今月の事例解説(H29年7月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 正社員から合意した労働条件と実際とが異なることについての相談

 先週、正社員としての仕事が決まり、1週間勤務しました。しかし、勤務開始後2日目に手渡された労働契約書の賃金は、面接時に聞いていた賃金より月額で数万円少ないことが分かりました。労働契約書にはサインをせず、そのまま持っています。
 会社に対し面接時に聞いていた賃金よりも少ないことを伝えると、「賃金が少なければ残業で稼げば良いのではないか」と言われました。
 このような会社に勤め続けるつもりはないので、退職しようと思いますが、どのようにすればよいでしょうか。

 労働者と使用者の間で結ばれる労働契約は、合意によって効力が生じ、口頭による場合でも成立します【労働契約法第6条参考】。

 労働基準法では、使用者が労働者に明示しなければならない労働条件が定められており、その中でも労働契約の期間や労働時間、賃金等については、書面で交付しなければならない旨定められています【労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条第1項】。
 
 また、労働契約法においては、労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとされています【労働契約法第4条第2項】。
 
 なお、明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができます【労働基準法第15条第2項】。
 
 口頭で示された賃金であっても、明示された労働条件であると主張できる場合があります。明示されたと主張するためには、当初賃金の説明を受けた経緯や状況を詳しくメモし、そのメモを元に、面接時に口頭ではあるが賃金を明示された旨、説明する必要があるでしょう。その上で、明示された賃金と実際の賃金とが相違するため、労働基準法第15条第2項に基づき、即時に労働契約を解約する旨、使用者に意思表示し、退職届を提出されてはどうでしょうか。
 
 また、既に1週間勤務されていることから、その間の賃金請求権が発生していますので、賃金の支払いが行われなかった場合には、労働基準法第24条に違反するとして請求してはどうでしょうか。

Q2 正社員から高年齢者継続雇用についての相談

 定年退職を目前にしています。退職後もフルタイムで収入を減らすことなく働きたいのですが、会社の再雇用制度はフルタイム勤務を認めていません。
 ローンなどもあり、極力収入を減らすことなく働きたいのですが、どのように対応すればよいのでしょうか。

 定年の定めをしている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、(1)定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければならないとされています【高年齢者雇用安定法第9条】。

 これは、上記3点のいずれかの措置を義務づけているものであり、個別の労働者の65歳までの雇用義務を課すものではありません。また、フルタイム、パートタイムなどの勤務形態については、本法では義務付けられていません。

 また、雇用保険の制度として「高年齢雇用継続基本給付金」という制度があります。これは、基本手当を受給していない方を対象とする給付金で、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の一般被保険者が、原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。支給額は、60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合は、各月の賃金の15%相当額となり、61%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて、各月の賃金の15%相当額未満の額となります。
 ただし、高年齢雇用継続給付と在職老齢年金を同時に受けられるときは、在職老齢年金の一部が支給停止される場合があります。

 以上のことから、会社に対し諸事情を説明し、定年退職後の労働条件を交渉されたらどうでしょうか。また、賃金が60歳時点の75%未満に低下するようであれば、事業所の所在地を所管するハローワークに「高年齢雇用継続基本給付金」の申請をすることを検討されてはどうでしょうか。

 以下のホームページもご参照ください
   厚生労働省「Q&A 高年齢雇用継続給付(外部サイト)

Q3 使用者から履歴書などの個人情報の取り扱いについての相談

 10年間勤務し、この度退職する従業員から、採用時に提出した履歴書を返還してもらいたいと言われています。会社では、採用時の履歴書は、3年程度保管した後、シュレッダー処理をすることをルールとしています。確認したところ、その従業員の履歴書も、既にシュレッダー処理済みでした。どのように対応すればよいのでしょうか。

 職業安定法では、労働者の募集を行う者等は、求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならないとされています【職業安定法第5条の4第2項】。また、同法に関する指針では、収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を廃棄又は削除するための措置を講ずること等が定められています【平成11年11月17日労働省告示141号、最終改正:平成28年10月19日厚生労働省告示第378号】。

 また、「個人情報の保護に関する法律」(以下、「個人情報保護法」という)では、個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならないと定められています【個人情報保護法第20条】。

 なお、個人情報保護法については、平成29年5月30日に改正法が施行され、従来、適用除外とされていた取り扱う個人情報が5,000人分以下の事業者についても、同法の適用対象となりました。

 従業員が入社の際に提出した履歴書等の個人情報の取り扱いについて、安全管理は必要ですが、返還義務までは、義務付けられていません。

 したがって、本件については、当該従業員に対し、会社では履歴書などの個人情報が適正に管理されているのであればその旨、及び当該従業員の履歴書は他の従業員のものと同様、シュレッダー処理した旨を、説明されてはどうでしょうか。

 なお、今後は、これまで慣習として行われていた履歴書の廃棄処分のルールを、個人情報保護法の考え方をもとに、「個人データの取扱いに係る規律」として整備してはどうでしょうか。

 個人情報保護については、「個人情報保護委員会ホームページ(外部サイト)」に、法令やガイドラインが掲載されていますので、参考にしてください。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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