今月の事例解説(H28年6月分)

更新日:平成28年7月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 パート社員からセクハラについての相談

 半年前からパートとして働いています。最近、社長から手や肩を必要もなく触られたり、髪の毛をなでられたり、セクハラを受けています。会社は、従業員10人程度の規模なので、相談窓口などもありません。同僚の女性も、同じようなセクハラを受けているようですが、がまんしています。相手が雇用主ということもあり、どのように対応したらいいのか困っています。

 セクシュアルハラスメントについては、男女雇用機会均等法(※)第11条において、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定められています。

 また、同条文に関して定められた「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615条)において、「性的な言動」には「必要なく身体に触ること」が含まれています。

 まずは、あなたがこれまでに受けた「手や身体を触られる、髪の毛をなでられる」というセクハラと感じる言動について、「いつ、どこで、誰から、どのような言動を受け、どのように対応したのか」等を記録した上で、事業主に対し、男女雇用機会均等法第11条を元に、言動の改善及び職場環境の改善を求めてはどうでしょうか。当所など行政機関と相談しながら、同じ被害を受けている同僚とも協力し、主張していくことも効果的かと思われます。

 その上で、社長が適切な対応を行わなかった場合には、大阪労働局雇用環境・均等部に相談され、助言、指導等を求めるということも検討されてはどうでしょうか。

   ※男女雇用機会均等法:「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」
 

Q2 正社員から産前・産後休業の取得についての相談

 正社員として入社し、4年目になります。妊娠したため、産前・産後休業を取得したいと上司に申し入れたところ、「あなたの休業中に代わりの人を雇うことはできない。いっそ退職したらどうか。」と言われてしまいました。
 退職するしかないのでしょうか。


 労働基準法では、女性労働者の出産予定日を基準に、6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産する予定の女性労働者が休業を請求した場合、及び産後8週間を経過しない女性労働者について、使用者はその者を就業させてはならない、とされています【労働基準法第65条第1項、第2項】。また、妊娠・出産・産前休業を請求・取得したことなどを理由とする解雇やその他の不利益な取り扱いは禁止されています【男女雇用機会均等法第9条】。

 また、一般に、使用者が労働者に退職を勧めることを退職勧奨と言います。退職勧奨は、あくまでも退職を「勧める」ものであり、それに応じるかどうかは、労働者の自由です。退職勧奨に応じる意思がなければ、そのことを使用者に書面などで確実に意思表示することが重要です。

 まずは上司に、会社にはあなたに産休を取得させる義務があること、それを請求したことをもって解雇とすることは禁止されていることを説明されてはどうでしょうか。

※妊娠・出産・育児に関する労働問題については、当所作成の啓発冊子「妊娠・出産・育児・介護etc.働く時・働き続けたい時に役立つ『マンガで読む女性のための働くルールBook』」をご参照ください。
  http://www.pref.osaka.lg.jp/sogorodo/keihatusahi-refureto/joseirulebook.html

Q3 使用者から賃金引下げについての相談

 1年ほど前に採用した従業員についてです。優秀と見込んで高給で採用したのですが、勤務日初日からミスを繰り返し、商品の配達中に事故を起こし、社用車を廃車にされました。あまりの見込み違いに、給料を下げることを検討しています。
 本人の同意なしに、こちらの判断で給料を下げても問題ないでしょうか。


 法律では、労働者と使用者との合意により労働条件を変更することができると定められており【労働契約法第8条】、これは、労働者と使用者との合意がなければ労働条件を不利益に変更できないということでもあります。したがって、使用者側が労働者の同意なく、一方的に、給料の引き下げという労働条件の不利益変更を行うことはできません。

 一方、懲戒処分として減給(賃金から一定額を差引く処分)を行う場合は、就業規則に根拠があり、従業員に周知されていることが必要です。

 また、懲戒ができる場合においても、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とされます【労働契約法第15条】。

 なお、減給として賃金から差し引きできる額は、1回の事案に対しては、平均賃金の1日分の半額以内、数事案に対しては、一賃金支払期間における賃金総額の10分の1以内に制限されており【労働基準法第91条、昭23.9.20基収1789号】、これを超えて減給の制裁を行う必要のあるときは、その部分の減給は次期の賃金支払期に延ばさなければなりません。
  
 現在の従業員に周知された就業規則による対応を検討するとともに、規則の整備を行う場合は、厚生労働省が示すモデル就業規則の例も参考とされ、労働基準法に則った改正手続を検討されてはどうでしょうか。

 なお、懲戒規定を設ける以前に行われた労働者の行為に対して、遡って懲戒処分をすることはできません(不遡及の原則)のでご注意ください。

 ※「モデル就業規則」については、厚生労働省のホームページをご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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