今月の事例解説(H31.4)

更新日:令和元年5月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 正社員から、賞与についての相談

 夏の賞与がカットされました。会社に理由を尋ねたところ、私が突然休むことが続いたため、アルバイトスタッフを増やすことになり、人件費がかさんだので、賞与をカットしたと言われました。確かに、家庭の事情や体調不良で突然休んでしまうことが続きましたが、このような理由で賞与がカットされることはあるのでしょうか。。
  

 賞与は賃金と異なり、法律上、支給が義務づけられているものではありません。行政解釈では、賞与とは、「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」と定義しています【昭22.9.13発基17号】。

 賞与の支給については、一般に、就業規則等に基づく場合は、就業規則で支給時期や支給要件等が定められていますが、労働組合があれば交渉して額を定める場合や、会社の業績等を勘案して使用者が定める場合等があります。また、就業規則において、企業業績の著しい低下などがある場合には支給を延期すること、又は支給しないことがあると定められている場合もあります。
 
 また、賞与は、基本的には支給対象期間の勤務に対応する賃金ということになりますが、そこには功労報償的意味のみならず、生活補填的意味および将来の労働への意欲向上策としての意味が込められています。個々の企業内で賞与の支給条件や決定方式、査定の有無等につき、いかなる取り決めがあるかで様々に変わり得るところであり、一義的に決められたものではありません。ただし、企業内で、算定基準や方法が定められている場合には、それらに従って支給することになります。

 なお、年次有給休暇取得者に対する精皆勤手当・一時金などにおける不利益措置については、当該措置の趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年休取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年休権行使を抑制し、ひいては年休権保障の趣旨を失わせないかぎり、公序違反として無効となるものではないと判示した判例があります【沼津交通事件 最二小判 平成5年6月25日】。

 本件について、まずは、就業規則等における賞与についての取り決めの有無及び内容を確認されてはどうでしょうか。その上で、上記の考え方を参考に、本件賞与の減額が不適切であると考える場合には、会社と話合ってはどうでしょうか。

Q2 パートタイム労働者から、退職勧奨に応じたことについての相談

 10年ほど、パートタイマーとして働いてきました。契約期間は定められていません。昨日、突然上司に呼ばれ、「経営状態が大変悪化しているので辞めてもらえないか、退職願を提出してもらえないか」と言われました。突然のことで驚きましたが、仕方がないかと思い、退職願に署名・押印をして提出しました。しかし、一日経つと、納得できないという気持ちが強くなり、今は、できれば戻りたいと思っています。どうすれば良いのでしょうか。。

 退職勧奨とは、使用者が労働者に退職を勧めることをいいます。退職勧奨は、あくまでも使用者が労働者に退職を勧めるものであり、応じるかどうかは労働者の判断となります。このため、使用者から「辞めてほしい」と言われたとしても、労働者側に退職する意思がなければ応じる必要はありません。

 労働者が退職勧奨に応じた場合は、合意解約(合意退職)となります。しかし、その過程において、例えば一室において長時間にわたり執拗に退職を求めるなどの強迫があったと認められる場合には、退職の意思表示は取り消すことができ、使用者側の行為が不法行為として認められる場合もあります。

 また、退職願の意思表示において、錯誤や詐欺が成立する場合には、無効又は取消しが認められる場合もあります。【民法第93条から96条、709条】

 なお、「使用者は労働者に対し、基本的に自由に退職を勧奨し得るとしつつ、労働者の自由な意思形成を阻害したり、名誉感情を侵害したりすれば不法行為を構成する可能性がある」旨判示した判例があります【下関商業高校事件 最一小判 昭和55年7月10日】。

 一方、使用者が労働者を解雇する場合、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされています【労働契約法第16条】。

 本件については、退職勧奨に対し、退職願の書面を提出することで意思表示を行っていることから、基本的には、退職の合意が成立しているものと考えられます。しかし、退職届を撤回されたいということであれば、早急かつ確実な方法(書面など)でその意思を伝えなければなりません。可能な限り早く、撤回したい旨とその理由を会社に伝えられ、話合いを求めてはどうでしょうか。。


Q3 使用者から、団体交渉の場所についての相談

 従業員が1人で入れる労働組合(合同労組)に加入し、その労働組合から団体交渉を求められています。社外に会議室を借りて、第1回団体交渉を行うことについては双方合意しているのですが、合同労組にも会議室代の半分を支払うよう求めたところ、拒否されています。話合いをしても折り合いがつかず、団体交渉を開くことができないのですが、このような場合も不当労働行為になるのでしょうか。。

  労働組合法では、使用者が正当な理由なく団体交渉を拒むことは、不当労働行為であるとして、禁止されています【労働組合法第7条2号】。

 団体交渉の場所等の団交ルールは、労使双方の合意によって定めるのが原則です。使用者が交渉の日時・場所・時間についての条件を出し、それに固執して団交ルールが確立していないことを理由に団交を拒否することは、不当労働行為とみなされる場合があります【商大八戸ノ里ドライビングスクール事件 最三小判 平成元年3月28日】。
  
 本件について、団交のルールは、労使双方があらかじめ協議して定めるものであるため、使用者が「会議室代を折半したい」という提案を行ったことが、直ちに不当労働行為になるとは言い難いと考えられますが、使用者側がその提案に固執し、団交が開催されないとなれば、団交拒否とみなされ、不当労働行為となる可能性があります。組合員との労使関係が展開している場所であるところの会社の中の会議室を使用するということも含め、団交開催場所について再検討され、労使間で十分協議されてはいかがでしょうか。  

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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