今月の事例解説(H30年1月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 アルバイト先(予定)から制服と靴の費用の一部負担を求められたことについての相談

 飲食店でアルバイトをすることになりました。面接の時に店長から、制服と靴の費用の一部を負担してもらうことになっていると言われましたが、その具体的な金額は、聞かされていません。労働条件通知書を渡されましたが、その中にも書かれていません。これは、違法ではないのでしょうか。

 労働基準法では、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定められており【労働基準法第15条第1項】、同法施行規則で明示すべき労働条件が掲げられています【労働基準法施行規則第5条第1項】。この中に、使用者が定めをする場合には明示しなければならない事項として「労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項」が揚げられています【労働基準法施行規則第5条第1項第6号】。同条では、書面を交付し明示しなければならない事項も揚げていますが、「労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項」は含まれていません。

 また、労働契約法では、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする」、「労働者及び使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとする」と定められています【労働契約法第4条】。

 本件において、制服や靴など作業用品について、労働者に負担を求めることが直ちに問題があるとはいえませんが、労働者に負担を求める場合には、労働契約時に使用者はその内容を明示する義務があります。使用者に、負担の内容について具体的な説明を求め、できれば書面での明示も求めてはどうでしょうか。明示された労働条件に納得した上で、労働契約を締結してください。
 
 以下のホームページもご参照ください。
 ○労働条件に関する総合情報サイト 確かめよう労働条件
  (アルバイトを雇う際、始める前に知っておきたいポイント(外部サイト) 

Q2 アルバイト先から退職後に研修費用の支払いを求められたことについての相談

 1年間働くつもりであったアルバイトを、2か月後の先月、自己都合で退職しました。会社から特に何もいわれませんでした。しかし、その1週間後、退職の手続きの関係で元上司に電話をしたところ、「約束どおり、研修にかかった費用は支払ってもらう。」と言われました。そういえば、入社の面接で、「途中で辞めたら研修代を支払ってもらう」と言われていました。しかし、研修とは言っても、業務時間内に、先輩職員が横について仕事の仕方を教えてくれる程度で、特別な資格を取得するようなものでもありません。会社から請求があれば、支払わなければならないのでしょうか。
 

 労働基準法では、使用者が、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約してはならないと定められています【労働基準法第16条】。

 また、裁判例では、美容室とその従業員間で締結された「勝手わがままに」退職した場合には従業員は美容室に対し採用時に遡って1か月4万円の美容指導料を支払う旨の約定について、従業員の指導の実態が一般の新入社員教育とさして変わらず、その指導等に要したとされる費用等は使用者として当然に負担すべき性質のものであり、労働契約を交わす合理性は認め難いこと、しかも、労働者の退職の自由を奪う性格を有することにより、労働基準法第16条に違反する無効なものであるとされたものがあります【サロン・ド・リリー事件 浦和地裁 昭61.5.30】。

 本件では、有期労働契約期間中に合意の上で退職した後に、契約時点で口頭による説明のあった研修費の支払いを求められています。「途中退職すれば研修代を支払う」という説明は、上記労働基準法第16条に抵触する可能性があり、そもそも当該研修は、先輩職員からの日常業務上の指導のことを指し、本来使用者として負担すべき性質のものであると、主張することも可能ではないでしょうか。

 会社から実際に請求があれば、上記のことを参考にしながら、具体的な請求内容を詳細に確認し、支払いについて話し合われてはどうでしょうか。その際には、当所や大阪弁護士会等に相談することも、検討されてはどうでしょうか。
 
  以下のホームページもご参照ください。
  ○大阪弁護士会総合法律相談センター(外部サイト) 
 

Q3 使用者から従業員の配置転換についての相談

 介護施設を経営しています。正社員である看護師Aが育児休業から復帰したのですが、新たにパートタイムの看護師2名を採用したことや、看護師Aが子の看病を理由に有給休暇を取得することが多いことを理由に、看護師Aにヘルパーとして働いてもらおうかと考えました。看護師Aとの雇用契約書では、職種を看護師に限定はしていません。
 看護師Aに配置転換を打診しましたが、ヘルパーとして働く場合には、看護師に対して支払われる手当が支払われないこともあり、看護師としての継続勤務を希望しましたので、現在も看護師として働いてもらっています。
 今回のような配置転換は、問題があるのでしょうか。

 配置転換(以下「配転」という。)命令を行うためには、労働契約上、配転命令権の根拠があり、当該配転命令がその配転命令権の範囲内であることが必要です。配転について労働契約上の個別合意があればそれにより、個別合意がない場合には、就業規則等に定められている「業務上の必要がある場合、配置転換を命じることができる」等の包括的な規定を根拠とする場合があります。

 ただし、配転命令が使用者の配転命令権の範囲内であっても、権利濫用にあたる場合があります。労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならないとされています【労働契約法第3条第5項】。

 判例では、配転命令について「業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき」には権利の濫用となるとの考え方が示されています【東亜ペイント事件 最二小判 昭61.7.14】。

 また、小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日を限度として、子の看護休暇を取得することができます。子の看護休暇とは、負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者に対して与えられる休暇であり、年次有給休暇とは別に与える必要があります。事業主は、子の看護休暇等の申出をしたこと又は取得等を理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとされています。【育児・介護休業法(※)第16条の2から4】

 本件については、子の看護を理由とする有給休暇取得を理由に、手当分の賃金減額という労働者にとっての不利益を伴う職種変更を行うことについて、配転権の濫用に当たらないかどうかが問題となると思われます。今後は、上記のことを踏まえながら、会社の対応を検討されてはどうでしょうか。育児や介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立が可能で、いきいきと働き続けられるような職場づくりに、積極的に取り組まれてはどうでしょうか。

   ※育児・介護休業法:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
 
以下のホームページもご参照ください。
○  「女性のための働くルールブック」 (大阪府総合労働事務所ホームページ)
      
○厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(外部サイト)」(平成29年10月1日施行対応)
    

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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