大阪府の財政構造等に関する調査分析報告書(テキスト概要版)

更新日:2011年2月8日

大阪府の財政構造等に関する調査分析報告書
                                                                                             【要約版】

 

大阪府改革プロジェクトチーム

平成22年4月

 

■はじめに


○大阪府は、平成206月に策定した「財政再建プログラム案」に沿って、『収入の範囲内で予算を組む』という原則を徹底した財政運営を行 った結果、2年間で2,100億円にのぼる改革効果を生みました。

○しかし、右肩上がりの成長が望めない中、法人2税をはじめ大きく府税収入が減少する一方、高齢化に伴う社会保障関係経費が累増するなど、今後も厳しい収支環境が続くものと思われます。

○そうした中、この間の改革を先導してきた「財政再建プログラム案」は22年度で終了します。今後はさらに「自律的な財政構造」の確立に向け、新たな地平を拓く改革が必要となっています。

○今、私たちの問題意識は、

・10年以上改革を続けても恒常的に財源不足が続くのはなぜなのか、

・歳入・歳出構造に問題はないか、

・大阪府だけが突出したおカネの使い方をしているのか、

・それとも、国の制度自体に問題があるのか、

・公務員制度には改善すべき点はないか、

といったことです。

○これらを読み解く一助として、この度、約400事業に及ぶ他府県との比較をはじめ、府財政に関わる広範な構造分析を行いました。

○今後、この調査結果も踏まえて、公務員制度や歳入・歳出の改革はもとより、地方財政や社会保障など、国制度上の構造的課題についても、国に提案しながら、自治体改革のリーディングカンパニーを目指してまいります。

 

■報告書の内容


1.大阪府の財政状況

(1)大阪府財政の推移
(2)普通会計決算統計からみた他府県比較

 2.歳入構造比較分析

(1)税収構造
(2)地方交付税
(3)
その他の収入(使用料、債権管理)

3.歳出構造比較分析

(1)
府の歳出構造
(2)
基本分析(約400事業の他府県調査分析)
(3)
主要分析事業
(4)
公共施設(インフラ)関連
(5)
公債費

4.公務員制度、組織人員体制の比較分析

(1)
人事給与制度
(2)
組織人員体制

5.その他

(1)
出資法人
(2)
公の施設関係
(3)
これまでの計画の点検
(4)
収支見通しの手法

 

■比較調査の対象府県

○今回の調査分析は、比較対象として、大阪府と財政力が同程度の府県に加え、財政力が異なる団体についても地域ブロックの広がりを加味して選定した府県の協力を得て行いました。

◇調査対象府県9府県

財政力が同程度のグループ(6府県):神奈川県、静岡県、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県

財政力が異なるグループ(3府県):秋田県、徳島県、島根県

 

大阪府の財政状況(普通会計決算統計からみた他府県比較(平成20年度決算))

【人口一人当たり歳入・歳出規模】

○総額で見ると、財政力が同程度の7府県中4位と中位となっています。

○歳入は、税だけで見ると順位は高い(7府県中3位)ものの、税と地方交付税を合算した額で比較すると6位となります。

 

【性質別歳出の分析】

○人口1人当たりの人件費、建設事業費、公債費は、それぞれ7府県中2番目の少なさとなっています。

○人件費については、平成7年度からの14年間で、一般行政部門職員の約4割に相当する7千人余りを削減すると同時に、昇給停止や全職員の給与カット等により、ラスパイレス指数は92.2(平成21年)となっています。

○普通建設事業費については、厳しい財政状況のもと、大幅に抑制してきた結果、現在の水準はピークの平成7年度の3分の1、平成元年度から20年度までの平均 の約半分となっています。

 

歳入構造比較分析(税収構造) 

【府の税収の推移】

○府の税収の推移を見ると、他府県と比較して、バブル後の税収低迷の著しさが目立ちます(平成元年度を100とすると、平成22年度(当初予算)は69.5にとどまります。)。

 

【法人二税(法人府民税と法人事業税)】

○府は、全税収に占める「法人二税」のウェイトが高くなっていますが、他の税目よりも景気変動の影響を受けやすいため、府の不安定な税収構造の主な要因となっています。また、バブル後に落ち込んだ法人二税は、府の相対的な経済的地位の低下に伴って、他府県よりも回復が鈍くなっています。

○平成22年度の法人二税の税収は、ピーク時(平成元年度)の1/4まで落ち込む見込み(当初予算額)です。これにより、税収の順位が、税目別ではじめて首位から転落することが見込まれています。業種別にみると、金融・証券や建設、電機などの落ち込みが目立ちます。

 

【個人道府県民税】

個人道府県民税を、住民1人当たりの税収額でみると、全国平均を100とした場合の府の数値は97.0と、全国を下回っています(平成20年度)。これは、税の担い手である労働層人口の減少と、府民の所得水準の低下が全国より著しいことが要因と考えられます。

 

歳入構造比較分析(地方交付税) 

【府の普通交付税の算定結果】

○大阪府の本来の基準財政需要額は1兆2,553億円、基準財政収入額は8,035億円となっています。

○府の場合、1,607億円が臨時財政対策債という特別な地方債に振り替えられる結果、普通交付税の額は2,901億円となっています(なお、差額の10億円は調整額です。)。

 

【基準財政需要額と府の決算額のかい離】

○人件費の割合が高く、給与カットの効果が大きい警察費や教育費はかい離率は小さいものの、かい離額は多額です。

○国制度による義務的な負担が多い厚生労働費は、かい離率が小さくなっています。

○逆に、義務的な度合いが少ない土木費や産業経済費は、かい離率が大きくなっています。

 

【制度上の課題】

○地方交付税総額の不足を補うために、地方自治体が発行する「臨時財政対策債」は、府においては、平成22年度には普通交付税を超える額となることが見込まれています。これは、現時点ではやむを得ない対応ですが、将来にわたって依存し続けることには大きな問題があります。

○臨時財政対策債等の残高が増加していることから、それ以外の府債残高が減少しているにもかかわらず、公債費は今後増加していくことが予想されます。

 

歳出構造比較分析(府の歳出構造・基本分析) 

○府の平成20年度歳出決算額は、平成元年度と比べ、約1.3倍ですが、目的別では、商工費が4.5倍、民生費が約2.4倍と他の項目に比べ、顕著な伸びとなっています。

○民生費の中心を占める社会保障制度関連経費は、増加傾向にあり、約3倍(平成元対平成20比)と非常に高い伸びです。

○社会保障の分野は国が決める制度内容によって、地方の義務的な負担を伴い、財政に多大な影響があります。

今後、国における制度改革にあたっては、最低限・全国一律に保障すべきナショナルミニマムの部分は国の責任、住民福祉の観点から地域の実情や創意工夫を反映させる部分は地方の責任、という方向で整理していくべきとの問題意識から、本報告書でも大きく取り上げました。

 

【基本分析】

平成21年度当初予算事業のうち事業費2億円以上又は一般財源5千万円以上の約400事業(平成21年度当初予算)を対象に、他府県(9府県)調査を行い、事業の有無や府事業の水準などの比較分析(有効調査事業数:332事業)

1.事業区分(事業実施の有無)による分析

府だけが実施あるいは実施府県数が半数未満である事業数は、132事業(約40%)となっています。

今後、この結果や府の特性等を踏まえ、必要性や効果等の観点から総合的に検討する必要があります。

 
2.事業の性質(国庫への継ぎ足しの有無等)による分析

国庫への継ぎ足し内容が、一義的に判断しにくいが、この結果の精度を高めつつ検討に役立てます。

3.目標設定の有無

府は他府県の中で最も設定数が多い状況ですが、他府県が設定し、府が未設定のものも見受けられました。

 

歳出構造比較分析(主要分析事業)

基本分析を行った事業等の中から、事業費の規模や増加傾向など、財政構造への影響の大きさを踏まえ、より掘り下げて分析すべきものを「主要分析事業」として分析しました。

1. 国に問題提起し、改革を要請するもの(9事業)

⇒下記のうち社会保障制度については、高齢化等に伴い負担が増加する状況等を分析するとともに、今後、権限・財源・責任のあり方や必要な制度見直しについて検討が必要であることなどを提示しています。

(1)介護給付費負担金事業
(2)国民健康保険制度・後期高齢者医療制度
(3)国民健康保険の国庫負担金減額措置
(4)障がい者自立支援給付費
(5)生活保護制度
(6)難病対策事業
(7)児童扶養手当
(8)国からの委託事業
(9)小中学校等教職員の人事権と経費負担

 

2.持続可能性の面から府としてあり方の検討が必要なもの(6事業)

⇒他府県との水準比較、適正な受益と負担、コスト構造の透明化、ストックの有効活用といった観点から、事業のあり方、見直しの検討をすすめるべきことを提示しています。

(1) 府育英会奨学金
(2)私学助成(経常費助成など)
(3)商工制度融資
(4)福祉医療費助成制度
(5)公営(公的)住宅の行政投資のあり方
(6)小中学校の適正規模

 

3.その他(事業効果、受益と負担等から点検・検討)(6事業)

⇒エンドユーザー志向の事業構築、市町村の自律化等の観点からの検討の必要性などを提示しています。

(1)小規模事業対策費・経営力向上緊急支援事業
(2)警察職員待機宿舎
(3)市町村振興補助金
(4)市町村施設整備貸付金
(5)関西国際空港建設事業費
(6)子ども手当

 

歳出構造比較分析(公共施設、公債費)

 【公共施設(インフラ)関連】

 府民生活や産業活動の基礎となる公共施設であるインフラ関連(普通建設事業費、土木費、道路、河川、公園、下水道、港湾、公営住宅)について、それぞれストックの状況比較(整備率など)や、維持管理・補修を含む事業費分析などを行っています。

○普通建設事業費と土木費は、調査府県と比べ、総額は高いものの、歳出に占める構成割合低い現状です。

○河川改修率や流域下水道普及率は調査府県に比べ高い一方、道路整備率や公園面積は低い状況です。

 
【公債費】

○府は、財政再建団体転落を回避するため、平成13年度から19年度の間に、減債基金から約5,200億円を借り入れた結果、基金残高に不足が生じています。

また、バブル期の景気対策等で大量発行した府債の最終償還が、平成34年度から44年度にかけて到来しますが、平成16年度までに積立てを開始した府債は、減債基金の積立てが充分ではなく、そのため、最終年度に巨額の一般財源が必要となる見込みです(11年間計で約6,800億円)。

 

公務員制度・組織人員体制の比較分析

【人事給与制度】

○多くの府県で、給与カットに取組んでいます。平均給料月額では、大阪府が平成22年度まで行っている給与カットにより最低水準となっています。ただし、地域手当など諸手当は大都市を抱える府県で高くなる傾向があります。

○大阪府の給料月額の水準(行政職給料表)は、職階間で一部給料表上の級に重なりがあることに加え、現給保障によりさらに重なっています。また、国以上の格付けを行うなど「わたり」があります。

○人事制度は、府県の状況に応じた運用が行われています。大阪府は、人事評価結果を比較的広く給与に反映していることや、職階ごとにあらかじめ異動・昇任に必要な年数を定めた運用を行っていることなどの特徴があります。

【組織人員体制】

○組織人員体制について、大阪府は本庁の課の規模が比較的大きく、また出先機関は総じて所管人口は多く、面積はせまくなっています。また、すべての府県で職員数の削減に取組んでいます。府県人口あたりの職員数は、大都市を抱える府県で少なくなる傾向があります。

 

その他(出資法人・公の施設関係、これまでの計画の点検)

【出資法人・公の施設関連】

○出資法人は、他府県比較が可能な法令等に基づき設置された7つの法人を対象に調査分析を行いました。

(1)大阪府中小企業信用保証協会
(2)()大阪府みどり公社
(3)大阪府道路公社
(4)大阪府土地開発公社
(5)大阪府住宅供給公社
(6)()大阪府文化財センター(7)()大阪体育協会

   公の施設は、府県によって様々な種類の施設があるため、大阪府の設置する施設を30の種類(体育館など)に分類し、その有無等について調査を行いました。

 
【これまでの計画の点検】

1.財政再建プログラム案で掲げた見直し項目の点検

   集中改革期間(平成20年度から22年度)の3ヵ年における改革効果額は、プログラム案を上回る取組みを実施できる見込みです。

【案どおりの見直しとなっていないもの】

4医療費公費負担事業、小規模事業経営支援事業費補助金、食品流通センター、弥生文化博物館、体育会館、青少年海洋センター、上方演芸資料館、府民牧場

 

2.「負の遺産」整理の点検(りんくうタウン・阪南スカイタウン、箕面森町、住宅供給公社、土地開発公社)

   「負の遺産」整理で23年度までの10年間に一般財源で負担する額は、総額で1,167億円となる見込みです。

同様に、対策に伴い発行した府債の総額は935億円(減債基金積立額を除く残高866億円)となっており、24年度以降に償還する必要があります。

府の財政危機については、「負の遺産」整理に多額の一般財源を投入してきたことも、影響した要因のひとつです。

このページの作成所属
財務部 行政経営課 企画調整グループ

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