今月の事例解説(H30年2月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 正社員から残業代と就業規則についての相談

 10数名が勤務する事業所の正社員です。所定労働時間は8時間です。社長は、「有給休暇を取得した次の日に残業する場合は残業手当を払わない。有給休暇を取得しなければ残業をする必要がなかったためである。これは会社のルールだ」と言っています。私が、「それでは、会社のルールである就業規則を見せてください」と言ったところ、「従業員が見るようなものではない」との返答でした。おかしいと思うのですが、アドバイスはありませんか。

 使用者は、原則として、1日8時間・1週間40時間の法定労働時間を超えて時間外労働をさせた場合や、深夜(原則として午後10時から午前5時まで)に労働をさせた場合には、2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります【労働基準法第37条】。なお、所定労働時間が8時間未満で残業をした場合には、法定労働時間である8時間までは通常の賃金の残業時間分を、8時間を超えた残業については割増賃金を支払う必要があります。

 また、就業規則について、労働基準法では、労働者に対する就業規則の周知を使用者に義務付けており【労働基準法第106条第1項】、これに違反した使用者は罰則の適用を受けます【労働基準法第120条第1号】。周知については、次のいずれかの方法によって行うこととされています。
(1) 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
(2) 書面を労働者に交付すること。
(3) 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業所に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。【労働基準法施行規則第52条の2】

 以上のことから、本件について考えると、「前日に有給休暇を取得したため残業代を支払わない」ということは、労働基準法第37条の規定に反するものであり、前日に有給休暇を取得したか否かにかかわらず、使用者には、割増賃金(残業代)を支払う義務があります。

 まずは、使用者に未払残業代の支払いを請求されてはどうでしょうか。 

 また、就業規則については、周知義務がありますので、その旨再度使用者に説明されてはどうでしょうか。

 それでも残業代が支払われない場合や就業規則が開示されない場合には、事業所を管轄する労働基準監督署に「申告」して行政指導を求める【労働基準法第104条第1項】、労働組合を通じて団体交渉で求める、当所の個別労使紛争処理制度を活用する等の対応が考えられます。また、残業代の支払いについては、簡易裁判所での少額訴訟や支払督促の手続きを利用することも考えられますので、検討されてはいかがでしょうか。

Q2 パート社員から社会保険についての相談

 従業員50名程度の事業所で、パートとして働いている50代女性です。これまで週35時間勤務してきました。体力的なことから、これからは週20時間程度の勤務に変更してもらおうかと思っているのですが、社会保険がどうなるのか気になります。今は健康保険と厚生年金保険に入っていますが、これからは、夫(正社員)に扶養されることになるのでしょうか。
 

 社会保険(健康保険及び厚生年金保険)については、適用される事業所や被保険者となる範囲は、同一基準で決定されます。

 適用事業所で勤務するパートタイム労働者で、基本的に、労働契約の期間が2か月を超え、1週の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の4分の3以上である場合には、被保険者となります。

 また、勤務時間、勤務日数が通常の労働者の4分の3未満であっても、以下の要件すべてを満たす場合には被保険者となります。
(1) 1週間の所定労働時間が週20時間以上であること
(2) 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)であること
(3) 雇用期間が1年以上見込まれること
(4) 学生でないこと
(5) 以下のいずれかに該当すること
・社会保険の被保険者数が501人以上の会社で働いている
・社会保険の被保険者数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている                         

 なお、被扶養者に該当する条件ですが、被保険者により主として生計を維持されていること、及び年間収入が130万円未満かつ、同居の場合は収入が扶養者(被保険者)の収入の2分の1未満に該当した場合には、被扶養者となります。【健康保険法第3条関係】

 以上のことを踏まえながら、会社と労働時間について話合い、週20時間勤務の場合の被保険者資格について、具体的な説明を受けてください。被保険者数が500人以下の会社のようですので、社会保険加入の労使合意の有無についても確認される必要があります。なお、所定労働時間が週20時間未満の場合、雇用保険の被保険者資格も喪失しますので、ご注意ください。【雇用保険法第6条】

 社会保険の被保険者資格について詳しい内容は、年金事務所にお尋ねください。
   
 以下のホームページもご参照ください。
  ○日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大の概要(外部サイト)


Q3 使用者からパワハラに関する社内体制についての相談

 ある正社員が、ベテランの部下から、必要な情報を報告しない、暴言を吐くなどの嫌がらせを受けたとして、社内のパワハラ窓口に相談しましたが、問題解決には至らなかったようです。その正社員は今年度末には定年退職しますので、もうこの件についてこれ以上問題にするつもりはないとのことですが、私に、「今後、パワハラ窓口が適切に機能するよう整備し、パワハラのない職場にしてもらいたい」と述べました。会社として、パワハラの予防・解決に積極的に取組もうと考えていますが、社内の職場環境の整備について何か情報はありませんか。

 職場のパワハラとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」とされています。この「優位性」には、職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識等の優位性が含まれ、部下から上司に対して行われるパワハラもあります。【厚生労働省:職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告(平成24年1月30日)】

 上記ワーキング・グループ報告において、職場のパワハラを予防するための取組みとして、(1)組織のトップが、職場のパワハラはなくすべきであるというメッセージを明確に示す(2)ルールを決める(就業規則、労使協定、予防・解決についての方針やガイドライン)(3)従業員アンケートを実施し実態を把握する(4)研修実施(5)組織の方針や取組みの周知・啓発等が挙げられています。また、パワハラを解決するための取組みとしては、(1)企業内外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める、外部専門家と連携する(2)行為者に対する再発防止研修の実施等が挙げられています。

 本件の正社員の方やハラスメント窓口担当者から事情を聴取され、現状の問題点を整理するとともに、上記ワーキング・グループ報告や、当所の「ハラスメント防止・対応ハンドブック」、厚生労働省の「明るい職場応援団」の資料などを元に、社内体制の整備を検討されてはどうでしょうか。
 
  以下のホームページもご参照ください。
  ○大阪府総合労働事務所「職場のハラスメント防止・対応ハンドブック」
  
  ○厚生労働省「あかるい職場応援団―職場のパワハラの予防・解決に向けたポータルサイト(外部サイト)

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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