今月の事例解説(30年8月)

更新日:平成30年9月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働組合役員から団体交渉の対象事項についての相談

 労働組合の役員をしています。製造部門から営業部門に人事異動となり通勤時間が長くなった組合員から、「今回の人事異動は、会社からの嫌がらせだと思う、納得できない」旨の相談がありました。会社には人事権があると聞きますが、会社に対して人事異動撤回についての団体交渉を申し入れることは可能でしょうか。

 使用者は、労働組合からの団体交渉の申入れがあった場合、正当な理由なく、これを拒むことはできません。団体交渉拒否は、不当労働行為の一類型であり禁止されています【労働組合法7条第2号】。

 また、使用者が団体交渉に応じることを義務付けられている事項を「義務的団交事項」といい、「組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」と解されています。

 申入れのあった団体交渉の事項が人事や生産方法などの場合、使用者が、「経営専権事項であるので義務的団交事項でない、団交に応じる義務はない」という理由で、団体交渉を拒むことがあります。

 しかし、企業の経営・人事に関する事項であっても、労働者の労働条件その他の待遇に影響のある場合には、義務的団交事項になると考えられます。

 なお、労働組合員であることを理由に行われた不利益な取扱いや、労働組合に対する支配介入も不当労働行為となります【労働組合法第7条第1号、同第3号】。

 本件については、具体的な労働組合員個人の配置転換により組合員の通勤時間が長くなるという労働条件に関することであるため、団体交渉を申し入れ、会社と話し合われてはどうでしょうか。また、仮に、その配置転換が、組合員であるが故の不利益取扱いであったり、労働組合に対する支配介入であると考えられるような場合には、そのことも話し合い、状況によっては、労働委員会に対する不当労働行為の申立も検討されてはどうかと思われます。

Q2 労働組合役員から労働協約の解約についての相談

 最近、労働組合役員となりました。これまで長年労働組合と会社との間で結んでいた労働協約を、会社が一方的に破棄しようとしています。会社は、労働協約を破棄することが可能なのでしょうか。
 

 労働協約とは、労働組合と使用者とが団体交渉によって、組合員の労働条件や労使関係事項について合意に達した事柄を文書化し、双方の代表者が署名または記名押印したものです【労働組合法第14条】。

 労働協約に有効期間を定める場合、3年を超えて定めることはできません。また、労働協約に有効期間を設けない場合もあります。

 有効期間の定めのない場合において、当事者の一方が労働協約を解約したい場合は、解約しようとする日の少なくとも90日前に署名又は記名押印した文書によって予告する必要があります【労働組合法第15条】。

 しかし、これは、90日前に予告さえすれば労働協約の破棄が常に認められるということではありません。会社による労働協約の破棄が、労働組合の弱体化を目的とする等、労使関係の安定を著しく損なうような場合は解約権を濫用したものとして、支配介入に当たり不当労働行為となる場合もあります【労働組合法第7条第3号】。

 労働協約の締結が労使の共同作業である以上、その改訂や解約も労使の共同作業で行うことが原則です。

 以上のことから、労働協約の解約について、会社に団体交渉を申し入れ、労働協約を解約する理由について具体的に説明を求め、団体交渉の中で話し合われてはどうでしょうか。その後の状況によっては、労働委員会へのあっせん申請や不当労働行為の申立も検討されてはどうでしょうか。

Q3 使用者からユニオン・ショップ協定の適用範囲についての相談

 社内に労働組合があり、ユニオン・ショップ協定を締結しています。これまで、労働組合の規約では正社員のみが組合員でしたが、このたび労働組合が組合規約を改正し、パート社員も加入資格を得るようになりました。
 これに伴い、労働組合から、パート社員も含めた形で作成したユニオン・ショップ協定にサインをするよう求められています。労働組合が一方的に組合員資格を変更したことに伴い、協定の適用範囲を変えなければならないのでしょうか。
 

 ユニオン・ショップ協定とは、労働者の採用にあたっては労働組合への加入を条件とし、労働組合を脱退・除名された労働者は解雇されることを定めた労働協約です【労働組合法第7条第1号但書】。

 また、どこまでを組合員の範囲とするかについては、労働組合法第2条但書第1号に該当する者を除いて、労働組合が自主的に定めるべき事柄であり、使用者がこれに介入することは不当労働行為となり禁止されています【労働組合法第7条第3号】。

 したがって、組合が新たにパート社員を組織化することに使用者が関与することはできません。労働組合の加入資格とユニオン・ショップ協定の適用範囲は別に考える必要があります。パート社員に対してもユニオン・ショップ協定を適用するためには、パート社員に拡大した新たなユニオン・ショップ協定を締結するなどして、その適用範囲を労使で確認する必要があります。今後、パート社員の意向も踏まえながら、労使で誠実に話し合って判断されてはどうかと考えます。  

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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