今月の事例解説(H28年7月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 正社員の夫の賃金未払について妻からの相談

 現在、夫は、建築関係の会社に勤めています。この会社には友人の紹介で入社しており、労働契約書などはありません。入社して5年になります。最近、給料の振り込みが遅れるようになってきました。先月分も給料日を過ぎても振り込みがないので、夫が会社に確認したところ、「工事費が振り込まれるまで、しばらく待ってほしい」との説明を受けました。来月には退職することも考えているようですが、お給料が振り込まれるのか不安です。

 賃金は、「通貨で」「全額を」「毎月1回以上」「一定期日に」「直接労働者に」支払わなければなりません【労働基準法第24条】。

 未払賃金がある場合、まずは、就業規則や賃金規程、毎月の給与明細を確認され、支払われていない賃金の額を算出し、特定することが必要です。

 その上で、使用者に支払われていない賃金の支払いを請求します。請求は、口頭でも文書でも可能ですが、今後の対応を考えると、「未払賃金請求書」などの名称で文書を作成し、請求することが望ましいと言えます。

 その際、遅延利息(使用者が株式会社など「商人」の場合は商事法定利率として年6%【商法第514条】、それ以外は民事法定利率として年5%【民法第404条】、労働者が退職している場合は年14.6%【賃金の支払いの確保等に関する法律第6条】)を併せて請求することもできます。

 本件のように、使用者が未払賃金があることを認めてはいるものの、すぐに支払えないということであれば、「未払賃金確認書」のような名称の文書で、使用者との間に賃金債権が存在していることを確認することが必要です。

 自主交渉を行っても会社が支払に応じない場合は、労働基準監督署への申告、大阪府の個別労使紛争処理解決支援制度の活用、簡易裁判所での少額訴訟等を検討されてはどうでしょうか。

 なお、退職金以外の賃金の消滅時効期間は2年間、退職金は5年間ですので、気をつけてください【労働基準法第115条】。

Q2 契約社員から就業規則についての相談

 労働条件について疑問があり、就業規則を見たいと思いました。上司に対し「就業規則はどこにあるのですか。見せてもらいたいのですが。」と述べたところ、「今、忙しいから」と言われ、見せてもらえませんでした。就業規則は誰でも見ることができるものではないのですか。

 就業規則については、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとされています【労働契約法第7条】。

 また、労働基準法では、労働者に対する就業規則の周知が義務づけられており【労働基準法第106条第1項】、これに違反した使用者に対して適用される罰則の規定があります【労働基準法第120条第1号】。

 なお、周知については、次のいずれかの方法によって行うことが規定されています。労働者が就業規則の開示を求めた場合、使用者はこれを受け入れないことはできません。

(1)  常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

(2)  書面を労働者に交付すること。

(3)  磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業所に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること【労働基準法施行規則第52条の2】。

 以上の法的な考え方を示しながら、使用者側に、就業規則の閲覧及び従業員への周知を求めてはどうでしょうか。

Q3 使用者からの従業員のメンタルヘルスについての相談

 従業員がメンタルヘルスの不調のため体調を崩し、クリニックに通院するようになりました。通院を始めた頃は、診察経過が報告されていましたが、最近は、通院もしていないようです。本人は「体調は良くなっている」と述べています。しかし、勤怠状況が悪く、体調も悪いように見受けられます。会社としては、通院を勧めたのですが、これに応じず、「診察を受けたくない」と言っています。どのように対応すればいいのか困っています。

 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとされています(安全配慮義務)【労働契約法第5条】。この「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれます【平成20年1月23日基発第0123004号】。また、事業主は快適な職場環境を形成するよう努めなければなりません【労働安全衛生法第71条の2】。

 したがって、体調不良の従業員を「本人が行きたがらないから」と、そのままにしておくことは、この安全配慮義務に違反するおそれがでてきます。体調をさらに悪化させ、長期休業にいたることなどないよう、適切な対応をとることが、使用者には求められています。

 本件の場合、従業員が通院を受け入れないのであれば、そのまま放置せず、受診させることが必要です。たとえば、「今の状況では、仕事をすることで、さらに体調が悪くなるように思うので、心配である。主治医など専門の医師から、仕事をしてもよいのかどうか、診断書を出してもらいたい」ということを説明し、このままでは仕事を任せることができない旨を伝えてはどうでしょうか。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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