今月の事例解説(H30.12)

更新日:平成31年1月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 求職者から内定取消しについての相談

 就職活動をし、面接を受けたところ、会社から強い誘いもあり、就職を決意しました。会社と労働条件に関する話し合いを経て、「内定通知書」を受け取りました。
 しかし、その後、突然会社から内定を取り消すと言われました。理由の説明もありません。面接を受けた他の会社には既に入社を辞退してしまっており、困っています。このまま泣き寝入りしなければならないのでしょうか。
  

 労働契約とは、労働者が労務を提供する(働く)ことに対して使用者が賃金を支払うことを約束する法律上の契約行為(雇用契約)であり、労働者が使用者に対して「働く」ことを約束し、使用者がそれに対して「賃金」を支払うことを合意することによって効力が生じます【労働契約法第6条】。

  内定を労働契約の成立とみるか労働契約締結の予約とみるかが問題となります。判例では、企業からの募集(申込みの誘引)に対し、労働者が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する企業からの採用内定通知は、その申込みに対する承諾であって、これにより両者間に解約権を留保した労働契約(始期付解約権留保付労働契約)が成立した、と判示されています【大日本印刷事件 最二小判 昭54.7.20】。

 また、採用内定の取消事由(始期付解約権留保付労働契約の解約)は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できない事実が後に判明し、しかも、それにより内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できるものに限られるとされています【前記 大日本印刷事件】。

 なお、使用者の恣意的な内定取消については債務不履行(誠実義務違反)又は不法行為(期待権侵害)に基づく労働者の損害賠償請求が認められる場合があります。
 
 これらの考え方をもとに、まずは、会社に内定取消の理由の説明を求め、会社と話し合われてはいかがでしょうか。内定通知を受けたことで他の会社の採用を断った経緯もあることから、法的な対応を求めていくことも検討できるのではないでしょうか。

Q2 正社員から休憩時間についての相談

 正社員として施設管理をしている会社で働いています。8時間勤務で、昼休みに45分の休憩時間があります。しかし、施設内では大きなイベントが頻繁に行われるため、昼休みにも問い合わせ電話が多くあり、休憩時間が十分に取れません。上司に相談しても、仕事があるのだから仕方がないと言われます。本当にこれでよいのでしょうか。
 

 使用者は、労働者に、休憩時間を除き、1日8時間、1週40時間を超えて、労働させてはならないとされています【労働基準法第32条】。この法定労働時間を超えて働かせる場合には、いわゆる36協定(さぶろく協定)を締結する必要があります【労働基準法第36条】。

 また、行政解釈において、労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間にあたるとされています【平29.1.20 基発0120第3号】。

 一方、休憩時間については、使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません【労働基準法第34条】。

 休憩時間について、行政解釈では、「休憩時間とは、単に作業をしていない、手待時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることが保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働 時間として取り扱う」とされています【昭22.9.13 発基17号】。すなわち、現実には作業はしていないが、使用者からいつ就労の要求があるかもしれない状態で待機しているいわゆる「手待時間」は就労しないことが使用者から保障されていないため休憩時間ではないとされています。

 これらのことを踏まえ、本件において、職場の業務の性質上、昼休みに頻繁に電話対応することが求められるのであれば、休憩時間の取得を確保できるよう、まずは、職場において、上司や同僚とともに、電話対応を当番制にするなど改善策を出し合い、話し合われてはどうでしょうか。

Q3 使用者から社員の自家用自動車通勤についての相談

 当社では、立地上の問題から、社員に一定条件で自家用自動車(マイカー)での通勤を認めています。このたび通勤の認定を受けた社員から、早朝や夜遅くに取引先などを訪問する際、自家用自動車による出張も認めて欲しいと要望がありました。認めるとした場合、どのような点に留意すればよいでしょうか。
 

  社員が自家用自動車を使用して出張(業務を遂行)する場合に、使用者が業務遂行のためにその使用を「容認」(黙示の了解も含まれる)していた場合、使用者には、「使用者責任」と「運行供用者責任」が求められることになります。
  
 使用者責任については、民法で、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」、この場合、「使用者に代わって事業を監督する者も責任を負う。」と規定されています【民法第715条】。

 また、運行供用者責任については、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。」とされています【自動車損害賠償保障法第3条】。
  
 本件においては、自家用自動車による出張を認める方向で検討されているということですが、社員が、万一、事故を起こした場合、使用者は、使用者責任及び運行供用者責任を問われる可能性があります。その場合、その自家用自動車に十分な損害保険が付加されていれば、賠償金の支払いリスクは低くなると考えられます。
 したがって、認める方向で検討されるのであれば、「物損事故、人身事故に十分対応できる損害保険等への加入」などの条件を付すことや、社内規定の整備等も検討されてはいかがでしょうか。顧問弁護士等とよくご相談されることをお勧めします。   

 

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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