今月の事例解説(H29年11月分)

更新日:平成29年12月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働者から子の看護休暇についての相談

 正社員として勤務している女性です。最近まで育児休業を取得していましたが、息子が保育所に入所できたため、職場復帰しました。しかし、息子がよく熱を出し、有給休暇を頻繁に取得しなければなりません。夫婦ともフルタイムで共働きで、近隣に頼れる親戚等もいません。夫も家事、育児を分担してくれていますが、上司から、何とかできないかと言われています。有給休暇の日数も残り少ないため、このままいけば欠勤になる可能性があり、仕事を続ける自信がなくなってきました。退職せざるをえないのでしょうか。

 育児・介護休業法(※)では、小学校入学前の子を養育する労働者は、会社に申し出ることにより、年次有給休暇とは別に1年につき子が1人なら5日まで、子が2人以上なら10日まで、病気やけがをした子の世話、疾病の予防を図るために必要な世話(予防接種、健康診断)のために看護休暇を取得することができます(有給か無給かは会社の定めによります)。平成29年1月1日以降は、半日単位でも取得が可能になっています。

 日々雇い入れられる方は取得対象から除かれますが、事業主は、次に掲げる労働者のうち、労使協定で子の看護休暇を取得することができないものとして定められた労働者に該当する者が申し出た場合を除いて、子の看護休暇の申出を拒むことはできません。
   ア 当該事業主に引き続き雇用された期間が6か月に満たない労働者
   イ 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

 また、事業主は、労働者の看護休暇の申出・取得を理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることは禁じられています。

 会社に対しては、看護休暇の取得について相談するとともに、場合によっては、育児・介護休業法で定められた所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置等や、その他会社で定められた制度があれば、それらの活用を検討されてはどうでしょうか。

 また、このような介護休業法で定められた制度は、妻だけでなく夫も取得することができます。

 なお、都道府県労働局長は育児・介護休業法に定める事項に関し、紛争の当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合、助言、指導又は勧告を行うことができる旨定められています。

 事業主が適切な対応を行わなかった場合には、当所等行政機関への相談とともに、大阪労働局雇用環境・均等部に助言、指導を求めるということも検討されてはいかがでしょうか。
 【育児・介護休業法第16条の2、3、第16条の8、第17条、第19条、第23条、第52条の4】
 
   ※「育児休業・介護休業等育児又は介護を行う労働者の福祉に関する法律」

 ○厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/34.html

 ○厚生労働省「女性の活躍・両立支援総合サイト(両立支援のひろば)」
http://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/

Q2 アルバイトの女性からセクハラについての相談

 コンビニエンスストアでアルバイトとして働いている女性です。店に来る顧客に、身体を触ってきたり、卑猥なことを言う人がいて、気分が悪く、恐怖も感じています。店長は現場を見ても、顧客に注意をしてくれません。
 どのように対処すればいいのでしょうか。
 

 セクシュアルハラスメント(セクハラ)については、男女雇用機会均等法(※)第11条において、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定められています。事業主、上司、同僚に限らず取引先、顧客、病院における患者、学校における生徒などもセクシュアルハラスメントの行為者となりえます。

 そのうえで、事業主が講ずべき措置については「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)において定められ、同指針では相談窓口を設置し、迅速かつ適切に対応すること等が求められています。

 また、使用者には「生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」【労働契約法第5条】という安全配慮義務があり、これには心身の健康も含まれます。加えて、「快適な職場環境を形成するよう努めなければならない」【労働安全衛生法第71条の2】とされています。

  本件では、あなたがこれまでに受けた「気分が悪く、恐怖を感じる言動」について、「いつ、どこで、誰から、どのような言動を受け、どのように対応したのか」等を記録した上で、基本的には店長に対し、職場環境の改善を求めることになりますが、店長が誠実に対応しない場合はコンビニエンスストアチェーンの本部の相談窓口に相談されることも検討されてはどうでしょうか。

 また、対応にあたって、十分な意思表示ができなかったり、使用者が適切な対応をしない場合でも自分を責める必要はありません。当所等の行政機関への相談とともに、大阪労働局雇用環境・均等部に助言、指導等を求めるということも検討されてはどうでしょうか。

   ※男女雇用機会均等法:「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」

 ○厚生労働省「職場でのセクシュアルハラスメントでお悩みの方へ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

Q3 使用者から退職勧奨についての相談

 わが社に業務指示を守らない、ずさんな報告を繰り返す、書類を放置するなど勤務態度が良くない社員がいます。会社としては、その都度、指導や注意をしてきましたが、なかなか改善がみられず、このまま推移すれば大きなトラブルにならないか心配です。
 会社としてはスキルを持つ社員を新たに雇用したいと思っていますが、経営上の余裕もないため、当該社員には辞めてもらいたいと考えています。できれば解雇によることなく、自主退職により雇用を終了させたいのですが、問題はないでしょうか。

 期間の定めのない労働契約であっても、期間の定めのある労働契約であっても、契約期間の途中で使用者から一方的に労働者を辞めさせることを解雇といい、使用者から労働者に対して「辞めて欲しい」と申し入れることを退職勧奨といいます。

 解雇が、使用者から一方的な通告により労働契約を解除することであるのに対し、退職勧奨はあくまで、使用者により労働者の自発的な退職の意思形成を促す事実行為にとどまり、労働契約は、両者の合意により終了します。

 したがって、退職勧奨について労働者が応じるかどうかは労働者の自由であり、労働者が退職勧奨に応じなければ、雇用は継続することになります。

 本件では、使用者としては当該労働者の自主退職を促すこと、即ち退職勧奨を考えられているようですが、退職勧奨については、労働者の任意の意思形成を妨げ、あるいは名誉感情を害するような言動は許されず、違法な権利侵害として不法行為を構成し損害賠償の対象となる場合があります【下関商業高校事件 最高裁 昭55.7.10】。

 労働者の解雇については、就業規則に解雇の事由が記載されている必要があり【労働基準法第89条】、また、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」【労働契約法第16条】と定められ、期間の定めのある労働契約については、「やむを得ない事由がある場合でなければその契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」【労働契約法第17条】と定められていますので、労働者の勤務態度等が真に解雇に値するものかを慎重に判断する必要があります。

 本件の場合では、当該労働者が、研修や指導を繰り返しても能力向上が望めないかどうか慎重に判断するとともに、ずさんな報告を繰り返したり、書類を放置するといった問題行動について、まずは顛末書を提出することを求めたり、改善を求めて指導し、それでも改善されないときには懲戒処分を検討したり、企業の生産性の向上のため、その能力を発揮できる業務が社内で他にないのか等も検討されてはどうでしょうか。そのうえで、労働者と、配置転換や退職勧奨を含めた今後の対応について、誠意をもって話し合われてはどうでしょうか。
 

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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