今月の事例解説(H30.7)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 採用内定者から誓約書と身元保証書についての相談

 転職活動で採用面接を受け、内定通知が届きましたが、誓約書と身元保証書を提出するよう求められています。誓約書や身元保証書とはどのようなものでしょうか。また、こうした書類の提出に応じなければならないのでしょうか。

 誓約書は、法律等で定められたものではありませんが、企業等が労働契約の内容となっている事項のうち、労働者が契約上の義務として服務上遵守しなければならない重要事項を会社が労働者に再確認させること等を目的に提出を求めることがあります。

  身元保証書は、労働者が使用者に損害を与えた場合に、第三者である身元保証人がその損害を賠償することを主な内容とするもので、使用者と身元保証人との間に身元保証契約が成立します。使用者が労働者に対して身元保証人を求めること自体に法的な制限はありませんが、身元保証人に求めることができる賠償の範囲・期間等については、身元保証ニ関スル法律(身元保証法)により次のような制限等があります。
(1)身元保証契約の期間
 期間の定めがない場合は3年、期間の定めがある場合も最長5年までです【身元保証法第1条、第2条】。
(2)身元保証人の賠償範囲
 賠償の対象となるのは、本人の直接、間接の労務に関連した行為により、使用者が受けた損害に限られます【身元保証法第1条】。裁判所が損害賠償の責任や賠償額を決定するにあたっては、ア 使用者の監督や安全配慮等の過失、イ 身元保証をするに至った事由、ウ 被用者の任務または身上の変化、その他一切の事情を斟酌するとされています【身元保証法第5条】。
(3)使用者の通知義務
 使用者は身元保証人に対し、次の通知義務があります。ア 本人に業務上、不適任または不誠実な事跡があって、そのため身元保証人に責任を生ずるおそれがあることを知ったとき、イ 本人の任務または任地を変更したことにより、身元保証人の責任が加重となり、またはその監督が困難となるとき【身元保証法第3条】。
(4)身元保証人の契約解除権
 身元保証人は、上記(3)の通知を受けたとき、身元保証契約を解除することができます【身元保証法第4条】。
  
 誓約書や身元保証書の提出が採用条件となっている場合、拒否すれば不採用となる場合もあります。必要書類の不提出を理由とする採用取消については、それらが業務遂行などに必要不可欠でかつその内容が合理的なものであれば、内定取消も「相当」とされる余地が高くなるものと考えられます。

  本件では、誓約書については就業規則等を守る内容であれば労働者として当然の事柄を確認しているだけなのか、退職後の競業避止や秘密の保持をも義務付けられているものか等の内容を確認し、身元保証書についても身元保証法に定める範囲にあるのかを確認のうえ、特に問題がなければ提出されることになるのではないでしょうか。いずれにしても、誓約書や身元保証書の記載内容に疑問があれば、提出前に使用者にその主旨等を確認されることをお勧めします。

  なお、本府は、企業に対して、採用時における提出書類について、特に必要がないにもかかわらず従前からの慣習のみで求めないようにすることや、提出を求める場合でも不必要な書類の添付や身元保証人の人数など必要以上にプレッシャーを与えないようにするなどの配慮をお願いしています。

 以下のホームページもご参照ください。
大阪府「採用と人権」

Q2 業務中に怪我をした正社員から労働災害と解雇についての相談

 個人経営の商店で働いています。倉庫での作業中に怪我をして、現在は働くことができませんが、仕事中に負った怪我なので、労災になるのではと思っています。
 ところが、社長から「働けないなら辞めてもらう」と言われたため、「仕事中の怪我で休んでいるのに辞めさせるのはおかしいのではないか」と口論になりました。その後、社長から電話があり、休業から復帰後30日を過ぎた時点で解雇すると言われました。
 最近、社長と折り合いが悪かったのは事実ですが、休業から復帰して30日経てば解雇できるのでしょうか。
 

 労働者が業務上または通勤による災害(労働災害)により負傷し、または病気にかかった場合等には、労働者災害補償保険法(労災保険法)があり、労働者の請求により治療費の給付等が行われます。

 労災保険については、個人経営の農業等の事業で労働者が5人未満等ごく小規模なものを除き、法人、個人を問わず一般に労働者が使用される事業は適用事業となります。

 業務と疾病の間に一定の因果関係のあるものを業務災害といい、通勤によって被った傷病を通勤災害といいます。

 業務災害であると認められると、負傷の療養については、療養補償給付が、療養のため労働することができず賃金を受けられないときについては、休業補償給付を受けることができます。

 労災保険法に基づく保険給付等は本人又は遺族が事業場を管轄する労働基準監督署に行いますが、使用者はこれに協力する義務があります。使用者の協力が得られない場合は、労働基準監督署に相談しましょう。

 また、労働基準法は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間の解雇を禁止しています【労働基準法第19条】。

 解雇について、労働契約法は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています【労働契約法第16条】。

 また、解雇の事由は就業規則に定められる必要がありますので、この点も確認する必要があります。

 本件では、労災申請の手続を進めるとともに、解雇については、その理由を確認し、復帰して30日を経過したという理由だけでは解雇することはできないものと考えられることから、労働契約法第16条の考え方を示すなどして納得できない旨を伝え、会社と交渉されてはどうでしょうか。

Q3 使用者から賞与に関する団体交渉についての相談

 夏の賞与について、社内の労働組合との団体交渉を開始しています。要求内容は検討していますが、会社の経営状態を考えると組合の要求に満額の回答ができる状況にはありません。支給時期も近づいており、支払いのための手続に入るまでに交渉を終わらせたいと思っています。
 一方、組合からは支給時期があるからといって交渉を終わらせるのはおかしい、妥結しないまま支給時期を迎えた場合は、一旦、現在の基準で支払い、妥結した時点で差額を調整すればどうかと提案されていますが、そういう方法をとることに問題はないのでしょうか。

 労働組合法第7条2号は「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なくして拒むこと」を不当労働行為として禁じています。

 この点について、判例では「使用者は、自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たらなければならず、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、結局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をすべき義務があるのであって、合意を求める労働組合の努力に対しては、右のような誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務がある」【カール・ツァイス事件 東京地裁 平成元年9月22日】と使用者にはいわゆる誠実交渉義務があることを示しています。

 以上を踏まえて、まずは、組合に対して満額回答が困難である理由について、必要な資料を提示し、具体的に説明するなどして理解を得るよう誠実に説明する必要があります。

 また、賞与を支払う場合については、恩恵的なものを除き、就業規則にその支給対象時期、算定基準、支払方法等を明確にしておく必要があります。

 本件では、労働組合とは引き続き誠実な交渉を行うよう努めるとともに、支給時期までに交渉が妥結しない場合の扱いは、労使の話し合いによりますが、組合が主張する、一旦、現在の基準で支払い、妥結した時点で差額を調整することも不合理なものとはいえないことから、現実的な対応の選択肢として検討されてはどうでしょうか。 

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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