連載コラム「大阪のだし」  第2回 (平成24年9月20日掲載)

更新日:平成25年4月16日

「大阪のだし、名古屋のだし、日本のだし文化」       ご寄稿いただいた方 : Maki さん  

                                                                                        

 「だしソムリエ」とは・・・?
 
  だしソムリエ協会代表のMakiです。
 
だしソムリエ…初めて聞く人も多いと思います。私たちの協会では「天然だし」に特化して、だしに関する情報発信やイベント企画、料理企画、また検定講座を開催しています。
   

 「だし」というと、日本料理に使うかつお節、昆布、煮干し、干し椎茸を思い浮かべて、「だしをとる」のは大変とか、面倒とか、そもそもよく知らない…という方も多いと思います。
     

 でも、私たちは、「だし」を日本料理のみに存在するものとは考えてないのです!…かつお節や昆布だけが「だし」の原料とも考えません。
   

 料理に関係する素材…野菜や肉類、鮮魚など、素材から出るものすべてが「だし」になり、「うまみ」になると考えています。そう考えると世界中の料理に「だし」は存在するし、日頃「だし」と考えていないものが「だし」だったりと、意外な発見があって、視野が広くなる気がしませんか? そうです。私たちは、普段から普通に「だし」をとってるし、馴染んでいるのですよ!
    

 例えば、あさりやしじみのお味噌汁を作るときを思い出してください。必ずしもかつお節や昆布は必要ないですよね?それらが、かつお節の代わりに、うまみの下支えをするからです。豚汁だと、野菜と豚肉から、「だし」が出ます。
   
  

 「大阪」と「名古屋」のうどん
 

 さて、自己紹介をしますと、私は一度も大阪に住んだことがないです。親戚はいますけど。生まれてから高校時代まで愛知県名古屋市で育ちました。今は東京に住んでいます。
   

 名古屋といえば、八丁味噌(あの濃い茶色のお味噌です)を思い浮かべるかたも多いのでは? 名古屋人は、八丁味噌を使った味噌煮込みうどん、きしめん、そしてカレーうどんなど、実は、うどん類が大好きなんです。そして、大阪も昔からうどん文化が根付いた土地ですよね。ネットで検索すると人気店が数多くヒットします。大阪に住んでいる方と話していると、うどんに対する愛さえ感じます。
    

 この両者の郷土料理ともいえる「うどん」について、大阪と名古屋が比較されることは、まずなかったように思います。さらに、目には見えにくい「だし」については言わずもがな。でも、「うどん」に使う「だし」について、大阪と名古屋には決定的な違いがあります。何だと思いますか? …それは「昆布」の扱いです。
   
  

 理にかなった、「だし」と「調味料」の関係
 

 江戸時代に、昆布は北海道から北陸を経て関西地方に伝わり、大阪は昆布の流通の中心となりました。ですから、今でも大阪では、昆布を多用しています。しかし名古屋(中部地方)ではそれほどでもありません。これは、ひとつには調味料との相性があると考えられます。
    

 大阪では米味噌(大豆と米麹で作られた白っぽく甘みのある味噌)と薄口醤油が、名古屋では八丁味噌(大豆100%で独特のコクがある味噌)と濃口醤油(一部では白醤油という小麦をベースにした醤油もある)が、古くから使われてきました。
    

 大阪で好まれてきた薄口醤油や、米味噌を下支えして生かすためには、上品な昆布のうまみとすっきりした鰹節の効いた「だし」がぴったりだったのだと思います。
   

 対照的に、濃いめの調味料を使う名古屋(中部地方)では、昆布文化はあまり発達しませんでした。「味噌煮込み」に代表されるように、濃厚な味噌を生かすべく、宗田節など、かつお節より強めのだしが出る素材を多用する結果となったのです。
   

 ただし、これは、あまりよく知られていないことですが、「濃口醤油」は「薄口醤油」より塩分が少なく、アミノ酸発酵の度合いが高いのです。また、大豆を原料とする「八丁味噌」には、米が主体の味噌よりやはり各種アミノ酸が多く含まれており、これがうまみとして、昆布の役割をしている部分があるのです。
   

 昆布の流通が先か、使う調味料が先か、はたまた水の特徴が先か(関西では、昆布だしが出やすい軟水が豊富でした。)、私は学者ではないので偉そうには語れないのですが、大阪と名古屋の調味料とだしの関係は、大変、理にかなっていると思います。
   

 ということで、名古屋で生まれ育った私は、これまで、昆布だしについての認識が低かったのですが、だしソムリエ協会を始めてから、昆布についても、色々と勉強と料理の経験を重ね、知れば知るほど、昆布の底力を思い知りました。
   

 また、昆布について調べていくと、大阪には、昆布に関連するたくさんの企業や団体が存在することに驚かされました。東京の比ではありません。“昆布修業”のために、大阪にしばらく滞在したいくらいです(笑)。
  
  

 庶民の味方「うどん」にこそ、本物のだしを!
 
 大阪で、だしソムリエ検定講座の開催をスタートして以来、大阪に来るたびに、友人に「おいしいうどんの店を教えて!」と頼んで、短い期間ですが、あちこちのお店を食べ歩いてきました。
  

 正統派の老舗うどん店だけでなく、カレーうどんのお店や、それから大阪風の讃岐うどんのお店にも行きました。大阪では、讃岐うどんのお店でも、昆布とかつおだしがしっかり効いているのがわかり、「う〜ん、東京にはない!この味!このこだわりは!!」と感動しました。東京では低価格チェーン店はたくさんあれど、「だし」にこだわった正統派のお店は少なく、少し残念です。
   

 高級な日本料理店において「だし」をきちんととる、扱うのは当たり前のこと。でも、庶民の味方、日常生活で使うお店の代表格である「うどん屋さん」が、きちんと「だし」と向き合っている、そんなお店が充実してしのぎを削っているのが、大阪の大きな魅力だと思います。だしソムリエ協会としても、そんなお店がもっともっと増えてくれたら、日本全国に広まってくれたらいいなと思います。
   
 あれこれ書いてしまいましたが、まだまだ大阪の食に関しては「初心者」な私です。あ、いま思い出しましたが昔、親戚の家に遊びに行ったときによく「うどんすき」を食べました。あれもまさに「大阪の味」ですよね。昆布とかつおだしでしっかりだしをとって、薄口醤油で上品に仕上げたおうどん。野菜もたっぷりで野菜のうまみも楽しめます。あっさりしていて体にやさしい。大好きです。
  

 これからもっともっと、地元の人に愛されるおいしいお店、値段に関わらず「だしがおいしい」お店に行って、大阪の食の達人(?)を目指したいと思います。きっと、ずっと大阪に住んでいる方とはまた違う角度から色々見ることができるだろうし、新しい発見もできると思います。
   
 そして、一般の方も、もっともっと「だし」そして「天然素材のうまみ」に注目して、日常生活でお料理に生かしてもらえたらいいな、と思っています。
   

              

Maki さんのプロフィール

makiさん肖像写真

だしソムリエ協会代表。愛知県名古屋市出身。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、印刷会社、出版社にて企画・編集の仕事に関わる。
本名:鵜飼真妃
  
2008年の暮れ、あるとき、業務用の乾物卸を営む実家から「通販商品を開発したい」との相談を受け、なにかインパクトのある言葉で覚えてもらう必要があると感じ、自身で乾物素材からだしをとり飲み比べをしているうちに、大好きなワインの繊細な風味・香り・味とだしのもつ特徴が似ている、色味の違いも似ている!ブレンドしたら風味も変わり料理の仕上がりも変わる!と「だしソムリエ」を考案、自ら名乗ってブログを始める。
そのうち、ブログを見た通販関係の担当者から問い合わせが入るようになり、各種通販媒体にてだしパックの通販を開始。
同時に、「だし」と「調味料」の境目があいまいで、味付け・調味されたものが「だし」だと思っている人が多いことにもショックを受け、本当の「だし」について広めたいと実感。
その後、2010年にだしソムリエ協会を設立。2011年6月から、だしソムリエ4級講座をスタートし、2012年11月には3級講座もスタートする。9月30日には、大阪で4級講座を開講予定。
    

だしソムリエ協会  http://dashi.be/

              

                    

                     

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府民文化部 都市魅力創造局魅力づくり推進課 魅力推進・ミュージアムグループ

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