今月の事例解説(H29年6月分)

更新日:平成29年7月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

 Q1 退職した正社員から雇用保険についての相談

 勤務していた会社を退職しました。退職してから1週間が経過しますが、「雇用保険被保険者離職票」(以下「離職票」という)が届きません。
 このまま離職票が届かないと雇用保険の求職者給付の手続きができません。どうすればよいのでしょうか。

 事業主は、雇用していた労働者が退職し、被保険者でなくなった場合、その事実のあった翌日から起算して10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」を、原則として「雇用保険被保険者離職証明書」を添えて事業所の所在地管轄のハローワークに提出しなければなりません【雇用保険法施行規則第7条】。

 その後、ハローワークから「離職票」が事業主に交付され、希望しない場合を除き、事業主は離職者にそれを交付しなければなりません。「何日以内に交付しなければならない」という規定はありませんが、労働者に不利益が生じる可能性があるため、速やかに交付すべきであると言えます。

 あなたの場合、退職して1週間ということなので、現在、手続き中の可能性も考えられますので、まずは事業主におたずねください。もし、事業主に求めても離職票が交付されなければ、事業所の所在地を管轄するハローワークに相談してください。

 なお、事業主が雇用保険に係る手続きを行わない場合は、労働者が直接に被保険者であることの「確認の請求」をすることができます【雇用保険法第8条】。これは、労働者が事業所の所在地を管轄するハローワークに文書又は口頭で行うものです【雇用保険法施行規則第8条】。

Q2 退職後に同業他社を設立した元正社員から前会社からの損害賠償請求に関する相談

 10年間勤務した会社を退職した後、同業の会社を立ち上げました。また、私は前の会社の従業員の引き抜き行為はしていませんが、退職して私の会社に来たいと言って来た従業員を採用しました。
 その後、前会社から従業員の引き抜きや関連会社との取引を止めること、さらに損害賠償請求を求めることが記載された警告メールが送られてきました。
 私の行為(前会社の従業員の受け入れ、前会社と関連のあった業者との取引)は、何らかの法律違反に当たるのでしょうか。また、前会社に対し損害賠償をしなければならないのでしょうか。  

 労働者は、労働契約の存続中は、一般的に、使用者の利益に反する競業行為を差し控える義務(競業避止義務)がありますが、労働契約の終了後については、労働者には職業選択の自由【憲法第22条】があるため、労働契約存続中のように、一般的に競業避止義務を認めることはできず、競業行為の差止請求等の措置の法的根拠と合理性を問題ごとに検討することになります。

 すなわち、退職後の競業行為の差止めは、退職者の職業選択の自由を直接侵害する措置なので、競業制限の合理的理由が認められ、合理的な範囲(期間・活動等)内での競業制限特約が存在する場合にのみ、その特約を根拠に行うことができるとされています。【フォセコ・ジャパン・リミティッド事件 奈良地裁 昭45.10.23】

 なお、ある企業から自己の必要とする労働者を辞めさせ、自己の企業との雇用関係に入らせる、いわゆる「引抜き」については、通常の勧誘行為にとどまるかぎりは適法といえますが、計画的かつ極めて背信的で、適法な転職の勧誘に留まらなかった場合には、社会的に認められない違法な引き抜き行為であるとされ、損害賠償責任が発生した場合があります【ラクソン事件 東京地裁 平3.2.25】。

 本事例の場合、まずは、退職後の競業制限特約の存否について確認するとともに、特約等があればその競業制限の内容が合理的なものかどうかを検討してはどうでしょうか。また、自由意思で退職した場合は、その者を採用することは引抜きには当たらないため、損害賠償の対象にはならないと主張されてはどうでしょうか。
 

Q3 使用者から病気休職中の労働者を解雇することについての相談

 当社の従業員が私傷病により今年の1月から休職しており7月に手術を予定しています。就業規則では病気休職の期間は最長で1年となっており、休職中は賃金の6割を支給することになっています。また、休職期間満了後の扱いは職場復帰が可能かどうかを判断の上、決定することになっています。
 職場復帰できるかどうかは手術後の状況を見て判断することになりますが、休職期間の満了を待たずに休職中の従業員を解雇することができるのでしょうか。

 病気休職は、労働者の業務外の傷病による長期欠勤が一定期間に及び、使用者がその労働者に対し労働契約関係そのものは維持させながら労務への従事を免除するもので、解雇の猶予のために設けられた制度と解されています。この期間中に傷病から回復し就労可能となれば休職は終了し、復職となりますが、これに対し、回復せず期間満了となれば、自然退職又は解雇となります。

 病気休職の内容に関する法律の定めは特にありませんが、休職に関する定めを行っている場合には、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に「休職に関する事項」を明示しなければなりません【労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条第1項第11号】。

 また、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、休職制度がある場合には、就業規則で定めなければなりません【労働基準法第89条第1号第10号】。

 本事例においては、会社に病気休職制度がありますので、就業規則で定められているとおりの取扱いをすることになります。すなわち、休職期間中は賃金の6割を支給し、休職期間の満了にあたって、主治医や産業医の意見を元に病状を把握し、職場復帰の可能性を判断することになります。休職期間の途中で、解雇すると判断することはできません。

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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