今月の事例解説(H28年1月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 契約社員からの正規雇用への登用に関する相談

 契約社員として10年間勤めています。入社当初、当時の社長から「ゆくゆくは正社員にする。」と言われましたが、未だに正社員への登用が行われていません。先日、人事部長との面談で、正社員登用の話をしたところ「正社員登用の話は引き継いでいない、約束はできないが正社員登用もあり得る。」と言われました。現在契約社員で働く人は、5年間契約更新が続けば正社員になれると聞きましたが、このまま辛抱していれば正社員となれるのでしょうか。 


 有期労働契約を結んでいる労働者の場合、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換できるようになりました。通算契約期間のカウントは、平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象です【労働契約法第18条】。

 ただし、これは正社員への転換ではありません。無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。

 なお、無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させることはできません。法の趣旨から、そのような意思表示は無効と解されます。

 本件の場合、正社員への登用については、人事部長の発言からすると、完全に否定されている訳ではありませんので、上司の方も交えて様々な機会を通して粘り強く交渉されてはいかがでしょうか。

 以下のホームページもご参照ください。

  ○「労働契約法の改正について(外部サイト)」(厚生労働省ホームページ)

Q2 正社員からの労働災害(労災)申請と退職勧奨に関する相談

 正社員として設備の施工管理会社に10ヶ月間勤務しています。先日、建設現場で足を痛め、病院で診察を受けたところ親指が骨折していました。労災ではないかと会社に申し出ましたが、何らの対応もしてくれていません。むしろ、退職をほのめかされている状況です。今後、どのように対応すればよいのでしょうか。


 業務上の負傷など業務災害については、労災保険の対象となります【労災保険法(労働者災害補償保険法)第1条】。

 また、ある災害が「業務上」のものか否かについては、(1)労働者が労働契約に基づき使用者の支配下にあること(業務遂行性)、(2)業務と傷病等との間に一定の因果関係が存すること(業務起因性)、から判断されます。

 労災保険法に基づく給付請求ができるのは、被災者本人又はそのご遺族であり、被災者が勤務する事業場を所轄する労働基準監督署に請求を行うことになります。

 事実上、使用者が申請手続きを行う場合がありますが、これは代行しているにすぎません。

 また、会社は、被災者等が申請を行う場合には、協力する義務を負いますので、会社から協力が得られない(労災の証明をしない等)場合は、その事情を記載した書面を添付し、当該労働基準監督署にその旨を申し出て申請手続きをしてはいかがでしょうか。

 なお、退職をほのめかされているとのことですが、退職勧奨であれば、応じる義務はありませんので、退職する気がなければはっきりと退職しない旨回答してください。

 一方、解雇ということであれば、「業務上の負傷・疾病による休業期間及びその後30日間」は解雇できないこととなっています【労働基準法第19条第1項】。また、解雇は、客観的に合理的で社会通念上相当である理由がなければ認められません【労働契約法第16条】。会社の対応が解雇ではないかと思われる場合、会社に解雇かどうか確認し、そうであれば、理由を求めていくことになると思われます【労働基準法第22条第2項】。

 まずは、会社に対して退職したくない旨の意思表示を行い、労災申請を行われてはどうでしょうか。

 以下のホームページもご参照ください。

  ○「労災補償関係リーフレット等一覧(外部サイト)」(厚生労働省ホームページ)

  ○ 「労働契約・解雇・雇止め・退職勧奨・未払賃金トラブル防止Q&A (大阪府労働環境課ホームページ

Q3 使用者からの有給休暇の取り扱いに関する相談

 当社では有給休暇の付与について、従業員に有給休暇の日数を通知し、取得時期についても特段の制限を加えることなく運用しています。

 今般、育児休業を取得後復帰してきた従業員から「育休を取得したうえ、有給休暇を完全取得すると周囲の社員に迷惑をかけるので・・・」との理由から、有給休暇の取得を控えるとの申し出がありました。会社としては、当該従業員に対し、「そんなに気を遣わなくていいよ。」と伝えているのですが、本人の気が済まないようです。

 当該従業員は、今年度、有給休暇を全く使っていませんが、このような余らせ方を容認している会社に違法性はないのでしょうか。


 
育児休業と有給休暇とは全く異なる制度であり、制度の趣旨から見ても、育児休業を取得したからといって有給休暇を取得できないということはありません。

 また、平成22年に改定された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」においては、平成32年までの目標値として、年次有給休暇の取得率を70%とすることが挙げられています。

 本件について、会社としては、有給休暇の取得に制限を加えることなく運用されていますので、法的な問題があるとまではいえませんが、より一層、「従業員だれもが、気を遣うことなく有給休暇を完全取得できるような社風づくり」への取組みを検討されてはいかがでしょうか。

 以下のホームページもご参照ください。 

  ○ 「すすめよう!ワーク・ライフ・バランス」 (大阪府労働環境課ホームページ)

  ○「仕事と生活の調和の実現に向けた取組の推進(外部サイト)」(厚生労働省ホームページ)

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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