今月の事例解説(Q&A)(R1.10)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働者から、試用期間中の解雇及び解雇予告手当についての相談

 正社員の業務リーダーとして採用され、勤務を始めました。最初の2か月は試用期間とされていましたが、採用後20日目の業務終了後に、社長から「リーダーとしての適性がないので、本日限りで解雇とします。試用期間中なので解雇予告手当はありません」と通告されました。
 解雇理由に心当たりはないのですが、仕事と職場の雰囲気になじめず、働き続ける気はありません。
 試用期間中は、解雇予告手当を受け取ることができないのでしょうか。
  

 解雇については、法律では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています【労働契約法第16条】。
 
 試用期間中は、使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が留保されているとされ、このような留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも解雇の自由が広く認められるとしながらも、その行使は解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当と是認されうる場合にのみ許されるとされています【三菱樹脂事件 最大判 昭48.12.12】。

 また、使用者が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日以上前に予告をしなければなりません。30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わねばなりません。これを解雇予告手当といい、予告日数は、平均賃金を1日分支払った日数だけ短縮できます【労働基準法第20条】。
 この規定は、試用期間中の労働者については適用されませんが、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には解雇予告手当の支払いが必要になります【労働基準法第21条】。

 さらに、法律では、労働者が解雇された後でも、その理由についての証明書を請求した場合、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないとしています【労働基準法第22条】。

 本件については、解雇の理由についての証明書を求めるなどして解雇理由を確認し、納得できない点については説明を求めるなどし、やむなく解雇を受け入れる場合でも採用後20日目の解雇の予告であることから、使用者に解雇予告手当の支払いを求められてはどうでしょうか。

 解雇予告手当が支払われない場合は、事業所を管轄する労働基準監督署への申告や、当所や大阪労働局の個別労使紛争解決支援制度の活用、労働審判の申立てのほか、労働組合を通じた団体交渉の申入れなどの方策も考えてはどうでしょうか。

Q2 労働者から、事業所閉鎖に伴う配置転換についての相談

 勤務している大阪府内の事業所が閉鎖となり、その業務が関東へ移管されることになったため、会社から関東の事業所への異動を打診されています。私は介護が必要な家族と同居しており、自分以外に対応できる者もいないので、遠方への異動はできないと考えています。
 しかし、会社からは、他にも様々な事情を抱えている社員もいるので、特別扱いはできないと言われています。
 現在の業務は関東へ移管されるものの、大阪府内には他の部門の営業所もあります。
 府内の営業所への転勤を希望することはできないのでしょうか。

 配置転換の命令(以下「配転命令」といいます。)を行うためには、労働契約や就業規則に「配置転換を命じることができる」など配転命令権の根拠が必要になります。また、職種や勤務地が限定されていると解される労働契約の場合は、その限定された職種・勤務地の範囲が配転命令権の範囲になります。

 また、家族の介護を行う労働者の転勤について、法律では「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない」【育児・介護休業法第26条(※1)】とされ、育児・介護休業法にもとづく指針(※2)では「配慮することの内容としては、例えば、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること、労働者本人の意向をしんしゃくすること、配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをした場合の子の養育又は家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと等があること」とされています。

 判例では、配転命令について「業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該配転命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき」には権利の濫用になるとの考え方が示されています【東亜ペイント事件 最二小判 昭61.7.14】。 

 本件では、家族の介護の状況を具体的に会社に伝え、大阪府内の事業所に勤務できないか話し合われてはどうでしょうか。自主交渉が難航した場合、育児・介護休業法に基づく労働局長の紛争解決の援助の申立てや当所の個別労使紛争解決支援制度の活用等を検討されてはどうでしょうか。 

※1「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」

※2「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようするために事業主が講ずべき措置に関する指針」

なお、育児・介護休業法について、詳しくは、大阪労働局雇用環境・均等部指導課にお尋ねください。

以下のホームページもご参照ください。 

○「仕事と育児・介護との両立支援について(外部サイト)」(大阪労働局ホームページ)

  ○厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(外部サイト)」(平成30年9月作成)
 

Q3 使用者から、振替休日の賃金についての相談

 会社の労務担当者ですが、突発的な事情があり、社員に休日出勤を応援してもらいました。
そこで休日に出勤してもらった社員から、「休日労働の賃金は割増になるのではないか。」と言われました。
 就業規則には、「業務の都合により必要な場合は、あらかじめ休日を他の日と振り替えることがある」と定めているので、今回も、事前に休日を同一週内の他の労働日に振り替えましたが、この場合、働いた日については、割増賃金を支払わなければならないのでしょうか。

  休日について、法律では毎週少なくとも1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければいけないとされています【労働基準法第35条】。これを法定休日といいます。
 また、使用者は、法定休日に労働させた場合には、3割5分以上の割増率の割増賃金を支払わなければなりません【労働基準法第37条】。 

 本件のように、業務の都合により必要な場合として、あらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日(振替休日)とする「休日の振替」の場合は、元の休日は労働日となる一方、振替休日は労働義務のない日として取り扱われます。振替休日については、就業規則に、勤務上の必要がある場合には休日を振り替えることができる旨の規定が存在することが必要です。 

 なお、休日の振替は、4週4日の休日が確保されるものでなければならず、さらに、休日を振り替えたことによって当該週の労働時間が、週の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については、時間外労働となり、時間外労働に関する労使協定(三六協定)及び割増賃金の支払いが必要となります【昭63.3.14 基発第150号】。 

 また、「休日の振替」と異なり、「代休」と一般に言われる制度は、休日労働や長時間の「時間外労働をさせた場合にその代償として他の労働日を休日とするものですが、現に行われた労働が休日労働等でなくなるものではないため、休日出勤日には割増賃金の支払いが必要です。 

 したがって、本件では元の休日における労働は法定休日労働とならず、原則として割増賃金の支払いは不要ですので、上記の考え方に基づき説明するとともに、今後とも休日出勤の実施にあたっては業務上の合理的な理由があるかを検討しながら対応されてはどうでしょうか。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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