今月の事例解説(R1.7)

更新日:令和元年8月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 正社員から、未払い賃金についての相談

 工場で勤務しています。勤務時間は昼休み1時間をはさんで8時30分から17時30分とされていますが、月に数回、作業の準備のため8時に出勤しなければならない日があります。上司から明確な指示はありませんが、8時に出勤しないと後の作業に支障を生じるため、出勤して当然といった雰囲気があります。
  その時間の賃金は支払われていませんが、請求することはできるのでしょうか。
  

  まず、本件では、8時から8時30分までの作業の準備等の時間が労働時間に当たるかが問題となります。

  このことについて、「労働時間とは、使用者の指揮監督の下にある時間をいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」とされています【平29.1.20 基発0120第3号】。
 そのため、現実に作業している時間のほかに、作業前に行う準備や作業後の後始末・清掃等が使用者の明示または黙示の指揮命令下で行われている限り、その時間も労働時間となるとされています。

 したがって、本件では、8時から8時30分までの作業時間が、使用者の明示または黙示の指揮命令下で行われている限り、その時間も労働時間となります。

 また、1日の法定労働時間(8時間)を超えることで時間外割増賃金の対象となります。本件の場合、1か月45時間までの時間外労働になるのであれば、2割5分以上の割増賃金を支払わねばなりません。

 時間外手当の計算にあたっては1分であっても支払いの対象となりますが、1月分を合計して1時間未満の端数が出た時、その端数のみ30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げることが許されています【昭63.3.14 基発150号】。 

 まずは、就業規則や賃金規程、労働契約の内容を確認し、支払われていない賃金額を算出し、特定してください。 

 その上で、使用者に未払賃金の支払いを求めることになります。請求は口頭でも可能ですが、使用者の対応によっては、内容証明郵便などを利用し、文書で請求することも検討されてはどうでしょうか。 

 また、請求しても使用者が賃金を支払わない場合には、当所の個別労使紛争解決支援制度を利用する、労働基準監督署に申告して行政指導を求める、法的手段をとる、労働組合を通じて団体交渉を行う、などの対応が考えられます。

  なお、賃金請求権の消滅時効は2年、退職金は5年です【労働基準法第115条】。時効の起算日は支払われるべき日の翌日となります。
 

Q2 パートタイム労働者から、労働条件の不利益変更についての相談

 事務作業をするパートタイム労働者として1年契約で入社しました。入社時の面接では時給は1,100円と言われていましたが、入社して1か月半後に、来月から時給を950円にすると言われました。会社の言うことをそのまま受け入れないといけないのでしょうか。

   時給1,100円から時給950円への変更といった労働条件の不利益変更については、使用者が自由にできるものではありません。労働契約法では、「労働者及び使用者は、その合意により労働契約の内容である労働条件を変更することができる」【労働契約法第8条】と規定されています。つまり、労働者と使用者との合意がなければ労働条件を(不利益に)変更することができないという労使合意の原則が定められています。

  労働条件が不利益に変更されるパターンとしては、大きく分けて労働契約の変更によるもの、就業規則によるもの、労働協約によるものがありますが、労働契約の変更について、労働者として納得できないなら、これに合意する義務はありません。合意しても、その内容が就業規則や労働協約に反している場合は、無効です。

 上記の考え方をもとに、会社からの提案に合意できないなら、使用者にそのことを申し出るとともに、実際に賃金がカットされた場合には、カット分を未払賃金(労働基準法第24条の全額払いの原則に反するもの)として請求していくことになります。


Q3 使用者から、解雇予告手当についての相談

 正社員として採用した従業員について、入社6か月が経過しましたが、仕事のミスが多く、指導や注意に従わず、一向に改善されません。このままでは重大なミスにつながらないか心配です。
  また、同僚の助言に対しても反抗的な態度をとり、トラブルを起こすため、できるだけ早期に解雇できないかと考えています。
  会社が従業員を即日解雇する場合は、解雇予告手当を支払う必要があると聞きましたが、このような従業員には解雇予告手当を払いたくありません。問題はないでしょうか。

   まず、解雇について、労働契約法では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、解雇は無効とする」と定められています【労働契約法第16条】。民法においても、権利行使の基準として「権利の濫用は、これを許さない」と定められています【民法第1条第3項】。単に抽象的に社員としての適性が欠如している、勤務態度が悪い、といったことだけでは解雇の理由とはならないと思われます。
 また、解雇の事由については就業規則において必ず記載しなければならない事項とされています【労働基準法第89条】。
 
   また、上記のような理由を満たし、解雇する労働者に対しては、次の仕事を探すための時間的、経済的な余裕を与えるため、労働基準法では、少なくとも30日前に解雇の予告をしなければならないとされています。30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。これを解雇予告手当といいます。
  なお、予告の日数は1日当りの平均賃金を支払った場合はその日数だけ予告期間が短縮されます。短縮した予告期間の日数に応じ、短縮した日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません【労働基準法第20条】。 

  解雇予告手当の支払いが除外されるのは、ア 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合、または、イ 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合ですが、その場合には、労働基準監督署長の認定を受けなければなりません【労働基準法第20条第1項、第3項】。

  以上のことから、労働者の勤務態度が不良で一向に改善されない、同僚に反抗的であるから等という理由だけで、労働基準法に基づく除外認定を受けることなく、解雇予告手当を支払わないことは許されないと考えられます。

  本件では、当該労働者について、真に解雇事由に該当するかの慎重な検討を行うとともに、解雇がやむを得ない場合でも、労働基準法第20条に定める解雇予告手当の除外事由に該当しない場合は、同法の規定に従い、適正な手続を採られてはどうでしょうか。

  

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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