今月の事例解説(Q&A)(R1.12)

更新日:令和2年1月6日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働者から、長時間労働に係る健康管理についての相談

 私が勤務する会社では労働組合との間で36協定が締結されていますが、臨時的な事情がある場合には、今般改正された労働基準法における時間外労働の上限時間(年720時間以内)まで労働が可能な内容となっています。
 会社には定期健康診断はありますが、長時間労働による心身の故障が生じないか心配です。会社は法律上、社員の健康管理についてどのような対策をとってくれるのでしょうか。
  

 使用者には、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をすることが義務付けられています(安全配慮義務)【労働契約法第5条】。また、事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るための措置を講じ、快適な職場環境を形成するよう努めなければならないこととされています【労働安全衛生法第71条の2】。 

 健康管理に関しては、使用者にはその使用する労働者の労働時間の状況を適切に管理する責務があります【労働安全衛生法第66条の8の3】。原則として、休憩時間を除き週40時間(法定労働時間)を超えて労働させた場合、その超えた時間が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者が申出を行ったときは、使用者はその者に対し、医師による面接指導を行わなければなりません【労働安全衛生法第66条の8、同法施行規則第52条の2】。
(なお、研究開発業務従事者、特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者については別途規定があります)

 さらに、常時50人以上の労働者を使用する使用者は、その使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、医師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行うことが義務付けられており(50人未満は当分の間、努力義務)、検査の結果、心理的な負担の程度が高く医師が必要と認めた者が希望した場合には医師による面接指導を行わなければならず、さらに医師が必要と認める場合には、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません【労働安全衛生法第66条の10、同法施行規則第52条の9】。

 上記の考え方を基に、時間外労働の抑制など適切な労働者の健康管理と快適な職場環境の維持を図る制度等について、社内で上司や担当者に確認されてはどうでしょうか。 

以下のページもご参照ください。

 ○「長時間労働の削減に向けて」パンフレット(厚生労働省)
   https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/pdf/chojikanroudou.pdf 

Q2 労働者から、社会保険料についての相談

 今年から新卒で採用されました。給与明細書を見ると、健康保険料と厚生年金保険料が毎月の給与から差し引かれていますが、会社からは採用時に何も説明がありませんでした。
 社会保険料の仕組みを教えてください。

 我が国では、国民皆保険・国民皆年金制度となっており、常時1人以上の従業員を使用する法人事業所及び一部の業種を除き常時5人以上の従業員を使用する個人事業所は、全国健康保険協会管掌健康保険及び厚生年金保険の強制適用事業所となり、その従業員は原則として健康保険・厚生年金保険に加入して被保険者となります【健康保険法第3条、厚生年金保険法第6条】。 

 健康保険は、被保険者またはその被扶養者に係る業務災害(労災保険法の対象となるもの)以外の疾病、負傷、もしくは死亡又は出産に関して保険給付が行われるもので、厚生年金保険は、被保険者の老齢、障がいまたは死亡について保険給付(年金の支給)が行なわれるものです。 

 毎月支払う保険料は、事業主から労働の対価として支払われる報酬総額(臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものを除く)を基礎として、事業主が毎年7月に、4月から6月までに支給した被保険者ごとの報酬額を記載した「算定基礎届」を年金事務所に提出することにより「標準報酬月額」が決定され、この「標準報酬月額」がその年の9月から翌年8月まで適用されることとなります(採用時や固定的賃金の変動により再計算された場合を除く)。

 また、賞与(ボーナス)も保険料算定の対象となり、賞与額の千円未満を切り捨てた額が標準賞与額となります(年度の上限は573万円)。この標準報酬月額及び標準賞与額に、健康保険・厚生年金保険それぞれの保険料率を乗じて得た保険料を労使で折半し、当月分の保険料を翌月末日までに事業主がまとめて納付することとされています【健康保険法第156条、第160条、第161条、厚生年金保険法第81条、第82条】。

Q3 使用者から、労災保険の申請についての相談

 先日、当社の従業員が業務中に負傷し、病院で治療を行いました。
 労災保険の申請を行おうと思いますが、どのような手続きが必要でしょうか。。

 労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等(業務災害・通勤災害)に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行う制度です【労災保険法第1条】。 

 傷病等が「業務災害」または「通勤災害」に該当するかどうかは、労働基準監督署の認定によることとなります。

 「業務災害」の認定においては、前提として「業務遂行性」(傷病等の発生時、労働者が使用者の指揮命令下にあったこと)が必要であり、さらに「業務起因性」(傷病等について、業務に内在する危険有害性が現実化したと経験則上認められること)が認められる必要があります。

 なお、業務上の疾病については、労働基準法施行規則別表第1の2に具体的に列挙されています。

 「通勤災害」の場合は、ア 事故が通勤と相当因果関係にあること、イ 業務関連性があること、ウ 住居から就業場所までの往復等、所定の要件を満たす移動であること、エ 合理的な経路及び方法であること、オ 業務の性質を有するものでないこと(業務の性質を有する場合は「業務災害」となる)が要件とされています。 

 本件については、業務災害に該当する可能性がありますが、業務災害として病院で治療を受けた場合には、傷病が治癒するまで、労災保険から「療養補償給付」を受けることができます。「療養補償給付」の範囲は、診療費、処置・手術その他の治療費、薬剤又は治療材料の支給費等であり、現物給付が原則ですが、それが困難な場合または労働者に相当の理由がある場合には、「療養補償給付」に代えて「療養の費用」の支給(現金支給)が行われます【労災保険法第13条】。

 ※「療養の費用」の支給が行われる場合の例
   ・その地域に指定病院等(都道府県労働局長の指定する病院もしくは診療所、薬局または訪問看護事業者等)がない場合や、特殊な
    医療技術または診療施設を必要とする傷病の場合に、最寄りの指定病院等にこれらの技術または施設の設備がない場合
   ・指定病院等以外の病院・診療所で緊急な療養を必要とする場合

 療養補償給付の請求手続きは次のとおりです【労災保険法施行規則第12条】。
  (1)指定病院等で療養を受ける。
  (2)「負傷又は発病の年月日」及び「災害の原因及び発生状況(業務災害の場合)」の記載について事業主の証明を受けた上で、「(業
    務災害用)療養の給付請求書」を、指定病院等を経由して所轄の労働基準監督署に提出する。

 ※「療養の費用」の請求を行う場合【労災保険法施行規則第12条の2】
   療養にかかった費用全額をいったん医療機関に支払い、「療養の費用請求書」に記載した「負傷又は発病の年月日」及び「災害の原因 
  及び発生状況(業務災害の場合)について事業主の証明を受け、「傷病名及び療養の内容」及び「療養に要した費用の額」について診療
  担当者の証明を受けた上で、当該請求書を直接、所轄の労働基準監督署に提出する。

  保険給付を受けるべき者が、事故のため自ら保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主はその手続を行うことができるように助力しなければならないとされている【労災保険法施行規則第23条】ことから、被災者の状況によっては、使用者が代行して手続きを行うなど、手続きが円滑に進むよう協力されてはどうでしょうか。

 以下のホームページもご参照ください。

  〇「労災保険給付の概要」(厚生労働省ホームページ)
   https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040325-12.html

 〇「労災補償関係リーフレット等一覧」(厚生労働省ホームページ)
   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyousei/rousai/index.html

 〇「労働基準監督署管轄地域と所在地一覧」ホームページ(大阪労働局)
   https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/list.html

 

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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