大阪府財政構造改革プラン(案) 【概要版】
平成22年(2010年)10月
はじめに
財政構造改革の必要性
大阪府では、長年にわたり行財政改革に取り組んできましたが、とりわけ、平成20年に策定した「財政再建プログラム案」においては、次世代に負担を先送りせず“収入の範囲内で予算を組む”という原則を徹底することで、財政規律を堅持してきました。
しかし、雇用や経済の状況は依然として厳しく、法人二税を中心とする税収が低迷する中、今後とも歳入の大きな伸びは期待できず、国の地方財政対策に大きく依存する形となっています。
一方、社会保障分野をはじめ、国が決める制度内容に従って、地方の義務的・恒常的な負担が生じ、それが高齢化等に伴って、年々拡大を続けています。
10年以上改革を続けても恒常的に財源不足が続くのはなぜなのか。こういう問題意識から、4月に公表した「財政構造等に関する調査分析報告書」では、自らの改革の手は緩めないこととあわせ、国の制度にも課題があることを明らかにしました。
こうした構造を改善し、地方が地域主権の担い手として機能していくためには、「国が決定することは国の責任、地方が決定することは地方の責任」という考え方の下で、税源移譲を含む自律的な財政構造を実現しなければなりません。そうでなければ、人口減少やグローバル競争が進展する中、大阪府は、多様な行政ニーズに応えていくことはできません。
「財政再建プログラム案」の後継となる本プランは、先に公表した調査分析報告書で明らかになった課題を踏まえ、「歳入歳出改革」「国への制度提言」「公務員制度改革」「財政運営のあり方」を改革の柱として、取りまとめました。
今後、これらに沿って、自律的な財政構造を実現し、大阪府が地域主権をリードできるよう、歳入歳出や公務員制度など自らの改革推進はもとより、国に対しては、地方財政や社会保障などについて必要な提言を行い、改革を迫ってまいります。
(1)大阪府の財政構造等に関する調査分析の総括 (2)基本的考え方 (3)計画期間 (4)改革効果額・収支不足額への対応 (5)改革のポイント〈取組みの要約〉 |
財政構造改革プラン(案)の基本的考え方
(1)大阪府の財政構造等に関する調査分析の総括
【歳出面】
他府県との比較では、「府だけが実施している」あるいは「実施府県が半数未満である」という事業が約4割に上ることや、社会保障関連経費では、平成元年度に比べて20年度で約3倍となり、府財政に大きな影響を与えていることなどを明らかにしました。
とりわけ社会保障制度は、国の企画・立案する内容によって、介護や医療など、地方に義務的・恒常的な負担が生じ、 府財政を硬直化させている状況等を分析するとともに、 国との権限・財源・責任のあり方検討や、必要な制度見直しを提示しました。
また、他府県と比較した約400事業のうち、事業費の規模や増加傾向など財政構造への影響が大きい21の事業を「主要分析事業」として、より掘り下げた分析を行いました。
【歳入面】
税では、法人2税が急激に落ち込み、その回復が他府県よりも鈍いことや、個人住民税では低所得者層の増加等に伴い、1人あたり税額が全国平均を下回ることなどを明らかにしました。
また、地方交付税では、その総額の不足を補うために地方自治体が発行する「臨時財政対策債」等の残高が大きく増加しており、こうした後年度への負担の先送りは、地方財政制度そのものが立ち行かなくなる事態も懸念されること等から、地方税財源のあり方の検討が急務であることなどを提示しました。
そのため、 「自律的な財政構造」の実現が必要 です。
(2)基本的考え方
【理念・目的】
- 国と地方の役割分担を明確にし、地方の仕事の中身は地方が責任を持って決めるという「地域主権」の実現を通じて、府財政構造の抜本的改革をめざします。
- 守るべきものは守りながら「収入の範囲内で予算を組む」ことを徹底し、財政健全化団体にならないよう、財政規律を堅持します。
【改革の視点】
1.国との役割分担 - 国は、国家としての存立に関わる事務や全国的に展開すべき政策課題など、本来果たすべき役割を重点的かつ限定的に担い、その他は地方自治体に任せるよう国に求める。
- 全国一律の基準により国民に保証すべき施策やサービスについては国、地域の実情や創意工夫を反映させるものは地方という役割分担を明確化し、権限・財源・責任を一致させるよう国に求める。
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2.市町村との役割分担 - 住民に身近なサービスは市町村が担い、府は広域的自治体として、成長戦略や地域では解決できない広域的な課題など、府域トータルで行うべき役割を担う。
- 基礎自治体である市町村が住民の安心を支えられるよう、府は市町村に権限や財源を移譲し、広域的、専門的観点からバックアップする。
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3.民間との役割分担 - 民間でできることは民間に委ね、府は民間ではできないサービスを担うことを基本に施策選択する。
- 府が担うこととした分野でも、良質のサービスを最小のコストで提供できるよう、民間の経営手法等を取り入れ、質や効率性を向上させる。
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4.持続可能性の確保 - 限られた資源を最適配分する観点から、他府県との比較を通じて府の施策、組織等を精査し、将来にわたって持続可能なものとなるよう、大阪府の地域性や実情も考慮して適正な水準に見直す。
- 受益の範囲等が限定されるサービスについては、負担の公平を図る観点から、適正な受益者負担を求める。
- 高齢化に伴い費用の増加が見込まれる社会保障制度について、制度の持続性を高める見直しを国に提案する。
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5.経営の視点、マネジメントの重視 - 「収入の範囲内で予算を組む」という原則を徹底する。財政規律を強固なものとし、将来の負担リスクなど突発的な事態への対応にも備える。
- サービスを利用者の選択にさらし、実施主体の切磋琢磨を引き出す。頑張ったところ、実績をあげたところ、確実に効果が見込まれるところに集中投資する。
- PDCAサイクルを通じて必要性・費用対効果等を点検し、部局長のマネジメントによる運営を徹底する。
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(3)計画期間
国が「財政運営戦略」(平成22年6月22日閣議決定)の中で策定した中期財政フレームの期間や、社会保障制度の見直し時期などを考慮し、平成 23年度から25年度までの3年間とします。
(4)改革効果額・収支不足額への要対応額対応
【自らの改革によるもの】 一般財源ベース(単位:億円)
項 目 | H23年度 | H24年度 | H25年度 |
要対応額 | 600 | 600 | 600 |
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歳入歳出の取組み | 330 | 330 | 330 |
| 構造改革 | 125 | 175 | 185 |
| | 歳出改革 (出資法人・公の施設含む) | 75 | 110 | 110 |
| | 歳入確保 | 50 | 65 | 75 |
| 予算編成における取組みなど※1 | 205 | 155 | 145 |
人件費 ※2 | 270 | 270 | 270 |
財政収支見通し(平成22年8月試算)における要対応額については、本プラン記載の構造改革による歳入歳出の取組みに加え、以下による対応を行う
※1 予算編成における取組みなど: 毎年の府政運営の基本方針の策定段階や予算編成過程を通じて、税収や地方財政対策の動向などを踏まえ、歳入の確保や歳出の見直しなど歳入歳出全般にわたる一層の精査・点検を実施
※2 人件費: 引き続き職員給与の時限的な減額により、人件費の抑制に取り組む
【国への制度提言(社会保障関係)実現によるもの】[平成21年度決算見込額をベースに試算(単年度)]
計画期間中に実現をめざす | 具体的な制度提言の実現(現時点で試算可能なもの) 決算額と基準財政需要額の乖離是正 | 約370億円 |
「将来の姿」として実現をめざす | ナショナル・ミニマムの全額国庫負担化 | 約2000億円−α (αは、地方財政上の取扱いが 変更された場合に生じる減) |
国制度改正によって財源が確保された場合の活用は、その際に検討
(5)改革のポイント(取組みの要約)
1.歳出改革
見直しの視点
大阪府では、これまでも数次にわたり行財政改革に取り組んできましたが、少子高齢化の一層の進展、金融不安に端を発する世界的な景気後退、政権交代に伴う様々な制度改革など、社会経済情勢の構造的な変化に見舞われています。そうした中、今回、先の調査結果を踏まえて新たに類似府県等との比較の視点で評価・検討を行うとともに、財政再建プログラム案と同様の視点からも再点検を行いました。
主要分析事業
市町村振興補助金 | |
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【見直しの方向(要旨)】 - 平成22年度から、より市町村の自律化を重点的に支援する制度に改正し、それを踏まえた算定項目を新たに設定
- 3年後の25年において、本補助制度が十分にその役割を果たしているか効果検証を行う
| 【実施時期】 平成22年度 (25年効果検証) |
市町村施設整備資金貸付金 | |
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【見直しの方向(要旨)】 - 当分の間存続することとし、府と市町村が連携して低利で安定的に資金調達できる仕組みの構築に向けた検討をすすめる
| 【実施時期】 速やかに検討 |
私学助成(経常費助成など) | |
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【見直しの方向(要旨)】
(私学助成について) - 厳しい財政状況を踏まえ、財政再建プログラム案で実施している経常費助成単価引下げ等の節減の取組みは、公立学校教育の経費節減等の取組みも踏まえ、継続を検討せざるを得ない
- 府としての補助目的や効果に変化がみられる補助メニュー(私立幼稚園3歳児保育料軽減補助、専修学校専門課程振興補助)を見直し、政策目的を明確化した事業へと再構築。さらに専修学校高等課程への経常費助成については、他府県水準を上回る助成効果の有無等を検証の上、現行助成水準の継続の可否を判断
- 授業料支援補助金の拡充を検討。あわせて、選択と集中の観点から、公立での受け皿がある小中学校に対する経常費助成のあり方など、私学助成全体について検討
| 【実施時期】 平成23年度 (「専修学校高等課程の経常費助成」の効果は、23年度以降検証) |
(府立高等学校について)
- 授業料無償化、学校事務の集約化、IT化等による効率的な事務執行を推進することにより、学校事務運営体制を見直し
| 平成23年度着手
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- 数年後には再び生徒減少期に入る見込み。加えて、公私間の競争条件の整備を今後すすめることによって、公私間の生徒の流動化がすすむことも考えられる。こうした背景を踏まえ、府立高等学校の再編整備の考え方を検討
| 平成23年度以降着手
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大阪府育英会助成費 | |
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【見直しの方向(要旨)】 - 授業料支援補助金を含めたトータルの修学支援策を検討するなかで、持続可能で、より効果的な制度となるよう奨学金制度を再構築
- 奨学金制度の持続的な運営のためには、授業料支援補助金の実施による貸付総額の縮減とあわせて、貸付内容の見直し検討のほか、滞納対策など債権管理の強化が必要
- 具体的には、奨学金貸付について、今後、授業料支援補助金の拡充とあわせた奨学金制度を構築するなかで、修学支援策として最も有効となるよう貸付上限額や対象の見直しを検討
- また、入学資金貸付について、国と地方の役割分担を踏まえ、高校等入学資金の貸付への重点化を検討
- 債権回収におけるサービサーの活用について、費用対効果等を踏まえ、検討
| 【実施時期】 平成24年度以降実施を目途に検討 |
福祉医療費助成制度 | |
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【見直しの方向(要旨)】 - 全都道府県で実施されており、国において制度化されるよう要請
- 国による制度化までの間は、地方単独で持続させていくために、対象者の範囲や国の公費負担医療制度との整合性をも考慮した制度のあり方について再検討
- 乳幼児医療制度については、子育て施策の一環として対象年齢の引上げや所得制限の撤廃を市町村の判断で実施されていることも踏まえ、あり方を検討
- 今後、国における医療保険制度等の検討状況を見据えつつ、医療が必要な方に対する支援として府が実施する医療費助成制度の「守備範囲」を明確化の上、25年度実施を目途に抜本的な見直しを図る
| 【実施時期】 平成25年度実施を目途に抜本的な見直し |
中小企業向け制度融資 | |
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【見直しの方向(要旨)】 - 中小企業の元気アップ→府は預託を通じて企業を支援
熱心な金融機関と保証協会を担い手とする新たな政策融資を創設 政策目的に応じた金利優遇による成長企業支援融資を継続
- 金融セーフティネット→府は信用補完を維持し、必要なときに借りられる環境を整える
府は損失補償を通じて府保証協会とともにセーフティネットを支える 融資資金の調達は金融機関に委ね、府による預託は廃止
- 府保証協会に対する損失補償の見直し
他府県比較や社会経済情勢を踏まえ、府の負担割合を見直し
| 【実施時期】 平成23年度 |
小規模事業対策費・経営力向上緊急支援事業 | |
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【見直しの方向(要旨)】 - 民間専門家による「経営力向上緊急支援事業」を新設。同一の条件下でエンドユーザー(小規模事業者)が商工会等と民間専門家を選択
- カルテ方式を導入し、事業者ごとに、1.課題把握 2.具体的支援メニューの実施 3.支援結果の把握までの支援過程を記録し、支援実績や成果を『見える化』
| 【実施時期】 平成22年度 |
公営(公的)住宅の行政投資のあり方 | |
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【見直しの方向(要旨)】 住宅政策のあり方について
[基本理念] - 府営住宅の供給を中心とした政策から、住宅市場全体で、府民の安心居住と活力を創造する新たな住宅政策に転換
- 住宅セーフティーネットについては、税の公平性の観点も含め、今後創設が望まれる住宅バウチャー制度なども利用しながら、住宅市場全体のストックを活用し、確保に努める
[府営住宅の基本的な将来方向]
- 住宅としてのストックは、今後の必要数を見極める中で耐震化を実施するとともに、良質なものは活用することを基本に、長期的な視点から世帯数の減少動向や市場全体の状況を勘案し、総合的に施策を展開。これらにより、将来のストック戸数の半減をめざす
- 府営住宅のセーフティーネットとしての役割は、今後、福祉部門と連携したソフト・ハードでの対応をすすめるとともに、地域経営の主体である基礎自治体等が自らの意思により、ストックとしての府営住宅を活用して多様なサービスを提供できるよう制度を構築し、移管をすすめる
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- 特別会計の導入
府営住宅のフルコストを管理する特別会計を設置し、自律的な住宅経営を展開。導入に当たっては、一般会計との繰入ルールを整理
| 【実施時期】 平成24年度 |
- 建替え必要度の精査等
高度経済成長期に大量に建設した住宅ストック(約7.3万戸)を中心に、建替え必要度合いの精査、ストック活用の検討
| 随時 |
- 管理コストなどの見直しや一層の収入確保
さらなるコスト圧縮の努力 ・建設・管理水準の適正化 ・指定管理者制度のモデル地区拡大(平成23年度)、本格実施(平成24年度)
一層の収入確保 ・低利用地の有効活用・売却(未利用駐車場の時間貸し等) ・民間事業者も活用した高層化建替えにより活用用地を創出し、売却
| 随時 |
- 国への制度提言
・管理戸数未満での建替えや用途廃止に係る明渡し請求権の付与 ・借上げ公営住宅や住宅バウチャー制度等
| 随時 |
警察職員待機宿舎 | |
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【見直しの方向(要旨)】 - 待機宿舎の整備計画の策定に当たっては、既存ストックの活用を図るなどにより、可能な限り整備戸数を抑制するとともに、 PFI方式の導入など様々な手法を検討し、整備費用の抑制を図る
- 賃料は、整備コストなどを踏まえ、引き続き適正水準に設定
| 【実施時期】 随時 |
公共投資(インフラ)のあり方
建設から維持管理への重点化
都市基盤整備の見直しによって、将来の建設事業を圧縮し、維持管理費に重点化
都市基盤整備の見直し - 道路等の見直し・・・物流の効率化や広域連携の強化、安全・安心の確保、早期に効果発現が可能であるなどの観点から重点化し、今後の整備計画を策定するとともに、将来の必要性、実現性を考慮して、未着手である道路等の都市計画について、見直しをすすめる
- 治水対策及び土砂災害対策の見直し・・・人命を守ることを最優先としつつ、府内一律に定めていた治水目標を見直し、河川氾濫や浸水の程度により判定した危険度の大きさに応じて各河川ごとに定めるとともに、今後の整備計画を策定
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維持管理費への重点化
- 「維持管理の戦略」の策定・・・高度成長期に整備したインフラを計画的に効率よく補修・更新する必要。施設の長寿命化、維持管理費の平準化及びライフサイクルコストの縮減を着実にすすめるため、予防保全の観点をさらに重視した「維持管理の戦略」を策定
- 維持管理財源の充実確保・・・多額を要する維持補修については、地方債を含め、必要な財源を充実確保できるよう、国に提言
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400事業の評価
評価・点検の視点
部局長マネジメントを基本に、全庁を挙げて評価・点検を実施しました。「これまでも続けてきたから」という前例踏襲をやめ、府として本当に必要なサービスの内容や規模について、次のような視点から点検を行いました。
評価・点検の主な視点は、
1.他府県との比較(サービスの薐準(対象範囲、単価設定など)、事業費の全体規模など) 2.府県の役割か否か(民間類似サービスの有無、国や市町村との役割分担、広域連携の可能性など) 3.財源確保の可能性(受益者が特定されるサービスには適正な受益者負担を設定など) 4.競争性の向上・確保(エンドユーザーに届くサービスの質・量を改善し、府民満足度を向上) 5.持続可能性の確保(持続可能な制度とするため、優先順位付けを徹底) 6.PDCAサイクルの厳格化(PDCAサイクルを徹底するため、目標や撤退ルールを明確化など)など |
評価・点検の結果
前述の視点から評価・点検を行い、「◎(継続)」「○(課題付き継続)」「△(見直し)」「×(廃止)」に区分しました。
各区分のイメージは、
「◎(継続)」・・・当面はこれまでどおりに継続(95事業) 「○(課題付き継続)」・・・継続するが、事業費の増大リスク等の課題に今後対応が必要(81事業) 「△(見直し)」・・・事業の規模、水準、手法等について見直し(41事業) 「×(廃止)」・・・当該事業を廃止(4事業)
※400事業中、法令義務負担などを除き、評価対象は220事業 |
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