今月の事例解説(H29年9月分)

更新日:平成29年10月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 契約社員から退職についての相談

 1年契約の契約社員として勤務し、半年が経ちました。職場の人間関係に悩み、精神科で受診したところ、職場環境が適しておらず、勤務を続けるのは困難であると主治医に言われました。「もう退職するしかない」と思い、社長に退職したい旨を伝えると、社長から、「契約期間が終了するまでは退職は認められない」と言われました。退職するかどうか迷っていますが、退職することはできないのでしょうか。

 期間の定めのない労働契約においては、原則、労働者は2週間の予告期間を置けばいつでも契約を解約できます【民法第627条】。
 
 これに対し、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)では、重大な傷病で労務不能な状態になったなど「やむを得ない事由」がある場合は、契約を解除することができます。ただし、その事由が労働者側の過失によって生じたものであるときは、労働者は使用者に対して損害賠償責任を負うとされています【民法第628条】。
 
 また、やむを得ない事由がなくとも、労働者が使用者に「退職願」を提出するなどして合意解約を申し込み、使用者が承諾すれば合意解約となります。
 
 なお、労働契約を結ぶ際に使用者から明示された労働条件が事実と相違する場合も、労働者は即時に労働契約を解除することができます【労働基準法第15条第2項】。
 
 一方、退職以外の方針として、就業規則に規定があれば、主治医と相談の上、病気休職を検討することも考えられるのではないでしょうか。
 
 また、職場の人間関係に悩んでいる旨、上司や使用者に相談し、職場環境の改善や、使用者の安全配慮義務に基づいた対応を求めることも考えられます【労働契約法第5条、労働安全衛生法第71条の2】。

 なお、疾病が業務を原因として被ったものであれば労働災害として申請を行うという方法もあります【労働者災害補償保険法第1条】。
 
 以上のことを参考にされながら、継続勤務の可能性の有無も含めて検討され、希望や方針を固め、今後について、社長と再度話し合われてはどうでしょうか。 
 

Q2 正社員から育児休業の取得についての相談

 正社員として勤務し、現在、産休で会社を休んでいます。産後には育児休業を取得したいのですが、上司から「本当は育休後も復帰しないつもりだろう。辞めたらどうか。」と言われました。育休を取得せずに辞めるしかないのでしょうか。
 

 育児・介護休業法では、満1歳(一定の要件を満たせば、1歳6か月まで延長可能。平成29年10月1日からは2歳までの再延長も可能。)に満たない子供を養育するために労働者が申し出た場合、使用者は育児休業を与えなければならないとされています【育児・介護休業法第5条、9条、9条の2】。

 また、同法第25条では、「事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と定められています。

 同条文に関して定められた「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号、平成28年一部改正)において、育児・介護休業法等で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることを「職場における育児休業等に関するハラスメント」とし、その典型的な例の一つとして「労働者が、制度等の利用の申出等をしたい旨を上司に相談したこと、制度等の利用の申出等をしたこと又は制度等の利用をしたことにより、上司が当該労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いを示唆すること。」が記載されています。
 
 まずは、事業主に対し、育児休業は労働者が申し出た場合には与えなければならないものであり、上司の発言については、育児休業を認めないことは育児介護休業法に違反していること、またそれを理由として解雇その他不利益な取扱いを示唆することは「職場における育児休業等に関するハラスメント」に当たると説明し、対応を求められてはどうでしょうか。
 
 ※育児・介護休業法:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

 以下のホームページもご参照ください。
 ○「女性のための働くルールブック」(大阪府総合労働事務所ホームページ)
   http://www.pref.osaka.lg.jp/sogorodo/keihatusahi-refureto/joseirulebook.html
  
  ○厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(平成29年10月1日施行対応)
   http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/34.html

Q3 使用者から試用期間中の解雇についての相談

 試用期間中の従業員について、会社が求めているよりも能力が低く、他の従業員と和が取れないことから、これらを理由に本採用を拒否しようと思っています。法的に問題ないでしょうか。

 試用期間とは、本採用決定前の「試みの期間」であって、その間に労働者の人物、能力、勤務態度等を評価して社員としての適格性を判定し、本採用するか否かを決定するための期間とされており、法的には解約権留保付労働契約と解されています【三菱樹脂事件 最大判 昭48.12.12】。

 試用期間中といっても、すでに労働契約の効力は発生しているため、試用期間終了後に本採用を拒否することは解雇にあたります。試用期間の解約権留保付労働契約という性質から、試用期間中の解雇は通常の解雇よりも広い範囲で解雇の自由が認められていますが、客観的で合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認できるものでない場合は権利を濫用したものとして無効となります【労働契約法第16条】。
 
 本採用拒否が認められる基準として、判例では「企業者が採用決定後における調査の結果により、または試用期間中の勤務状態等により、当初知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に徴して客観的に相当であると認められる場合」とされています【前掲三菱樹脂事件】。
 
 具体的な事由としては、勤務態度の不良や勤務成績不良、業務遂行能力の不足、非協調性、経歴詐称などが挙げられます。能力や適性の欠如を理由として本採用を拒否した事例においては、能力等が不足しているということの立証の程度や、不足と判断した評価の妥当性が問題となることが多く、能力が欠如している者に対し、上司が繰り返し注意や指導をしたが改まらなかったという事情があれば、本採用拒否が有効となる可能性が高いと言え、逆に全く注意や指導もなく、上司が試用期間中の者に肯定的な評価をするような言動をとっていた場合、不適格性について疑義がもたれ、本採用拒否が無効とされる可能性もあります。
 
 なお、試用期間についての紛争を未然に防止するためには、あらかじめ、就業規則や労働契約を締結する際に、ア 試用期間があること、イ 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、不適格と判断した場合には本採用しない(解雇する)ことがあること、ウ 労働者が従事する職務と期待する業績等をできるだけ具体的に記載すること等が考えられます。
 
 まずは、当該労働者に対して、能力向上のための注意や指導を繰り返し行い、協調性を高めるためのアドバイス等を実施することから始められてはどうでしょうか。 

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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