今月の事例解説(R2.3)

更新日:令和2年8月4日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働者から、上司からのパワハラと職場環境の改善についての相談

 仕事でミスをしたところ、社員全員の前に立たされ、直属の上司から長時間大声で罵声を受け、朝礼で謝罪を求められました。それ以降、挨拶をしても無視されるようになり、職場の飲み会にも自分だけが呼ばれなくなりました。夜も寝つきが悪い日が増え、不安です。どうすればいいのでしょうか。
  

   令和元年6月に改正・公布された労働施策総合推進法(※)では、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)防止のために、使用者に雇用管理上の防止措置が義務付けられました【労働施策総合推進法第30条の2(※)】。 

※労働施策総合推進法第30条の2は令和2年6月1日に施行されます(中小企業については、令和4年3月31日までの間は努力義務)。

   また、同法の施行と併せて、「パワーハラスメント防止のための指針」(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年1月15日 厚生労働省告示第5号))が定められ、令和2年6月1日から適用されることとなりました。 

  この指針では、「職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの要素の全て満たすもの」とされています。 

  また、指針では、代表的な言動の類型として、以下のものが示されています。

 ア 身体的な攻撃(暴行・障害)

 イ 精神的な攻撃(脅迫、名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

 ウ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

 エ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

 オ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

 カ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

   なお、指針では「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」が示されていますが、これらは限定列挙ではないことに十分留意することと、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当せず、個々の事案の判断に当たっては、様々な要素(言動の目的、経緯や状況等)のほか、労働者が受ける身体的又は精神的な苦痛の程度等を総合的に判断することが必要とされています。

  本件については、職場内の優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた「精神的な攻撃」や「人間関係からの切り離し」と考えられますが、あなたがパワハラと感じた言動や行為等について、日時、場所、内容や周囲の状況などを記録し、整理しておくことをお勧めします。

  その記録と上記のパワハラについての考え方をもとに、会社の相談窓口があればその窓口へ、可能であれば上司本人に、難しければ、言動を行ったものの上司や人事担当者らにあなたの考えを伝え、上司のあなたへの対応を改めるよう指導するなど、会社としてきちんと対応することを求めてはどうでしょうか。

  また、労働組合に相談し、職場環境の改善を求める方法もあります。

  それでも会社が適切な対応を行わない場合は、当所の個別労使紛争解決支援制度「調整」「あっせん」、大阪労働局の「あっせん」の活用も検討されてはどうでしょうか。

  さらに、精神的につらく夜も眠れないということであれば、専門の医院を受診されても良いかもしれません。当所でも、「職場におけるメンタルヘルス専門相談」(無料、45分間、1回限り)を実施していますので、よろしければご利用ください。

 以下のホームページもご参照ください。

職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省ホームページ)(外部サイト) 

明るい職場応援団(厚生労働省ホームページ)(外部サイト)

 ○ 「職場のハラスメント防止・対応ハンドブック」(平成30年3月発行 大阪府労働環境課)

 ○職場のメンタルヘルス専門相談(大阪府労働環境課ホームページ)

 

Q2 正社員から、産前休業、マタニティーハラスメントについての相談

 正社員で働いていますが、妊娠が分かり、産前休業を取得予定であると伝えたところ、「他に雇いたい人もいるので、辞めてもらえないか」と言われました。
 正社員として働き続けたいのですが、どうすればいいでしょうか。これはマタハラではないのでしょうか。

 産前休業については、「使用者は、6週間前(多胎妊娠の場合にあっては14週間前)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」【労働基準法第65条】と定められています。 

 また、妊娠、出産、産前・産後休業等を理由とする解雇など不利益取扱いは男女雇用機会均等法で、育児休業の申出等を理由とする不利益取扱いは育児・介護休業法で禁止されています【男女雇用機会均等法第9条第3項】【育児・介護休業法第10条】。 

 マタニティーハラスメント(妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント)とは、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることです。 

 男女雇用機会均等法は、妊娠・出産等に関するハラスメントを防止するため、育児・介護休業法は育児休業・介護休業等に関するハラスメントを防止するため、事業主に対し、雇用管理上必要な措置を講ずることを義務付けています【男女雇用機会均等法第11条の2、同法施行規則第2条の3、育児・介護休業法第25条、同法施行規則第76条】。 

 なお、産前産後休業中及びその後30日間の解雇は、労働基準法で禁止されています【労働基準法第19条】。 

 以上のことから、使用者に対し、再度、産前休業の取得については、法で定められていることと、その利用を申し出たことを理由として「辞めてもらえないか」と発言することはマタハラに当たることを説明し、産前休業の取得を認めてもらうよう話し合われてはどうでしょうか。

 それでも、使用者の態度が変わらない場合は、男女雇用機会均等法第17条にもとづく大阪労働局紛争解決の援助や当所の個別労使紛争処理「調整」「あっせん」制度の利用を検討されてはどうでしょうか。  


Q3 使用者から、1年単位の変形労働時間制についての相談

 小売業を営み、パート従業員を雇用していますが、季節によって仕事量の増減の幅が大きくあります。1年単位の変形労働時間制というものがあると聞きましたが、この制度では労働日数や労働時間はどのようになるのでしょうか。。

 1年単位の変形労働時間とは、業務に繁閑のある事業場において、繁忙期に長い労働時間を設定し、かつ、閑散期に短い労働時間を設定することにより効率的に労働時間を配分して、年間の総労働時間の短縮を図ることを目的にしたものです。

 労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届け出ることにより、対象期間となる1か月を超え1年以内の一定期間を平均し1週間の労働時間を40時間以下の範囲内にした場合、特定の日や週について1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。【労働基準法第32条の4】 

 1年単位の変形労働時間を新たに採用するためには、以下の(1)、(2)が必要です。

(1)労使協定の締結及び所轄の労働基準監督署への届出
(2)就業規則その他これに準ずるものの変更 

 また、労働日数、労働時間の限度については、以下のとおりとされています。

(1)労働日数の限度については、対象期間が1年の場合は280日、対象期間が3か月を超え1年未満である場合は、1年当たりの労働    日数の限度(280日)×対象期間の暦日数/365日
(2)1日及び1週間の労働時間の限度については、1日10時間、1週間52時間
   対象期間が3か月を超える場合は、次のいずれにも適合しなければなりません。
   ア 労働時間が48時間を超える週を連続させることができるのは3週間以下。
   イ 対象期間を3か月ごとに区分した各期間において、労働時間が48時間を超える週は、週の初日で数えて3回以下。
(3)連続して労働させる労働日数の限度は、6日です。特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間)における連続労働させる日数の限度は、1週間に1日の休日が確保できる日数です。 

  以上のことを参考にされながら、1年単位の変形労働時間制の導入について、検討されてはどうでしょうか。

  なお、1年単位の変形労働時間制については、労働日及び労働日ごとの労働時間の定め方等についても留意すべき点があります、詳しくは、以下のホームページ(リーフレット)をご参照ください。 

○ 「1年単位の変形労働時間制」(外部サイト) (厚生労働省ホームページ)

 ○ 「労働基準関係法令のあらまし」(外部サイト) (厚生労働省大阪労働局ホームページ)

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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