今月の事例解説(H28年10月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例  解説

Q1 正社員から退職についての相談

 4月からA事業所で働いています。8月末に上司に、「一身上の都合で、すぐにでも辞めたいと思うのですが」と相談しましたが、「社長に話をするので少し待ってほしい」と引き止められました。1週間後、社長と上司と私の3名で話し合いをしましたが、退職を認めてくれませんでした。できるだけ早く退職したいのですが、何か書面を提出した方がよいのでしょうか。

 労働者には職業選択の自由と退職の自由があります【憲法第22条】。正社員のように雇用期間に定めがない労働者は、いつでも退職の申入れをすることができ、退職届を提出するなど使用者に労働契約の解約を申し入れた後、使用者の承認の有無にかかわらず、申入れの翌日から2週間を経過することで退職となるのが原則です。使用者の同意がなければ退職できないというものではありません。また、労働者と使用者が退職日を合意した場合には、2週間を経過しなくても、合意した日で退職することができます【民法第627条】。

 また、労働条件通知書や会社の就業規則等で「退職の1か月前までに申し出ること」などと規定されている場合でも民法第627条の規定が優先されるという考え方もありますが、円満な退職を希望する場合は、就業規則等の規定を確認し、会社とよく話し合うことが望ましいと言えます。

 ただし、就業規則等で極端に長い退職申入れ期間を定めている場合などは労働者の退職の自由が極度に制限され、公序良俗の見地から無効とされる場合もあります。    

 退職の意思表示は、「労働者が一方的に解約の意思を通告するもの」と使用者の承諾を前提条件とする「労働者が使用者に合意解約を申し入れるもの」に区別することができ、「退職届」が「一方的な解約の意思を通告する文書」であり、「退職願」が「合意解約を申し入れる文書」となります。

 本件の場合、「必ず退職したい」という意思があるのですから、合意解約の申し入れと読むことができる「退職願」ではなく、その意思を明確に記載した「退職届」を提出してはどうでしょうか。

Q2 契約社員から雇用保険についての相談

 新卒で、1年間の有期労働契約の契約社員として働き始めました。7か月後、一身上の都合で退職をしました。雇用保険についてハローワークに確認したところ、自己都合退職であれば、雇用保険の加入期間が7か月なので、失業手当は受給できないと言われました。どういうことでしょうか。雇用保険のことがよくわかりません。

 雇用保険は、政府が管掌する強制保険であり、労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合、労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合及び労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に、生活及び雇用の安定と就職の促進のために失業等給付を支給します。

 失業等給付には、「求職者給付」、「就業促進給付」、「教育訓練給付」、「雇用継続給付」があり、目的に応じて手当等が支給されます。このうちの求職者給付の基本手当が、いわゆる失業手当です。

 基本手当とは、雇用保険の受給資格を満たす被保険者が、倒産、解雇、自己都合、定年等により離職した後、求職中(職業に就いていない状態で積極的に仕事を探しており、すぐに働く意思と能力があること)に支給される手当です。被保険者期間(雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します)が、離職日以前2年間に12か月以上あれば受給資格の要件を満たします。ただし、特定受給資格者(倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者)、特定理由離職者(期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ労働者が更新を希望したにもかかわらず、更新の合意が成立しなかったことにより離職した者及び一定の正当な理由のある自己都合退職者)は、被保険者期間が、離職日以前1年間のうち6か月以上あれば受給資格の要件を満たします。 

 本件の場合は、自己都合退職であるため、離職日以前2年間に12か月以上の被保険者期間が必要となりますが、これを満たさないため、基本手当が支給されないということであると考えられます。 

 他にも、雇用保険について疑問点等があれば、ハローワークに具体的にご質問されることをお勧めします。

以下のホームページもご参照ください。
雇用保険手続のご案内(外部サイト)」(ハローワークインターネットサービス)

Q3 パートタイム労働者から労働契約の不利益変更についての相談

 パートタイム労働者として勤務しています。ここ数年、会社の業績が悪化しているようです。このため、今までパートタイム労働者の労働契約は、全員期間の定めがありませんでしたが、今後は契約期間の定めを設ける方針であることが伝えられました。社長から、私のようなパートタイム労働者に対して、「これからは契約期間を6か月としたい。雇用契約書を改めて作成するので署名してもらいたい」と言われました。署名しなければならないのでしょうか。なお、従業員はパートタイム労働者を含め4名であり、会社には就業規則はありません。

 期間の定めがない労働契約から有期労働契約への変更といった労働条件の不利益変更については、使用者が自由にできるものではありません。労働契約法では、労働条件(労働契約の内容)について、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる【労働契約法第8条】」として、労働条件の変更における労使合意の原則が定められています。

 また、裁判例には、期間の定めのない契約から1年間の有期労働契約への変更について、全体説明及び個別面接を行ったものの資料等を配布せず口頭のみでの不十分な説明であったこと等から、当該労使の間で労働条件の変更の合意が成立したとは認められないと判断された例があります【東武スポーツ事件 東京高判 平20.3.25】。

 なお、労働契約法第18条では「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換」について定められており、その趣旨は「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図ることとしたものであること」【平24.8.10基発0810第2号「労働契約法の施行について」】とされていますし、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」【平15.10.22厚生労働省告示第357号】の第3条では、「使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を一回以上更新し、かつ、雇入れの日から記載して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない」と定められています。

 以上の法的な考え方を踏まえ、本件について、有期労働契約への変更に同意しないのであれば、その旨、会社に主張してはどうでしょうか。また、話合いの中で、会社に対し、無期から有期への労働条件の不利益変更を行う理由及びその必要性について、具体的に説明を求め、経営状況悪化が理由であれば経営改善に向けての方法は他にないのか等、尋ねてはどうでしょうか。なお、他のパートタイム労働者の方も労働契約の変更に同意しないのであれば、協調して使用者との話合いに対応する方法もあると思われます。

 

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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