今月の事例解説(H28年2月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 正社員からの労働時間に関する相談

 情報処理業の会社で勤務しています。役職は特にありません。残業が多く、土日も勤務することが多く、先月は休日が1日しかありませんでした。総労働時間が月300時間を超える月もあります。

 会社は「この会社では残業手当を支給しなくてよいことになっています」と説明していますが、よくわかりません。業種によって残業手当が支給されないということがあるのでしょうか。 


 残業(所定時間外労働)については、労働基準法で定められており、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働させる場合、36協定を締結し、割増賃金を支払うこととなっています【労働基準法第32条、36条、37条】。

 労働時間、休憩、休日に関する規定には適用されない場合はありますが((1)農業、畜産・水産業に従事する者、(2)監督もしくは管理の地位にある者、機密の事務を取り扱う者、(3)監視または断続的労働に従事する者で使用者が労働基準監督署長の許可を受けた者)、本件については適用されるでしょう【労働基準法第41条】。

 また、変形労働時間制(1か月単位、1年単位、1週間単位の変形労働時間制、フレックスタイム制)を採用していることも考えられますが、この場合も所定労働時間を超えた場合には、残業代が支払われることとなります。変形労働時間制を採用する場合には、労使協定が結ばれている必要があります(但し、1か月単位の場合は就業規則でも可能)【労基法第32条】。

 なお、裁量労働制(専門業務型又は企画業務型)を採用していることも考えられます。この場合、あらかじめ労使で決定した時間数を働いたものとみなすという制度であり、この時間数が法定労働時間を超えた場合には割増賃金が発生します。また、労使協定又は労使委員会での決議が必要です【労働基準法第38条】。

 まずは、労働契約書や就業規則、労使協定を確認され、その上で、実際の残業実績の資料を作成し、これを元に未払賃金を請求する、ということが考えられます。

 以下のホームページもご参照ください。

  ○「労働時間・休日(外部サイト)」(厚生労働省ホームページ)

  ○「すすめよう!ワーク・ライフ・バランス」(大阪府総合労働事務所ホームページ)

Q2 正社員から病気休職と退職勧奨に関する相談

 正社員として、物流関係の会社に勤務しています。先日、がんの診断を受け、治療することになりました。会社には、病気休職の制度(限度期間は6か月)がありますので、これを利用するつもりで、会社と話し合うことになっています。しかし、会社から、退職を勧められるのではないかと心配しています。どのように対応すればよいでしょうか。


 病気休職は、労働者の業務外の傷病による長期欠勤が一定期間に及び、使用者がその労働者に対し労働契約関係そのものは維持させながら労務への従事を免除することです。この期間中に傷病から回復し就労可能となれば休職は終了し、復職となりますが、これに対し、回復せず期間満了となれば、自然退職又は解雇となります。

 病気休職について具体的に定めた法律はありませんが、会社において病気休職の制度が設けられた場合は、労働協約や就業規則に基づきます。労働者との個別の合意によってなされる場合もあります。

 本件の場合、会社には病気休職の制度があるようですので、就業規則に則り、病気休職をされることになります。就業規則には、休職の事由や復職要件、休職期間満了後の取扱い等の内容が定められているはずですので、それを確認する必要があります。

 もしも、会社が、就業規則上の病気休職及び復職の手続きに則らず、退職を勧奨してきた場合、退職を希望していないのであれば応じる義務はありませんので、はっきりと、退職しない旨回答してください。 

 以下のホームページもご参照ください。

  ○「がん患者のための地域の療養情報冊子(外部サイト)」(大阪がん情報提供コーナー:大阪府立成人病センター)

Q3 使用者から採用内定者への対応に関する相談

 4月に新卒で採用される予定の採用内定者(女性)から、1月に入ってから電話があり、「妊娠したことが判りました。8月から産休を取らせてもらうことになりますが、採用してもらえますか」と尋ねられました。

 社内では、配属される所属の負担を考えると、採用を見合わせてはどうかという意見もあります。どのように対応すべきでしょうか。


 採用の内定は、企業の採用募集に対する労働者の応募が労働契約の申込み、企業から応募者への内定通知が申込みに対する承諾であり、それによって、企業と労働者との間で就労の開始予定日を実際の就労が始まる時期とする「始期付解約権留保付労働契約」が成立すると考えられています。内定の取消しは、解雇に準じるものとして、取消事由は「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」とされています【大日本印刷事件/最二小判/昭54.7.20】。

 本件においては、内定取消しの理由は「妊娠したこと」であり、これが「客観的に合理的であり社会通念上相当である理由」として認められるようなケースは、極めて限られた場合でしょう。

 また、男女雇用機会均等法では、妊娠・出産を理由として、女性に対し、解雇等不利益な取扱いをすることが禁止されています【雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第9条第3項】ので、本件において、4月1日に就労が開始されてから、同じく妊娠を理由として解雇した場合は、違法となります。

 なお、平成28年4月1日には、女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が施行されます。これは、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、豊かで活力ある社会の実現を図ることを目的としています。

 以上のことを参考にされ、女性が妊娠・出産を経ても、安心して長く働き続けることのできる職場を作られることをお勧めします。そのことが、今後の会社の経営にとって大きな強みになることも考えられます。

 以下のホームページもご参照ください。

  ○「妊娠・出産・育児・介護etc.働く時・働き続けたい時に役立つ『マンガで読む女性のための働くルールBook』」(大阪府総合労働事務所)

  ○雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために(外部サイト)(厚生労働省)

  ○女性活躍推進法特集ページ(外部サイト)(厚生労働省)

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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