今月の事例解説(H29年8月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働組合役員から労働協約と労使協定との違いについて等の相談

 労働組合の役員をしています。先日、会社側と団体交渉で合意した事項を「覚書」という形で書面にしました。これは労働協約として有効になるのでしょうか。
 また、「労使協定」という言葉も聞きますが、これは、労働協約とは異なるものなのでしょうか。

 「労働協約」は、労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する協定であって、書面に作成され、両当事者が署名し、又は記名押印したもののことです【労働組合法第14条】。こうした書面であれば、たとえそれが「労働協約」という名称を付されておらず、例えば「協定」や「覚書」という名称であっても、労働組合法上の労働協約となります【昭和29年1月19日労収第5号】。

 したがって、本件については、名称は「覚書」であれ、労働組合法第14条の要件を満たすのであれば、「労働協約」ということになります。
   
 次に、「労使協定」とは、過半数代表(当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合においては、労働者の過半数を代表する者)と使用者の、法所定の事項についての書面による協定のことです。労使協定には、労働基準法や育児介護休業法といった強行法規が定める労働契約に対する規制を、当該事業場について、緩和・解除・修正するという機能があります。労使協定の対象となる事項は法令に規定されています。例えば、労働基準法第36条に基づく労使協定(いわゆる三六協定)によって法定時間外労働が許容されます。

 また、「労使協定」には、労働基準法等の最低基準効を解除する効力や罰則を免れしめる効力が認められますが、「労働協約」とは異なり、労働契約それ自体を規律する効力(例えば労働者に時間外労働義務を発生させる効力)は認められません。

 なお、「労働協約」の効力は、労働組合法第17条及び18条に定める一般的拘束力をもつ場合を除き、使用者と労働組合、所属する労働組合員に限られるのに対し、「労使協定」は、事業場の全従業員との関連で効力を持ちます。 

Q2 労働組合役員から上部団体の団体交渉申入れについての相談

 会社と当労働組合とが締結した労働協約の中に、「当該労働組合とのみ団体交渉を行う」旨を規定した項目があります。会社はこれを根拠に、上部団体が申し入れた団体交渉を拒否したようです。このような対応は不当労働行為にならないのでしょうか。
 

 上部団体が単なる連絡協議機関の場合は、その団体独自の団体交渉権は持たないと考えられますが、労働組合の定義(労働組合法第2条)に該当し、かつ加盟組合に対し統制力をもつものは、その団体に独自の事項及び加盟組合に統一的な事項について、固有の団体交渉権を持ちます。したがって、一般には、上部団体であるからという理由だけで当然には団体交渉を受け入れないことはできません。

 また、使用者が、多数組合等との労働協約において、当該組合を唯一の交渉相手と認め、他の組合と交渉しない旨の「唯一交渉団体条項」を結び、これを理由に上部団体や少数組合との団交を受け入れないことがあります。しかし、そのような条項は他の組合の団体交渉権を侵害するものであると考えられます。使用者が、唯一交渉団体約款を理由に別組合の団交に応じなかったことが不当労働行為とされた命令例があります【中労委 昭和56年11月18日三田運送事件】。

 一方、一つの交渉事項についてはその交渉権限は統一的に行使されるべきであり、二つの団体が相互に統一なく交渉を求めてきたようなときは、二重交渉を避けるため、使用者はこれらに対し交渉を統一して行うよう要求することができます。組合支部と会社が支部組合員の問題について団交を行っている場合において、当該支部の上部団体が団交を申し入れた事案について、重ねて上部団体との団交に応じるよう会社に強いることは妥当ではないとした命令例があります【中労委 昭和53年7月5日 西日本重機事件】。

 以上のことから、ご質問のような労働協約を労働組合が締結している場合であっても、上部団体の団体交渉権が当然に制約されるわけではないため、当該交渉が二重交渉にも当たらないような場合には、団交拒否は不当労働行為(労働組合法第7条)とみなされる可能性があります。

Q3 使用者から労使協定締結に係る過半数代表者の選出についての相談

 業務量増加に伴い、時間外労働を要する可能性が出てきましたので、三六協定を締結したいと考えています。当社には労働組合がありますが、従業員の過半数を満たしていません。このような場合、過半数代表者と労使協定を締結することとなりますが、過半数代表者はどのように選出すればいいのでしょうか。

 三六協定の締結のためには、使用者は、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と書面による協定を行うこととなります【労働基準法第36条第1項】。

 過半数代表者は、(1)労働基準法第41条第2項に定める管理監督者でないこと、及び(2)法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であることの両方に該当する者でなければなりません【労働基準法施行規則第6条の2第1項】。また、同規定における「挙手等」の「等」には、労働者の話合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きが該当するとされています【平成11年3月31日基発169号】。

 なお、使用者は、過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないと定められています【労働基準法施行規則第6条の2第3項】。

 以上を踏まえ、過半数代表者の選出方法について検討してはいかがでしょうか。 

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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