今月の事例解説(H29年4月分)

更新日:平成29年5月29日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 パートタイム労働者から労働条件の不利益変更についての相談

 1日7時間、1か月あたり14日勤務の労働条件で働いていました。労働契約書にも、そのように記載されています。昨日、社長から、顧客が減少したことを理由に、「これからは1か月の出勤日数を10日に減らす」と言われました。他のパートタイム労働者も、同様に、出勤日数を減らされるようです。1日の労働時間に変更はないので、このままでは1か月あたりの給料が減ることになります。このように使用者が一方的に労働者の労働条件を変更することは問題ないのでしょうか。

 労働条件の不利益変更については、使用者が自由に行えるものではありません。労働契約法では、労働条件について、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」【労働契約法第8条】として、労働条件の変更における労使合意の原則が定められています。

 したがって、本件について、出勤日数の変更に同意しないのであれば、その旨、会社と話し合うことになります。

 また、話合いの中で、会社に対し、労働条件の不利益変更を行う理由及びその必要性について、具体的に説明を求め、顧客数の減少が理由であれば経営改善に向けての方法は他にないのか等、尋ねてはどうでしょうか。

 なお、他のパートタイム労働者の方も労働契約の変更に同意しないのであれば、協調して使用者との話合いに対応する方法もあると思われます。
 

Q2 アルバイトの学生から賃金の未払いについての相談

 アルバイトを始めましたが、勤務2日目に会社に行くと社長から退職勧奨を受けましたので、「辞めます」と答えました。社長から「勤務した1日目の賃金は、労働時間の半分だけ支払う」と言われたので、「労働時間分の賃金を全て支払ってください」と言いました。
 もし、実際に賃金の支払い額が半分だった場合、どのように残額を請求すれば良いのでしょうか。

 賃金は、「通貨で」「全額を」「毎月1回以上」「一定期日に」「直接労働者に」支払わなければなりません【労働基準法第24条】。

 未払賃金がある場合、まずは、労働契約書や労働条件通知書を元に支払われていない賃金の額を特定することが必要です。もしも労働契約書等の書面がない場合には、労働契約締結時に口頭で説明された内容を元に、賃金を算出することになります。

 その上で、使用者に、支払われていない賃金の支払いを請求します。今後の対応を考えると、口頭で請求するよりも、「未払賃金請求書」などの名称で文書を作成し、請求することが望ましいと言えます。

 請求してもなお、会社が支払に応じない場合は、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署への申告、大阪府の個別労使紛争処理解決支援制度の活用、簡易裁判所での少額訴訟等を検討されてはどうでしょうか。

 なお、退職金以外の賃金の消滅時効期間は2年間、退職金は5年間ですので、気をつけてください【労働基準法第115条】。
 

Q3 使用者から従業員の有給休暇についての相談

 事業所の経営者です。従業員は正社員5名(週5日勤務)です。最近、従業員の1名が診療所に通院するために頻繁に年次有給休暇の申請をするようになりました。従業員に頻繁に休まれると業務に支障を来たします。年次有給休暇の取得理由を確認するために診断書の提出を求めても良いでしょうか。

 年次有給休暇は労働基準法で定められたものであり、週5日勤務であれば、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して、最低10日の有給休暇を与えなければなりません【労働基準法第39条第1項】。

 年次有給休暇の取得時季については、労働者に時季指定権がありますが、指定時季が事業の正常な運営を妨げるような場合は、会社に休暇時季の変更権が認められています【労働基準法第39条第5項】。

 ただし、「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるためには、当該労働者の年休指定日の労働がその者の担当業務を含む相当な単位(課や係)の業務の運営にとって不可欠であり、かつ、代替要員を確保するのが困難であることが必要であると解されています【弘前電報電話局事件 最二小判 昭和62年7月10日 参考】。

 また、恒常的な人員不足から、代替要員を確保することが常に困難であるという状況は、時季変更権の行使を正当化しないとされた判例もあります【西日本ジェイアールバス事件 名古屋高裁金沢支部 平成10年3月16日】。

 なお、年次有給休暇の利用目的について、判例では、「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である。」とされています【白石営林署事件 最二小判 昭48年3月2日】。

 以上のことから、本件において、年次有給休暇取得理由の根拠として従業員に診断書の提出を求めることはできません。一方で、従業員が診療所に通院するために頻繁に年次有給休暇を取得しているという状況に鑑み、使用者の安全配慮義務の観点から、当該従業員と、体調のことや通院の頻度、業務内容や業務分担について等、十分に話し合われ、従業員の健康面についても注意を払いながら、今後の会社の事業運営にも支障が出ないよう、対応を検討されてはどうでしょうか。

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

ここまで本文です。