  法は、条例による「上乗せ」「横出し」を認めている。  事業者アンケート及び団体アンケートの結果では、義務化への賛成意見が8割から9割程度である。  (2)義務化の効果  法の理念等の理解が深まるという社会的効果がある。  あっせんという紛争解決の仕組みが整う法的効果がある。  ただし、現行においても合理的配慮の不提供による不当な差別的取扱いはあっせんの対象であり、行政指導により紛争解決の方法を見出すという考え方は変わらないため、法的効果は必ずしも大きいとは言いきれない。  (3)事業者への影響  「過重な負担のない範囲」のため、事業者の負担が大きくなることはない。  事業者が抱える課題等を解消するための取組みの検討・実行が必要。  事業者が抱える課題等について、事業者アンケート・団体アンケートの結果より抜粋。  合理的配慮の提供の範囲や過重な負担の基準が不明確  他者との公平性を失する、当事者等の安全性を失するとの懸念  現場での柔軟なルール変更の難しさなど  (4)義務化に伴う条例上の仕組みや取組み  法の理念等の啓発が重要であることから、罰則規定は現時点では不要。  合理的配慮の提供を直接・間接に支援する仕組みの整備や、市町村の相談体制の更なる整備などへの支援制度の構築、行政機関等における取組みの周知や事業者の取組みの評価・交流機会の創設などの検討が必要。  解消協が有するネットワークを有効に活用し、差別事案の掘り起こしや啓発など、差別解消に向けた取組みが必要。  実態に応じた継続した見直し検討が必要。   3 まとめ  「相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備」はうまく機能しており、条例改正は必要ないが、相談等の体制の更なる整備・充実への取組みが必要。  「啓発」についても条例改正の必要はない。解消協が有するネットワークを活用しながら、多様な主体との連携により、府民に対する学齢期からの障がい理解の推進への継続した取組みや、事業者に対する分野ごとの事例検証や周知が必要。  事業者による合理的配慮の提供は、SDGsや大阪・関西万博に向けた共生社会づくりの必要性、義務化による啓発効果や義務化に賛成する意見が多い状況も踏まえ、法的義務化の検討をすすめるべき。事業者には義務化にあたり様々な不安や懸念があり、慎重な検討を望む意見も多い。これらの不安や懸念を解消するための具体的な取組みを併せて検討し、実行していくことが必要。  法の理念等をより一層周知し、社会を構成する一人ひとりに障がいを理由とする差別のない地域社会づくりへの取組みが求められる。行政や各関係機関がより一層、連携しながら施策を重層的に講じるべき。  国の動向を踏まえながら、大阪・関西万博に向けた社会づくりの必要性や府における障がい者差別解消の実態に応じて、継続して条例の見直し検討が必要。