今月の事例解説(H28年12月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 契約社員から労働条件の不利益変更についての相談

  現在、雇用期間1年の契約社員として勤務して半年になります。昨日、上司との面談があり、「契約期間の残り6か月については、現在の週5日勤務を週3回勤務に変更したい」と告げられました。変更理由は、「あなたの業務能力が向上したので、週3日で既存業務が行えるから」と言われました。
 現在の業務内容に不満はありませんが、私の努力によって能率が上がった結果、勤務日数が減らされ、収入が減少することに納得がいきません。これまでの業務に加え他の業務も行うことで、引き続き週5日勤務での継続勤務をすることが可能ではないかと思うのですが。どうすればいいのでしょうか。

 労働契約法では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と定められています【労働契約法第8条】。これは、労働者と使用者との合意がなければ労働条件を変更できないということです。したがって、使用者が労働者の合意なく、労働条件を不利益に変更した場合、法的な拘束力はありません。

 また、たとえ労働者が合意しても、その労働条件が労働協約に反していたり、就業規則で定める基準に達しない労働契約である場合は、その部分について無効となります【労働契約法第12条、労働基準法第92条】。

 なお、労働者の合意に、錯誤【民法第95条】、詐欺【民法第96条】、強迫【民法第96条】、公序良俗違反【民法第90条】の規定が適用されることがあれば、その取消しや無効を主張することができます。

 本件においては、使用者が契約内容を変更する理由とする「業務処理能力の向上による勤務日数の減少」が、あなたの納得できる理由ではなく、労働契約の変更に合意する意思がないのであれば、合意しないという意思表示をすることになります。その上で、あなたの希望である「これまでの業務に加え他の業務も行うことで、引き続き週5日勤務とすること」について、具体的に上司に提案し、改めて話し合われてはどうでしょうか。

Q2 パワーハラスメントについての正社員からの相談

 契約社員を経て、正社員となりました。私の正社員への転換について、推薦してくれたのは現在の上司なのですが、正社員となってからは、上司との人間関係がうまくいかなくなりました。上司は、業務に関する情報を私にだけ教えないことがありますし、しばしば、「正社員としてまだ認めていない」と大声で言います。これらの言動は大きなストレスで、パワーハラスメント(パワハラ)であると思っています。今後、どのように対応していけばよいのでしょうか。

 職場のパワハラとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為をいう」とされています。また、パワハラの行為類型には、暴行・傷害のような身体的攻撃はもとより、侮辱やひどい暴言も精神的な攻撃として該当するとされています【厚生労働省:職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告(平成24年1月30日)】。

 さらに、使用者には、労働者がその生命、身体の安全(心身の健康含む)を確保しつつ労働できるように必要な配慮を行うことや、快適な職場環境を形成するように努めることが義務付けられています【労働契約法第5条、労働安全衛生法第71条の2】。

 なお、上司からを受けた暴言・暴行について不法行為の成立と会社の使用者責任【民法第715条】が認められ、上司と会社が連帯して慰謝料を支払うよう命じられた判例があります【日本ファンド事件 東京地裁 平成22年7月27日判決】。

 本件について、あなたがパワハラと感じる行為を受けた時は、まずは、その言動や行為等について、日時、場所、相手方、内容や周囲の状況(第三者の有無等)などを記録し、整理しておくことが大切です。

 今後は、整理した記録等をもとに、上司の対応の不適切さを、可能であれば上司本人に、難しければ、その上の上司など、より使用者に近い役職者らに伝え、会社としての安全配慮義務に基づく対応を求めてはいかがでしょうか。会社にハラスメント窓口が設置されているのであれば、その窓口に相談することをお勧めします。

Q3 使用者から1か月単位の変形労働時間制についての相談

 従業員が10名に満たない会社を経営していますが、事業の特性から労働時間の変動が大きく、1か月単位の変形労働時間制の導入を検討しようかと考えています。現在は、完全週休2日制で、年末・年始は休みとしています。
 1か月の変形労働時間制の特徴や特に割増賃金の考え方について教えてください。

 1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場(※)は44時間)以内となるように、労働日及び労働日ごとの労働時間を設定することにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりすることが可能となる制度です【労働基準法第32条の2】。
(※)常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業

 1か月単位の変形制を採用するためは、(1)労使協定又は就業規則その他これに準じるものにおいて、(2)変形期間を1か月以内の期間とし、(3)変形期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、(4)変形期間における各日、各週の所定労働時間を特定することが必要です【労働基準法第32条の2】。

 したがって、本件のような、従業員が10人未満の会社においても、労使協定又は就業規則その他これにに準じる書面において、上記所定労働時間を特定しなければなりません。

 また、変形労働時間制の場合は、以下のとおり「変形された所定労働時間を超える労働(ただし、法定労働時間未満の部分を除く)」と「期間中の労働時間の総枠を超えた時間」が割増賃金の必要な時間外労働となります。
(1) 1日については、8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
(2) 1週間については、40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えて労働した時間((1)で時間外労働となる時間を除く)
(3) 対象期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間((1)又は(2)で時間外労働となる時間を除く)
 以上のことを参考にされながら、1か月単位の変形労働時間制の導入について、検討されてはどうでしょうか。


 1か月単位の変形労働時間制については、厚生労働省のホームページ(外部サイト)をご参照ください。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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