個人消費は、消費者の買い控えや低価格志向が続いていることに加え、天候不順の影響で、22年1から3月期の大型小売店の売上高は前年同期を下回った。大阪産業経済リサーチセンターでは、消費動向を把握するため、百貨店、コンビニエンスストア各1社、スーパー2社を対象にヒアリング調査を行った。
百貨店、スーパー、コンビニエンスストアのいずれも、天候不順の影響で季節商品の売上げが落ち込んだ。
百貨店では、売上げ減少幅は縮小傾向にあるものの、4月は気温低下の影響などにより前年を下回った。スーパーの3月の売上げは、天候不順で春物の衣料品や季節商品が振るわず、前年同月を下回った。コンビニエンスストアの3から4月の売上げは天候不順、特に予想外の低温傾向が続いた影響で前年同月を下回った。寒暖の差が激しかったため、個別店舗で季節商品の発注管理が難しくなっている。
百貨店
売上げ減少幅は縮小傾向にあるものの、平成21年度下期を通してみると前年同期を下回った。4月は気温低下の影響などもあって衣料品が苦戦し、食料品が健闘したものの支えきれず、前年を下回った。
商品別の傾向をみると、消費者の節約志向は根強いものがあり、婦人衣料は苦戦を強いられた。加えて、取引先主導による価格戦略商品の強化があったため顧客の購入単価が低下した。
婦人雑貨についても、売上げを下支えする日常品(婦人靴、インナーファッション)が低迷し、厳しい状況であった。衣料品と同様、価格戦略商品の強化により、品目によっては、販売数量こそ前年並みに推移したものの、売上額としては大幅に落ち込むものもみられた。婦人雑貨が、全般的に苦戦する中、ブランド力が強い化粧品については堅調に推移した。
紳士衣料は、ビジネス関連が厳しい状況であったが、紳士用肌着は順調、紳士用品も堅調に推移した。
家庭用品は、洋食器、寝具、インテリアファブリック(カーテン、クッションなど)、そしてギフト商品が厳しい状況であった。台所用品は、日常品に加え、話題性のある商品に動きがみられ、順調に推移した。
その他、呉服は厳しい状況であった。時計、宝飾品については上期と比較すると、減少幅が縮小傾向にあった。
食料品は回復基調で推移した。しかし、ギフト需要の低迷、高級食材(鮮魚など)の苦戦、買い回りの減少など、非食品と同様に消費者の節約志向がみて取れる状況が続いている。
今期のイベントとして、「バレンタインデー」、「ホワイトデー」があったが、これらに関する売上げについては、両イベントともに前年を下回った。当日が日曜日であったことも影響したとみられる。
当社は、顧客との結びつきを、より強めていくために様々な策を講じている。特に、4月からは上得意顧客の店内での買い回りに販売員が付き添うコンシェルジュサービスを強化している。
スーパーA社
22年3月売上げは前年同月をやや下回った。 これは、天候不順で雨が多く、気温が高低を繰り返し、春物の衣料品や季節商品が振るわなかったことによる。ただ、家電関連でエコポイント商品の駆け込み需要が発生し、これが売上げの下支えとなった。業態別では、専門店が入居しているモール型店舗では来店客数が増加し、滞留時間にも伸びがみられたが、単独店舗では来店客数の伸び悩みがみられた。
商品別にみると、衣料品は前年を下回り不調であった。Tシャツ、トレーナーをはじめ、卒業・入学式関連の婦人スーツ、男女児フォーマル、ランドセル、ホワイトデー関連の衣料品などの落ち込みが響いた。ただ、低温傾向が続いたことから、冬物の紳士用ジャケット・スラックス、カジュアルパンツ、女性用スポーツウエア、スプリングコートなどが比較的好調であった。また、汗しみ防止用肌着、吸汗肌着など機能性衣料は徐々にではあるものの上向いている。
食料品は前年並みの売上げを確保した。飲料・ビール、ホワイトデー用菓子、アイスクリーム、すし、鶏肉、パンなどが減少したものの、野菜、刺身類、マグロ、いかなご、ホワイトデー高額ギフト、健康飲料などが増加した。
家庭・住居・余暇関連は前年を下回った。ただ家電関連(エコポイント商品)が好調であったことから大きな落ち込みには至らなかった。組ふとん、ふとんカバー、タオル、カーテン、敷物(春物)、学習机(単価ダウンによる)、フライパン(単価ダウンによる)、花粉関連マスク・目薬(花粉飛散が昨年より少なかったことによる)、カウンセリング化粧品、空気清浄機・加湿器(インフルエンザが落ち着いたことによる)、などが減少したものの、エコポイント関連で20型・40型以上のテレビやエアコン、さらにLED電球、冬物敷パッド、弁当箱、ステンレスボトル、テレビゲームソフト、電動アシストサイクル、ノート、筆記具、ドッグフード、毛糸、ミシンなどが好調であった。
今後の見通しは、売上げが前年を下回っているものの、減少幅は縮小しており、さらに、来店客数は増加しているため、緩やかながらも回復基調にあるとみられる。ただ、個人所得の低下基調は続くとみており、不透明感もみられる。
スーパーB社
22年3月の売上げは前年同月を下回った。これは、例年に比べ低温、雨の日が多かったなどの天候不順が続いたことによる。特に、衣料品の減少が目立った。来店客数も減少し、顧客単価も低下した。顧客単価の低下は、1人あたりの買上げ点数がほぼ前年並みであったものの、販売単価が低下したことによる。ただし、住居関連商品の販売単価はやや上昇した。
商品別に売上げ状況をみると、衣料品は、気温低下などの天候不順による春物衣料の売上げが苦戦した。卒業・入学関連商品も婦人フォーマル、ランドセルなどの主力商品も減少した。
食料品の内訳をみると、農産物はじゃがいもやほうれん草などの土物野菜、葉物野菜類は好調であった半面、きゃべつ、白菜などの一般野菜は不調であった。肉類、鮮魚類は押しなべて不調であった。加工食品、惣菜類も同様に不調となった。イベント関連需要では、ひな祭りについては、あられ、ちらし寿司が好調、ホワイトデーについては、早期立ち上げで当初は順調に推移したが、最終週は落ち込み、結局前年割れとなった。春の彼岸の週は、彼岸用花、おはぎが好調であった。
住居関連商品は、衣料品、食料品に比べると、減少幅が縮小した。これは、液晶テレビでエコポイント基準見直しの駆け込み需要がみられたためである。内訳をみると、携帯電話、パソコン、デジタルカメラなどは不調であったものの、テレビ、ビデオなどは好調であった。また、カウンセリング化粧品は、制度(化粧品メーカーと取引契約をかわして販売する形態)セルフ化粧品が、価格訴求と新商品の販売促進の両面が成功し好調に推移した。
コンビニエンスストア
大阪府内店舗の3から4月の売上げは前年同月を下回った。これは、天候不順、特に予想外の低温傾向が続いた影響が大きい。寒暖の差が激しいため、個別店舗で季節商品の発注管理が難しくなっている。いわゆるタスポ効果が一巡したことも要因の一つとみられる。1店舗あたりの来店客数も減少した。
また、大阪府内は各社の出店が増加しているため、競争が激化しているが、当社独自商品の開発・販売が売上げを下支えした。
売上げ構成割合の高い食品関連の売上げは、天候不順の影響が大きく、前年を下回った。例年ならば、4月中・下旬以降は、初夏向け食品(冷やし麺、ソフトドリンク、アイスクリームなど)に動意がみられる頃であるが、本年は低迷している。米飯・弁当類は長時間営業のスーパーが増加していることなどから、競争が激化し、前年を下回った。パン類は比較的好調であった。
化粧品などの日常品は、ドラッグストアとの競合で低調であった。
当社は他社への対抗や売上げ増加に向けてオリジナル商品に力を入れており、消費者に価格以上の価値を訴求する商品の開発・販売に努め、販売単価の下落を抑えている。例えば、価格を訴求せずに内容を充実させた弁当や、洋菓子専門店と同等の原料を使用したチルドデザート、ボリューム感のあるパスタなどを投入して、かなりの成果を収めた。
立地状況別に売上げ動向をみると、都心のオフィスに近接する店舗は厳しい状況となった。これは、周辺ビルの空室率が高止まりし、集客が難しくなっていることや、競合店の出店増加の影響が出ているためとみられる。また、第二京阪道路開通の影響で、車の流れが変わり、集客に影響が出た店舗もみられた。一方、大阪南部の店舗では工場が新規に立地した影響で、来店客が増加した。
サービス関連の売上げは、公共料金の収納が増加しており、店頭設置の多目的端末を使用したチケット類などの売上げも好調であった。
消費者の節約傾向への対応として、米飯加工品を複数個買うことで割引いたり、弁当類を買うことで、飲料を割引いたりするなど様々なキャンペーンを実施している。また、当社は他業態と連携してポイントサービスを開始し、売上げ増に寄与することを期待している。
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商工労働部 商工労働総務課
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