今月の事例解説(H28年8月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 正社員から労働組合の結成についての相談

 社内に労働組合が無いので、労働組合を立ち上げたいと考えています。組合を結成するにはどうすればよいですか。

 労働組合は、労働組合法第2条に、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。」と規定されています。

  ここでいう「自主性」とは、対使用者との関係で真に対等でなければならないということで、会社の役員などの「使用者の利益代表者」を組合に入れたり、使用者からいろいろな経費の援助を受けたりする組合はその自主性を疑われることとなります。

 また、政治運動や社会運動、福利事業のみを主たる目的とする団体は労働組合とは認められません。

 以上の要件をふまえ、労働者が2名以上集まり、組合規約、活動方針等を定めれば自由に労働組合を結成することができます。官公庁への届出や使用者の承認は不要です。

 ただし、使用者の団体交渉拒否など不当労働行為にかかる労働委員会での労働組合法上の救済を受けようとするとき等は、労働委員会の資格審査が必要となります【労働組合法第5条第1項】。この資格を得るためには、労働組合の規約が、「大会は少なくとも年一回開催する」などの労働組合の民主的な運営に必要な内容を備えていることが必要です【労働組合法第5条第2項】。 

 「自主性」と「民主性」は労働組合の両輪のようなものですので、結成・運営に際しては、これらの要件を具備することが望まれます。

 一般的な組合結成までの流れは以下のとおりです。
 (1) 準備段階(組合規約・活動方針案の作成、要求の取りまとめ、結成大会の準備等)
 (2) 結成(結成大会・組合規約・活動方針・要求書・役員について決定)
 (3) 活動(使用者への結成通知、要求書の提出、団体交渉)

  なお、職場内において労働組合を結成することが困難な場合は、合同労組に加入するという方法もあります。合同労組は、ユニオン、地域労組などとも呼ばれていて、一人でも加入できます。

Q2 パート社員から労働組合の脱退についての相談

 パートとして入社した際に、「ユニオン・ショップ制を採用しているわけではないが、全員が労働組合に加入している」と説明され、私も加入しました。このたび、脱退したいと思い、その旨を労働組合の役員に伝えたところ、「脱退は認められない」と言われ、勤務時間内にも脱退を引き留める説得があり、困っています。労働組合に加入すると、自由に脱退することはできないのでしょうか。

 労働組合は、労働者の自由意思に基づいて自発的に結成される私的任意団体であり、一般に、労働組合の組合員は、脱退の自由を有するものと解されています。

 たとえば、脱退について何日か前の予告を要求することは、脱退の自由を侵害するほどのものでもないと解されていますが、脱退には大会の承認を要するとの規定は無効であると考えられます。

 また、企業内労働組合から脱退を制限する企業と組合員との合意について、組合員の脱退の自由に反し、公序良俗違反として無効であるとされた判例があります【東芝労働組合小向支部・東芝事件 最二小判 平19.2.22】。 

 本件について、まずは、加入されている労働組合の組合規約を確認され、それに基づいて、脱退の手続きを進められてはどうでしょうか。もしも規約の規定が、脱退の自由を制限するものであれば、組合内で、脱退手続きについて話し合われてはどうでしょうか。あわせて、勤務時間内での労働組合からの引き留めの説得が業務の妨げになるようであれば、職務に専念したいという意思を示すことになると思われます。

Q3 使用者から団体交渉への社労士の出席に関する相談

 合同労組から団体交渉の申し入れがありました。社労士に団体交渉に同席してもらうとともに、今後の労働組合への対応を依頼しようと考えていますが、問題はないでしょうか。

 弁護士法第72条では、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件(略)その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と、非弁護士の法律事務の取り扱い等を禁止しています。ただし、例外として、同条において「この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りではない」と規定します。その一つが、社会保険労務士法第2条で社会保険労務士の業務として定められている「紛争解決代理業務」です。

 平成17年の改正前の社会保険労務士法では、社労士の労働争議不介入を定めていましたが、法改正により、この規定は削除されました。厚生労働省は、この改正に伴い、「争議行為が発生し、又は発生するおそれがある状態において、社会保険労務士は業として当事者の一方の行う争議行為の対策の検討、決定等に参与することができることとなること。しかしながら、労働争議時の団体交渉において、一方の代理人になることは法第2条第2項の業務に含まれず、社労士の業務としては引き続き行うことができないこと」との見解を示しました【平成18年3月1日 厚生労働省基発第0301002号・庁文発第0301001号】。

 以上のことを勘案され、会社が社労士に団交の同席を求める場合には、社労士が代理人となり法違反を行っていると誤解されないよう、対応を検討されてはいかがでしょうか。

 ※参考:平成28年3月11日厚生労働省基監発0311第1号において、社会保険労務士の業務について「1 労働争議時において、当事者の一方の行う争議行為の対策の検討、決定等に参与するような相談・指導の業務については、社会保険労務士法第2条第1項第3号の業務に該当することから、社会保険労務士の業務として行うことができること。2 社会保険労務士が、労働争議時の団体交渉において、(1)当事者の一方の代理人となって相手方との折衝に当たること、(2)当事者の間に立って交渉の妥結のためにあっせん等の関与をなすことはできないこと。」という厚生労働省の見解が示されています。

 

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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